19話
あなたは『エトラガーモ・タルリス・レム』のメンバーを全員食った。
トキが破れかぶれと言うか、ヤケクソ気味でベッドインしたのはちょっと残念ではあった。
もうちょっとムードを大事にしたかったというか……。
まぁ、それはそれ、これはこれ。
美味しく全員と懇ろになれたなら、それに越したことはない。
本当にこのバカンスは楽しかった。
リーゼはその張りのあるまろやかな乳房の美味しいこと美味しいこと……。
触れるだけで切なく甘えた声を出す仕草は非常に愛らしかった。
鍛えた前衛の戦士であることから、きゅうきゅうと指を締め付ける具合のよさも最高。
リゼラはその小柄だが、まるで城壁のごとく堅固に鍛え抜いた体の逞しさと言ったら。
如何なる攻撃をも受け止め、仲間を守る人間城砦も、あなたの手管の前では骨抜き。
甘く蕩けて、可愛らしくおねだりする仕草は小動物のように愛らしかった。
チーは過激極まりない服装に、男遊びも女遊びも慣れた遊び人の気配がよかった。
おたがいに分かっている者同士、そつなくお愉しみをすることが出来る。
ひたすらに快楽を求め合って満たし合うのはじつによい。
スアラは積極的にリードを取ろうとしてくるのがよかった。
この大陸に来てからと言うもの、リードを取りたがる女の子にはあまり会えていない。
その上で攻めをこなせるのは他にはアトリくらい。ただ、アトリはボルボレスアス出身。
この大陸の人間と言うくくりで言えば、スアラが初だ。
それだけに新鮮で楽しいというか、相手の求める理想の受けを演じて可愛らしく喘ぐのにも身が入るというか。
トキはこの大陸における北方人種の典型だというが、閨の中で特に美しかった。
ランプの光を受けて、滑るような光沢感のある肌の美しさはたまらなかった。
ボルボレスアスの東方人種……キヨとリンにどことなく似通った雰囲気がある。
きめ細かな肌と、象牙のようなやや黄を帯びた肌の色。
吸い付くような肌の柔さは病みつきになりそうな心地よさがあった。
カイラはもちろん最高だった。
たくさん逢瀬を交わし、たくさん愛し合っただけに存分に楽しめる。
腐った果実のように甘く毒々しい色気は気が狂うほど気持ちい。
ヤンデレは怖いが、それはそれ。楽しみ方は無限大である。
母乳を出せる体になって飲ませて来ようとするのはどうかと思うが。
まぁ、飲んで欲しいというなら飲むのがあなただ。
カイラと付き合っていく覚悟は十分にある。
本当に、このバカンスは楽しかった。
秘境の環境は、日が暮れる以外で変わることはない。
だが、記録していた日付は、外がそろそろ初秋に入ることを告げている。
あなたは備忘録を眺めながら、バカンスもそろそろ終わりだと実感した。
朝食の席で、日付の話を振ると、全員がなんとも言えない面持ちになった。
「もうちょっと長く続いて欲しかったような気持ちもあるが、さっさと終わって欲しい気持ちもあるな……」
「んね……」
しみじみとそんな調子でぼやくリゼラとチー。
やはり、いろいろと味覚的にドえぐい修行をさせられたのがつらかったのだろうか。
食べるだけ、飲むだけで強くなれると言えば夢のようではあるが。
自らに味覚があることを呪いたくなるほどの代物を食わされる辛さはいかほどか……。
「短い期間でしたが、
「うんうん、今までにない技術の持ち主だったから、ダイアがいてくれて助かったよ」
悩みとかなさそうなくらいの眩しい笑顔で言うのはダイア。
それにうんうん頷くのはリーゼ。2人の相性はかなりよかったらしい。
飽きることなく試合をしては、全力でぶつかり合っていた。
あなたも度々試合の相手をしたりしたが、2人の伸びは実によかった。
試合の観戦をしても、むちむちたゆんたゆんぽよんぽよんと最高で……。
時々ダイアがヒートアップし過ぎてリーゼの頭がカチ割られたり。
リーゼが手加減を間違えてダイアに大穴が開いたりしたが……。
まぁ、あなたがサッと塞いでおいたので問題ない。少なくとも後遺症はない。
「うへぇ……修行は最悪を超えた最悪だったけど、夜の生活が最高に充実しまくってて、最高を超えた最高だったんだよねぇ……」
「わかる……もう夜が待ち遠しくてたまらなくて……みんなで彼女の取り合いをすることになるなんて、思いもしなかったわね……」
修行はともあれ、あなたとの夜の生活を満喫しまくったチーとスアラ。
あなたも2人とは散々楽しみまくったので最高だった。
これからも時々は遊びに来て仲良くすることを約束した。楽しみである。
「まぁ、修行は実りあるものだったし、知らないものも知ることができた。よかったよ」
「そうですね~。私も新しい世界と言うか、知らないものを知れましたし~。うふふ~」
そして順当に修行の実りある成果を喜ぶトキと、それに同意するカイラ。
こちらに戻って来てからも、あなたはカイラにたくさん甘やかされていた。
最近カイラの胸が顕著にバストアップして来ていて、こう、いろいろと捗るし。
「そろそろ、撤収ですね~」
カイラのそんな〆の言葉に、あなたたちは頷いた。
楽しかったバカンスも終わりだ。1年分の鋭気は養った。
冒険の再開である。
冒険者たちの集いであるから、撤収の準備は手早い。
あなたは本気装備を用いて、バカンス用の建屋を無理やり『四次元ポケット』に捻じ込み。
他の面々は荷物類をなんとかかんとか纏めて運び。
そして、最後にカイラがあなたの手を握って別れの言葉を告げてきた。
「また、バカンスに行きましょうね。あなたのために、私もトレーニングを積みますから……次に会う時は、たくさんお乳を呑ませてあげますからね」
濁った狂気の瞳で告げられ、あなたは頷いた。
少なくともカイラが本気であなたのことを想ってやっているのはたしかだし……。
下手なこと言ってブチキレられても困るし……。
あなたはカイラが本気で授乳して来ようとすることに対し、受け身にならざるを得なかった。
「大丈夫ですよ。たくさんお乳の出る体を作って、赤ちゃんの分と、私のあなたの分……どちらもたくさん出して見せますから……」
カイラはいったい何の心配をしているのだろうか……?
あなたはとりあえず渾身の笑顔でまた次会う時を楽しみにしてるよ! と力強く返事をした。
カイラの狂気に呑まれないよう、とりあえず流したというべきか……。
あなたはどうしてこうなってしまったのかと嘆くことしか出来なかった。
とぼとぼとソーラスの自宅へと帰り着く。
なんだか賑やかな声がするなと庭の方へと回ってみると、そこではバーベキューなどをしていた。
初秋に入って、吹き抜ける風は涼しく心地よい。
その中でのバーベキューはじつに最高の娯楽と言える。
岩を組んで作った炉の上に、鉄板を置いて、そこで肉を焼いているようだ。
その肉を適当なソースや塩で食べ、酒を飲んでいるらしい。
もちろんその筆頭たるレインは特大ジョッキでグビグビとラガーを呑んでいる。
そんなレインが酒に酔った目であなたを捉えた。
「あら! おかえり! ほら、こっち来なさいよ! 座って座って! 飲んで飲んで!」
レインに手招きされ、大人しくそちらへと向かえば無理やり座らされ。
そして、すぐさま手元に用意されたのは、なみなみとラガーの注がれたジョッキ。
あなたは苦笑しながら、ジョッキを干すと、ただいまと答えた。
「おかえりなさい、ご主人様。楽しかったですか?」
あ、いかんなこれ、かなり怒ってるぞ。
あなたはサシャが割とキレ気味であること鋭く察知した。
責めるような声色や、やや動きの鈍い耳や尻尾などからほぼ間違いない。
まぁ、総計で2カ月近くも留守にしたので当然と言えばそう。
あなたは楽しかったけどサシャに会えなくて寂しかったよ、と答えた。
「ふ~ん……そうですか」
これは後でたくさん埋め合わせをしないといけないだろう。
あなたはうまくサシャの機嫌を取る方法を考え始めた。
あと、ブレウを孕ませたことをどう報告しようかも悩んだ。
少なくとも、今のタイミングで報告することだけはありえない。
今のサシャは怒る準備をしている状態だ。
その怒る準備を忘れ、機嫌がいい時に伝えなくては……。
こういう報告は受け身ではダメだ。攻めの姿勢でいかなくてはいけない。
「お姉様、バカンスはどうでした?」
次いで、フィリアにそんなことを問われた。
あなたは楽しかったけど、ちょっと困ったことも多かったと苦笑気味に答えた。
具体的に言うとカイラとか、カイラとか、あとカイラとかだ。
なんで突然あなたのことが好きでたまらないヤンデレ少女が、あなたに母乳を飲ませたくてたまらない授乳魔人になるのか。
意味が分からな過ぎて首を傾げざるを得ない。
加えて未来のあなたの娘だというカル=ロスのことも頭が痛い。
いつか出会えるのだとは思うが、それがいつになるやら。
下手をすると、今ごろエルグランドではあなたの最愛のペットがカル=ロスを拾っているのかも……。
そう言えば、カル=ロスのファミリーネームのケヒはなんだろうか?
あなたはファミリーネームを持っていないので、あなたのものではない。
あなたの父も母も持っていないので、あなたもファミリーネームは持っていないのだ。
もしや、トイネでもらうことになっている領地の名前がケヒとかだったりするのだろうか?
「なんだか大変だったんですね……こちらは順当に訓練と仕事の日々でしたよ。次の冒険のための準備は万端です!」
それは実にいいことだ。
あなたは後々詳しく聞きたいと答えつつ、続々酒を注いでくるレインの猛攻を受け流す。
「それで、次の攻略はいつ行くんだ。返答次第で私はまた別の小迷宮に出向くことにするぞ」
そんなレウナの疑問に、あなたは行けるのならば今すぐにでも、と答えた。
さすがにこの後すぐにとはいかないが、明日には行きたいくらいだ。
「ふむ。ならば、待つとするか」
言いながら、鉄板の上に続々と肉を並べていくレウナ。
見たところ牛肉のようだが、赤身肉主体のそれは野牛のそれかもしれない。
野趣溢れる味わいで噛み応えもあってじつに美味だ。酒が進む。
そんな中、あなたはサシャの意識を反らすため、ある報告をした。
つまり、ギールを見つけたぞ、と。
「……えっ? お父さん見つかったんですか!?」
思わず、と言った調子で立ち上がるサシャ。
あなたは頷くと、ハワフリアエ宮殿の建築に携わっていたようだと答えた。
そして同時に、危うく消されるところだったので間一髪だったとも。
「け、消されるところ、だった……? どういうことですか……?」
どうやらギールは宮殿の機密区画の建築に携わっていたらしい。
実際のところ不明だが、状況証拠からしてそうだろう。
そして、宮殿側からすると、その機密区画の情報は漏れて欲しくない。
そのため流れの大工だったギールを使い、不要となれば消される予定だったようだと。
「隠し通路や、秘密の脱出口の建築を担当した大工は囲われるか消されるかとは聞くわね……本当にあることなのね」
レインがあなたの話の真実味を補強するように、そんなことを零した。
そんな言葉に、サシャは顔色を蒼白にしていた。
「そんな……危うく殺されるところだったなんて……」
もちろんギールは助けて来たので安心して欲しい。
ただ、ちょっと想定外の事態があったというか、連絡ミスがあったというか……。
ギールを助けた後、馬車を置きに行っている間に出奔されてしまった。
たぶん、スルラの町に向かったのだと思われるが。
「お父さん……」
思わずと言った調子で頭を抱えるサシャ。
なかなかミラクルな行き違いで40日もの無駄足を踏んでいたら、嘆きたくもなるだろう。
まぁ、出奔したギールを捜索するよう冒険者に依頼をばら撒いたし。
そうでなくとも40日もあれば、往復して戻ってくることは可能だろう。
きっと、今ごろは王都の屋敷に帰り付いているに違いない。
「だといいんですけど……はぁ、お父さん、そんな早とちりするなんて……」
「まぁまぁ、見つかってよかったじゃない。母娘揃って、そこの女たらしに手籠めにされてて発狂物だと思うけど」
「あは……あはは……そ、それは、まぁ……私は娘なので……はい……」
「サシャちゃんはともかく、ブレウさんのこと、どう説明するつもりなんですか、お姉様……」
あなたは帰って来なかったギールが悪いよね! と断言した。
そして同時に、返そうとしなかったマフルージャ王国も悪い。
マフルージャ王国の王家、ザルクセン家が悪いに違いない。
「王家批判とかやめなさいよ。聞かれたらコトよ」
その時は悲しいことだが、マフルージャ王国の王家は斃れることになる。
「だからやめなさいって言ってるんじゃないのよ。この国が好きとかじゃなく、争乱とか起きないで欲しいのよ」
まぁ、努力はしようではないか。
あなたはレインの求めにそう頷いた。
とりあえず、明日あたりに1度王都屋敷に戻る。
そして、ギールが帰ってきているか確認し、ギールの身の回りの世話をしてやろう。
それが終わったら再度戻ってくるので、それから冒険の再開だ。
まぁ、1日もかかるまい。午前中で終わるだろう。
あなたはサシャにいっしょに行くか? と尋ねた。
「はい。お父さんが元気にしてたか、気になりますし……変わってないと、いいんですけど」
性別が変わっているのは間違いないが、それ以外は分かりかねる。
あなたは5年前のギールのことは知らないのである。
まぁ、明日には感動の再開なのだ。その時を待ちたいものである。
とりあえず、今は明日起こるであろう騒動について、鋭気を養いたい。
ひとまず、酒をもう1杯。肉もたっぷり食べておきたい。
あなたは暴食に勤しんで鋭気を養うことにした。
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