第80話
以前にフィリアとデートをした際にも使った宿にメアリを連れ込む。
部屋のドアに鍵をかけると、あなたを縛るものはもうなにもない。
あなたはメアリに情熱的なキスをした。貪るような勢いで、あなたはメアリと口づけを交わす。
「お嬢様ぁ! 私、うれしいです……!」
泣きながら喜ぶメアリの姿は実に可愛らしい。
あなたはメアリのふとももに手を這わせると、ふとももを伝う水滴に気付いた。
そのまま手を滑らせて、メアリの大切な場所へと手を這わせる。
あなたが感じたのは、湿ったとか言うレベルじゃない感触だった。
指で押せば、ぐしゅ、と水気が沁み出してくるほどの有様で、メアリの興奮のほどを物語っている。
「えへ、えへへ……いっぱい、がまんしました……」
健気なワンちゃんにはたくさんのご褒美が必要だ。
あなたは滾る獣欲を解放し、メアリへと覆いかぶさった。
あなたとメアリの愛の時間は長く続いた。
意外と言えば意外で、ヤり納めをした時に相手に一番不思議がられるのは、あなたがスローな行為を好むことだ。
あなたはとにかくガツガツしていて、女と見たら見境がなく、合意を問わずヤりたがるクソアマだと思われがちだ。ほぼ事実だが。
そのため、速攻で服を脱いで前戯も無しに本番に、みたいなことをするのだろうと思われがちなのである。
実際のところ、あなたは前戯も後戯もとても大事にする。
特に処女相手との行為など、もうビックリするほど優しく丁寧だ。
あなたの方が服をキッチリ着たままでも問題ないくらいだ。
あなたは溺れるほどに深く愛し合い、何もかも満たされるような行為を至上とする。
肉欲だけではない、心を満たす行為。それには行為だけに集中できる長い時間が必要なのだ。
いっそのこと肉欲なんぞ満たさなくてもいい。絶頂するのはただの結果だ。
お互いに愛し合い、求め合うからこそ行うスキンシップに対し、結果だけを求めるのは愚かなことだ。
共感を持ち、精神を共鳴させ合う。肉体と精神の双方を十分に満たす。
そうした優しくゆったりとした、何もかもを満たす行為が好きなのだ。
ただ、そうした行為は中々に難しい。
一晩で実現できるかと言えば無理だ。
そして初体験の相手にできるかと言えば、やはり無理だ。
お互いに十分な経験があり、お互いに愛し合っていなければならない。
そして、スローな行為を楽しめるだけの精神的余裕があり、長い交合に耐えられる体力が必要だ。
サシャでは無理だ。経験が少ないし、肉体的素養がまだ足りない。
身体能力は十分に鍛えられたが、体力をうまく配分して長時間に渡って高いパフォーマンスを保つ術をまだ知らない。
フィリアには体力をうまく扱う技術があるが、経験が少なすぎる。
なにより、乱暴な行為から始まったから、スローな行為を楽しむ余裕がない。
レインにも無理だ。体力も経験も身体能力も足りない。
あと、たぶんだがスローな行為もあんまり向いてない。
だからメアリだ。メアリとならできる。
おそらくキヨともできるだろうが、アトリはちょっとわからない。
身体能力は十分以上にあり、体力も抜群のものがある。
十分な経験もある。あなたとではなく、たぶん娼婦相手のだろうが。
精神的余裕は、もうあなたを求めて求めてやまない状態なので問題ないだろうと踏んだ。
ドロドロのグチャグチャになるまで愉しみ合うのも悪くはない。
だが、なにもかも満たされて、全身で喜びを感じ合う行為こそ、あなたは最も愛していた。
互いに抱き合い、キスをし、愛撫をしあい。
性感を高めながら、肌の触れ合いと、お互いの存在を感じ合う。
もどかしそうにするメアリを嗜めながら、何時間も何日も繋がりを感じ合う。
そうした末に高め切った性感は、至上の悦楽を呼ぶ。
深く、どこまでも深く浸透してくるような絶頂の波。
快感の波が次々と押し寄せてくる。果ての分からない、溺れるほどの快楽。
7日もの時間をかけて、ただ1度の行為を完成させたあなたは、メアリとの深い絆を感じた。
見つめ合うだけで分かり合えるような、そんな気がする。
手を握り合うだけで満たされ、肌で触れ合うだけで愛を交し合える。
無言でベッドの中で寄り添い合い、手を握り合ってあなたとメアリは眠りに落ちた。
あなたは満たされていた。幸福だった。
それはメアリもだろうと思うと、泣きたくなるくらいに幸せなのだった。
「凄かったです……あんなの、知らなかったです……ほんとに、凄い……」
眠りから目覚め、共に朝寝を楽しんだあとに、メアリは思い出すように言った。
これをやるとみんなそう言う。それを口には出さなかったが、あなたは深く頷いた。
ただ貪欲に求め合うだけの行為では決して至れない境地がある。
肉欲だけではない、心を満たし、絆を堅固に結びつける行為があるのだ。
あなたはあなたの可愛いワンちゃんであるメアリの頭を撫で、深く抱擁をした。
そして、あなたは用意していたものを取り出すと、それをメアリの指へと嵌めた。
「わ……お嬢様、これは?」
あなたがメアリに贈ったのは、簡素な白金製の指輪だった。
あなたの持つ宝石細工の技術を用い、鍛冶の技術を用いて各種の魔法効果を付与した逸品だ。
よく我慢できたご褒美として用意したもので、絆を深め合った証である。
「わぁ、わぁぁ……あは、お嬢様との、絆……」
人差し指に嵌められた指輪はメアリの白い肌によく似合っていた。
魔法の防具と言う意味でも一級品の性能にしてあるので普段使いもできる。
この場合の普段使いとは、つまるところ冒険でも付けて行けるという意味だ。
「嬉しいです。大好きです、お嬢様……もう、離さないで……」
そう言って、メアリはあなたと強く抱擁を交わした。
お互いの魂を、少しでも近付けたいとでも言うように。
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