第12話

 宿に戻ったあなたは、私物の携帯調理器具を『ポケット』から取り出した。


 赤々と燃える炭火がたっぷりと敷き詰められたそれは、バーベキュー用のグリルだった。

 様々な工夫が凝らされ、基本的には野営用具のそれであるが、家庭で使えるほどの十分な性能を秘めている。

 あなたはまるで鍛冶場の如き熱気を発するバーベキューセットを用い、料理を行う。


 ジュウジュウとなにかが弾ける音。パチパチと燃え盛る炭火。立ち上る炎。

 その熱気に少しばかり汗を垂らしながら、あなたは出来上がった品をテーブルで待つサシャの前へと供する。


「………………?????」


 それを目にしてサシャは口を開け、視線を遠くへとやる。理解が及ばないと言った表情だ。

 そうまで驚くほどに、あなたが仕上げた料理はすばらしいものだったようだ。

 それほど驚いてもらえると、あなたも作った甲斐があるというものである。

 あなたが『ポケット』に突っ込んでいた種々の材料を用いて作られたそれ。


 きらきらと光を帯びて輝くような甘く瑞々しい果物。

 それに負けないくらいに魅力的な輝きを帯びるアイスクリーム。

 そっと主張しない程度に添えられた、可憐なチョコ菓子。

 そして、力強く自己主張するのは、ぷるんと弾むプリン。

 専用の特別な器に盛られたそれは、完全を意味するデザート、パフェだった。


「え?」


 サシャがバーベキューセットとパフェを二度見する。

 バーベキューセットでは未だに炭が赤々と燃え、鍛冶場のそれにも負けないほどの熱気を放っている。

 近付くだけで汗がぶわりと噴き出す暑さだ。離れていても、微かに熱気が伝わって来る。

 だが、それだけだ。バーベキューセットと言うことなら特に不思議なことは無い。

 しかしサシャはバーベキューセットを見ている。何か不思議なことでもあったのだろうか。


「……あっ、なるほど。氷の魔法を使われたんですね。そちらのセットは、なにか……こう……なにかに……なにかに、必要だったんですよね」


 サシャが不思議なことを言いだし、あなたは首を傾げる。料理に魔法など使えるわけがない。

 エルグランドの魔法はまこと殺傷に適した魔法だ。そんなものを料理に使えば大変なことになる。

 たしかに氷の魔法自体は存在するが、相手を氷結させて粉々にする魔法だ。料理に使えば調理器具ごと粉々である。

 このパフェは普通にバーベキューセットを使って作っただけだ。


「?????」


 サシャが宇宙に叩き込まれた猫のごとき顔をする。なにがどうしたというのだろうか。

 あなたがバーベキューセットで作ったパフェが気に入らなかったのだろうか?

 フードプロセッサーで作った方がよかったのだろうか。持ち合わせがないので無理だが。


「意味が……意味が、わからない……」


 分からないなら分からないなりに納得するしかないのではないだろうか。

 なにが分からないのかが分からないあなたは、サシャにそう告げた。

 ところで、あまり眺めているとパフェが溶けてしまうのだが。


「あ、はい……いただきます……」


 スプーンを手に取り、サシャがパフェを口に運ぶ。

 一口それを運んで、サシャの眼の色が変わった。


「わ、わ……うわ、わぁ……なにこれ、あまい、おいしい……あま、うま……」


 あなたの極めに極めた料理の技術と、神の祝福が込められた食材で作られたパフェ。

 その出来栄えはもちろん最高であり、よほどの甘味嫌いでなければ誰もが絶賛する。

 あなたの得意料理のひとつでもあるので、そうまで喜んでもらえて嬉しい限りだ。


「あ……」


 そして、サシャは瞬く間にパフェを食べ終えてしまい、悲し気にパフェの器を見つめる。

 そのサシャの前に、あなたは新たなパフェを差し出す。


 サシャ、お食べ。


 そう告げると、サシャの瞳にぶわりと涙があふれた。

 こんなに喜んでもらえて、作った側としては嬉しい限りだ。


 サシャはパフェを5回おかわりした。




 おなかいっぱいになるというのは幸せなことだ。

 お腹が空くというのが一番いけないとまであなたは思っている。

 餓死した経験を持つあなたが言うのだから、間違いない。


 だからこそ、あなたは奴隷に食事抜きと言う罰を課したことが無い。

 自分が飢えてでも奴隷とペットにキチンと食べさせる。それが主であるあなたの責任であると信じているからだ。


 その信条の下、たっぷりと食べさせられているサシャは少しずつふっくらしてきた。

 太って来た、と言うわけではない。元々痩せていたのが、肉付きがよくなってきたのだ。

 もちろんまだほんの3日程度のこと。差は極僅かで、あなたでなければ気付けまい。


 これからもたっぷりと食べさせ、ふっくらとした肉がついてくると、抱き心地は極上だ。

 筋肉もしっかりとつけてやり、ずぶずぶと柔らかいばかりでない弾力もあると、なおよい。


 疲れているだろうと何もせずに寝かしつけたサシャに添い寝し、その頬を優しく撫ぜる。

 ふにふにとした柔らかな感触が、ぷにぷにとしてくるのが楽しみである。

 加えて、サシャの年齢が幾つか知らないが、もう少し年齢を重ねて青さが抜けてくると、なおよい。


 見た目だけなら十代前半だが、肉付きの悪さやしっかりとした受け答えからすると、10代半ばから後半だろう。

 個人的には一番の食べ頃とあなたが思っている年齢だが、サシャはもう少し肉をつけて、歳を重ねた方が美味そうである。

 女と言うのは歳を重ねてくるほどに違いがあって、面白みが違ってきて、個人ごとに楽しい年齢も違う。


 毎日違いが出てきて、とても楽しい。一から奴隷を育てる楽しみはこういうところにある。


 ちなみに、あなたの個人的な年齢に対する印象だが。


 一桁代の少女は悪くはない。何も知らない無垢な体を思うさま汚すと言うのは、精神的な充足感がすばらしい。

 10代初め頃の少女もいい。少女から女へと花開き始め、膨らみ始めた乳房を撫でさするのは最高である。

 10代半ばの少女と言うのは最高だ。女としての体を得て、だが心は未だ無垢な少女。肉体的にも精神的にも満足だ。

 10代終わりごろの少女もすばらしい。熟れ始める体と、経験を積みだした心が奏でるハーモニーは至福だ。

 20代に入った女性もいいものだ。既に男を知っただろう体に、あなたが女による女の悦楽を教えこむのは最高である。

 30代に入った女性と言うのもいい。土地柄や貧富の差もあるが、女として枯れだす頃合いに、女の悦びを思い出させる。これが実に楽しい。

 40代に入った女性も悪くない。子供も巣立った頃合いなだけに、暇を持て余しだす女の欲望と言うのはすさまじく、それを思うさまに満たしてやるのだ。

 50代に入った女性は楽しいものだ。場合によっては夫に先立たれた女に、夫よりもすばらしい悦楽を知らしめるのは背徳的な欲望が満たされる。

 60代に入って来ると抜群にすばらしい。もはや自分を求める者など居ないと思い込んだ女に、女を思い出させてやるのだ。枯れて冷たい体に熱を灯す悦びはこれくらいの年代でなければ味わえない。

 70代に入って来ると、数が激減してくるのでレアリティも高くて大満足だ。体の感覚も衰え始めた体に性感を思い出させ、女とは死ぬまで女なのだと言う事実を墓場に持って行かせてやるのだ。

 80代となると、あなたでも滅多に抱けない。このくらいになると、体の感覚は衰え切り、性感を呼び覚ますことも困難だ。だが、困難なだけに燃える。枯れ枝のような体に熾火のような熱を灯し、ベッドの中で乱れさせるのは最高だ。

 90代はさすがのあなたも経験がない。だが、今でも90代で、なおかつ手を出せそうな女性を虎視眈々と探している。

 100歳を超えてくると人間ではなくなってくる。人間でいえば10代から20代くらいの反応が普通になるので、特に面白みのようなものはない。


 総合して言うと、あなたは女なら差別しない。悪く言うと、見境が無い。

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