2話
モモを可愛がってみると、なにやら妙に慣れていて不思議だった。
指を挿れるぞとなったら、すんなり指が入るくらいに力を抜くことができる。
女の子の体が初体験なはずなのに、ある程度の熟練感があった。
謎だが、モモロウが男だった頃は非処女だったからだろうか?
受け側だったら、これくらいは朝飯前なのかもしれない。
ゲイの少年を少女にして食うのは初めてなので興味深い。
「はぁ……すげーよかった……」
などと悦に浸るモモ。
満足してくれたならあなたも鼻が高い。
「あいつらが秒であんたに落ちたのも納得だわ……マジですげーのな……ばかになりそ……」
などと言いながらあなたの胸に甘えるモモ。
しかし、この少年はいったいどれほどにメスだと言うのか。
初手であそこまで女の子らしい元少年は初めてだ。
既に生粋の女の子を上回るほどの女の子らしさだった。
時として、男の方こそが女らしくなるという。
それは男だからこそ女らしさがよく見えているとか。
男だから男に対して女らしさをアピールする方法が分かっているとか。
いろいろと理屈はあるが、そう言うことがある。
なるほど、ゲイの少年を女の子にするとこんなに楽しめるのか……。
男の子同士で恋愛する者たちをあなたは祝福するが。
こうまで楽しめるとなると、主義を曲げてゲイも女の子にして食べてしまいたくなる。
「んん……なんだよ……俺以外のやつのこと、考えてるだろ?」
モモの非難がましい声に、あなたは苦笑する。
なんでバレたのだろう。どれだけ目敏いのか。
「俺のこと以外、考えられなくしてやるよ……ブツはなくなっても、指と舌はそのまんまなんだぜ?」
そう言って桃色の唇の隙間から、ちろりと赤い舌を覗かせるモモ。
鋭い八重歯の白さも相まって、ひどく蠱惑的に見えてしまうほどに、赤い。
モモロウがあなたの肩をやんわりと押して、ベッドへと押し倒す。
その名にふさわしい桃色の髪を揺らしながら、モモが顔を寄せて来る。
桃色の髪のカーテンがあなたの顔を覆い隠して、その口づけの淫靡さを密やかなものとした。
「少なくとも、アトリより上手いぜ。賭けてもいい」
なるほど、それは期待できるとあなたは笑った。
では、お手並み拝見といこう。
すごかった。ふつうにそうとしか言えなかった。
アトリより上手いどころではなく、アトリが束になっても敵わないほどに上手い。
下手すると、今までベッドの上でバトルした相手の中でもトップかもしれない。
心地よい気だるさに包まれながら天井を見上げるあなた。
隣で得意げな顔をしたモモがあなたを胸へと抱き寄せている。
その体躯に相応しく小ぶりな愛らしい乳房が妙にやらしい。
この出来たてほやほやの愛らしい膨らみを愛でられると、モモロウはたちまち女の子になってしまう。
たぶん、男だった時から乳首もやらしく育てられたのだろう。
トモの手によって調教され、育てられた性感。なにやらムカムカするが、妙にムラムラもする。
これもある種の寝取りだろうか。あなたは訝った。
「あ……日暮れか」
ふと窓の外に目をやったモモが、時間に言及した。
そう言えばもうそんな時間だ。おなかも空いている。
あなたはそろそろ夕食にしようかと言った。
もちろん性臭を漂わせたまま食堂には行けないので、まず風呂だが。
とは言え、男子生徒と言う認知のあるモモをいきなり女子浴場には連れて行けない。
なので、まずは修練場近くにある屋外シャワーで身を清めることになる。
鎧着用のまま泥と汗を一気に洗い流す荒っぽい設備なので、水しか出ないのだが。
まぁ、そう何回も使うわけではないので、1回や2回は我慢のしどころだろう。
「そうだな。服着るか……これからは何憚ることなく堂々と女子制服着るんだな、俺……」
床に散らばっている服を拾い上げ、身に着けだすモモロウ。
なんのつもりかは知らないが、モモは入学当初から女子制服を着用していた。
渋々なところを隠そうともしていなかったので、大方はトモからの指示なのだろうが。
「まぁ、むかしちょっとな……特級狩人になるにあたって、結構無茶してもらったから、代わりになんでも言うこと聞く権利を3つやったんだ」
あなたならソッコーで3つ使ってモモを女の子にしていたことだろう。
「ああ、トモちんはそれをソッコーで2つ使って、俺に女装を強要すると同時、俺にケツを差し出させた……」
なるほど、ふつうに擁護のしようがない。
と言うか男同士だからこそ聞いている分には笑えるが。
これが男女だったらふつうに笑えない話だろう。
「俺たちがロクでなしだから相対的にまともに見えてるだけで、トモちんも割とロクでなしの部類に入る人間だからな……」
それはそう。物腰が柔らかだったりするので案外そうは見えないが。
昼間から飲んだくれている面々に何も言わずにいっしょにいるのだ。
ふつうならちょっとした苦言くらいは呈するだろうが、それもしていない。
彼自身は飲んでいなかったが、程度は違えど大概ロクでなしだろう。
「まぁ、そう言うわけだ。そう言うわけだから女装は慣れてんだ……へっ……」
アトリらが言うところでは、女装とは最も男らしい行為だという。
特に、女装しながらトコロテンするのがこの世で最も男らしいという。
あなたはトコロテンと言うのがなんなのかは知らない。
が、彼女らが言うくらいだから大方ロクでもない意味なのだろう。
「いや竹」
なにが竹なのだろうか。あなたは意味が分からず首を傾げた。
しかし、それ以上に言及するつもりはないらしく、モモは着替えを続行した。
あなたも服を身に着け、食事に行くとしよう。
「あ、そう言えばさ。あんたの下着ってどこで用立ててんの? 俺も下着用意しないとだよな……」
あなたは自分の屋敷のお針子に作らせていると答えた。
が、自分でも作れるので、よければ用立てようかと提案した。
「お、いいの? 簡単な裁縫なら自分でもできるんだけど、さすがにそのレベルは難しくてな……そうしてくれると助かるわ」
もちろん構わない。それにあたって採寸が必要だ。
その採寸のため、入浴のあとに自分の部屋に来るようにと告げた。
「なるほどね。もちろん行くよ」
あなたは待っていると笑顔で答えた。
モモ1人だけ行かせたら可哀想なので、あなたも屋外シャワーへ。
そこでやたら水流が強くてしんどいシャワーで体を清める。
その後、着替えを済ませて食堂へとモモといっしょに向かう。
「今日の晩飯なにかな~」
などと鼻歌混じりのモモ。歩き方がしなやかで可愛い。
女になったばかりなのに、女の子らしい歩き方が妙にサマになっている。
何か既視感があるなと思ったが、メアリの歩き方に似ている。
考えてみるとハンターズのメンバーは身体制御の癖が似ているような気がした。
「そう言えば女になったから食事量変わったりしてっかな……? いや、でもうちのクソ女郎どもも大概食うしな……まぁ、とりあえず8割くらいで様子見っか」
夜半にお腹が空いたら夜食など作ってあげようではないか。
情を交わした夜半、2人で簡素な食事を向かい合って取るなどは気だるげなエロさがあってよい。
「なんとなくわかるわそれ……」
なんて話しながら食堂に入ると、モモの姿を認めたか、トモが勢いよく駆け寄って来た。
「も、モモくん」
「……俺、あんたの分も晩飯取ってくるから、先に席取っててくれよ」
おおっと、これは。
あなたは痴話げんかに巻き込まれていることを自覚した。
いや、そうなるだろうなとは思ってはいたのだが。
声をかけて来たトモのことを無視し、離れようとするモモ。
そして、それを追いかけようとし、すげなく袖にされるトモ。
「あ、あっ……」
まぁ、こう言ってはなんだが。
モモのことを放って男遊びしていたのが悪いだろう。
あなたもあんまり人のことを言える立場ではないが。
ちょっと立ち回りがへたくそだったのだろう。
「モモ、くん……そんな……」
捕まらないうちに席を取ろう。
あなたはいつもの定位置へと向かった。
いつもの定位置へと向かってみると、相変わらず空いている。
まぁ、この3年間でほとんど定位置だったので、みんな気を利かしてくれているのだろう。
そして、その定位置近辺に見とがめられずに座れるEBTGメンバーが3人揃っていた。
「あら、晩御飯はどうしたの?」
「今日って臨時のコックさんでしたっけ?」
あなたは端の席に座りつつ、モモが取って来てくれると答えた。
「……ついに彼にも手を出したの?」
「ええ……こ、拗れますよ絶対……モモロウさんにはトモさんって恋人がいるのに……」
「今からでも遅くないので戻してあげては……?」
あなたは1ミリも信頼がないなと思いつつも、申し出て来たのは向こうだと答えた。
モモがトモの男遊びに耐えかねて、自分も浮気することにしたらしいと。
「……男同士の痴話げんかに巻き込まれる女たらしの女、ねぇ」
「人間の関係性が意味不明で頭が混乱してきました」
「なんだかもうよくわかりません。ありがとうございました」
みんな混乱しているらしい。
実を言うと、あなたも混乱している。
って言うか、普通に巻き込まないで欲しかった。
だれも好き好んでこんなことに巻き込まれたくない。
男同士の痴話げんかなんてべつに見たくもない。
「じゃあ、断ればよかったじゃないのよ」
などというあまりに真っ当なレインの苦言に、あなたは眼を反らした。
そして、絞り出すように弁解の言葉を漏らした。
すまない……えっちなことをさせてくれるという申し出に激弱で本当にすまない……。
あまりにもどうしようもない意志薄弱ぶりであった。
あなたはしどろもどろになりながらもなんとか言い訳……弁解をした。
だって、モモロウが好きにしていいって……壊れるくらい好きにしていいって言うから……。
しかもトモも『ミラクルウィッシュ』のワンドで去勢……性転換させるつもりって言うから……。
あなたにとっては男が2人減って女の子が2人増える最高の展開だから……。
「……まぁ、あなたはそう言う人間だわ」
「そうですね……」
「ご主人様ですから……」
あなたに対する厚い信頼。ただしこの場合は、悪い方の信頼であった。
あなたはしょぼしょぼと顔をすぼめて、肩身の狭さに身を縮めた……。
「おまた。適当に取って来た」
あなたの前に、トレイに乗った料理が置かれる。
そして、あなたの隣へとすとんと座るモモ。
「よっ。おジャマすんぜ」
EBTGメンバーにも片手を上げて軽くあいさつをすると、夕飯を食べ始めた。
すでに振る舞いは1人前のレディーを名乗っても恥ずかしくないほど洗練されているモモロウ。
その食べ方も淑やかで、なんで今まで男をやっていたのか不思議なくらいだった。
ただ、量だけが1人前のレディーを通り越して10人前のレディーだった。
「……体だけじゃなくて心とか所作まで性転換できるの?」
「さすがに洗脳はよくないと思うんですが……」
「ご主人様……モモロウさんがいくらメスな男の人でも、本当にメスにしてしまうのはどうかと思います……」
あなたは自分は悪くない自分は悪くないと必死の弁解をした。
これに関しては本気であなたは1ミリも悪くない。
ただ、モモロウがなんか洒落にならないくらいに淑女なだけなのだ。
言っては悪いがフィリアやサシャよりもレディーな感じなのだ。
だが、これはあなたが悪いのではなく、モモがおかしいだけなのだ。
って言うかなんならモモをこうしたであろうトモが悪いに違いない。
なのであなたは悪くないと、必死で自己弁護を試みた。
モモに淑女調教を施しただろうトモが悪い。
そして、モモに性転換を決意させたトモが悪いと。
自分は悪くねぇ、トモが悪いんだと、あなたは声高に叫んだ。
「そうだそうだ。アイツが悪いよ。あんなやつもう知らんわ」
あなたの言葉に同調し、モモがそのように吐き捨てた。
それを聞いて、3人が神妙な顔を見合わせて、うなずいた。
「あなたが女である以上、そこの女たらしは絶対味方になってくれるわ。私もあなたの味方よ」
「トモさんが乱暴によりを戻そうとするようだったら、私もお力になりますよ。私、こう見えてもベテラン冒険者なんですから」
「あの、私にもできることがあれば……冒険者の経験はあんまりですけど、腕力なら自信あります!」
そう申し出て来るEBTGメンバーにモモが目を白黒させた。
「あ、ああ、なんか、ありがとう」
考えてみると、いまのモモは女の子。
すると、浮気性の彼氏に浮気されて、仲のいい女友だちのところに逃げて来た……。
構図としてはこういうことになる。なるほど、みんなが味方するのも自然と言えばそう。
あなたもモモのことはしっかりと守ってあげなくては……そう決意した。
軽く談笑などしながら夕食を和やかに済ませる。
そして、あなたとモモは既に入浴を済ませたのでさっさと就寝とお楽しみをすべく部屋へと向かう。
が、その前に立ちはだかったのは、やはりと言うべきかトモだった。
「モ、モモくん! おねがい! 話があるんだ!」
「…………」
トモの必死の言葉に、モモは一瞥もすることなく横を通り抜けようとする。
「待って! おねがい! 僕の話を聞いて!」
「い、いやだ! 離せ!」
モモの手を掴み、なんとか押し留めようとするトモ。
あなたは間に割って入り、乱暴に止めようとするのはよくないと諭した。
「で、でも……おねがい! 少しでいいから、話を……!」
「うるさいうるさい! トモが、トモが浮気するから!」
あなたはちゃんと浮気だと思っていたのかと、ちょっと思った。
口先では恋人と認めていないところのあったモモだが。
口ではともかく、内心ではトモと恋人同士と言う認識でいたらしい。
「あ、あれはちょっと、少しだけ遊んだ男の子だって言ったじゃない! お互いに手でして、ちょっと兜を合わせただけで!」
「嘘だ! 昨日だって、あんなに目で通じ合って、手だって握り合ってた!」
「それは、手は握ったけど、通じ合ったなんてそんな! キスしたのはモモくんだけなのに!」
「それも嘘だ! ランケスはキスしたって言ってた! 今朝だってランケスの部屋から出て来たじゃないか!」
「し、してない! してないよほんとうに! そんなのは真っ赤な嘘だ!」
必死で弁解するトモだが、これはどうもトモの方が分が悪いらしい。
と言うか、トモの動揺具合からすると、浮気の件はマジっぽいのである。
「さっきだって隣の席のギゼオと楽しそうに話してたじゃないか! ギゼオが席を離れた時、物欲しそうに尻を見てたのだって気付いてんだからな!」
「見てない!!」
それはあなたも見ていた。
たしかに物欲しげな顔をしていた。
偏見とか思い込みと言われたらそうかもだが。
隣の席の青年の尻をじっと見ていたのはたしかだ。
「だ、だいたい、最後までやらなければそんなの遊びみたいなものだよ!」
「最低! 不潔だ! トモは不潔だよ! おまえなんか! 触らないでくれ!」
ここに来て本番までだったらセーフ理論を持ち出して来た。
これを持ちだした時点で疚しいことがありありだと分かってしまう。
もはやトモの弁解は成功しないだろう。
今日は潔く引き下がった方がいいのだが……。
それが分かるような冷静さはたぶん今のトモにはない。
冷静なら本番まではセーフなんて詭弁は持ちださないだろうし。
「本当なんだよ! だって僕はモモくんがいちばん好きだから! モモくんに夢中なんだ! 本気なんだってば! 信じて!」
「うるさい嫌だ! 触るな変態野郎! おまえなんか嫌いだ! 最初だって、おまえは無理やり俺の尻を掘ったじゃないか!」
「あれはモモくんがなんでもいうこと聞くって言ったからじゃないか!」
「それでも無理やりだったのは確かだ! もう俺に構わないでくれ!」
あなたはモモが手酷くトモを袖にしそうな気配を察知した。
そこまで言わせてしまうと、完全に拗れてしまう。
あなたはそこで力強く手を叩いて音を響かせた。
パンッ! と火薬に火がついたのにも似たような音だ。
それに思わず気を取られた2人があなたへと顔を向ける。
モモがトモの手を振りほどいた。そして、あなたへと駆け寄る。
「悪いけどな……俺と彼女はもう……こういうことなんだ」
そう言ってモモがあなたへとキスをして来た。
これはいけない……と思いつつも、思わず応じてしまうあなた。
モモがあなたを抱きすくめ、奪うように深くキスをして来た。
「あっ。あっ、あっ……」
トモが唖然とした声を発し、なにやら手を伸ばして来る。
その間にも、より一層強く深く絡み合おうと腕を絡めて来るモモ。
モモとのキスは、かなり気持ちいい。舌使いがものすごく上手いのだ。
この舌使いでトモにご奉仕していたのかと思うと、なんか変な興奮が沸いて来る。
「はぁ……そう言うわけなんだ。トモさん、俺にはもう構わないでくれないか……俺は……この人の女になったから……」
「そんな……まって、よ……僕は、そんな、つもりじゃ……ただちょっと、遊びたかった……だけで……」
「…………じゃあな」
「あ、ああ……そんな……そんなぁ……! う、うわぁぁぁああああ――――!」
トモが床に突っ伏し、絶望の声を発した。
あなたは狼狽していた。そんなつもりじゃなかった。
ちょっとクールダウンさせようとしただけだったのだ。
間違っても、トモにトドメを刺してやろうなんて思っていたわけじゃない。
あなたは呆然としながらも、モモに引きずられていくしかなかった……。
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