第920話

「無駄だよ、無駄。俺の能力はユニークなんだから諦めたらどう?」


 そこは情報開示をしないのかい。てっきり余裕で勝利できると踏んで、自分の能力を開示してくれると思った。そうなれば良かったのに・・・。ユニークか・・・。自分のバフを付与する系か?それなら動かずに戦闘に関与することができる。パッシブのバフや自身にかけたバフの2つが、そのオークにかかっていると思っていた方がいい。


 クソゲーだな。パッシブのレベルが高くなっている場合、ステータスは元の2倍になっていると考えていいだろう。そこにダメージ減少や身代わりのパッシブがかかる。自分が戦わないための作戦ならこうなるだろう。だるいなー。時間内に終わるかどうか怪しいものになんで耐久型で来るかな?


 オーバーキル気味で行こうか。その25%の魔力の塊をオークを狙い飛ばした。会場の外で爆発音がなる。喧嘩か?いや、こいつの身代わりが1つ減っただけだ。半径があるタイプのもので良かった。煙が晴れたところには片腕が消失したオークがいる。


 炭化し、下に落ちているのが元々ついていた片腕だ。その後ろで絶望した表情はたまらなくいい。余裕綽々とした表情からの急激な絶望。ゾクゾクする。魔法防御力の高さや、身代わりの効果で防御力が高くなっていたのだろう。


 身代わりが死ぬまで、ダメージを受けることがない。しかも今まで死んだことがないのだから、死ぬはずがない。ここからの思考から、確実に勝利を見出すことができていたはずだ。まあ、そのスキルにも上限があった。


 スライムで試さないのが悪いな。あの防御力の低さなら、無効化できるダメージの幅も狭いだろう。そこで確認してから試すべきだったな。防ぐことのできる身代わりがなくなった。絶望感から思考が追いついていない。


 何も命令がされないため、俺に攻撃を仕掛けようとしている。だが、再び召喚したカースウエポンがその体を貫き、オークを殺した。そして、絶望から立ち直れていないそいつの首元に剣を当て、決着だ。召喚獣が死んだことでクールタイムが発生する。今日は試合ができないだろうから、1人分の空白ができた。トーナメントにかかる時間は減ったな。


 審判から止めの声が上がったことからもう完全に、決着がついた。おーい。早く絶望から戻ってきてくれー。それにしてもオークの死体がなかなか消えないなー。まさか調教師(テイマー)の方だったか?またテイムすればきっと戻ってくるよ。


「弁償しろ・・・。弁償しろ・・・。弁償しろ!」


 アホだな。戦闘に死んで欲しくないものを持ってくるなよ・・・。そう睨んできても、何も怖くはないかな?どうせバフとか全部、自分とあのオークだけにつぎ込んだとかそんなことだろう。ますますなんでこの場に持ってきた?


 思考回路を理解する方が難しいな。どんまい、継続は力なりだよ。頑張りたまえ。短剣が地面に落ちる音が聞こえる。あー、ごめんね。奇襲されていることには慣れているから、効かないよ。


 短剣で俺を殺そうとしてきた。なんでこんなヒステリックとかに当たるのだろう。意味がわからない。ハイカースウエポンに手首から切り落とされ、腕を締め付け必死に止血しようとしている。回復魔法すらとっていないとか、本当に何だ?


 回復魔法をとっていないのなら、ダメージを受け止めるような存在に回復魔法すらかけることができない。生きる価値がないよ。


 担架が呼ばれ、手首を回収され医務室に運ばれていく。治るかな?治らないかな?どっちでもいいや。どうでもいいし、ついでに回復阻害の効果も確認できるからちょうどいいか。


 元の控室に戻ろうとしていた時だった。背後から殴られた。ダル。もちろん、わかっていたが防いでいない。正当防衛の証明だ。どうせ自称友達とか、仲間とかだろう。


「なんでそこまでするんだ!?」


 出たよ、自称正義者。人間の黒い部分を見てこなかったんだね。親に守られて、よちよちされてきたんでちゅね。


「抵抗せずに死ねよ。」


 ついつい煽りより先に脅迫が出てしまった。ダメージなんてクソほどないから別にいいけど。イライラが溜まる。首を刎ねるわけにもいかないため、シールドで一瞬で上に上がり、頭を掴む。そして地面に叩きつけた。もちろん、損害賠償とかで床代を請求されても困るため、シールドで床を覆っている。


 これが類は友を呼ぶとかだろう。アホの集団がいるところにいてたまるか。俺は先に帰るぞ。

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