第851話

 side主人公


 作る予定もなく、お盆の間は実家に帰らず家でウィンドジャベリンを魔石に刻印していると、お盆が過ぎ去っていった。そして、パイルバンカーに装備し実戦投入をしてみた。オーク相手でも通用する武器に昇華することに成功した。


 ここまではよかった。だが、ふと気がついてしまった。わざわざウィンドジャベリンで飛ばして、攻撃するよりも魔力性質変化で伸ばした方が効率が良くないか?ということだ。これを試した。その結果は威力が足りなかった。


 飛ばすまではよかったのだがウィンドジャベリンを使って飛ばす方がスピードが乗っているため、貫通力や突き刺さる深さに違いが出てくる。ウィンドボールで飛ばすのなら、性質変化で攻撃する方がよかっただろう。


 ここまでのレベルになれば、普通に魔法を使って攻撃をした方がいいのかもしれない。両手にパイルバンカーを装備しながら戦闘をした結果がこれだった。先端に毒をつけた状態で戦っても強そうだ。


 ピンポンパンポーン


 また、気の抜けるような音が脳内に流れてくる。いつものあれだ。もう少し音量を下げて欲しいのもだ。


「あー、テストテスト〜」


 いつもならハキハキと話していたのだが、めんどくさそうな声だ。ここ最近ずっと使われてきた影響だろう。先月に1回、今月に2回だ。その多さのため、疲れが出ているのだろう。何に疲れるのかは知らないけど。


「はあ、これ本当にするの?するんだ・・・」


 裏でするはずの会話を今しないでほしい。


「僕は反対だけど、仕方ないな・・・。初心者強化週間が始まるよ。初心者を強化するのが目的だから、今月のイベントはないよー。ちなみにこれは世界中で行われていることだからね」


「初心者強化週間の内容は、ドロップ率が初心者だけ上昇するというものだよ。初心者のうちはお金のやりくりに困って装備の更新ができなさそうだからね。装備を更新して、強くなることが目的だよ」


 ドロップが多く落ちるのか、なら値崩れとか起きるだろう。


「値段の設定だったね。多分量が多くなるから、買取金額も下がるかもしれないね。オークションのところに定価買取の欄があると思うから、そこで売却すればいいよ。そうすれば、今までの平均の値段で買い取ってくれるよ」


「これだと、上級者の人には何もメリットがないよね。ほんと、あの人たちはこのまま通すつもりだったんだろうけど改良してしまえ、そしてその修正に苦しめ!止めに入ってももう知らないからね。鍵もかけたし入ってこれないよ」


「初心者を入れて、戦闘をすると経験値を1.5倍に上げるよ。これは上級者専門だね。初心者はこの恩恵はないよ。あとは初心者と上級者の定義だね。初心者を半年以内にダンジョンに入り始めた人と定義しておこうかな?いや、それだと初心者が多すぎるか。なら、5階層をクリアしていない人を初心者と定義するか」


「上級者はそれ以外ね。初心者のドロップ率が上がるのは10階層までだから注意が必要だよ。経験値が増えるのもこの階層だけだよ。期間中初心者の人はずっと初心者と定義されるよ。これぐらいかな?じゃあ、がんばってねー」


 聞いていたが、俺には全く関係がない話だ。初心者ね・・・。知り合いに初心者とかはいないし、低層のドロップを集めたところで、オークナイトの武器1本分の値段になるかも怪しい。上級者がわざと連れ回してパワーレベリングをすることが発生しないように考えられているなー。


 まあ、初心者救済は必要なことだから定期的に開催していくのだろうな・・・。俺の時も開催して欲しかった・・・。

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