第1345話

 その日は配信が終わり、別の日の配信になる。


「はいってことで、強化していくんだけど、どう強くなりたいの?」

「魔法に対抗する力が欲しいです」


 魔法に対抗する力か・・・。抽象的だな。

「防ぐ力?壊す力?」

「すぐに破壊は無理なので、防ぐ力の方を優先したいです」


 防ぐ力の方が難しいけどね・・・。

「魔法防御を上げるような職業はないの?」

「ありますね」

「終わってからはその職業のレベルを上げればいいか」


 とりあえず、魔力が尽きるまでライトバレットを撃たせる。まずはスキルレベルを上げることから始まるのだった。出した瞬間に破壊する。それが理想だろう。


「婆娑羅さんや。あれは、何が強いの?」

「頭の良さ?」

「それはわかるよ」


 パーティーとしての頭の良さだろう。シールドバッシュで距離をあけて魔法攻撃を差し込む時間を生ませる。戦術としては正解だろう。


「個で何が強いのかってところだね」


 俺が聞きたいのは、何が強く、何か一芸を持っているかを聞きたい。今の状態だと無難なタンクだ。タンクでもあり、アタッカーである騎士の下位互換だとしか思えない。騎士がアタッカーだとすれば、そのアタックの部分を防御力に変換したのがマリアだろう。要するに


「一人で魔物を殺すことができる未来が見えない」


 だ。受けるばかりで、攻撃に立ち回ることがない。仲間任せの戦い方になっていることだ。仲間から分断される場面やトラップにかかり孤立する場面。こんな時になれば死んでしまうだろう。タンクとして魔法使いに殺してもらうにも、安全にするためにシールドバッシュを挟む。このシールドバッシュが効かない相手だと?この辺りの戦闘が想像できないから、戦闘ができないのでは?と考えてしまった。


「・・・」


 このことに対して婆娑羅は返答することはできないようだ。戦闘を見ておらず、最近では回復職としての後方勤務だ。盾も通常の何も効果がついていない普通のものだ。ここから特殊性を見出せと言われても思いつくはずがない。


「魔法が終わればパリィとかの練習かな」


 魔法を打ち込んでいる横目でスマホをいじる。タンク職の盾術のアーツについて調べておかないといけないだろう。正しいかは置いておくとして、調べていて損はない。


 盾術のレベル一では、受け流しだ。防御した時に威力を5%減らすというものだ。攻撃を受けるタンクとしては当然のことだろう。レベル二では、挑発だ。敵の狙いが自身に向きやすくなるというものだ。なんか、ムカつくなと思うようになるらしい。最初に何もない状態で攻撃を仕掛けてくる時に使うことで狙いが誰でもいい状態なら必ずこっちにくるようなスキルだ。


 レベル三はシールドバッシュのアーツ、レベル四では反射だ。愛用しているであろう反射が出たのはレベル四になった時のようだ。レベル五はチャージだ。攻撃を受けた時に数%のダメージを次の攻撃に上乗せする効果が出るらしい。パッシブとして発動するようで、蓄積は一回キリのようだ。


 Aの攻撃を受けるとAの数%のダメージが溜まります。この時にBを受けると最初に受けたAの数%ダメージの効果がなくなり、Bの数%が付与されるというものだ。攻撃を受けると攻撃を返しましょうね。と言われているようなものだ。一応攻撃力系のスキルがここで付与されるのか・・・。


 レベル六は常時発動型でダメージ軽減5%だ。そしてレベル七だとリベンジのスキルだ。攻撃を受けた時、その相手の攻撃力の数%を獲得し、一回キリ次の攻撃でダメージが上がる。というものだ。レベル八は石化。動きにくくなるものの、防御力が大きく上がる。そんなスキルのようだ。レベル九はカウンターだ。アーツを発動し攻撃モーションに入った時、次の攻撃を無効化しつつ、ダメージを与えるもののようだ。


 コンボとしては、ダメージを受けてチャージとリベンジで攻撃力を上げつつ、カウンターで殴る。これが戦闘スタイルになるだろう。レベル10は防御力+10%と破格のボーナスをもらっている。これほどまでにステータス面で優遇されている職業はないだろう。


 ここまでにいくのが苦痛か?まあ、時間が解決してくれるか。

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