44話
突然出来た約1か月の余暇。
存分に愉しみ切ってやらねば、無作法と言うもの……。
なにに対しての無作法かと言えば、世の女性全てに対してだ。
1か月の余暇をフルに楽しみつつ、冒険者学園への入学準備もする必要があるだろう。
持っていくべきものを色々と考える必要がある。とりあえず『ナイン』は必須だろう。
入学にあたって、冒険者学園の制服の指定もあった……着用は努力義務なのでべつに必須ではないようだが。
あなたはもちろん買う、と言うよりは仕立てさせるつもりだ。家にお針子がいるのだから活用しなくては。
学園指定の剣だの杖と言ったものもあるが、これらもやはり用意は努力義務だ。
まぁ、冒険者になろうという者の経済状況などまちまちだ。なにがなんでも買えと指定しては、入学出来るものが激減してしまう。
この大陸は、どうも冒険者はたくさんいればいるほどにいい、とでも考えているような節がある。なぜかは知らないが。
あなたは学園指定の剣と杖の1本くらいはとりあえず用意しておくかと考えた。
こちらに関しては学園で購入できるとの話なので、用意は入学後になるだろう。
とりあえずは娼館巡り。娼館で存分に愉しんだら、メアリのところに顔を出してたくさん可愛がってあげなくてはいけない。
もちろんリンとキヨとも遊びたいし、アトリにたくさん可愛がってもらいたい気持ちも山々だ。
欲を言うなら、モモとトモも女の子にしてから食べてしまいたいくらい可愛い。
それに、そろそろ名声を得て、この大陸でも名士として知られるようになっておきたい。
名士となれば慈善事業を始めやすい。あなたはエルグランドでは慈善事業を積極的に行う名士として知られていた。
各町に孤児院を設立し、未亡人のための互助組織と仕事の斡旋、軽視されがちな女性教育のために女学校の設立などなど。
孤児院の子供たちはあなたにとって可愛い養い子たちだし、未亡人たちの嘆きは聞いていて心が痛む。助けてあげたい。
そして、何事も学ぶことから始まると信じるあなたは、教育の重要性をよく知っている。
貧富の差が教育の差であってはならないとあなたは考えている。
あなたの経営している孤児院に少女しか居なかったり。
未亡人が再婚を1ミリも考えていなかったり。
学校であなたが麗しの君と呼ばれていたり。
そう言った些末な特殊事項もあるが……まぁ、些細なことだろう。
あなたは1か月の余暇をフル活用するために行動を開始した。
あなたは王都の娼館を完全制覇した。
それのみならず、私娼ですらも全員食った。
むしろ暇を持て余している中流層の夫人なども食った。
夫に先立たれた未亡人などもだ。孫もいる女性を可愛がるのは特に楽しい。
その間に、メアリはたっぷりと可愛がったし、キヨもねっとりじっくりと可愛がった。
リンの凄技に腰砕けにされたり、アトリに甘ったるいほどに可愛がられたり。
もちろんソーラスにも出向き、カイラともたくさん遊んだ。セリナには稽古をつけてもらったし、マロンちゃんとも試合をした。
それ以外にもいろいろな出来事があったが、それを詳しく記すにはあなたの備忘録の余白は小さすぎた。
ともあれ、1か月が経ち、あなたたちは4人揃って王都を離れ、サーン・ランドを訪れた。
「わぁ……あれが、海!」
サシャは海を見るのが初めてだったらしい。遠目に見える海にはしゃいでいる姿は可愛らしい。
あなたも遠景から見る海の美しさに思わず胸を打たれたような気持ちになる。
キラキラと輝いて見える青い大海原。エルグランドの海とは大違いだ。
「うーんっ。温かくて気持ちいいわね。マフルージャ王国最南端の町だけはあるわ」
「ですね。冬場には最高ですね。夏は大変ですけど」
夏。夏は最高だ。女性たちが薄着になる。素晴らしい。最高。
ただ、若干の不安はある。この大陸は明らかにエルグランドよりも温暖だ。
それはそのまま、夏場はエルグランドよりも遥かに高温だろうと言う予想がつく。
夏場でも気温20度程度が精々で、稀に気温30度があるかどうかと言うエルグランドに慣れ親しんだ体は保ってくれるだろうか?
エルグランドよりも温暖なボルボレスアスを旅していた頃と同じ苦労が予想される。
まぁ、温度耐性の装備はあるから、それをつけていれば問題はないのだが……やはり、ファッションは楽しみたいものだ。
「空気も全然違うわね。これが海の香りってやつかしら」
「ですねー。この爽やかな香り。海に来たって感じです。ね、お姉様」
などとフィリアに同意を求められたが、あなたは香りまでも違うから凄く新鮮な気分だと答えた。
「香りも違うんですか?」
エルグランドの海からは苔類が放つ臭いと、魚類が腐敗した匂いが混ざって漂っていると答えた。
まぁ、そう言うものだと思えば特段悪臭だとも思わないのだが、少なくともこんなに爽やかな香りではない。
「聞く限り、物凄く嫌な空気に満ちてるわね、その海辺」
「苔の匂いと魚の腐った臭い……」
慣れればむしろ、そうそう……海とはこのような香り……と胸いっぱいに吸い込みたくなるのだが。
あのなんとも言い難い潮臭さと言うか。これぞ海の香り、大海原の息吹よ、などと謳いたくなる。
「悪臭……ってわけじゃないのね」
少なくともあなたはそうは思っていなかった。不快な臭いと言うわけではないのだ。
魚の腐敗臭と言ってもかなり希釈されていて、鼻を突く悪臭と言う感じではない。
むしろ、これは魚の腐敗臭だ、と言われない限りは、不思議な匂いだ、としか思わないだろう。
「ふーん……いつか見てみたいわね」
「たしかに。まぁ、エルグランドの海を見に行く時は、水着は要らなさそうですね」
などと笑うフィリア。たしかに必要ないだろう。
エルグランドの海に必要なものは防具と武器だ。
「さぁ、さっそく入学手続きに行きましょうか」
「ええ。皆さん、願書はちゃんと持ちましたか?」
冒険者ギルドでご丁寧に書き方講座までやっていたので、入学にあたっての願書の準備は完璧だ。
真面目に書いた結果「何で冒険者学園に入ろうとしてるの?」と言われる内容になってしまったが。
まさか、冒険者学園で共に青春を謳歌しようぜ! をするためとは言えないので、初心を学び直すためとかの言い訳を用意することになった。
冒険者学園はサーン・ランドの郊外に位置している。
運動場なども必須であるし、模擬ダンジョンなる設備も用意しているらしい。
そのため、広大な学び舎が必要なために郊外になるのは自明の理と言えるだろう。
一見してみると城と言った雰囲気の冒険者学園は、設立に多大な資金がかかっていることが予想される。
サーン・ランドの地形が天然の良港であることを思うと、防衛設備としての側面もあるのだろう。
港に付随した町の郊外であるから、それら港から遠い位置にあり、船からの砲撃も届かないのだ。
あなたたちは冒険者学園の受付でさっそく願書を提出すると、それらは問題なく受理された。そして、入校を歓迎された。
冒険者学園は素人を冒険者にするための施設であるから、よっぽどのもの以外は入校が許可される。
実質的に、願書をちゃんと用意してくるかどうかが足切りラインなので、願書さえ問題なければ入学できるらしい。
あなたたちはそのまま寮の部屋を割り振られた。寮の部屋は自由に交換などをしてもいいらしい。
また、本来は4人部屋だが、入学者がそう多くないので1人1部屋使ってもよいらしい。
冒険者になろうとする者がよっぽど少ないのだろうか? だからこそ国も過保護になっているのだろうか?
そう思いつつも寮へと向かい、さっそく割り振られた部屋へと向かってみる。
簡素な鍵付きのドアを受付で渡された鍵で開いてみると、広々とした部屋があなたを出迎えた。
広さは4人部屋と言う触れ込み通り、たしかに4人で使っても不自由を感じないだろうものがある。
1人で使えるのならば、これはよっぽどの大部屋もちでもない限りは苦労することはないだろう。むしろ広過ぎて嫌になる者も居そうだ。
そして、寮の外観と部屋の内部を見たことで、あなたはここが準軍事施設であることを確信した。
寮として建立されているが、有事の際は兵舎として用いることを想定しているのだろう。
それもおそらくここは下士官用のそれ。なので4人部屋は本当に4人部屋として使うのだろう。
案内図にあった、無暗にでかい大講堂や講義室などは雑兵用の雑魚寝空間なのだと思われる。
ともあれ、広々とした部屋なのは都合がいい。勝手に改装させてもらうことにしよう。
毛足の長い柔らかな絨毯は最低限用意する必要があるだろう。壁には何を飾ろうか?
あなたは色々考えつつも荷解きをし――まぁ、普段からほぼ『ポケット』に入れっぱなしなのだが――ロビーへと向かう。
ロビーは談話室となっており、在校生らが次の年次を迎えるまでの束の間の休暇を楽しんでいるようだ。
サシャを筆頭にしたメンバーたちは荷解きにまだ時間がかかっているようで、姿が見えない。
ここはひとつ、先輩方と、これからの同輩と仲良くなるために、あいさつをして世間話になど興じるべきだろう。
あなたはそう考えて、ソファでくつろいでいる少女たちへと声をかけた。
1時間後、あなたは夢見心地と言った様子でベッドに身を横たえている少女の頬を撫でていた。
イケそうだったからついつい部屋に連れ込んでしまった。
しかし、冒険者になるべく訓練に励んでいる瑞々しい少女の肢体と言ったらもう……。
1か月王都で楽しみに愉しみ抜いた後でも、新しい女性との出会いは最高である。
新しい町に来たからには、この町の女性のすべてと面識を持つところから始めなくてはならない。
なんたって、少なくとも1年はいるのだ。時間はたっぷりとある。存分に愉しまなくては。
とりあえずは、女子寮にいる生徒を全員食べるところから始めたいと思う。
学園と言う空間にいるからには、女教師と教え子との禁断のラブロマンスも楽しみたいところだ。
そのあとに、週に1回あるという休みの日には娼館で楽しまなくてはいけないだろう。
あなたは心躍るこれからの計画を練りながら、部屋に連れ込んだ少女と事後のピロートークを楽しんだ。
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