第215話

「もういっちょ!!」


 足に力を入れ急ブレーキをかけ、ハンマーを地面にたたきつける。土壇場の賭けだ。うまくいけば地面が揺れ時間を稼ぐことができ、うまくいかなければ負ける。アーツを発動できなかったのか、それを気力で補っているようだ。


「フン!!」


 踏ん張りながらハンマーを地面に叩きつけた。発生地が近いこともあり、先ほどと同じぐらいの揺れだったのだろう。こっちもいちかバチかだ。地面の揺れが少しおさまったタイミングで、構えていた矢を放った。


「コピー」


 弓使いがアーツを発動させる。放たれた魔法矢が5本に分裂し、ハンマーくんに襲いかかる。狙いはハンマーくんの足だ。5本中1本しか当たらなかったが深い傷だ。簡単に動くこともできないだろう。そして、少し後ろに下がりながら再び魔法矢を放つ。


 また、コピーを発動させてきた。その矢は、ハンマーくんに当たることなく消えていく。その距離を飛ばすには魔力が足りなかったのだろう。遠く離れすぎた弊害だ。そのことに呆然となっている間に、ハンマーくんの傷の痛みがおさまったようだ。


 だが、その目は赤く光っている。


「バーサークか」

 そう呟いてしまった。理性はまだあるようだが、抑えることができていないように見える。痛いはずの足に力を入れ先ほどまでとは比べ物にならないスピードで突っ込む。しかも、両手で持っていたはずのハンマーを片手で扱っている。一瞬の隙を突かれ接近を許してしまう。素早くなったその体には、飛ばした魔法矢も当たらない。


 そして、ハンマーを振り下ろす。弓使いの横に振り下ろされ、コントロールがないのか・・・。と観客はそう感じている。だが、支えていたはずの左手をのけ、右手に持ったハンマーで払い除ける。そして、勢いを殺すために左手で受け止め、飛ばされた弓使いに追撃をしようと詰め寄る。


 だが、その一歩で倒れてしまい、バーサークも解かれてしまった。タイムオーバーか、HPが足りなくなったのだろう。とりあえずのヒールをどちらにもかける。幸い骨までは折れていなかった。無理に力を入れるので、筋肉に負担がかかり筋肉がちぎれたり、骨が折れたりする。その場合、筋肉なら治すことはできるのだが、骨は変な治療をすることはできないので医者に任せるしかなくなる。


 今回はそんなことはなかったのでよかったのだが、これは報告しておかないとな・・・。勇者君が回復魔法をかけて、これからダンジョンに潜ることができませんとか、生活に支障が出ます。とかになると部活として責任をとることができない。


 決勝をする人たちが揃った。2属性の魔法使いと、今回の弓使いの二人だ。どちらも魔法職や後衛といった似通った部分が多くあるので戦闘が楽しみだ。

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