17話
あなたはこの大陸に来て以来、最高の夜を味わった。
あなたの大好きなケモ耳、それを持ったあなたのことが大好きな少女2人。
好きと好きが円環を為してあなたたちを幸せにする。
やはり、ケモ耳はいい。この世で最高のもののひとつと言えるだろう。
「……でも、メアリさんって獣人じゃないですよね?」
が、サシャに言わせてみれば、メアリの耳は違うらしい。
そして、否定されたメアリはと言うと、笑って頬を掻いている。
「自分でもなんなのかはわからないんですけど……少なくとも、獣人ではないと思いますよ」
あなたはその点に関しては頷けるものがあると考えていた。
というのも、メアリは頭頂部に黒い毛の生えた猫のような耳があるのだが……。
しかし、実は髪によって見えないが、側頭部にもちゃんと人間そのものの耳があるのだ。
さらに言えば頭頂部側に生えている耳には聴力もないらしく、明らかに人間の耳を使っている仕草が多い。
そう思っていると、メアリが目をつぶって意識を集中させるような仕草をする。
すると、あなたの見ている前でみるみるうちにメアリの耳と尻尾が引っ込んでいくではないか!
突如としてケモ耳美女だったメアリがただの美女になってしまった。もちろん女と言うだけでうれしいあなただが、ケモ耳は最高なのだ。
「と、こういうこともできますので……」
「ええー……完全に人間ですね」
迎えに行った際には黒猫になっていたが、3形態に変身できると言うことなのだろうか?
「実際にはたぶん……黒猫に変身できるというのが正しいんだと思います。普段の姿は中途半端に止めてるだけで」
「どうして中途半端で止めてるんですか?」
「人間そのものの姿より身体能力が上がるし、感覚も鋭くなるんですよ。でも、完全に変身しちゃうと武器が使えなくなっちゃうので……」
それはそうだろうとあなたは頷いた。メアリは黒猫になれるようなので。
試しにやってみて欲しいと言うと、メアリは快く変身してくれた。
あなたの見ている前で、メアリがどんどん変身していく。
耳が生え、黒い毛がぞわぞわと生えていくと同時、体がどんどん縮んでいく。
そして、瞬く間にメアリは小さな猫になってしまった。
まぁ、猫としては標準くらいの大きさで、見る限り成猫だと思われたが。
「ええー……いや、こんなこと出来るんですか……完全に獣人じゃないですね……」
この大陸の獣人は、尾と耳を持った人型種族だ。
が、メアリは明らかにそう言った獣人とは種類が違う。
大陸が違うとこうも違うのかと思ったところで、ふとあなたはこれに思い当たるものがあった。
これはアルトスレアのライカンスロピーではないだろうか。
ライカンスロピーとはアルトスレアで最も恐れられている死病のひとつだ。
この致命的な病に感染した者は狂犬病のような諸症状の後に死に至る。
だが、稀に死を乗り越える者がおり、そうした者は獣化能力を獲得する。
完全変化した場合は獣そのものだが、半獣形態となるとメアリのような外見になる。
「あれ、お嬢様ってアルトスレアのこと知ってるんですね」
みょいみょいと人間の姿に戻って行くメアリ。何度見ても無茶な光景だ。
サシャもとんでもない光景に眼をこすっている。
あなたはボルボレスアスを旅したこともあると答えた。
「へぇ! 私たちはボルボレスアスから来たんですよ」
やっぱりかとあなたは得心が行ったと頷いた。
特に確かめる必要性も感じていなかったが、やはりあっていたらしい。
しかし、ボルボレスアスから来たとなると、これはライカンスロピーではないのだろうか。
「いえ、たぶんライカンスロピー……なのかなとは思います。たぶん、母子感染の。確証はないので、分からないというのが正直なトコですけど」
ライカンスロピーは発症すると理性を失ってしまい、人間としては死ぬ。
しかし、生物として生き残ることはある。そして、ライカンスロピー罹患者は同病の者を襲わない。
かなり稀ながらも生き残ったライカンスロピー罹患者の男女が子を為すと、母子感染者の子が生まれる。
そして、母子感染者はライカンスロピー患者の様相を示しつつも、理性を持った人間のままなのである。
そうした者たちが子々孫々と血脈と病を繋いできた結果、もはや一族と言えるほどの数がいると言われている。
獣人かと言うと違うのだが、人間かと言うとこれもやはり違うというなんとも言えない種族だった。
ちなみに、人類側がライカンスロピーを死病として忌み嫌っているため、基本的には人類の敵だ。
そのため、仲間にすることは叶わなかった。いや、やろうと思えばできたのだが、仲間に引き入れる前に全滅させてしまいかねないので……。
「私の両親……あるいはその祖先が何者だったかは分かりませんが、たぶん故郷自体はアルトスレアだったんでしょうね」
人間として生きることが許されないアルトスレア。
ライカンスロピーを知る者のいないボルボレスアス。
ボルボレスアスならば、人間らしく生きていける。
そうした想いから海を渡った者は少なくないのだろう。
メアリはおそらくそうした者たちの末裔なのだ。
「ただの推測ですけどね」
なるほどとあなたは頷いた。
まぁ、あなたにとって重要なのは、メアリが超絶可愛い女の子でえっちで最高で滾ることだ。
たとえライカンスロピーだろうが、未知の種族だろうが、可愛ければそれでいい。
「お嬢様のそう言う種族へのこだわりのなさは……エルグランドの人っぽいですよね」
まさにその通りとあなたはうなずいた。
エルグランドは混血の規模が規模なので、種族でどうこうという考えがない。
ライカンスロピー罹患者も平然と受け入れられるだろう。
まぁ、人を襲うライカンスロピーは討伐されるだろうが。
種族どうこうと言う考えはなくとも、人を見境なく襲う者は始末されると言うだけの話だ。
「あー……やっぱりエルグランドの人だったんですね、お嬢様って」
「メアリさんもご主人様も別大陸から……すごいですね、大冒険って感じで」
「ふふ、ボルボレスアスに来ることあったらいろいろ案内してあげる。ドルドーマって言う町では大陸で最大のモンスター闘技場があるのよ」
「モンスター闘技場……! なんかすごそうですね!」
あなたも興味があった。モンスター闘技場は実にいい。
あそこでモンスターに金を賭けて、がんばれがんばれと応援するのは手に汗握る瞬間だ。
そうして騒ぎながら飲んだり食べたりするのも実に楽しいし、勝った後に払戻金で娼館に行くのが最高に楽しい。
「さすがお嬢様、わかってますね。大穴の107倍を的中させて、娼館を借り切ったあの時は最高に楽しかったなァ……! あ、行きつけの娼館も教えますね」
「メアリさんって結構ご主人様みたいなところありますね……」
「娼館のお姉様がたに一杯いじめてもらったのはほんとうに凄かった……あ、サシャちゃんも凄くいいと思う。今度は2人で遊ばない? たくさんいじめて欲しいな~」
「え、えー……それは、う、うーん……」
「何事も経験だって! サシャちゃんの愛しのご主人様をビックリさせるためにテクとか学んでみない? 指の動かし方にも色々コツがあって……」
「そ、それはちょっと興味あるかも……」
サシャもメアリも、あなた相手ではないからか、あるいは同じケモ耳がある者同士だからか、随分と打ち解けている。
そのためかお互いに結構砕けた調子で、そんなやり取りを見ているだけで楽しい。
3人ともに一糸まとわぬ姿でベッドの上で語り合っているから、ふるんたゆん、チラリと最高に楽しい。
しかも、あなたの目の前でサシャと夜の交渉なんて、脳が破壊されそうだ。凄く混ぜて欲しい。
だが、話している内容からして、あなたは当然のごとく仲間外れだと思われる。
目の前で当たり前のようにハブにされるのは凄く悲しい。悲しい、のだが……。
しかし脳が破壊されるような苦しさとつらさ、そして言葉にできない背徳的な悦楽が沸いて来る。
こういう惨めさに打ちのめされながらも興奮している時は、自分で自分を慰めるのが恐ろしく捗る。
鉛のように重苦しい気持ちが胸を締めつけるのに、どろどろと湧き出る性欲。
寝取られは脳を破壊するが、それはそれとして意味が分からないほどに気持ちがいいのだ。
ややマゾッ気のあるメアリからテクを教え込まれた生粋のサドであるサシャは、習い覚えた技をあなたに試すだろう。
習い覚えた技は、メアリによって行われた技なのだ。あなたの可愛いサシャが、あなたの可愛いメアリによって性技を仕込まれる。
もはや意味が分からないほどに興奮する。
「寝取られは脳を粉々に破壊するけど、一説によるとあまりの興奮に脳が破壊されるという説が……」
「ええ……どういうことですか……」
「うんと……お嬢様って、いろんな女の子に粉かけまくってるでしょ」
「はい。もはや女の子と言えない年齢の方でも」
「それはチクチク言葉だからダメだよ。ちゃんと、ババアって言わないと」
「チクチク言葉って言うのは、暴言よりも上位の言葉なんですか?」
「そう言う女どもとお嬢様が寝てるって思ったら……サシャちゃんどう思う?」
「うーっと……あんまり、おもしろくは、ない、ですね……」
「そのおもしろくなさが、いつか興奮に変わる時が来る……」
「来てほしくない……!」
サシャが苦悩しているが、これに関しては本当に適性があるので仕方がない。
あなたは大体なんでもいける。絶望を贈られても興奮に変わるだけだ。
まぁ、いずれサシャも大きくなって、好き嫌いも減ることだろう。その時を楽しみに待とう。
「えっ、いや、食べ物の好みみたいなものなんですかこれ!?」
「私も昔は巨乳が好きだったんだけど、最近になって貧乳の乙な味と言うものが分かって来たから、そう言うものだよ、サシャちゃん」
「あんまり分かりたくない……!」
「トモちんだって昔はガキはいけてもジジイは無理だったって言うし、人は成長するものなんだ」
「えええええ……」
「トモちんと言えば、トモちんってマヤさんってお姉さんいるんだけど、並ぶとそっくりなんだよね」
「え、あ、はい、この会話の流れでどう反応するのが正解なんですかこれ」
あなたは確信をもって頷いた。あなたには正しい反応が分かる。
マヤとやらの乳房の大きさはいかほど? と。
「ザックリとみて80後半ってとこですかね……アトリよりちょっと大きい」
なるほどすばらしいとあなたは頷いた。トモと言う可愛らしい少年の姉なら、さぞかし美人だろう。
そっくりと言うあたり、似てもいるらしい。やはり間違いなく美人だろう。
男も女も、そうは根っこまで変わらない。性欲の対象の話となったら、そうした下世話な話に終始するものだ。
「…………」
サシャは微妙な顔であなたとメアリの会話を聞いている。
まぁ、朝のピロートークには少々下品かもしれない。酒の席ならピッタリなのだが。
そのため、あなたはちょっと話題転換して、もう少し爽やかな話をすることにした。
つまり、朝ご飯は何が食べたい? である。
「朝はあんまり食べないんですよね。何かおいしい果物とかあったら」
「朝は軽く済ませるタイプなんですね、メアリさんって」
「うん、パイナップルとかスイカを2つ3つ食べるとか、そのくらいで済ませることが多いかな」
「へぇー」
それを軽く済ませると言っていいのだろうか。
パイナップルとスイカの大きさを知るあなたは首を傾げた。
どちらもボルボレスアスでは非常にメジャーな果物だが、大変大きい。
普通に比較対象が握り拳とかではなく、頭になる程度には大きいのだ。
それを2つ3つ食べるというのは、朝からガッツリ食ってる感が凄いのだが。
「朝は水分をたくさん摂るのがいいのよ。起きたらまず水を1杯。それから果物を食べて、暖かいお茶を1杯。お通じもよくなるし、体調もよくなるし、目も覚めるし」
「へぇぇ……そう言うコンディションの整え方って参考になります」
「毎日へとへとになるまで訓練する生活を続けてると、なんとなく分かってくるんだけどね」
「そう言うものなんですか」
「そうそう。泥の中で寝るのが一番気持ちいいとかも、野戦訓練しないと分からないしね。ベッドよりも床に直寝の方がよく寝れたりするし」
「ええええ……」
あなたはたしかにそう言うことはあると頷いた。
ギリギリまで頑張らないと分からないことは多い。
体力さえ都合がつけば、意外と寝なくても死なないとかも体験してみないと分からないだろう。
体力を強制的に回復できるように魔法によるサポートか、相手の体力を奪う武器で常時敵を倒し続けるとか、そう言う無茶が必要になるが。
「なにか仕事で一緒になることがあったら、そのときいろいろ教えてあげる」
「べ、勉強させてもらいます……ど、泥の中かぁ……」
頼れる先輩冒険者のような風格を醸し出しながら、メアリはそんなことを言う。
そう言えば、メアリといっしょに冒険をする約束、未だに果たしていないなと、そんなことを思い出した。
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