第40話

 レインが頭痛を訴えて休み、サシャはそろそろおねむの時間である。

 なおフィリアはあなたが大変な無体を働いたこともあり、死んだように眠り続けていた。

 あなたは渋々ながら町へと出た。ヒマだったのである。


 どこぞで酒でも飲むか。あるいは娼館探しリベンジか。

 もう少し時間が早ければナンパでも出来たのだが。

 考えながら歩いていると、ふと見慣れた顔が視界の端に入った。

 相手も気づいたようで、手を上げながらあなたに近付いてくる。


「よう」


 声をかけて来たのは、先日この町で知り合った少年のモモだった。

 元気そうでなによりだが、今日は連れているのが別の人間であった。


「紹介するよ、こいつはアトリ」


 そう言ってモモが指差したのは、金髪の少女だった。

 外見的な年齢で言えば、レインよりいくらか上、フィリアよりいくらか下に見える。

 17か18くらいだろうか。最高に食べ頃な年齢と言えるだろう。

 瞳や耳あたりに異種族の血を感じる容貌なので、もう少し年齢は前後するかもしれないが。

 細面の顔立ちに嫋やかな肢体と言い、なんとなくだが高貴な生まれを彷彿とさせる外見だ。


「アトリだ。よろしく。それで、モモ。招集の理由が彼女と言うのは?」


「ああ、それなんだが……アトリ、率直に聞くが、おまえは男と女ならどっちが好きだ?」


「それは、性的な意味の話か?」


「ああ」


「女の方が好きだぞ。それに男もイケんことはないが、やはり美少女のように可愛らしい美少年でなければな」


「そうだよな。まぁ、そう言うわけなんだ」


 つまり、これは、そう言う事だと思っていいのだろうか。

 ゴクリと唾を飲み込み、あなたは恐る恐るモモに尋ねた。

 このままアトリを宿にお持ち帰りして、思うさまに食べ尽くしていいのだろうか?


「明日には他のやつも来る。おかわりもいいぞ」


 最高かよ……あなたは泣きたいほどの感動に包まれた。

 まさか、可愛らしいホモのカップルが食べてもいい美少女を紹介してくれるなんて。

 こんなに幸せなことがあるだろうか? あなたはこの大陸に来てよかったと心の底から感謝した。


「お、おい、モモ。どういうことだ」


「いや、なんか、こいつが女を紹介してくれたら若返りの薬をくれるって言うから……」


「なに……? つまり、私はこの子とイイコトをした上で、若返りの薬を貰えるというのか……!?」


「そう言うことだ。なんてこった。最高かよ。誰も損しないぜ、この取引」


 これほどすばらしい取引は未だかつてなかっただろう。

 あなたは最高の笑顔でモモにサムズアップした。

 モモも同様に笑顔でサムズアップをして答えた。


「他のやつらも呼ぼう。メアリにリンにキヨも使えばハイペースで貰えるはずだ」


「どうだろ。なぁ、どういう条件だったんだっけ? 1人に付き1本貰えるんだっけ?」


 あなたは1発ヤラせてくれれば上げると言った記憶があるので、1発ヤラせてくれればそれでOKだろうと答えた。


「1発……その1発と言うのはどういう計算なんだ?」


「男なら1発っつったら1発ってことなんだろうが、女同士で1発……?」


 言われてみれば確かに1発とはどういうことだろうか……?

 自分で言っておいてなんだが、深く考えずに言った言葉だったのでよく分からない。

 そこであなたは一連の行為を終えるまでを1発と評し、第2ラウンドが始まれば2発目が始まったと考えるべきだろうと伝えた。


「つまり、あなたがヌカロク決めれば6本貰えるのか」


「抜くもクソも挿れるもんねぇだろ……」


「たしかに……」


 まぁ、表現はともかくとして、その認識で間違いはないだろう。


「じゃあ、4人纏めてあんたのベッドに送り込んだらどうなるんだ?」


 もちろん全員分を払う。


「いや、待ってくれ。私はリバだがどちらかと言うとタチなんだが……」


 あなたはバリリバなのでどちらもイケるし大好物であると笑顔で答えた。


「よし、問題なさそうだな。そう言うわけで、アトリ。トモちんのために体売って来てくれ」


「趣味と実益を兼ねるから構わんが、そう言われるとなにやら腹が立つな」


「なんでだよ……」


「ふむ……スワップ無しでなら4人でいけるか?」


 あなたは全然問題ないと答えた。むしろ眼福であるとも。


「そうかそうか。楽しい夜になりそうだな」


「よく分からんが任せたぞ~」


「任せたぞじゃないが? おまえもやるんだよ」


「は?」


「おまえはトモと。私はこいつと。お互いに見せ合いっこしような!」


「嫌だよ! 目が腐るわ!」


「腐りそうになったら抉り出してやるから安心しろ」


「こいつ本気の眼を……!」


「性欲魔神の欲望をちゃんと全部受け止めろよ」


「キツイんだが……おまえも相手してやれよ」


「行きずった女の全てに三擦り半喰らった下手くそはお呼びではない」


「なぁ、あんたは……」


 あなたは基本女しか好きではない。別に男が嫌いと言うわけでもないが。

 いや、女に興味のある男は基本全て嫌いではあるが、2人は同性愛者だ。問題ない。

 強いて言うならトモとモモのような美少年なら考えなくもないと言ったところではあるが……。

 しかし、相手から迫ってくるなら、性転換させてから食ってしまうだろう。


「いや、そんな気軽にできるものじゃないだろ……」


 モモが呆れたように言い、あなたはそれに対して『ポケット』からとあるワンドを取り出した。

 魔法が充填されたこの魔道具は、用いると内部に充填された魔法が発動する。


「これは?」


 これは『ミラクルウィッシュ』が込められた非常に貴重なワンドだ。

 奇跡の願い、と言う言葉の通り、人間では及びもつかない領域の願いを実現してくれる。

 金が欲しいとか、若さが欲しいとか、ギャルのパンティおーくれ! と言った願いを叶えてくれる。

 そして、性転換を願うことだって可能なのだ。美少年を美少女にして食うのは特殊な歓びがあるので中々によい。


「……マジ?」


 マジである。非常に貴重な品ではあるが、100人や200人を性転換させるくらいの在庫は余裕である。

 なので、モモとトモが使いたいというなら1発お相手してくれる代わりに譲ってもいい。


「おい、モモ。こんなに損しない取引があるか?」


「俺は別に女の子になりたいわけじゃないんだが」


「普段からトモに女の子にされてるじゃないか」


「それはそう言う意味じゃねえから!」


 そうだろうとは思っていたが、やはりモモはウケらしい。


「ぐぐ、しかし俺も相手をすれば効率は更に……」


「なら、トモにも体を張らせればいいんじゃないか?」


「俺の脳が破壊されそうだからやめてくんない?」


「元々ノンケだったのに、トモとヤルのがそこまで嫌じゃなくなってる時点で手遅れだ」


「……そうかも」


「まぁ、その辺りは持ち帰ってトモと相談しろ」


「あ、ああ……性転換、か……う、うーん……」


 難しい顔をしながらモモが歩き去って行く。

 そして、アトリがあなたへと手を差し出して来た。


「それじゃあ、行こうか。素敵な夜にしようじゃないか」


 それは最高だと、あなたはアトリに微笑んだ。


 あなたは素敵な夜を過ごした。

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