第1251話

 勇者の勇姿を世間に知らしめるために配信をしている。まあ余裕で討伐できると考えられているところだろう。本拠地、魔王城を攻め入るための作戦が始まる。テイマーの勇者が雑魚扱いしているゴブリンやコボルトに先陣を切らせる。そして、何体かは落とし穴に落ちたことを確認したのちにトランシーバーで罠を破壊する勇者に話しかける。


「こちら突入部隊C、目の前にトラップを発見、直ちに破壊を、繰り返す。こちら突入部隊C、目の前にトラップを発見、直ちに破壊を、どうぞ」

 だが、応答はない。この時になって初めて殺されたことを勘付いたのだった。通常であれば観測部隊と名乗り、どのように対応するのかが告げられるはずだった。トランシーバーが全体に変わる。


「こちら突入部隊C、観測部隊は襲撃を受けた模様。繰り返す、こちら突入部隊あとも、観測部隊は襲撃を受けた模様、どうぞ」


 予想ではあるが、緊急事態だ。全体に伝えておいてよかっただろう。作戦が変更された。作戦は周囲から攻め入ることを予測していた。だが正面突破に切り替わったのだった。全ての勇者が集まると同時に森の中から現れる。まだ、銃の射程外だ。


 勇者ではない魔法使いが呼び出され、火魔法で地面を爆破させ無理やり罠を破壊する。勇者は気力を込めた斬撃を出し、伸びていた草を刈り取る。その斬撃は魔王城の塀まで届き、軽い傷をつける。伸びていた草を刈られたことで、罠が露見した。


 全ての勇者は塀の方向に向かいながら、奇襲があった森の中を警戒する。まずは1人目が胸を貫かれて死んでいく。障害物がないもない場所だ。背中の森を警戒して動いているその姿は、スナイパーライフルには格好の的だ。


 勝ち戦だと確信をしていたため、防御を怠っていた勇者が死んだ。ダンジョン内には、銃を使う魔物がいることや銃を使う人間は存在している。ダンジョンの外に出れば、銃を使うものがいなくなると判断していたのだった。銃のドロップは低確率であり、高値で取引される。こんな出現してすぐの魔王が銃を持っていると判断するのは難しい状況だろう。


 土魔法で岩石を落としたり、スモークグレネードを塀上に投げたりして視界を防ぎつつ、森と魔王城の半分くらい進んだ頃だった。塀上から銃を構えたスケルトンが現れ弾丸が一斉に放たれる。壁に拒まれつつも壁に打ち続けるのだった。銃撃の雨により、動きを封じるのが目的だ。攻め入ることができず、勇者たちがどう打破すべきかを考えていた時だった。トランシーバーにノイズが走る。


「こちら後方支援、後ろからスケルトンの急sy」

 勇者が森の中から魔王城の外に出てきたタイミングで、森の浅いところにいたスケルトンが森の中に進軍を始めた。そして、後方支援組を殺したのだった。勇者の血を絶やさないために、生産職の勇者は勇者の国に残っている。そのため、ここ以外の部隊には勇者は誰もいない状況だ。


 引こうとしても森の中にいるスケルトンと戦うことになり、もう進むしか道は無くなった。魔力や気力の温存は諦めたようだ。できる限りのものをこめて斬撃を出し、魔王城の塀に穴を開ける。そこから侵入が始まるのだった。作り出した穴の上には、煙幕を作り、横からの射線は壁を作り出すことで防ぐ。


 勇者一行は魔王城内へと侵入することができたのだった。塀の四隅には、兵士が登って行く用の階段が設置されている。ここで二手に分かれるのだった、1つは魔王本陣を叩くもの、もう1つは塀上のスケルトンや森からやってくるスケルトンを撃破することだ。


 塀上のスケルトンは魔王城へと向かう勇者を打ち続けている。当たるものの深手になることはない。入口は出迎えるように大きく開いている。勇者一行を歓迎しているようだ。

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