第1035話
順番待ちをしている時にメールが入っていることがわかる。そこには住所が書かれており、マップでその住所を打ち込むと1つのマンションに到達する。1人暮らし用のマンションだろう。そして、飲料水や食べたいものの買い物メモのようなものが貼られている。
買ってこいということなのだろう。仕方ないから見舞いがてら持っていくか・・・。その買ったものをマジックバッグにレジ袋ごと放り込み、住所が差している方に向かう。一般的なマンションのようだ。その5階程度の高さに住んでいる。
オートロックもないことから、少し不用心なのでは?と思ってしまう。金とかの関係もあるから仕方ないか。階段を駆け上がり、その書かれていた号室の前にたどり着く。階段を上がってすぐ、右に曲がると目の前にエレベーターがあるのは許せなかった。先に構造を知っていれば、疲れる階段ダッシュをしなくて済んだのに・・・。
たどり着いた。その扉の横についているインターホンを鳴らす。ピンポーンとその鐘が来訪者を告げた。メールが1件入る。鍵は開いてるから、勝手に入ってきてくれとのことだ。信用しすぎなのでは?
「お邪魔します」
そう言いながらゆっくりと扉の中に入っていく。そこには扉から顔を覗かせている王子の姿がある。
「いらっしゃい」
「生きてる?」
「もちろん」
生きてはいるが、元気ではなさそうだ。リビングの地面にはカップ麺のゴミが散らばっている。・・・マジかよ。一応その容器の中に汁は無く、1回は洗われているのがわかる。ゴミ袋に入れておけよ・・・。
「ゴミ袋は?」
「トイレ上の棚にあります。それよりもご飯食べたい・・・」
「キッチン使っていい?」
「はい」
そう言いながら王子は布団の中に入っていく。キッチンに行ってみたが新品のようだ。使われた痕跡が全くない。カップ麺ばかりの生活をしていたのか?とりあえず、軽く食べてもらうためにうどんからだな・・・。
隅に置かれている積み重なったカップ麺の容器は、持ってきたゴミ袋に放り込み口を縛り地面に捨てておく。キッチン下の扉を開けると、鍋が入っている。その鍋に麺つゆと水を入れ、沸騰してからその冷凍うどんを入れる。ちょっと匂いがきついため、換気扇を回している。
「いい匂い」
まるでゾンビ映画のように這い出てきている王子が1匹いる。
「鍋敷きどこ?」
「確か食器棚の下側です」
探ってみたがいろんなものが入っている。この中に賞味期限が切れたものもあるだろう。見つけたので鍋敷きを取り出し、机の上に置く。うどんを入れた鍋が沸騰したようだ。流石に料理するとは思ってもいなかった。
火を止め、鍋敷が敷いているところにその鍋をおく。浄化で綺麗にした箸や容器を用意し、目の前に置いてあげる。勝手に冷蔵庫を開け、買ってきたものを片付けていく。流石に自分で片付けろというのは酷だろう。というか、片付けなかったら腐ってしまうだけだ。
冬になっているため、外は暗く寒い。だが、この室内では暖房がついているため暑いまである。100%腐ってしまうだろう。ハフハフ言いながら、苦戦してうどんを食べているようだ。猫舌だったのか・・・。食欲はあるようで何より。
「もっといる?」
「はい!」
少し元気が戻ってきたようだ。昨日作った鍋と同じように具材を入れ沸騰させ、適当に鍋を作り出す。簡単に作るため今回はフライパンで行った。具材の方は、どちらかというとおでんを食べたいという気持ちだったのだろう。残念ながら鍋を作らせてもらう。
外くらいなー。カーテンの隙間から真っ暗に染まった空が見える。
「泊まっていきます?あ、鍋だ」
食べ終わったのか、火傷した口の中を冷やすために氷を口の中でコロコロ動かしている王子がいる。声が漏れてしまっていたようだ。
「んー、・・・じゃあ泊まろうかな?冷凍うどんは、冷凍庫の中に入れておいたよ」
鍋とかが俺の部屋に残っているが大丈夫だろう。暖房も何もついていない空間だ。冷えているため腐ることはないはずだ。
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