14話
大いに飲み、大いに食べ、大いに歌った。
ついでにロモニスの女子生徒と懇ろになったりするなど……。
さすがに一晩にそう何人もいただくことはできない。5人が精一杯だった。
「5人は十分食い散らかしてんだよな……時々姿が見えなくなったと思ったらそう言うことかよ」
朝まで延々と飲み明かしたので、場所は変わらず。
周辺は飲み過ぎ、食べ過ぎ、歌い過ぎ、踊り過ぎで死屍累々である。
わずかにいるバカみたいに頑丈な連中だけが無事に起きている。
ちゃんと自重できる人間は途中で引き上げて部屋で眠っていることだろう。
あなたはもちろん、バカみたいに頑丈な連中のひとりだ。
モモロウもまた、タル1つは空けただろうに平然と茶など嗜んでいる。
酒臭さを漂わせていても、それ以外は平常とまったく変わりない。
ちなみに茶の出所はコリントだ。執事のロザリアが淹れてくれたお茶である。
「なかなかお盛んなのね……私はちょっとそう言うのよく分からなくて……」
悩まし気にコリントが溜息を吐くと、馬鹿みたいに色っぽい。
彼女は目元を隠していても分かるほどの美人な上に、所作も物腰も美麗だ。
加えて、見て分かるほどに女らしい肢体の持ち主だが、物腰はどことなく性別不詳。
言葉にできない妖美な魔性の魅力があり、これで性愛が分からないとは、なかなか罪作りな女だった。
あなたはよければ、自分がそれを教えてやろうかと提案した。
「それはちょっと」
拒否されてしまった。まぁ、いやなら仕方がないが。
絶対にいやと言う感じでもないので、押せばいけるだろうか。
「いえ、私は純粋に性欲とか、子を産みたいなみたいな感性がない……と言うより、なくなったのだと思うの」
アンデッドになって喪ったと言うことだろうか。
アンデッドとなれば、もはや子を残すことは叶わない。
そして、その子を残すために湧き上がる性欲もないだろう。
あなたみたいな異常者だと話はべつだが、大体のアンデッドに性欲はない。
「どうなのかしらね。ただ、ハマったらハマったでよくなさそうだから……なにかやるべきことがある身でもないから、そう言うのにハマっちゃうと身を持ち崩すまでやっちゃいそうなのよね……」
「あー……たしかに、うちのメアリも娼館で身を持ち崩すくらいにドハマりしてたしな……金があるのにやることが無くてヒマってのはよくねぇよなぁ……」
それは言えている。金があってヒマな人間は大抵ロクなことをしない。
金があって、ヒマがあって、しょうもないことをしないのは賢人くらいだ。
逆を言うと、金があってヒマな人などはたやすく溺れるので、有閑マダムの乱れっぷりと言ったらもう……。
「うん、そう、私がその有閑マダムに相当する存在だから、溺れて乱れそうだからやめておこうと思うの」
溺れて乱れて欲しいものである。
純粋魔法属性……彼女らの言うところの力場属性。
それに対する完全耐性の防具をプレゼントするので、ワンナイトだけと言うのはどうだろう?
あなたはコリントにそう提案した。
「…………!」
「よくねぇよ。そう言うのよくねぇよ。モラルが乱れててよくねぇよ」
しかし、コリントとも仲良しになりたいのだ、あなたは。
あなたは自分が用意できる品は素晴らしく高性能であることを強調した。
通常、エルグランドの冒険者は各種の微弱な耐性の防具を重ね合わせる。
全身の防具で総合的な防御を実現するので、1部位の耐性は微弱でもいい。
もちろん完全な耐性を実現するには、微弱過ぎるとダメなのだが……。
しかし、あなたが用意する防具は、1部位で完全な耐性を獲得できる。
これはあなたが防具のエンチャントを強化する手法を知っているからだ。
なんならうまくやれば、1部位の防具で5種類以上の耐性を実現することだってできる。
「なんて、魅力的なの……! 一晩寝るだけ……でも……うぅ、どうしようかしら……」
コリントが苦悩している。もっと揺れるべきだ。
やがてはベッドに来て欲しい。優しくしよう。
なんて思っていると、ジルがテーブルにやって来て席についた。
「おはようございます」
「ああ、おはよう」
「おはよう、いい朝ね」
ジルは夜が明ける少し前に寝入っていた。
寝袋を取り出してガチ寝しだしたのでちょっと驚いた。
一番びっくりしたのは、その寝袋が魔法の寝袋だったことだが。
なんと眠った時間の倍の回復効果が得られるらしい。
つまり4時間眠れば8時間眠ったのと同じなのだとか。あなたも欲しいくらいだ。
「なんの話ですか」
「そこの女たらしが、1発ヤらせてくれたら力場に対する完全耐性の防具プレゼントしてくれるんだってさ」
「本当ですか?」
あなたは力強く頷いた。もちろん、ジルにだって有効な提案だ。
ジルは見る都度に印象が違い、少女のような少年のような不思議な雰囲気がある。
だが、少女のようなタイミングの時があるなら、少女でもあると言うことだ。ならば問題ない。
「私本体でなければいけませんか?」
本体でなければいけないか、とは?
「私の分身ではダメかと言うことです。やや弱体化する以外は本体と一切変わりません。持続時間は調整できますが、丸1日……24時間と言うことで」
本体でないのは残念だ。だが、丸1日なにをしてもいい相手……それはそれでいい。
今すぐだとちょっと困るので、休日に分身してもらうのでいいだろうか。
「構いません。女性なのは必須要綱でしたね。その辺りを踏まえて準備を整えておきます」
「準備ってなんだよ?」
「分身は本体の分身なので、本体の種族や性別に影響を受けますから。その本体の状態を整える必要があります。特に私は種族を変更することもありますので」
「種族変更なんてそんなことできんの……」
「できますよ。転生の秘術があるので、お目当ての種族になるまで自殺すればいいんです」
「平然と無茶苦茶なこと言うなコイツ……」
「レベル修正のない人間とかエルフがなんだかんだ楽なんですけどね。そろそろマンチパワーの高い……もといレベル修正のある強種族にでもなろうかなと」
「ジルの強さを求める姿勢って、ちょっと変化球気味でいまいち素直に認められないんだよな……」
あなたはジルが前向きにベッドに来てくれるというので小躍りしていた。
分身なのは残念だが、本体とそう変わらないというので文句は言えないだろう。
コリントとはいずれと言うことで。
連絡先はどうしよう?
まぁ、手立てはなんとでもなるだろう。
モモ経由でコネを辿ればいいのだ。
学園対抗演習が終わったが、すぐにおさらばと言うわけではない。
なにしろ、相手方は遠路はるばるここまで来ているのだ。
移動には人力も馬力も使う。どちらにも休養が必要なのである。
そのため、相手方は3日ほど滞在してから帰るのが慣習らしい。
つまり、その3日の間にあなたは可能な限りに女子生徒を落とさなくてはならない。
もしも試合で負けて、万一にも死んでいたら、誰にも手を出せずに終わっていただろう。
あなたは今日も元気にナンパできる喜びを噛み締めた。
さて、まだまだ浮ついた空気の抜け切れない冒険者学園。
いつもよりも倍近い人数のいる学園はどことなく新鮮だ。
「うまい学食じゃのう」
「そうだねぇ」
そしてなんでか知らないが、当たり前のように居残っているエルマとセリアン。
モモロウを筆頭に、ジルとコリントは普通に帰ったのだが……。
「いやね、あたしらがヒマを持て余し過ぎて、椅子を尻で磨くか、庭の雑草の数を数えるしかやることがないって言ったら、講師役に雇われたんだよ」
「最近、ヒマ過ぎて時間感覚が曖昧になったり、物忘れが激しくなったりでのう……ぼけ封じに若いの相手の仕事でもするかと思っての」
なんとも微妙な雇われ理由である。
まぁ、エルマとセリアンが学園の講師をやるというのは好都合だ。
いずれはベッドの中で先達としての教えを乞いたいものである。
「はーん。まぁ、ヒマな時なら構わないよ」
「儂は見ての通りのナリじゃから、あんまり楽しめんかもしれんぞ。それでもよいなら好きにせよ」
2人とも乗り気と言うほどではないが、普通に同意が得られてしまった。
あまりそう言う趣味があるようには見えていなかったのだが。
「んまぁ……そう言う文化があったというか……」
「先達に愛を教えられることで人格的に成長することができる……と言われていた時代があっての……」
「子供を作ることが目的でない行為こそが最も愛に近い、ってことで、同性愛が持てはやされた時代があったんだよ」
なんてすばらしい時代なのだろうか。
その時代にいたならば、あなたは無尽蔵に愛を振りまいたことだろう。
相手の方から、すてき! 抱いて! と来てくれるなんて……!
「あんまり見たくないのう」
「見たくないっつーか、近くにいたくもないねぇ」
ひどい言われようである。
まぁ、2人はそれなりの期間この学園にいるのだろう。
ならば、まずはロモニス冒険者学園の生徒を落とすことを優先したい。
「ほどほどにの、ほどほどに。無理強いはいかんぞ。それと優しくしてやるのだぞ」
「同意取るんだよ。どうしても我慢できなくなったら、あたしらんところに来なね。相手してあげるから」
「儂のところでもよいからな。儂ら相手なら、ちょっと乱暴なことしても怒らんでやるから」
優しく諭されるように肯定されてしまうと、微妙に居心地が悪い。
いつもはやんわりとした否定か、冗談交じりの暴言なので。
あなたはなんだか背筋がむず痒い気持ちになりつつも、ナンパに向かうことにした。
あなたは全力大回転でナンパに明け暮れた。
あの手この手で同意を取るのに奔走した。
そして、3日の間に全女子生徒をいただくことに成功したのだった。
「30人もいないとは言え、3日で全員……」
「……これ下手したら退学案件なのでは?」
あなたは手は打ってあると答えた。
「手を打つ時点でおかしいというか……ま、まぁ、いいわ。なにをしたの?」
ロモニス冒険者学園の学園長もメスにしておいた。
サムズアップと共に笑顔であなたはそのように宣言した。
「より致命的な問題を起こしてるけど、たしかにそれで解決しそうなのが……」
「トップに話をつければいいというのは、まぁ、そうですね……」
「まぁ、予想された結果ではあったかしらね」
あとは、後輩のレナイアにも手を打ってもらった。
あなたを脅迫して肉便器にしていたレナイア・アルカソニア・イナシル・バトリー。
マフルージャ王国においては名門で知られる貴族家出身の少女だ。
あなたになんでもしていい券10枚つづりのプレゼントで話をつけてくれた。
「ああ、彼女にね……彼女、昨日は講師のエルマに土下座してヤらせてくださいって頼んでたわよ」
土下座しての懇願とは。
それはそれで楽しそうだ。
あなたもやろうと決意した。
エルマに優しくされるのは物凄い破壊力がありそうだ。
なにしろエルマの見た目は年下。
つまりは、ロリお姉様のエッチな個人授業……!
なんて滾る言葉なのだろうか。
あなたは補修まで受ける気満々だ。
「やらないでよ……」
「えっちな個人授業かぁ……」
「サシャ、あなた……」
「えっ、いやっ、や、やらないですよっ。そんな、土下座してまでなんて……!」
「そ、そう?」
まぁ、受けれるなら受けたいようではあるが。
あなたはその辺りは指摘しないでおいた。
しかし、対抗演習は本当に楽しかった。
来年は向こうの学園に出向くことになる。
まったく、来年の対抗演習がいまから楽しみでならない。
「来年はこの女たらしと、あのイカれ女漁りのレナイアが行くのよね?」
「もう退学沙汰になるのが目に見えていますね……」
「むしろ、ならない方が不思議と言うか」
そして、ロモニスには3日ほど滞在することになるだろう。
その際には、ロモニスでもいろいろとやっておきたいところだ。
ロモニスは王都から最も近い冒険者学園のある町だ。
ついでに言えばスルラの町からもなかなか近い位置にある。
サーン・ランドで孤児院や寡婦の家を設立したように。
あなたはスルラの町や、王都、そしてロモニスでも同じことをするつもりだった。
そのためにもロモニスの町の権力者層とは顔を繋いでおきたいところだ。
「寡婦や孤児の問題が大幅に解決するのはいいことなんだけど。いいことなんだけどね?」
「いいことなんですけどね。ええ、いいことでは、あるんですよ……いいことでは……」
「これを素直に褒めていいかと言うと、たぶん褒めちゃいけないんですよね」
あなたもまさにその通りと頷いた。
実質あなたのハーレム施設を作っているようなものだ。
まぁ、寡婦や孤児が救われるなら、それでいいのではないか。
「開き直ったわね」
「まぁ、寡婦や孤児が助かってるのはたしかですし」
「そもそも、そこらの寡婦の家や孤児院で似たようなことがないかと言うと。はい」
「そうですね……援助の代わりに体をなんて話よくありますからね……」
フィリアが暗い目で頷いた。
聖職者として、そう言った闇は垣間見て来たのだろう。
あなたの運営する寡婦の家や孤児院は違う。
たとえ、あなたのナンパ全拒否でもちゃんと援助をする。
あくまで、生活に苦労する寡婦に援助したい気持ちで始まっているのだ。
ただ、寡婦がお礼としてベッドの上でもてなしてくれるなら喜ぶと言うだけで……。
「う、うーん、グレーゾーンですね」
「まぁ、お姉様なら一般人にはそう無体なことはしないですしね」
ちなみに、フィリアは度々あなたの運営する寡婦の家や孤児院に説法に行ったりしている。
そのため、EBTGのメンバーでもっとも運営実態をよく知っているだろう。
サシャもいずれは寡婦の家や孤児院に遊びに来て欲しいものだ。
「うーん。私が教えられることなんて読み書きくらいしかないですよ?」
べつに何か教えを施さなければいけないわけではない。
機会があれば来て欲しいと言うだけだ。
もちろん教えを施したなら、その分の代金は払おう。
フィリアにも孤児や寡婦に回復魔法を施してもらったら代金は払っている。
「なるほど」
ついでに寡婦や孤児に歓迎のもてなしをしてもらっても構わない。
「……なるほど」
特に経験豊富な寡婦のお姉様にもてなしをしてもらうのがいい。
あなたはサシャにそっとメモを差し出した。
「メライア、ネレーナ、セルエンナ……女性の名前ですね?」
元娼婦の寡婦だ。身請けされたが、夫に先立たれたのである。
この3人ならば、店を通さずに娼婦相手の作法と流儀を学べる。
「なるほど……」
サシャが娼館遊びをするようになるかは分からない。
だが、同性ならノーカンと言う言葉もこの世にはあることだ。
サシャが娼館遊びをしても、実質的になにもなかったのと同じこと。
そう考えれば、あなたに遠慮する必要はないことが分かる。
あなたを相手にする以外の経験も積むのはいいことだ。
サシャとメアリの交合を傍から見ているのは脳が焼けるような焦燥感があって心地いいのだ。
それと同じように、寡婦のお姉様がたに可愛がられるのは、いろんな意味で実によい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます