第216話

 終了まで近づいてきた。長い戦闘も終わりのんびりとした空気が流れるまでの最後の試合だ。集中力が落ちてきている中、最後まで立っている勝者が決まる。本当の勝者は明日になる。全て戦ってから事後連絡を入れる形になっているらしい。


 三年生が来ているので、その人が報告とかはしてくれる予定だ。あの毒錬金術師は、一旦気絶から起きて家に帰らされているらしい。敗北したのだからそれはそうか・・・。今後の学生生活頑張れ。俺に関わらなければ好きにしなよー。


 魔力も全て回復しているだろう。呼び出した。特に意気込みは?とか無難な質問はせず試合を開始させる。そんな質問は勝者だけにしておけばいい。手数なら弓使い、火力ならは魔法使いが有利だ。


 今のレベルだと圧倒的に手数有利の方が強い。まだ魔法のレベルが上がっていないので、範囲攻撃もできない。それなら、火力の低い攻撃で打ち消さなければならない。となると、使うのはウィンドバレットのスピード特化だろう。追尾がない普通の弓であれば、ウィンドボールで方向を変えることで防ぐことができたのだが、これは追尾だ。そう簡単に防ぐことができない。


「じゃあ、開始しますか」

 そう言いながら旗を振り下ろした。そして持参してきた椅子に腰を下ろす。射程距離は五分五分だが、コピーを使うなら弓使いの方がリーチは小さい。いつコピーが発動しても当てることができる距離まで近づいている。通常の魔法矢ならウィンドボールで向きを変えるだけで、無効化していく。中には魔力を込めており、自分で操作して追尾してくるものもあった。


 だがそれは、ウィンドボールによって判別されているので、問題なく打ち落とされているようだ。ウィンドボールに沿って向き替えて視界から外れた瞬間に操作をしたらいいのに・・・。そこまでは流石に酷か。


 どちらも決定打にかけている。魔法使いの方は、矢の処理に忙しい。もう一方の弓使いは、矢が悉く(ことごと)逸らされたり、破壊されたりしているので攻撃をすることができていない。どちらかが攻撃を仕掛けないと魔力切れで弓使いが負けるだけだ。それを理解しているのか、その顔には焦りが出てきている。


 ついに弓使いが行動に移る。攻撃のスピードを上げるために矢を放ちながら近づき出した。魔法のスピードを上げるためには魔力の込める量を多くするしか方法はない。そこをついたのか、頭いいな。この状態で逆転か。矢の処理が追いついておらず、魔法使いが押され出した。何度か、処理が追いついていないため矢が体に当たる。当たれば負け確定になる顔や足や心臓あたりは防いでいるようだが、時間の問題だろう。

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