第1303話

 時折配信を行い、堕天計画は進んでいく。背丈は変わらないが表面積だけは大きくなっていく。


「・・・悪魔だけど、空を飛べないものっているの?」

「翼は生えていないものは飛べませんけど。翼が生えていて飛べないものもレアケースですが存在していますね。それがどうかしました?」

「いいや気になっただけ」


 もしかすると、とは考えていたが可能性はあるな。堕天の反対として昇天という言葉が存在してる。その可能性は、天使として飛べないものが堕天としての才能を持っているのなら、悪魔として飛べないものは昇天の才能があるということだろう。


「天使の成長速度ってどれくらい?」

「現世の時間でいうところの、3ヶ月程度ですね」

「・・・これが大人になる姿が想像できないな」


 袋を開けておっさんのように横になりながらポテチを貪る姿を見てそう思うのだった。今回の情報は勇者としての才能だった。勇者としての才能は、ステータスの現在値によって決まるらしい。やはりステータス至上主義だったようだ。


「天使が勇者を渡せるのなら、悪魔も渡せるんじゃ?」

「できませんね。数千年前の天使との戦争にて悪魔は敗北しました。その結果、魔王を任命して職業を与えるという能力を剥奪されたんですよ」


 均衡を崩すのなら、最強個体の数を増やす能力を奪う方が早いか。魔王といえど寿命は残っている。その寿命が切れるのを待てば相対的に魔王の数は減っていくのだから正しい判断だ。羽が黒くなるのは全部染まりきっている箇所がいくつか存在している。何回かは主体的に善行を働いていたため、羽が真っ白に戻っている箇所もある。だが1回でも染まりきれば、白に戻ることはないようだ。


 下半分の両翼は完全に黒色に染まっている。残りの上半分も染まれば良いと考えていた。急な成長が始まったのだった。2歳ぐらいの太々しい体から、5歳程度の大きさにまで大きくなるのだった。他の天使もこれで見つかりやすくなったのだろう。


 肝心の羽だが、黒く染まった羽はそのままだが、中途半端に染まっていた羽は真っ白な状態に戻るのだった。そして、中間部分で2つに分かれ、合計4つの翼になるのだった。下側が黒い翼で、上側は白い翼だ。


 急に成長した姿を確認すると、その太くてまんまるとした腹を見るのだった。そして、縦につまむのだった。小さい手ながらも脂肪は溜まっている。その結果、ダイエットを始めるのだった。その横で悪魔はせっせとデザートや好物の料理を作ることでそのやる気を無くそうと動く。欲望とダイエットの戦いだった。


 結果は料理に負けるのだった。そのダイエットをやめさせるために、油物を用意していたのだった。天使の体が成長するためには、カロリーと時間が必要だったのだろう。他の天使は生き残ることができているのだろうか。進化できないまま、その状態で成長した時にはどうなるのやら・・・。


 もう、この天使は欲望を知ってしまったため、外の世界で1人で生きていくことはできない体になったようだ。

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