第930話

 嫌な予感がする。部位欠損をさせてでもいいから、先に戦闘を終わらせるか。魔力形質変化で糸が繋がった短剣を指の間に3本づつ挟み、クロスさせるように飛ばす。糸同士を繋げ巨大な鋏を作り出し、絞める。もう、間に合わなかったようだ。進化が完了してしまった。


 魔力の刃を腕で抑えミシミシと音を立てている。形を変える。ハサミから牙のような形に変更だ。そのまま腕に噛みつき、捻り地面に叩きつける。まだ生きているようだ。しかも服がなくなっただけで無傷で済んでいる。


「化け物め」


 進化をしたということは急激に力が上がっているだろう。進化してすぐに力加減ができるわけがない。最悪死ねる。嫌な予感がぷんぷんするわー。攻撃を受け流すか・・・。意識があるのかもわからない。進化してすぐとかであれば、意識がなくなって暴走モードとかに入っていても不思議ではないだろう。


 進化した姿は獣人だ。獣のような見た目に、2足歩行をしている。完全に実験対象になるような見た目だ。進化をするなら、人間寄りの見た目の方が良さそうだな。身体強化方面に進化を選んだ結果だろう。厄介だな。


 ・・・元がもっと人間寄りだとするならば、これは獣化とかだろう。仲間意識や理性を全て置き去って、野生の本能のままで戦うのだろう。マジの暴走かよ・・・。被害が大きくなると考えると、前線に立つのは俺になるだろう。


 爪が厄介だ。引っ掻かれると血が出る。野生の本能で血の匂いでバフがかかる可能性もある。攻撃を受けるのは禁止だな。仕方ないか・・・。分身体を10体召喚する。あまり得意じゃないけどね・・・。というか見せたくなかったけどね・・・。死ぬよりかはマシか。


「はー、仕方ない。魔王の威圧、大魔王の威圧」


 ぼそっとそうつぶやく。空が黒く曇りだし、俺から黒色のオーラが溢れ出てくる。威圧の発動と同時に分身体に自害を命令する。面白いことが起きそうだ。テンションが上がってくる。魔王の威圧を使っている分身体が3体生贄として自害を選択する。


 理性は余裕で保つことができる。テンションが多少おかしくなっているが仕方がないことだ。命令を出した瞬間形質変化で作り出した刃で胸を貫き自害をする。するとその分身体が持っている魔力が全て放出されていく。俺が空中を操ることのできる魔力の範囲が増加している。範囲はこの会場を覆うほどだ。狭い範囲であればもっと余裕だ。さらに威圧を使った効果に魔圧の効果が追加されている。出てくる魔力を全て破壊神にぶつける。


 魔力が寄せ集められていくごとにその空気の色は濃くなり、液体に変わり出す。あの破壊神はまだ生きているようだ。その液体が地面に落ちた時、地面操作が可能になる。拘束をしてみた。だが、返って魔圧の威力を下げてしまったことでその硬直が解かれてしまった。


 再びあの破壊神が動き出した。地面を砕けるほどの威力で蹴り、スピードに乗る。よく見ていなかったがキメラのような存在だ。動物のいいところ取りをしたような見た目だ。黒い雨が降り出した。その雨には俺の魔力がこもっているようだ。原理は知らないが使えるものは使う。

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