第30話

「やあ君も入るんだね。」




 そう声をかけられた。だが、声に聞き覚えがない。




「えっと誰?」




「同じクラスの光だよ。」




 あー顔を見て思い出した。勇者くんか。やはり入部していたようだった。今から変更しても間に合うかな?




「クラスメンバーの名前ぐらい覚えなよ」とかなんとか勇者君が言ってくるが流れて出ていくだけだ。窓の方から気配がする。そっちを見ていると男の人が降臨してきた。上の人をたたえるために言っているのではなく、その通り空から降りてきたのだ。(風魔法での落下速度減少による効果)




 どこかで顔を見たことが・・・。思い出した。ダンジョンに潜っている有力な高校生という番組で見たことがある。名前までは覚えていないが、顔を見たら思い出すことができた。あだ名が、空飛ぶ貴公子だったか。小っ恥ずかしいような二つ名だ。




 俺なら悶絶するだろう。だが、貴公子との言葉でわかることはイケメンだ。そんじょそこらのイケメンではなく、すれ違った女子全員が振り返るようなイケメンだ。さらにそれプラス強いとか、神に恵まれた人だなと思ってしまう。




 皆が部長と声をかけていたので、この人が部長だと確信がついた。




「入部届けです。」




 持っていた入部届の紙を渡す。だが、その顔は新しいおもちゃを見つけた子供のようだった。




「1年同士で戦ってみない?」




 そう言ってきた。それはそうだが、俺自身に旨味がない。




「いやそうな顔だねー。そうだな、優勝者には幽霊部員の許可をあげよう。3年になっても大丈夫になるようにね。」




 そういいながらもウィンクをしてきた。男のウィンクにこれほどまでに寒気がしたのは初めてだ。




「決戦場はあそこにして・・・」




 と何やら、許諾もなしに副部長と話しているようだ。だが、その顔には不安感を一切出していない。これが通過儀礼のようだ。決戦場はおそらくあの体育館を使っているのだと思う。戦い傷つくが外に出るとその傷がまるでなかったかのように回復するものだ。




 だが、死んでしまうと元も子もない。そのため、強い人が審判をするようになる。あのトーナメントもこのような形でしていたのだと思いたい。流石に殺し合いではないことは願っておく。




 日時は明日の放課後から行うようだ。そのため、自分の武器を持っていくことになりそうだ。サボれるとなると手を抜かずやり切る。ダンジョンに行っている時点でサボりではない。




 さて家に帰り、武器を鞄の中に放り込む。ふと思ったんだが、煙だまとかありなのかなとか不安になることが多くある。その時間になればわかるようだ。




 ダンジョンに行く時に持って行くの忘れそう・・・。そんな嫌な予感をしながら明日を過ごす。

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