第217話

 確実に当たる距離まで近づいた。そして、コピーを発動させる。何発か当てることができれば勝ちだ。そのため、魔力をしっかりと込め分裂させる。その数は10本だ。1本の矢が放たれてから分裂を開始するため、タイミングを変えることはできない。変わるなら、人のいる場所によって変化するだけだ。


 今回の弓と魔法使いは一直線上で結ぶことができる。しかも、試合の様子も見られていた。その結果、真ん中に集まって攻めてくるということがわかっている。そこに魔力を込めたファイヤーランスが放たれた。火と火同士がぶつかったのだが、大きさや火力は圧倒的に魔法の方が上だ。


 爆発が起き、最大火力であったはずの魔法矢が破壊され、地面にへたり込んだ。魔法使いの方は、魔力もまだ残っており、元気だ。だが、弓使いの方は、これで仕留めるという自信があったアーツを簡単に壊されてしまった。その影響で、心が折れている。


 行動もできないのだろう。猶予を与えるかのように魔法使いがゆっくりと近づいてきているのだが、何も反応を示さない。魔力にはまだ余裕はあるはずだ。これで剣を首に当てた瞬間を狙っているとなると相当な演技派で策士だぞ。そのままゆっくりと近づき、懐から短剣を取り出したその時だった。


 何かを投げた。それは眩い光を放ったことから閃光弾だった。その瞬間何も聞こえず、何も見えない状態がしばらく続く。目が慣れてきた。その目を開けるとそこには、短剣を首に当てられ、目を隠されている魔法使いの姿だ。


 これは勝負アリだな・・・・。おそらく転移系の魔道具だろう。高すぎて買うことができないのだが、彼女の親は金持ちなのかもしれないな・・・。いざとなった時の逃避用として親が買っていたのかもしれない。まあ、勝利は勝利だ。野次が飛んでいるがあまり気にもしていないようだし。


 閉会式もどきをして解散となった。いやー、戦い方隠すのうまかったな・・・。流石に閃光手榴弾は予想してなかった。


 ____________


 そして次の日になり決勝リーグが行われた。昨日と同じような感じの試合らしいが、手榴弾での順位変動はなかったようで、弓使いがシード枠に入っている。


 そんなことはどうでもよく買い物に来ている。朝から行われているので、閉会式は大体2時ごろを予定している。試合で変動するので、そこはお任せだ。運動着を予備の服を多めに買うことにした。運動をする人も減ってきているので、シューズの値段が高くなってきているのが、不満だ。


 昼ごはんを食べているとメールがきた。その内容は、もうすぐ終わるから会場あたりにいるようにとのことだった。


 そういえば昨日、あの錬金術師くんの事情聴取(尋問)が終わったようだ。隠し球として持っていた、麻痺毒を使えなかったことや、対武器ようとして持っていた強力な溶解液を使ったようだ。しかも最初は精神的に不安定だった。判断力がかけていたとか言っていたのだが、結局負けたことへの腹いせだと認めていた。間に俺がいたことは気がついていなかったようだ。


 それは仕方がないか。戦闘中邪魔にならないように隠密系のスキルは発動していたからなー。その結果退学処分になってしまったが自業自得だ。変なのが出てきたが、もう去ったので問題ない。あれが犯罪者予備軍か・・・。

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