9話

 あなたは丁寧に丹念にイミテルを抱いた。

 泥酔してようが、記憶が飛んでいようが関係ない。

 あなたは肉体の奥底にまで焼き付けるようにイミテルを可愛がった。


 執拗に可愛がり続け、泣いても謝っても許さなかった。

 泥酔して記憶が消えても構わないよう、肉体に刻み付けるのだ。

 脳に入らないというなら、脊髄に叩き込めばいいだけの話である。


 本番エッチだったので、あなたも気持ちよくて大満足だ。

 泥酔いちゃらぶ本番エッチの疲れで眠っているイミテルの体の熱さもたまらない。

 この依頼が終わるまでにダイアも頂きたいところだが、イミテルともうちょっと遊ぶのもよさそうだ……。




 起き出していくと、エルフ戦士団はほとんどが起きて朝の訓練に勤しんでいた。

 もしかしたら、この町の人間はあなたたちを騙すべく饗応をしていたのでは? とも思ったのだが。

 エルフ戦士団が全員無事なので、杞憂に過ぎなかったようだ。


「おお、師よ。おはようございまする」


「ささっ、今朝も我らに教えをお授けくださいませ」


「準備は万端整っておりまする」


 もちろんである。

 あなたは昨夜と同じくエルフ戦士団を嬲り殺しにした。

 昨夜、饗応の支度をしている間にもやったので、町の人間も戸惑いこそすれ止めには来なかった。


 そんな調子でドタバタやっていると、ダイアとイミテルも起き出して来た。

 もちろんダイアも丁寧に嬲り殺しにした。

 イミテルも2日酔いを魔法で治療してから嬲り殺しにした。


「くそっ、本当にこの訓練効果あるのだろうな……」


「きっとあります。だって、決死の戦いをしているのですから」


「そうだといいのですが……おい、本当に効果あるのだろうな?」


 問われたあなたは、効果には個人差があります、と答えた。


「おい!!」


 肩を掴まれて揺さぶられたが、この辺りは本当に個人差があるのでしょうがない。

 やはり、天性の才能とか、生まれ持ったセンスで成果には違いが出るものだ。

 実際、ダイアは如実に成果が出ているのを感じるが、イミテルは今ひとつと言うところだ。


「くそっ、そう言われると当たり前の話ではあるか……」


 でもいまいち納得がいかないという顔をするイミテル。

 まあ、絶対に効果がある訓練など世の中にはないわけで。

 そのあたりを踏まえて訓練するのが世の常だろう。諦めて欲しい。


「戦士団の各々がたは納得されているのか?」


 諦めきれずにイミテルが戦士団に尋ねる。

 すると、戦士団の面々が頷いた。


「ははっ。我が師のお付けくださる稽古の効果、我らはしかと実感しておりまする」


「我らを圧倒する戦士など、早々おらぬもの。そのような経験だけでも我らには得難きことでございます」


「なにより師の加減はまことに見事なもの。必死の奮闘で以てようやく抗えるほど……これほどの稽古、早々なきものかと」


 なぜか戦士団の対応が丁寧だ。イミテルが首を傾げる。

 あなたもいまいち意図が読めずに首を傾げる。

 そこで、クルゴンが一歩前に出ると、あなたに耳打ちをした。


「師よ、師よ。イミテル殿とは夫婦の儀を約せし間柄なのでございましょう」


 当事者のはずなのに寝耳に水である。

 いつどこでそんな話が出たのだろう?

 と思ったが、昨晩いちゃらぶエッチを堂々としていた。


 イミテルはあなたのことを夫のように愛おしく呼んでいたし。

 あなたもイミテルを妻のように愛おしく可愛がって呼んだ。

 あれだけ激しく愛し合えば、それこそ宿中に聞こえたことだろう。

 そう言うことであれば、あなたとイミテルが結婚の約束をしているという理解は、まぁ、分からなくもない。


 しかし、トイネでは女同士でも結婚が出来るのだろうか?

 マフルージャ王国では当然のようにできなかったのだが。


「できませぬ。なれど、師のお持ちになられるワンドなれば、師がおのこに変ずることも叶いましょう?」


 なるほど、そう言う考え方をしたと。

 言われてみると、それほど変な思考の帰結ではない。

 

「して、いかがなのでございましょう。イミテル殿とは……」


 あなたは笑顔で、イミテルとはたくさんエッチする仲だよと答えた。

 結婚はこの戦いが終わってからじゃないと分からないな、と濁しておいた。


「なるほど……この戦いが終わった暁には夫婦の儀を執り行うと……その際にはぜひとも末席をけがすことをお許しください」


 そう言う捉え方をしたらしい。

 あなたは笑って頷いておいた。

 クルゴンも嬉しそうに笑っていた。

 何も知らないイミテルは首を傾げ続けていた。




 宿場町を出立し、あなたたちは次の町を目指す。

 セレグロス辺境伯家の本領まではそれなりに距離がある。

 この国、トイネはこの大陸において最も広大な国土を持つ国だというのでしかたない。


 まぁ、その国土の多くが耕作に向かない乾燥した草原地帯だが。

 そして、国土の過半を占める中央部の砂漠地帯は耕作どころか居住、横断すら困難だ。

 国土こそ広大だが、生産性とか人口と言うような国力はかなり低いようだ。


 そのためか、あちらこちらに交易や移動の結節点として宿場町あるらしい。

 よほど無茶な旅程を組まない限り、かならず宿場町に泊まれるというのだからよほどの数だ。

 あなたたちはその宿場町の大半で反乱軍を征伐しては進行していった。


 王都からの追跡も幾度かあなたたちを襲撃したのだが。

 最精鋭の名は伊達ではないのか、戦士団が楽々撃破していた。

 離脱されそうになったらあなたが追いかけて始末した。


 旅の最中には全員をボコボコにして鍛えあげ。

 宿場町に泊まればイミテルを散々に可愛がった。

 そうした13日の旅を経て、あなたたちはセレグロス辺境伯領に到着した。


「ついに来たか……兵を用立ててくれるといいのだが……」


 まぁ、用立ててくれなかった場合、セレグロス辺境伯も敵だ。

 あなたたちに味方しない以上、クローナ王子とやらに与すると判断する。

 なので領地を焼き討って、金目のものを全て奪い取って傭兵団を雇う資金に充てよう。


「あまりにも外道だが、なりふり構ってはいられんか……」


 イミテルが溜息を吐く。


「きっと大丈夫です、イミテル。私たちには心強い味方である彼女がいるのです」


「姫様。しかし、セレグロス辺境伯がお味方いただけるかは彼女がいてもそうは変わらないかと……」


「? いえ、彼女であれば、とても強力な魔法が使えますし、城門も破れます。焼き討ちをして資金を集めるのも、宝物庫を破るのも自由自在でしょう」


「姫様、お会いしたことは数えるほどとは言え、セレグロス辺境伯はあなた様のお祖父上でございますよ……」


「ですが、私に仇成すならば、敵でしかありません」


「それは、そうではあるのですが……」


 まあ、味方してもらえるように全力を尽くせばいいのだ。

 手始めに、セレグロス辺境伯の寄子の貴族領を吹き飛ばすというのはどうだろう?

 『メテオスウォーム』を使えば一発で滅ぼすことが可能だ。

 次はおまえんところの領地だぞ、と脅せば大人しくなるだろう。


「交渉の仕方が蛮族そのものなのだよな……平和的な交渉の段階で頷いてくれ、辺境伯様……」


 祈るような仕草をしているイミテルの姿が印象的だった。

 まぁ、平和的に頷いてくれたらありがたいのはたしかだ。

 わざわざ吹き飛ばすのにちょうどいい貴族領を探すのも面倒だし。

 なにより、吹き飛ばしたらそこの娘が食べれなくなってしまうし。





「おお、よくぞ御出おいでくださいましたダイア姫様!」


 辺境伯の居城を訪ねたところ、城門を守る衛兵はすぐさま連絡に走った。

 そして、そう間を置かずにエルフの男が慌てたように走って出迎えに来た。

 身なりのよさからすると貴族のようだが……エルフは見た目では年齢が分からないので、どの程度の立ち位置なのかが分かりかねる。


「このダグサリオン、姫様の来訪を一日千秋いちじつせんしゅうの思いでお待ちしておりました……どうぞなんなりとご命令を」


 エルフの男は走り込んだ勢いそのままダイアの足元に跪いた。

 イミテルが唖然とした顔で見ているが、このエルフの男は何者なのだろう。


「ダグサリオンお爺様。私は長兄クローナを討ち、この国の王として立たねばなりません。助力を願えますか?」


「ははっ! このダグサリオン、あなた様のしんとしてすべてを捧げる所存でございます!」


 お爺様。ダイアの母はセレグロス辺境伯の娘。

 するとこのエルフ、セレグロス辺境伯その人と言うことになる。


わたくしめは、このような日を心待ちにしておりました……最も強き者が王位に就くことこそ、我ら臣の望みでございますれば。そして、そのような王が私めを頼られることを心底より望んでいたのです」


「では、ダグサリオンお爺様。全軍を持って王都へと進軍いたしましょう。私が王として立った暁には、お爺様を頼りにさせていただきます」


「ははっ! 陛下の御親征に相応しき軍を用意しておりまする!」


「準備がよいのですね」


「玉座とは魔術などと言うまやかし風情を扱うクローナの末成うらなり野郎ごときめが触れてよいものではございませぬ。私は最も力強きダイア姫こそが玉座に触れるに相応しき玉体の持ち主であると信じておりましたゆえ」


 あなたはこのエルフはなにを言っているのだと首を傾げた。

 魔術……この国のエルフはどうも、魔法を魔術と呼び称するようだが。

 それがまやかしとはどういうことなのか。明らかに魔法は存在するのに。


「年嵩のエルフは迷信深いのだ……魔法を信じず、その使い手を侮蔑するようなものも多くてな……」


 訝っていると、それを見て取ったのかイミテルが教えてくれた。

 迷信深いというのは、まぁ、分かった。そう言う人間も一定数いる。

 魔法が一体どういう仕組みなのか分からないので怖いとか、そう言う人間が。


 しかし、そうした人間が多数いる国で、魔法使いになった人間は肩身が狭そうだ。

 そう言えばクローナ王子は魔法使いだと言うが……もしや、クローナ王子が廃嫡されている理由は。


「いや、さすがにそれはない。宮廷魔術師もいることだしな。あまり評判がよくないだけだ」


 では一体なぜ廃嫡されたのだろう?


「……表向きには無能故とされている」


 では裏向きには?

 声を潜めて尋ねると、イミテルが周囲を見渡した後、耳打ちをしてくる。


「……我らエルフの寿命が長い事は当然知っているな? クラウ2世陛下は現在244歳で、クローナ王子は132歳だ」


 132歳。すると133歳のイミテルとそう変わらない歳だ。

 かなり若いと言っていいだろう。現王もそう年嵩ではない。

 人間で言えば、16歳の息子と、30歳の父親と言ったところだろうか?


「エルフは500年が寿命とは言うが、実際のところ800や900まで生きた者もいる……分かるか?」


 生憎わからない。あなたは首を振った。


「そうか。クローナ王子が寿命で死ぬとき、クラウ2世陛下が未だ健康なまま王位に就いている可能性は十分あるのだ」


 なんとなく読めた。

 クローナ王子の廃嫡の理由は、大逆罪だろうか?


「そうだ。北方のある国と内通し、クラウ2世陛下の暗殺を謀った……判明したのはつい昨月だがな。醜聞ゆえ詳細をおおやけとしての死刑とはされなかったが、すぐさま廃太子とされた」


 そう言えば、トイネの王の体調が思わしくないと以前に聞いたような気がする。

 あれはたしか、4層を攻略中のこと、ハワフリアエ宮殿の城壁をぶち壊した頃だろうか。


「毒殺されかけていたので、体調が思わしくなかったのはたしかだ。既に治療で回復されているはずだが……」


 今どうなっているのかは不明と。

 まぁ、状況から考えて、既に殺されていると考えるべきか。

 なんと言うかまぁ、気の萎えるような暗闘である……。


 まだダイアのような分かりやすい暴力を振るう方がサッパリしていていい。

 いや、姫君が溢れる激情のパワーを馬鹿力で叩きつけて来るのもどうかと思うが。


「貴族社会ははじめてか? まぁ、力を抜け。この程度は手慣らしみたいなものだぞ」


 イミテルに物凄くげんなりするようなことを言われた。

 あなたは間違っても権力闘争とかは好きではないのだ。

 あんまりめんどくさいことが続くようならトイネを更地にするぞと力なく脅した。


「ははは、できるものならやって……待て、もしや本当にできるのか? いや、言わなくていい。言うな……知りたくない……」


 イミテルもげんなりした。これでお相子だろうか。

 おたがいに損したような気分になって、あなたたちは肩を落とした。




 ダイアと辺境伯の間で軍についての話し合いが済んだ。

 そして、あなたたちはダイアの供回りとして遇された。

 つまり、ダイアの近衛兵である。物凄い抜擢と言えるだろう。

 譜代の臣下でもあるイミテルや、名高いらしい戦士団のエルフたちは分かる。

 異国人でヒューマンに見えるあなたまでもそのように遇されるとは思わなかった。


 軍の準備が整い次第、ダイアが総大将となって軍を率いての出立となる。

 いくら軍の準備は整えていても、大身であるほど即座に出発できるようなものではない。

 準備が整うまでの間は、セレグロス辺境伯の居城にて歓待されている状況だ。


「まぁ、貴様が絶望的な状況においてロクな報酬も無しに姫様の求めに応じたのはたしかだからな……貴様の志の高さに辺境伯も感服していたぞ」


 実際はとんでもない報酬をもらっているのだが……。

 まぁ、今さら帰れと言われなかったからよしとしよう。

 ここまで頑張って来たのに一方的な依頼破棄は酷いだろう。


「そうだな。貴様の実力のほどもよく分かっている。姫様の御親征……厳密には未だ戴冠せぬうちは親征とは言わぬのか? まぁ、いい。それにあたって、貴様の力も頼りにしているぞ」


 もちろんとあなたは頷いた。

 そして、あなたはイミテルに尋ねた。

 なんで自分の部屋にわざわざ来たのかと。

 特段、訪ねてまで話すようなことではないだろう。


「ふん。性欲に卑しい貴様のことだ。どうせ、今晩も私を辱めるのだろうが。今さら逃げも隠れもせん。姫様に手は出させんぞ!」


 なんで自分から突撃して来ているのだろう?

 今晩はメイドに手を出そうと思っていたのだが……。

 1人くらいなら食べてもそう怒られないと踏んでの行動だ。


「メイドたちにも卑しい目線を向けていたことくらい、私が気付かぬと思うてか?」


 バレていたらしい。

 あなたは思わず苦笑し、頭を掻いた。


「貴様は私と共に居ればいいのだ。姫様にもメイドにも手は出させん。私1人の犠牲で済むならそれがいいのだからな」


 まぁ、イミテルが相手をしてくれるならいいだろう。

 あなたはイミテルをベッドに押し倒すと、甘い口づけをした。


「ん……さぁ、今晩も貴様の求め通り、いちゃらぶ本番エッチをしてやろう」


 イミテルは先日のあなたのいちゃらぶ本番エッチ希望を、永続的なものだと勘違いしているらしい。

 まぁ、嫌がられたり、キレられたりするよりはずっといいので、あなたには都合がいい。


「さぁ、早く抱け……貴様に抱かれるのを、朝から心待ちにしていたのだぞ……」


 頬を染めてあなたへと手を伸ばして求めて来るイミテル。

 日を重ねるごとにイミテルのいちゃらぶ本番エッチの演技はこなれて来る。

 もうここ数日は、本気でイミテルがあなたを愛しているかのようだ。

 毎日あなたへのラブラブ度が上がって楽しめるのが実によかった。


「私のこの鼓動が、貴様を想う心……貴様こそが、私の鼓動だ……」


 あなたはもう1度深いキスをして、イミテルと愛し合った。

 この城全域に響き渡るほど激しく乱れさせてやろう。

 この女はあなたのものだと、そうあかしを立てるかのように。

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