13話

 ギールの探索を依頼に出したあなたは、すぐに見つかるさと気楽に構えていた。

 実際には見つかることはないのだが、同時におおらかにも考えていた。

 仮に見つからず、ギールがスルラの町に向かったとしてもだ。

 徒歩で移動したとしても、距離的には20日ほどの行程で到達する。

 スルラの町で、ブレウとサシャが今は王都にいると知って引き返して来たら、さらに20日。

 およそ40日ほどでまた戻ってくるだろうと思われるわけだ。


 まぁ、ちょっと遠回りにはなるが問題ない。

 あなたはそのように気楽に考えることにした。

 これで心安らかにメディシンフォージドに踏んでもらえることができる。


「いえ、意味が分かりません」


 メディシンフォージドに頭を踏みつけられているあなたを見下ろすカイラ。

 メディシンフォージドは基本的に頼めばなんでもやってくれる。

 それを知ったあなたは「閃いた!」 と電光石火の勢いで踏んでもらうことを頼んだのだ。


「サシャちゃんにやって貰えばいいのでは……?」


 サシャはドがつく感じのサディストなので……。

 頭は踏まれたいが、ヒールで骨の合わせ目を狙って踏まれたくはないのだ。

 あなたはマゾもサドもいけるが、物には限度がある。


 サシャは普通に度を越したサディストなのだ。

 放っておくと、常人なら余裕で死ぬほどの勢いで責めて来る。

 あなたは今みたいな感じでほどよく責められたいのだ。


「じゃあ、私が踏んであげます~」


 やったぜ。あなたはカイラに踏まれて身悶えした。

 あなたはカイラの小さな足と、思ってたよりも割とある体重に悦んでいた。

 以前に『ポケット』を教えたからそのせいもあるかもしれない。


 あなたは心地よい重みにまどろみすら感じた。

 まったく、バカンスってやつは最高だな!

 ところで、カイラはなにをしに来たのだろう?


「ヒマだったので遊びに来ました~」


 なるほど、ではこのまま踏んでもらいたい。


「べつに楽しくはないんですけどね~」


 じゃあ、チャタラでもする? あなたはそんな提案をした。

 この大陸特有のボードゲームだが、あなたは割と得意だ。

 カイラの腕前はどんなものだろうか?


「う~ん。お互いソファに座って、イチャイチャしましょうよ~。ね?」


 そんなカイラの甘える声に、あなたはもちろん頷いた。

 メディシンフォージドをブレウの下へと向かわせ、あなたはカイラと共にソファーに隣り合って座る。

 カイラはこうして時間を共有する行為が好きだ。

 ただひたすらあなたの傍に居たい。そんないじらしい少女なのだ。

 あなたはそんなカイラの優しく甘い膝枕に甘えていた。


「ふふふ~、肉付きの悪い太ももでごめんなさいね~」


 なにも問題ない。あなたは少女の膝枕と言うだけで興奮する。

 カイラのチェック柄のスカート越しの太ももが最高だ。

 思わず頬ずりすると、カイラがくすぐったそうに笑う。


「ねぇ、私のあなた~?」


 なんだろう?


「あの異世界……カル=ロスちゃんのいた世界ですが~」


 ああ、あの異世界。

 あれはなにか偶発的な事態だったようで、未来に飛んでしまったらしいが。

 より高位の魔法を用いれば、現在のあの世界にいけるはずだ。

 一応、ジルによって教えてもらったので使えなくもないはずだが。


「私は、思うのですよね~。アレには意味があったんじゃないかって~」


 と言うと?


「さぁ~? そこは分からないですけどね~。でも、永遠の盟約の話で、納得行くところがあるなとは思ったんです~」


 永遠の盟約。具体的な内容は分からないものだったが。

 あの世界で説明されたところによると、魂の融通を行う盟約だというが。


「その融通された魂が生を受けた存在であろう人に、私は結構心当たりがあるんですよね~。そして、そうした人を総合していくと、ある疑問が浮かぶんですよ~」


 ほう、その疑問と言うのは?


「先日のあの世界では、清和11年とのことでした~。併記されていたグレゴリオ暦によると、2024年だそうですが~」


 どういう由来の暦か不明だが、2000年も続いているとは。

 なかなか歴史ある暦だなとあなたは頷いた。


「ザックリと、1990年から2020年あたりから転生して来ている人はちらほらいるんですけど~、同じ世界から来ているわけではないらしいんですよね~。まぁ、それは近接次元界があるから不思議ではないですが~」


 まぁ、あなたが知己を得たエルマとセリアンも別次元から来たというし。

 また、その際に居たコリントもやはり別次元から来たという話だった。

 そう言う意味で、似て非なる世界が複数あるのは別段不思議ではない。


「そうなんです。文明レベル、年号、地理、歴史が似通った世界は不思議ではないんです。でも、大幅に時代がズレた、歴史も異なる世界から転生して来ている人間がいるんです」


 そう言う世界もある。そう言うことではないのだろうか?

 先日いったあの世界こそ、あなたから見て時代も歴史も異なる世界だ。

 科学技術が大いに発達した世界もあるのだろう。


「ちょっと、違うのですよね。先日いったあの世界……あの世界から見て、おおよそ1000年後の世界から転生して来ている人間がいるんです」


 1000年とは随分とごつい話だ。

 1000年前となると、随分と過去の話になる。正直言って想像もつかない。

 そして、1000年後もまた、その時代はさっぱり想像がつかない。


「そして、その世界から転生して来ている人間は、ほぼ間違いなく同一の世界から転生して来ています」


 いまいち話が見えず、あなたは続きを促す。


「その世界には近似世界が見えないんですよ。年号も地理も歴史も、集めた情報がすべて符号していく。ズレのある歴史が見つからないんです。変だと思いませんか? 他の2000年頃の世界は少なくとも3つは存在しているのに、3000年の世界は1つしかないんです」


 そう言われてみると、変なのかもしれない。

 しかし、そう言われても、変だとして何か問題なのかとあなたは首を傾げる。

 神々のやっていることは、定命の存在であるあなたたちにとり、遠い出来事だ。

 それはたとえるなら、法と言うものが人の手の届かぬ場所にて規定されるように。


「……私はカル=ロスちゃんの話を聞いて、あることに気付いたんです。同じ世界内から呼び寄せられている魂が見当たらないと」


 それは単純に、この世界では神々がまだしも身近だからではないだろうか。

 あなたも死後には昇天し、ウカノの傍に侍ることとなるだろう。

 それと同じように、転生するに値する偉大な英雄たちは、神々に召し抱えられている。

 それゆえに同じ世界内で循環している魂がないのではないか。


「でも、あちらの世界から転生して来ている人間は、取るに足らない経歴の人間の方がずっと多いんです」


 そんな取るに足らない人間を転生させて何の意味があるのだろうか?

 いや、そう言えば魂を送り込む際に強力な力を付与していることもあるとか言っていた。

 それを思うと、その力次第ではなにかしら意味があるのだろうか?


「……カル=ロスちゃんは、エルグランドの神は同じ世界内の別の惑星から魂を呼び寄せていると、そう言っていました」


 確かにそんなことも言っていた。


「でも、私が見つけた転生者は、全員地球から来ていました」


 そう言われ、あなたは首を傾げた。

 すると、この世界にも地球があるということになるのでは?


「だから、そうなんじゃないかなって。西暦3000年の世界が1つしか見当たらないのは……もしかして、この世界のことなんじゃ? 同じ世界内の別惑星から連れて来ているからなんじゃ? って……」


 まぁ、そう言うこともあるのかもしれない。

 あなたはそんな風に気楽に頷いた。

 そうだとして何の意味があるのかは不明だが……。

 疑問が解けてよかったね、とあなたは微笑んだ。


「あ~……あなたにかかるとそんなノリなんですね~……まぁ、そうですよね~。1000年のテクノロジーの脅威とか想像もつきませんよね~……」


 なんかエロいグッズとか発展してたりしないかな。

 こう、感覚が存在する棒状のアレソレとか。

 あなたにとって発展していて欲しい技術とはそれくらいだ。


「ここは地球だったんだ、とか。じつは別の惑星だったんだ。なんて、SFじゃありがちなオチですけどね……自分が当事者になるとは思わなかったです~」


 そう零すカイラにあなたは首を傾げる。

 その感じだと、どうもカイラは当事者のようだ。

 すると……カイラは元々は地球の人間だった?


「ええ、はい。私も転生者なんですよね~……ビックリしました?」


 言われて、あなたは首を振った。

 そもそも転生者と言われても、だから何だという話に感じられるのだ。

 産まれ直したということは分かる。

 それを覚えて居ることもあるのかもしれない。


 元々エルグランドにおいては輪廻転生の概念が信じられていた。

 そして、あなたはそれこそが絶対の原理なのだと思っていた。

 なので、転生者なんだと言われても、そりゃそうだろうとしか思わない。


 あなた自身、前世の記憶を覚えていないだけで転生者に違いないのだ。

 だれだってそう、魂とは輪廻し、転生をするものなのだ。

 だからこそ、転生者だと言われても、だからなんだという話に感じられる。


「…………あなたが異世界かつファンタジーな世界の人間なんだなぁって、今強く実感しました」


 なんで? あなたは首を傾げた。


「まぁ、それはいいです……こう、なんと言いますか。演劇とかのお約束ってあるじゃないですか~」


 残りの矢が1本なら確実に命中するみたいな?

 物語をドラマチックにするために、緊迫感をもたらす手法だ。

 だいたいの場合、主人公はハンサムで冴えた機転で潜り抜けるか、神への祈りが通じて最後の1矢が敵を倒すわけだが。


「そうそう、そう言うやつです~。で、実はここは地球だったんだとか、べつの惑星だったんだ、みたいなやつは割とありがちな展開で……次に起きるありがちな展開は……」


 ありがちな展開は?


「この惑星に、地球から侵攻して来た宇宙戦艦が現れるとか、地球が送り込んでいた超兵器が再起動するとか~……まぁ、そう言う感じのがお約束なんですよね~」


 なにそれ面白そう! あなたはワクワクした。

 宇宙戦艦なるものはいったいどれくらい凄いのだろう?

 それを奪い取ったら、べつの星に冒険にいけるだろうか?

 超兵器とやらも面白そうだ。鹵獲して再生産とかしてみたい。

 凄い破壊力があるなら、量産してバトルとかさせてみたい。


「自分が勝利すること前提で考えてる……いや、たしかに勝ちそうですね、この人……」


 カイラも信じてくれているようでなによりだ。

 いずれ攻めて来るにしても、その時はその時だ。

 横暴な真似をするなら、あなたが地獄のような悪夢を創り上げてやろうではないか。

 戦艦とか超兵器を奪い取る大義名分も出来て万々歳だ。


「カル=ロスちゃんの話がフラグとなって、超未来地球軍が攻めて来るとか思っていましたが……私のあなたがいてくれるなら大丈夫ですね」


 もちろんである。あなたはカイラに安心するように言った。


「ふふ……ねぇ、私のあなた? お礼とかほしくないですか?」


 あなたはべつに大したことはしていないと答えた。

 何かするにしてもこれからなので、お礼をもらうほどのことではない。


「ふ~ん? 吸ってもいいって言ってもですか~?」


 などと言いながら胸元をはだけるカイラ。

 あなたは曝け出された柔肌に目が釘づけだ。

 そして、カイラは胸を覆う下着を指先でちょいとズラす。

 もうちょっとで見えそう! あなたは食い入るように見つめた。


「欲しいですか……?」

 

 囁くような声に、あなたの脳味噌は甘く蕩けた。

 ぜひとも欲しいと絶叫するような勢いであなたは応える。

 むしろ吸わせてくれなきゃここでマジ泣きする。


「ふふふ、よく言えました~。はい、たくさん召し上がれ~。いっぱい吸っていいんですよ~?」


 あなたは差し出されたカイラの母性の象徴に勢いよく吸い付いた。


「あん♪ もぉ~、私のあなたったら、おっぱい星人なんですから~。こんな小さいおっぱいが好きなんですか~?」


 大好きだ。なにより、あなたは大きさに貴賤はないと思っている。

 重要なのは柔らかさ、そしてなにより、味だと思っている。


「ふふふ、おいちいでちゅか~?」


 最高だ。どんなものよりも尊い味がする。

 あなたはカイラの優しい抱擁に包まれながら、存分にカイラの母性を堪能した……。

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