38話

「あ、お姉様。来てくださったんですか?」


 あなたはフィリアの見舞いに訪れた。

 入院費用を弾んだお陰か、小さいながらも個室を使わせてもらっているようだ。

 あなたの姿を見てうれしそうなフィリアに微笑みかけ、お見舞いの品を渡す。


「わ、お見舞いなんて嬉しいです。うわっ、キザムがいっぱい! ソーセージも!」


 嬉しそうなフィリアを見ると、あなたもうれしい。

 いっぱい食べて元気になってね、とあなたはフィリアに優しく声をかけた。


「はいっ。あの、ところでサシャちゃんとレインさんは?」


 フィリアの疑問に、あなたは宿で酔い潰れてると答えた。

 昨晩の宴でレインはもちろん飲み過ぎた。

 朝には滝のように乙女の尊厳を放っていた。


 サシャもちょっと飲み過ぎたようだった。

 カイラが色々と美味しい酒の飲み方を教えてくれて、試すうちにハマってしまったようだった。

 酔い潰れはしなかったが、たぶん昼まで起きないだろう。


「あらら。飲み過ぎてしまいましたか。このお鍋は……あら、見たことない料理ですね」


 ルージューフォシャオ。セリナが作ってくれた内臓料理だ。

 少し味見をさせてもらったが、実においしかった。

 癖のない風味豊かなスープで、内臓肉も美味しく食べられる。

 ちょっと癖が無さすぎて物足りないところはあるかもしれないが。


「セリナさんが? 退院出来たらお礼を言いにいかないと……」


 まぁ、そのあたりはともかく。

 アツアツの状態で持ってきたのだ。

 冷めないうちに『四次元ポケット』に仕舞うといい。


「あ、そうですね。大事に食べますね」


 フィリアが料理を受け取り、それを仕舞い込む。

 同時に、あなたは仕舞い込んでいる汚れ物を出すように言った。

 受け取って洗って、また明日持ってくる。


「じゃあ、お願いします」


 そう言ってフィリアが汚れた衣服を『ポケット』から取り出す。

 『ポケット』の良いところは臭いも遮断できることだ。

 まぁ、あなたはちょっとくらい臭いのはむしろ興奮するが。


 それから、暇潰しとして適当に本など買い込んで来たので、それも渡す。

 一般市民向けの活版印刷による本だ。安いので片っ端から買って来た。

 低品質の紙を使っているので、数回の通読にしか耐えられないが……。

 どうせ、長くとも1か月足らずの入院生活だ。高耐久は不要だろう。


「わぁ。ダイムノベルですか。ありがとうございます」


 こうした低品質の娯楽本は、ダイムノベルと呼ばれる。

 10分の1の本、という意味だが、この場合の10は金貨を指す。

 つまり、ダイムとは銀貨1枚であり、銀貨1枚で買える本、という意味だ。


 以前サシャに買い与えた本は1冊で金貨が飛んだ。

 それですら安い部類に入る本であり、貴重な本なら何十何百と金貨が飛ぶ。

 それと比較すれば、ダイムノベルの破格さが分かるだろう。

 庶民の娯楽として大きな地位を得ているという。


 まぁ、平均的な労働者の1日の日当相当なので。

 好き放題買える、というほどの安価さではないのだが……。


「早く元気になって、冒険に復帰しないと。まずは、高山病にならないための順応訓練からですね……」


 それよりもまずは退院して、体の調子を戻すところからだろう。

 あなたはフィリアに、退院予定について聞いているかと尋ねた。


「私は重症だったので、少なくとも1週間はとのことです」


 なるほど、1週間。手痛い空白期間だ。

 まぁ、ここはひとつ、休暇と思うことにしよう。

 余裕を持って、10日の休暇にしようではないか。

 フィリアは遊び歩けないのは我慢してもらうほかないが……。


「いえ、動けない今こそがいい機会なのかもしれません。祈りを捧げ、自らを戒める修行の機会を得られたのだと思って身を慎みます」


 すごく真面目。

 まあ、信仰に生きるとはそう言うことなのかもしれない。

 あなたはフィリアに体をいとうように言い、治療院を辞した。




 宿に戻ったあなたは、ひとまず洗濯に勤しんだ。

 冒険の降り積もった汚れを洗い流し、綺麗になった衣服を全て干すのは心地よい。

 特に、この大陸は大体いつも天気がよい。洗濯物がパリっと乾いてくれる。

 病める時も健やかなる時も富める時も貧しき時も天気が悪いエルグランドとは大違いだ。


 宿の中庭で洗濯ものを干し終え、はためく洗濯物を眺める。

 白い衣服が風に揺れる光景は、どこか眩しく感じられる。

 あなたは椅子を持ってくると、初夏の眩しい日差しの中、爽やかな風と洗濯物の清潔な香りに身を浸した。


「あ、おはよーございます、ご主人様」


 洗濯物を眺めて時が流れるに任せていたら、サシャがやって来た。

 手には洗濯桶があり、どうやらサシャも洗濯をして来たところのようだ。

 あなたはおはようと返事を返し、洗濯物を干すのを手伝った。


「ふぅ。お洗濯ものが綺麗になると、気持ちいいですね」


 あなたは頷き、風にはためく洗濯物を見ているのも気持ちいいものだと答えた。

 どこか爽やかと言うか、綺麗と言うか、そんな気持ちになる。

 不思議と、それは幸せのかたちに似た何かのように思える。


「お洗濯ものが干されている家は、ちゃんと生活が営まれてるって証拠ですもんね」


 そう言うことなのかもしれない。

 あなたは風に揺れるサシャの下着とフィリアの下着を心行くまで鑑賞し続けた。


「そう言えば、フィリアさんはどうでしたか?」


 元気そうだった。そして退院は来週になるとのこと。

 そこで、10日間の休暇を取ろうと思う。

 全員しっかりと身を休めて、次の冒険までの英気を養おう。


「10日間ですかー……うーん、書店を見に行こうかな。うーん」


 あなたはこの町の娼館をはしごする予定だ。

 ついでに、カイラともたっぷりと遊びたい気分だ。

 そのあたりはカイラの予定も確認しないといけないが。

 いずれにせよ、あなたは降って湧いた休暇を女遊びに費やすつもりだった。


「ええ~? ご主人様、最近私のことを忘れちゃってませんか? そろそろ、ベッドに来てくれるのかなぁ……なんて思ってたのに」


 そう言ってサシャがあなたの胸元を指先でぐりぐりとしてくる。

 そのいじらしくも破壊力の高い仕草にあなたは身悶えする。

 常人なら体に穴が開いているところだ。割と痛い。

 この場合の破壊力は、物理的な方を意味している。

 サシャはもうちょっと自分の膂力に自覚を持った方がいい。


「自覚してますよ。だからやるんじゃないですか」


 なるほど、さすがはレズのサディストと言うべきか。

 あなたを痛めつけるためにわざとやったらしい。


「私といっしょに、イイコトしませんか? 冒険続きで溜まっちゃって……ね?」


 まったく、たまらないお誘いだった。

 あなたは力強く首肯すると、今すぐ部屋に行こうと促した。

 夜のムーディーな雰囲気もよいが、昼間からと言うのも実によい。

 午前の光がすべてをつまびらかとする中での行為は視覚的な衝撃力が強い。


 やはり、ケモ耳少女を堪能し尽くすには、昼日中ではないのか。

 あなたはサシャのふあふあくにくにお耳に溺れることに決めた。



 サシャをベッドに連れ込み、押し倒す。

 そして、貪るようにキスをした。

 サシャが舌をぬるりとあなたの口内へと侵入させて来る。


 あなたの舌とサシャの舌が、淫猥な音を立てて絡み合う。

 お互いの唾液を交換し合い、貪る。ただ求めあうキスだ。


「はぁ……ご主人様、キス上手過ぎですよ……」


 サシャもキスが上手くなった。

 昔のぎこちないへたくそなキスもあれはあれでよかったが。

 今のように、あからさまに慣れている感のあるキスもいい。

 あなたとサシャはもう1度キスをすると、そっとお互いの服を脱がせにかかった。


「ご主人様の体、何回見ても、何度触っても……綺麗……すごく、綺麗……」


 サシャの指先があなたのなよやかな肩を撫でる。

 剛力無双に相応しくないほどに、あなたは華奢だ。

 サシャもその膂力に似つかわしくないほどに細身だ。

 ハーブの増強がゆえだろうか。


 薄い体に、たぷんとついたサシャの胸。

 シックな黒の下着に覆われた胸は、重力に逆らってツンと上を向いている。

 あなたの指が、下着の下に潜り込み、その下の敏感な先端に触れる。


「ん……ご主人様……」


 サシャもまた、あなたの下着の中へと手を潜り込ませて来る。

 お互いの胸をまさぐり合いながら、あなたとサシャはまたキスをした。

 蕩け合うようなキスをして、あなたとサシャは酸素不足に喘ぐまで深く求めあった。


「はぁ、はぁ……ご主人様、もっと……」


 より深い交合を求めるサシャに、あなたは応えた。

 愛し合うための道具はすでに準備を終えている。

 ベッドに身を横たえるサシャに覆い被さり、あなたたちは奥底まで繋がり合った。




 朝から深く繋がり合い、サシャは朝寝に入った。

 洗濯をしなくては、という意気込みから無理やり起きたのだろう。

 一仕事をした後に一戦交えて疲れ、眠ってしまったわけだ。


 そして、あなたはやや足音を立ててベッドから降りた。

 ゆっくりと、しかし一直線に。部屋の出入り口へと向かう。

 そしてドアを開けると、廊下へと出る。


 あなたは本来フィリアが使っていた部屋に向かう……。

 と見せかけ、あなたはレインの使っている部屋と突入した。


「きゃあっ! な、なんで!」


 そこではレインがベッドに上体を預けて床に座り込んでいた。

 やや乱れた服装、上気した頬……そして、淫靡な香り。

 あなたはツカツカとレインに歩み寄ると、飾り気のないローブの中へと手を潜り込ませた。


「あっ……ちょっと……」


 弱弱しい声と、弱弱しい仕草で、レインがおざなりな抵抗をする。

 あなたの手は強引にその抵抗を乗り越えてゆく。

 そして、あなたの手がレインの秘所をまさぐると、ぐっしょりと濡れた布地の質感を感じ取った。


 頬を真っ赤にして顔を反らすレイン。

 あなたは、サシャの部屋の前でなにをしていたの? と言葉でレインを嬲った。


 サシャとの行為の最中から気付いていたが。

 サシャとの行為を終えてあなたがベッドから降りるまで。

 ずっとレインはサシャの部屋の前……ドアに取り縋って何かをしていた。

 そしてそれは、あなたが勘繰った通りの行為だった。


「ばか……私のことも、ちゃんと可愛がってよ……」


 そのためにやって来た。

 致した直後に別の女のところに行くというのも、相当アレでアレだが。

 たぶんレインはそんなに気にしないのでセーフ。


「ちゃんと、事前に言ってよ……新しい下着、つけたかったのに……」


 このいじらしいところが溜まらなく可愛い。

 怜悧な美少女であるレインだが、内面は愛らしく年頃の少女だ。

 比較対象がレズのサディストと、ガチンコ宗教者なのも大きいだろう。


「あなたのために、過激なやつ、用意したのに……」


 とっておきの勝負下着であなたを歓迎したかったとは。

 屋敷のお針子であるブレウは、あなたの作成する下着の技術を会得済み。

 そのため、あなたの手に寄らずにエルグランドスタイルの下着が入手できる。

 いったいどんな破壊力ある勝負下着を用意しているのだろう?


 あなたはレインの頬を撫でると、そっと耳元で囁いた。

 甘く、蕩けるような声音で、シャワーを浴びておいで……と。

 

「……うん」


 飛び出して行ったレインを見送り、あなたはベッドに突っ伏した。

 そして、自分の頭を掻き毟り、レインのかわいらしさに身悶えした。


 なんだあの可愛い美少女!

 酒癖が最悪で、飲み方も最低な飲んだくれ魔法使いとは思えない!

 いじらしくて可愛らしくて、それでいて初々しくて!

 今まで何回もベッドの中で可愛がったのに、恥じらいを忘れない姿がエロ過ぎる!


 しばらく悶え、自分の中で一区切りをつける。

 そして、あなたは中庭に飛び出した。

 サシャとの愛の証で汚れているので、身を清めたい。

 しかし、宿のバスルームと言うかシャワールームはレインが使っている。

 なので、中庭で水を浴びて身を清めようというわけだ。

 あなたは勢いよく水を引っかぶり、身を清めた。



 水で体を洗い清め、ついでに冷静さも若干得て。

 そうして待ち焦がれていたあなたの下に、レインがやって来た。

 

「お、お待たせ……」


 体を覆っているのは、野暮ったいローブ。

 なるほど、焦らしてくれるではないか。あなたは微笑む。

 いったいどんな素敵なお洒落をして来たの? と尋ねた。


 すると、レインが頬を赤く染め、そっとローブを脱ぎだすではないか!

 あなたは目を見開いて、食い入るようにそのストリップを眺める。

 露わとなっていくレインの柔肌。眩しいばかりに白い肌だ。


 そして、そっと見えて来るのは、赤い下着。

 透けのあるレースがあしらわれた、なんとも言えずエロい下着だ。

 ごくりと生唾を飲み込むあなた。そして、ローブが足元に落ちる。

 現れた鋭い切れ込みのショーツに、あなたは激しい衝撃を受けた。


 もはや下着としての用途を成していない。お尻を保護する機能がない。

 しかし、あなたの劣情を爆発的に刺激するという効能が産まれている。

 レインのドえぐいカットのショーツにあなたの眼は釘づけだ。


「な、何か言いなさいよ!」


 思わず、と言った調子で手で体を隠しながら吼えるレイン。

 そして、あなたの理性は崩壊した。

 どうしてそう言う逆効果なことをしてしまうのか。


 あなたはけだもののようにレインへと襲い掛かった。

 今日は昼から眠れやしないな!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る