第1003話

 横に動き、俺を視界に知れようとしていたオークの動きが止まる。盾や魔法を使うオークで、そのカースウエポンを壊すために動き出す。横目でそれを観察しつつ、攻撃をしてくる剣を持ったオークと戦う。あの女王が見ているものはカースウエポンだけだ。


 魔法使いが飛ぶ位置を予測しドンピシャで魔法を当てる。そこにカースウエポンが飛ぶことをあらかじめ知っているかのようだ。魔力は通常の分しかこもっていない。絶対に当てたいのなら、魔力を多めに込めスピードに換算するだろう。


 だが魔力不足を防ぐために、通常の魔力量でしか魔法を作っていない。魔法を使う個体の予測する力が強いのだろう。見ていないうちに魔法で殺し終わる。ずっと、キュルキュルと黒板をチョークで削った音を出した。


 ガリッと音を立て貫通したことを表す。そしてオークの苦しむ声が部屋全体に響き渡る。まだ回転は続いていく。堅い鎧を突破することができたのだ。あとは柔らかい肉だけだ。相手にするオークも消えたことにより、魔法に集中できる。回転速度をさらに上げた。拘束して肌に突き刺さっているドリルの部分がうっすらと見える。


 そこからたらりと垂れてくる血が横腹を伝いながら地面に落ちる。パイルバンカーのようにピストンタイプでも良かったのかもしれない。最終的に体に攻撃を当てることが目的なのだから、結果は同じだ。鎧とか平らで硬いのであればパイルバンカーのような方でいいかもしれない。


 ただ、表面が丸みを帯びているとその分威力が下がってしまう。ドリル式の方が安全か。シールドで飛ばされる魔法を防ぎ、カースウエポンをさらに召喚して後衛の対処に行かせる。いつの間にか対処が終わっていたようだ。盾と鎧が少し傷ついたくらいだ。ノーダメクリアおめでとう。次は難易度を上げたものだ。


 体に入ったはいいが、内臓の一定の場所を回転しているだけで、それ以上の攻撃にならない。回転しているものに、巻き込まれるのが1番のダメージになる。だが、巻き込みが発生しないため、周りの内臓が傷を負わないようだ。


 もう少し下であれば腸を巻き込むことができていただろう。長い腸が暴れることで体内の内臓がぐちゃぐちゃになっていたはずだ。まあ、体内に入ることができるのだからもう終わりだな。血と共に液体に変わった土が血を押し退け体内に侵入していく。破裂だ。一瞬体が膨らみ、萎(しぼ)んでいく。穴という穴から血が噴き出し、完全に死んだことがわかった。これで残りのオークはあの3体だけだ。


 カースウエポンの処理は終わっているが、所々怪我をしている。数に弱いのか?攻め方を変える。ただ魔法を多くしただけでは、全部防がれてしまった。やはり死角からの攻撃が正解なのかもしれない。魔力を地面に流し、オークまでの距離をつなぐ。


 だが、魔法使いもいる。察知されており右にずれることで回避をしていた。届いているところまで地面を隆起させ、オークの反対側に移動し俺の姿を隠した。その裏に分身体を作り出し、端から出て魔法で攻撃するように命令を出す。


 その間に俺は隠密を発動し、その背後に移動を始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る