第848話

 元勇者の死体を使ったキメラに攻撃を仕掛けようとしている。元の体がその勇者のものであるため、攻撃を躊躇ってしまった。唯一奇襲として動いていた勇者の一人だが、情が厚かったようだ。防御力は低く、全て機動力や奇襲をするためにステータスを調節している。


 その唯一の取り柄でもあった奇襲を躊躇ったことで、辞めてしまった。そのキメラから反撃がくる。勇者は情があり攻撃を躊躇しようが、死体は命令を遂行する機械のようなものだ。情なんて一切持っていない。


 そしてその勇者は死んでしまった。勇者が新しく死んだことにより、ネクロマンサーの動きが変わった。マッドサイエンティストの称号が働いたのだった。勇者のキメラにその死体を持ってくるように命令を出す。その死体を早くキメラにしたいと思ったのだった。


 その命令に従い、荷物持ちの勇者の死体は異空間に入れ後ろに下がり出す。その際に命令が上書きされている。異空間に入れている間も、後ろに下がっている間も攻撃が全く行われていない。完全な勇者側のチャンスがきたのだった。


 攻撃をしても反撃をしてこない。そのことに気がついた勇者がネクロマンサーの弱点に気がつく。それは、指示を忠実にこなすが、それ以外のことを行わないということだ。ネクロマンサーが近くにいる状態で、常時命令を書き換えてこそネクロマンサーの本領は発揮される。


 魔法を防がれたくないため、魔法を温存していた風魔法の勇者がこの弱点に気がついたことで攻撃にかわる。他の仲間の火魔法の賢者には、魔法使いのキメラの攻撃を防ぐようにお願いをする。そして、風魔法で声を大きくし、


「殲滅するから、後ろに下がって!!」


 と宣言する。勇者同士だ。攻撃力は信用しているのか、すんなりと受け入れ後ろに下がった。後ろに下がったことにより、アンデットの前線が上がってくる。勇者陣営の戦闘にいるのは、魔法使いだ。


 だんだん近づいていくが、一向に魔法を放たない。魔力を集めるのに集中しているようだ。そして、20mほど進み、あと7mぐらいになった時だ。戦闘にいるアンデットの体が切断され、その後ろにいるアンデットもだ。


 巨大化したウィンドカッターがそこを通過していた。その風魔法の賢者を中心に120°の方向に魔法を放っていた。そこに入っていたアンデットは、全て死ぬことになった。残っているのはあの4本の剣を持っているアンデットと、その後ろにいたアンデットだけだ。


 主であるネクロマンサーは、もっと離れた場所にいるため魔法が届かなかった。ここからは殲滅戦が始まる。このタイミングでネクロマンサーの元に、新たな勇者の死体が運ばれることになった。勇者の改造には、そのまま死体をアンデットに変えた簡単なものであれば2時間程度で終わる。


 凝り性なため、もっと時間がかかるだろう。さらに、合体させる死体も探すため軽く見積もって12時間は固いはずだ。その間に戦闘を終わらす必要がある。

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