卒業試験編 エピローグ
学園最後の年が過ぎていく。
ロモニスに学園対抗演習で出向いて、昨年メスにしておいた向こうの学園長にたくさん褒美をやったり。
ロモニスでも寡婦の家や孤児院を設立したり、女子生徒を片っ端から食ったり。
サシャの幼馴染のライリー少年の前でサシャとイチャついて脳を粉々に破壊したり。
夏季休暇ではレナイアの家にご招待されていたので出向いた。
メイドだらけの立派な屋敷に迎えられ、あなたはメイド食べ放題大満足。
全バトルにレナイアも参戦してきたところが実にレナイアだった。
領民も好きにしていいとのことだったので、叶う限り手を出した。やっぱりレナイアもいた。
そうするうちに秋が来る。
秋が来て、あなたはいよいよ卒業まで日がないなと、サーン・ランドにおける総決算を執り行うこととした。
サーン・ランドにおける商業活動などはしていないので、総決算と言うのはあくまでも物のたとえではあるが。
要するにまぁ、サーン・ランドにおけるヤり収めである。
このサーン・ランドで知己を得て、懇ろとなった女性すべてともう1度。
そんな具合で片っ端から抱いて行き、連日連夜ヤってヤってヤりまくった。
その合間に卒業試験に向かうもののサポートもしてやったり。
あなたがサーン・ランドを離れても、寡婦の家や孤児院の経営に支障が出ないように気も配った。
まぁ、初期資金をあなたが負担した事業をいくつか設立し、その収益金を運営費に充てただけの話なのだが。
そうして時は瞬く間に過ぎ、サーン・ランド冒険者学園、その卒業式の日がやって来た。
3年間の間、2度卒業式はあった。その時は自分は送り出す側だった。
いまはあなたが卒業生であり、送り出される側である。
卒業式では、そうかしこまった儀式などはしない。
卒業するものたちが講堂に集められ、学園長より卒業を祝福され、卒業を証明するスクロールを渡される。
そして、学園の卒業生のために仕立てられたデザインのマントが与えられる。
ウールをフェルト生地に仕立て、それを用いて造られたマントだ。
防具としての性能はほとんどないが、防寒防風には最適。
旅をする者、まさに冒険者にとって必要なマントだ。
成績最優秀者……つまりはあなた。
そのあなたに対し、学園長自らの手により羽織らされた。
胸元の固定用の紐が結ばれると、激励の言葉がかけられた。
「成績優秀者たるあなたが、いまここにいるすべての冒険者たちの模範として、見事な活躍をすることを期待します。卒業、おめでとう!」
その激励の言葉と同時に、卒業証明たるスクロールも渡された。
それを受け取り、壇上から降りると卒業生と在校生一同から拍手が為された。
なんだか照れくさいような気持ちで、あなたは席に着く。
その後、同じく卒業生たちが次々とスクロールを渡される。
マントは後ほど受け取るので、マントを羽織っているのはあなただけだ。
デザインは悪くないし、最低限の性能もあるので、いくつかエンチャントをしてから使うつもりである。
本気装備にはもちろん到底及ばないが、そもそも本気装備には元々いくつか欠けがある。
基本的には装備できる部位には最大限装備した方が強いのだが。
世の中にはいくつかの例外もあるもので、あなたもその例外が適応される身だ。
そしてあなたの例外は背中であり、本気を出す場合は背中に装備をつけない。というより、つけられない。
なのでこのマントを普段使いとして採用することに問題はないわけだ。
そうして恙なく卒業式が終わり、あなたたちは解放された。
これでもう、あなたたちはこの学園の生徒ではない。
これからはいっぱしの冒険者として活躍していかなければいけないのだ。
「終わったわね……なんだか、寂しいような気もしてくるわ」
「そうですね……忙しくて大変なことも多かったですけど、終わってみるといい思い出ばかりです」
「楽しいこともたくさんありましたもんね。いえ、卒業試験は大変なことの方がはるかに多かったですが……」
初手からヒャンの都市の防衛と言う地獄みてぇな卒業試験に当たったフィリアの眼が濁る。
その後の卒業試験ではあなたの同行はなかったのだが。
それはそれとして、フィリアには根源的に運がなかったらしい。
洞窟に住み着いたコボルトの討伐に出向いてみれば、成体のブラック・ドラゴンは出て来る。
さる農園に勝手に住み着いた浮浪者の追い出しに出向いてみれば、嵐の巨人が出て来る。
さすがに可哀想だからと学園側が配慮し、安全な輸送護衛依頼を割り振ってもやたら強大な盗賊団と出くわすし。
戦時でない時に傭兵団が盗賊団をしているなどたびたびあることだ。
だが、そこらの騎士団長クラスを討ち破れるほどの強者が盗賊に身をやつすことはまずない。
それほどの腕利きであれば、平時は冒険者でもしていた方がはるかに金になるからだ。
でもたまに、どうしても人の苦しむ姿が見たいという異常者がいる。そうした者は盗賊に身をやつす。
フィリアが出会ったのもその手の異常者で、かなり苦労して勝利したらしい。
7階梯まで使えるフィリアが苦戦するほどの手合いとなると、普通に大英雄クラスの戦士なのだが……。
「明日には寮を引き払って、一度王都に戻って……それから冒険ね!」
「3年ぶりですね……今度こそ足を引っ張らずにやり遂げてみせます!」
レインもサシャも、気合は十分と言った調子だ。
まったく頼もしい。この3年間の成長ぶりを存分に見せて欲しい。
ソーラスの迷宮には、どれほど潜れるだろうか?
あなたが初の踏破者となることを期待してもいいだろうか?
すべては仲間次第ではあるものの。
あなたはこれからの冒険が楽しみでたまらない。
さぁ、まずは寮に帰って荷造り。
そう思って寮に向かおうとしたあなたの下に殺到してくる生徒たち。
「センパイちゃん! 制服のボタンください!」
「センパイちゃん俺にもボタンくれぇぇぇ!」
「拙者も欲しいでござる! 第二ボタンくれでござる!」
「いいや俺だ! センパイちゃんのボタンは俺がもらう!」
「あれは私のものだ! 私のものだ!」
なんか変なことを言い募りながらあなたを囲む生徒たち。
なんでボタン? いや、欲しいというならこんなものいくらでもあげるが。
ボタンと言うのは結構脱落して無くしやすい部分だ。予備部品が欲しいのも納得だ。
あなたは卒業する身なので、もはや制服は不要。ボタンなどあげても構わない。
というかそもそも、あなたはやたら大量の制服の予備を持って居るので制服ごとあげてもいい。
なんなら元男子生徒の女子生徒は、結構な数があなたの制服をもらい受けているし。
「違う、そうじゃない」
そんなことを言いながら変なポーズをするモモロウ。
先頭に立ってボタンを欲しがっていた筆頭は彼……今はまだ彼女のモモロウである。
「欲しいのは服とか予備じゃなくて、あんたを想っていたという証明が欲しいんだよ。だからボタンなわけ」
なるほど。であればと、あなたはボタンを適当に千切って差し出した。
「第二ボタンくれ。そっちの方が心臓に近い」
そう言うのもあるのかとあなたは第二ボタンを千切って渡した。
「そう、それそれ」
やっぱり変なポーズをしてから受け取るモモロウ。
「ずるい! モモロウをぶっ殺して私がそのボタンをもらう! 寄越せパンツマン!」
「うるせー! 寄るんじゃねえネコミミ女郎が! これは俺のものだ! 俺のものだ! 俺は面倒が嫌いなんだ! 文句があるやつはまとめてぶちのめしてやるからかかってこいや!」
「キヒェーッ! 拙者オマエマルカジリでござる! 主殿の第二ボタンは拙者のもんでござらぁ!」
「おまえにはトモがいるだろうが! そっちと仲良くケツ掘り合ってろ!」
「やだやだやだ! 制服の第二ボタンをもらって、憧れの先輩の思い出を胸に抱くってやつやってみたかったんだ!」
「なんでもらう側になりたがってるんだキショいな! 男なら普通そこはもらわれる側じゃないのか!」
「トモちんにケツ掘られまくってメスにされ続けてみろ! こうなる」
「怖過ぎて小便が漏れそうなんだが。これが私たちの成れの果て……」
「トモちんのチンチンには洗脳作用があるでござるか……?」
ハンターズがなにやら戦慄する中、他の生徒たちもあなたへと手を伸ばして来る。
「センパイちゃん私も欲しい! 私もセンパイちゃんのボタン欲しいのぉぉぉ!」
狂を発したかのごとくわめきたてる者。
「やだ! くれなきゃやだ! やだぁぁぁ!」
地面にのたうって絶叫し涙を流す者。
「センパイちゃん! その学園の制服ボタン1個を…………これ全部と交換してくれ!」
トランクケースめいっぱいに詰め込んだ金銀財宝を提示する者。
「交換条件と行きましょうセンパイ! 私になんでもしていい券10枚つづりと交換でどうですか! さらには我が家のメイド食べ放題7日コース券と、領民食べ放題1か月コース券を10枚!」
しれっと自分以外の貞操をも容赦なく売り飛ばす者。
「ギヒィーッ! 拙者にボタンを譲らぬというなら、ここで切腹して果ててやるでござらぁ!」
自分自身の命を人質に取り出す者。
ここまでして自分のボタンが欲しいのか……さすがのあなたも困惑する。
ボタンなんぞ所詮は骨とか石とか角とかで出来た塊でしかないのだ。
たしかに麗しき少女が身に着けていたものと思えば価値も感じようものだが。
あなたはそれならそれで、その少女の下着が欲しいと思うタイプだった。
「いや、センパイちゃんの下着は刺激が強過ぎるというか」
「こう、胸元に入れておいて思い出すのにはボタンの方がちょうどいいって言うかさ」
「さすがにパンツとかブラジャーを常に胸ポケットに入れておいてセンパイちゃんを想うのは変態チックと言うか……」
なんだかよくわからないが、そうしたいというなら咎めるほどでもない。
あなたは順番にあげるので、ちゃんと並ぶように命じた。
そうしたところ、EBTGのメンバーも並びだしたではないか。
どうせ近くにボタンの持ち主がいるのに欲しいのだろうか?
「うーん……まぁ、記念?」
「せっかくだからもらっておこうかなーって、思いまして」
「こう、時としてお姉様本体だと過剰摂取になることもあるので……」
なんだかよく分からないが、欲しいというならあげよう。
あなたは『ポケット』から予備の学園制服を取り出してボタンを毟り取っては配り出した。
なんだか締まらないような。
なんだかいつも通りのような。
そんな具合で、あなたは3年間世話になった冒険者学園を卒業した。
生徒も職員も構わずに好き放題食い散らかし。
在校生も卒業生も新入生も、片っ端からあなたのことを知った。
そして、ほとんどの人はあなたのことを生涯忘れないだろう。
あなたくらいにキャラの濃い人間を忘れる方が難しいからだ。
それくらい楽しい日々が過ごせたし。
それくらい楽しい日々を作ってみせた自負がある。
サーン・ランドの3年間は本当に楽しかった。
たくさんの学びがあり、たくさんの教授があり、たくさんの出会いと別れがあった。
この学園に在校している間にあなたは泳げるようになり、内功を深く知り、掴むことに成功した。
あなた以外のEBTGメンバーもまた大きく成長した。
レインは第5階梯の領域に手を届かせ、同時に魔法使いとしての技能を多々磨いた。
戦場をコントロールする指揮官役としての知識を積み、様々な学びを得た。
さらに多種の魔法を学んだことで、多大な魔法の知恵を蓄えることもした。
魔法を詠うように、あなたたちを指揮して高度な戦いを実現してくれることだろう。
サシャは剣も魔法も十分に磨き、どちらも円熟した領域にまで至った。
遠近双方に魔法でも武器でも対応できる、まこと優秀なオールラウンダーたる者となった。
肉体も成長し、しなやかで長い手足から繰り出される攻撃の強烈なこと。
そのサディストぶりにも磨きがかかり、初めて山賊と戦った時の戸惑いなどもはやなく、容赦なく敵を殺せるようになった。
フィリアは神官としての技能も、戦士としての技能も十全に磨いた。
聖堂騎士としての教えをレナイアから学び取り、神官としても多大に信仰を深めた。
そして地味ではあるが、あなたが求めた鍵開けや罠探知と言った技能までもこまめに磨いた。
冒険者として脂が乗りに乗り切った頃合いと言っていいだろう。
あなたはこの3人と共に、ソーラスの迷宮に再度挑むのだ。
仲間たちが成長し、円熟の領域に至るほどに、あなたは嬉しくなる。
そして、その円熟した実力をも壊して、より強くなろうする姿を見れると、もっとうれしくなる。
まったく、浮き立つような気持ちになってくる。
成功は冒険の醍醐味だ。多大な報酬と財宝は心を満たす。
しかし、失敗からなる成長もまた、冒険の醍醐味。
どっちだって楽しいし、どっちだって必要なこと。
冒険がつまらないと思ったことは1度としてないが。
いつだって冒険の楽しさは最高潮を更新してくる。
この大陸での冒険も楽しい。そして、明日はもっと楽しい。
さぁ、冒険を続けよう!
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