第71話

「さて、話を戻すわよ。移動はどうする?」


 街道の状態が悪くないなら馬車の方がいいだろう。

 べつにあなたたち4人なら馬車で移動する意味はないのだが。

 後々、使用人やポーリンを含めて移動することを考えると、馬車で移動して難所などを知っておくのは賢い選択と言える。

 もちろん、王都にのみ居を構える場合は必要のない予行演習になるだろうが、やっておいて損はあるまい。


「ああ、だから屋敷の話を今したのね?」


 あなたは頷いた。レインが何も考えてなさそうだから、ポーリンを管理人として雇う。

 その辺りは以前から構想にあったが、ここで口にしたのは移動手段の話が出たからだ。


「なら、馬車での移動にしましょうか」


「そうしますと、まず馬車の手配と、それを曳く馬の手配ですね。御者は……」


 御者はあなたができる。わざわざ雇って、無償護衛なんてしたくない。

 購入の辺りは貴族であるレインの方がツテを持っているだろう。

 そのため、資金は用意するので、その辺りの手配はレインに任せたいとあなたは提案した。


「そうね、その方がいいと思う。とりあえず話を取りまとめるから、支払いだけあなたがしてちょうだい……でいいのよね?」


 あなたは頷いた。


「馬車が使えるなら、道中の食料と水に関してはかなり楽ができるわね」


 まぁ、馬車がなくてもあなたがいれば食料など考慮の必要もないが。

 一般的には正しい感覚なので、あなたはとりあえず頷いておいた。


「ルートの策定は……」


 その辺りに関してはあなたは力になれない。

 この辺りの風土も地理もさっぱりである。

 それに関してはスルラから出たことが無いというサシャも同じだろう。


「そうよね。だからフィリアがいて欲しいんだけど……」


 などと話していると、実にタイミングのいいことにフィリアが姿を現した。

 濡髪もそのままに、大急ぎで支度をしました、と言った雰囲気の出で立ちだ。


「お、お待たせしました、お姉様、皆さん」


「ちょうどいいところに来たわね。ソーラスまでの移動経路の策定をしようと思うのだけど」


「ソーラスまでの道のりですか? 移動手段は何に?」


「馬車を使う予定よ」


「なるほど。ええと、地図は……」


「こっちに」


「ありがとうございます」


 ルートの策定はレインとフィリアに任せよう。

 そこであなたはサシャに声をかけ、ブレウはどうしようか、と尋ねた。


「え? えと、お母さんのことですよね?」


 サシャの母、ブレウ。スルラの町に居を構える針子だ。

 サシャの父は出稼ぎに出ているというが、サシャの母はスルラの町にいる。

 そこでだが、ブレウのことも屋敷で雇い入れても構わないとあなたは提案した。


「お母さんを、ご主人様のお屋敷で……」


 それはつまり、冒険の旅から帰れば、サシャは母の下に帰れる。

 ついでに言えば、母親と同じ屋根の下でサシャに無体をできる。

 ブレウも落とす気満々のあなたは母娘丼も食べる気満々である。


 サシャの心も満たせるし、あなたの心も満たせる。

 ブレウは娘の安否を確認できるし、安定した高収入が得られる。

 だれも損をしない最高の提案と言えるだろう。


「ほ、本当にいいんですか?」


 当たり前である。こういう特権は積極的に使うべきなのだ。

 サシャはとてもお利口さんで、わがままを言わない素直な子だ。

 それは奴隷、ペットとしては賢い行動と言えるのだろうが、あなたにしてみれば少し不満だ。


 あなたはペットを家族に近しいものと見なしているし、それだけ愛情と心を裂いている。

 そのため、わがままを言ってくれた方がうれしいし、それを叶えてあげたいとも思う。

 サシャがわがままを口にしないなら、サシャの希望を汲んで自ら叶えてあげるのが主人の嗜みである。


 この辺りの奴隷の使い方は、あなたは父に似ている。あなたの父も似たようにペットと接していた。

 そうでなければあなたは生まれていないし、もちろんあなたの妹たちも生まれていないだろう。


「お父さんのことは、近所の人に伝言を頼めばいいし……その、ご主人様が、そうしてくださるなら、ぜひ」


 あなたは頷いた。屋敷を購入した暁には、ブレウのことを迎えに行こう。

 着々と冒険の本拠を構えるという名目であなたのハーレムが構築されていく。

 冒険の本拠として使うのも本当なので、理論武装は完璧である。


「えっと、でも、お父さんが帰ってきたら、どうしましょう」


 あなたは使用人として雇われる意思があるならもちろん雇うと応えた。

 もちろん使用人として雇われたくないとサシャの父は言うかもしれないが、その場合でもべつに怒りはしない。

 ブレウとサシャがそうしたいのなら、屋敷の近辺に居を構え、夜には家族でそちらで過ごしても構わないと。


「お父さんまで……ありがとうございます、ご主人様」


 そう言って頭を下げて笑うサシャの姿は本当に可愛らしい。

 あなたはサシャの頭を撫で、かわいいね、と褒め称えた。


 サシャの夫を雇うことに関して前向きなのは本心である。外に住むことも構わないと思っている。

 あなたは常軌を逸した女好きだが、べつに男のことが嫌いなわけではない。

 単に、男は男同士、女は女同士で恋愛と結婚をすべきだと思っているだけで。

 この辺りでは頭のおかしい意見だと思われがちだが、同性婚でも子供が作れるエルグランドでは特におかしい考えでもない。


 しかし、異性婚をした夫婦を否定するわけではない。

 なぜなら、夫の目の前で妻を寝取るのは最高に楽しいからだ。

 さらに言えば、夫を性転換させて妻の前で寝取るのも楽しい。


 妻を目の前で寝取られ、夫よりもすごいと叫ぶ妻に夫としての尊厳を去勢され。

 あなたの手で性転換させられて男としての尊厳も去勢された元男は、大変可愛らしい娘になりがちなのも美味しい要素だ。

 時として、本職の女よりもはるかに女らしくなることがあるので、元男の女には独自の栄養があるのだ。

 加えてサシャの存在だ。一家纏めてベッドの中で美味しく頂けると思うと、これはもうたまらんものがある。




 優しいご主人様に買われた娘と、さらにそのご主人様に雇われた妻。

 さらには自分まで滅多にない高給で雇ってもらえ、世の中にはこんなに立派な人がいるのだと感涙する夫。

 ようやくそろった家族で、新しい家で団らんをする中、次第にずれていく夫婦の生活。


 夜の生活に不満を抱き始める妻と、不思議なくらいに艶っぽく、瞬く間に女として成長していく娘。

 よもや浮気をしているのでは、娘に恋人ができたのではと訝る中、ついに判明する真相。


 なんと妻と娘は、優しいご主人様と思っていた女に寝取られていた。

 男としての尊厳も夫としての尊厳も去勢され、絶望するブレウの夫。

 そして自分までも性転換させられ、溺れるほどの快楽を注がれて、ついに陥落する。


 そんな元夫の可愛い娘を、家族と共に快楽の坩堝に叩き落として蕩けさせる。

 この脳が沸騰しそうなほどに最高なシチュエーションは滅多に食べられないご馳走である。

 ここまで上手くいくかは不明だが、挑まなければ成功することは無いのである。

 あなたは自身の持てる手管と能力の全てを駆使し、この展開に持っていくことを望んでいた。


 あなたがとんでもない計画を立てていることを露とも知らず、サシャは無邪気に嬉しそうに笑っていた。


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