第86話
あなたは娼館に行くか、ナンパをするか、町を歩きながら考えていた。
娼館を借り切って全員を食う、と言うのはなかなかに楽しい。
だが、当日行って、当日に貸切る、と言うのはあまりよろしくない。
基本的に金で解決できるが、娼館側にも、娼婦にも迷惑がかかる。
そのため、ある程度事前に交渉をしておいた方がどちらにとってもよい。
今日は借り切らずに複数人の娼婦を買うくらいに抑えるのが妥当なところだろう。
ナンパをする場合、相手の冒険者の強さ次第でどれくらい楽しめるかが違って来る。
やはり強い方が身体能力が優れているし、スタミナと言う意味でも優れている。
並みの娼婦では日付が変わる頃には疲れ切ってしまうことも珍しくはない。
一方で、腕利きの冒険者ならば朝まで元気なことも多い。やはり、相手も元気で楽しめたほうがいい。
特に、ここに来るまで7日ほどの旅程で来ている。
つまり、出発前夜を含めて8日間も禁欲している。
このたまりにたまったマグマの如き性欲を発散するのに娼婦相手で足りるだろうか。
複数人買えばなんとかなるとは思うが、腕利きの冒険者をナンパできた方がいい。
そのため、色街に行くまでに腕利きの女性冒険者を見かけたらナンパをすることにあなたは決めた。
うまいこと釣れなかったら、残念ながら数日ほど仕事にならないくらい娼婦に無理をさせるかもしれない。
まぁ、詫びと迷惑料として、娼館と娼婦にたっぷり金貨を積むので許してもらおう。
そのように考えながら、雑踏の中をあなたは進んでいく。
時刻は昼時を幾分か過ぎた頃合いであるから、ナンパの時間はたっぷりある。
およそ3~4時間と言ったところだろうか。それまでに釣れなければ娼館だ。
しばらく町中の冒険者たちの強さをつぶさに観察する。
やはり、冒険者たちが集う町と言うこともあり、なかなかに腕利きが多い。
平均的なレベル自体も高いし、上位層と思われる者たちの質も高いようだ。
スルラの町で見かけた最も強い冒険者でも、この町では平均くらいのものだろうか。
ふと、あなたは道行く冒険者の中に、華やかな集団を見かけた。
女性だけで構成された冒険者パーティーだ。なんとも華やかである。
男女混合パーティーが多い中で、女性だけのパーティーは実に目立つ。
しっかりした重装の鎧を纏った金髪の少女。
その少女に顔立ちの似通った軽装の剣士と思われる少女。
弓を背負った黒髪の少女に、野臥せりと思わしき変わった髪色の少女。
そして呪術師だと思われる独特の服装の少女がいる。
あなたの眼は、その集団の一番最後にいる少女に釘付けだった。
黒髪に黒目の、これと言った特徴のない、ただ整った顔立ちの少女だ。
珍しいことに眼鏡をかけており、それが印象的な雰囲気を漂わせている。
そして、信じ難いほど膨大な生命力を内に秘めている。
とりあえずかわいい。すごくかわいい。いますぐにヤりたい。
おそらく同じパーティーなのだろうが、明らかに実力が不釣り合いである。
少なくとも、あなたがこの大陸に来てから見かけた誰よりも強いだろう。
単純な生命力の強さだけで強さが測れるものではないが、強い者は誰しも強大な生命力を持っているものだ。
生命力準拠で考えた場合、あの『銀牙』を1人で薙ぎ倒せるくらいは間違いなく強いだろうか。
あなたはあの少女を今晩の獲物に決めた。
あれほどの生命力を持っているなら、一晩どころか1週間連戦しても問題あるまい。
メアリとしたような1週間をかけてというのではなく、1週間ブッ続けでヤりまくる感じのもいけるだろう。
あなたは一直線にその少女へと向かう。
少女はあなたに目線を向けられた段階で気づいていたらしく、あなたに顔を向けていた。
君かわいいね。いっしょに遊びにいかない?
あなたは率直にそのようなナンパをした。少女はビックリしたような顔をした。
この大陸でナンパをすると、おおむねそのような反応をされる。
この大陸ではあまり同性愛は一般的ではないからだろう。
「え、ええ~と……もしかして、私に言いました~?」
戸惑い気味に、その少女はぽやぽやとした口調で答えた。
喋り方までかわいい。もうたまらない。最高である。
もちろんあなたはこの少女に向けて言ったので、力強く頷いた。
「あの、もしかして~、これは、ナンパと言うやつでしょうか~?」
もちろんそうである。むしろこんな声のかけ方をしておいてナンパではない方がおかしい。
あなたは懐から金貨を取り出すと、夕飯を思う存分ごちそうするし、遊ぶ代金も自分持ちだと告げた。
「私、こういうナンパされるのってはじめてです~……」
「そりゃまぁ、普通はナンパって男が女にするものだし……」
鎧を纏った金髪の少女が、あなたがナンパした少女にそのように答えた。
あなたも女をナンパする女はこちらでは見かけたことがなかった。
「え~と……じゃあ、全員に夕食をごちそうしてくれるなら遊んでもいいですよ~」
「えっ、カイラ、いいの?」
「ええと、まぁ、はい。せっかくごちそうしてくれるそうなので~」
では決まりである。あなたはカイラと呼ばれた少女に、どこの店だろうが奢ると力強く宣言した。
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