第20話

 あなたはサシャとドロドロのグチャグチャになるまで愉しんだ。

 結果、サシャが完全にダウンしてしまったので、予定通り冒険は明後日からとなった。


 1日中献身的に世話してやり、夜にヤリ納めに1発……いや、2発……3発……いや、5発、10発……。

 ともあれ、ヤリ納めも無事に終え、お互いのコンディションも完調であなたとサシャは冒険者ギルドに出向いた。


 冒険者証を提示すると、まずあなたはギルドで注文していた指輪の冒険者証を受け取った。

 注文していたのをすっかり忘れていたが、携帯しやすい冒険者証を注文していたのである。

 あなたは空いている指に指輪を付け、同様にサシャにも指輪を渡してつけさせた。


 それからあなたは、自分の強さを簡単に証明できる依頼を請けたいと伝えた。

 エルグランドなら、アホの英雄志願様と虚仮にされそうな要求だったが、たぶんここならいけるだろうと踏んでのことだ。

 実際、受付嬢は特に馬鹿にしたような様子も見せずに少し考え込むような仕草を見せた。


「強さを証明できる依頼……ですか。それですと、仕事ではありませんが、認定試験がございますが」


 認定試験とは?


「認定試験とは冒険者の強さの概ねを測る試験です。通常は依頼の実績などから判断されますが、前職が騎士や傭兵であると言った方のための制度です」


 なるほどとあなたは頷き、それはどのようにすれば受けられるかを尋ねた。


「受験料は1人銀貨2枚となっております。ギルド職員との試合を行っていただき、それでおおよその強さを判断致します」


 そんな簡単なことでいいなら自分とサシャの2人が受けるとあなたは伝えた。

 銀貨4枚を支払うと、受付嬢に案内されて、試験会場と言う名のギルド併設の広場へと連れていかれた。

 出迎えたのは、筋骨隆々の男性。上半身裸で大変むさくるしい。まぁ、冒険者とはこんなものだが。


「ほう、嬢ちゃんが試験を受けるのか。威勢がいいな。ルールは簡単だ。好きな武器を使って相手をぶん殴って、参ったと言わせた方が勝ちだ。殺すのは厳禁だが、まぁ、安心しろ。殺しやしねぇさ」


 とてもシンプルで、それゆえに分かりやすいルールだった。

 広場にはあちこちに木で作られた模擬武器が樽に突っ込まれており、それを自由に使えと言うことらしい。

 あなたは近場にあった樽から木剣を取り、自分はこれでいいと伝えた。


「準備はいいんだな。なら、ジェラの姉ちゃん、合図を頼むぜ」


 受付嬢のことだろう。ジェラと呼ばれた受付嬢は頷き、腕を上げた。


「では、初めて下さい」


 その腕が振り下ろされると、あなたと男性はお互いに動かなかった。


「どうした? 来ないのか?」


 その前にあなたはひとつ質問をした。

 殺すのが厳禁とのことだが、自分側は殺しても構わないのかと。


「ほっ、本当に威勢のいい嬢ちゃんだ。万一にもんなことはねぇが、意図的に殺さなきゃ大丈夫だ」


 なるほど理解したとあなたは頷く。

 そして、あなたは男性に向かって歩いていき、無造作に片手で剣を振った。

 男性は苦笑交じりにそれを受け止め、手にしていた木剣が木っ端微塵になった。


「は?」


 あなたは無傷の自分の木剣で、男性の胸、腹、首をちょんちょんと突っついた。

 が、気付かれなかったのか、それとも武器の不備だとでも思ったのか、男性は反応しなかった。


「ちょっと待て、代わりの剣を取って来る」


 そう言って男性が剣を取って来て、試合が再開される。

 もっと分かりやすく勝った方がいいのだろうか?


「さっきの剣はなかなか悪くなかったぜ。今度は防御を見せてもらうか」


 男性が剣を手に襲い掛かって来る。あなたはそれを指で摘まんだ。

 ピタリと剣が止まる。


「おっ、おっ!? 凄い力だ!?」


 ピクリとも動かない剣。必死であなたを持ち上げようとするが、あなたは持ち上がらない。

 見た目にはそう見えないが『ポケット』に大量の荷物を入れているあなたの重さは凄まじい。

 あなたのことを持ち上げられるのは、あなたと同格の筋力を持つ冒険者だけだ。


 代わりにあなたは剣を介して男性を持ち上げた。


 降参するか? そう尋ねる。


「い、いや、こんなはずは」


 降参しないようなので、あなたは男性を地面に叩き付けた。

 骨が何本か折れた感じがしたが、致命傷ではないので問題ないだろう。


「お、おめでとうございます……大変お強いんですね」


 受付嬢に祝福され、あなたは微笑んでありがとうと応えた。

 いつもならナンパするが、冒険者ギルドの人間はナンパしないとあなたは決めている。

 色々と面倒だからだ。エルグランドで1度ナンパしたが、損な依頼ばかりやらされた。

 まぁ、依頼が終わったらベッドで待ってるわ、とか言われれば、どんな損な依頼でも熟したあなたの自業自得だが。

 それだけに毎回死ぬほど愉しんでやった……と言うか、実際に毎回受付嬢は死んでいたのだが……。

 それを加味しても、元が全然取れないと思うくらい損な依頼ばかりやらされたのである。


「次はサシャさんの試験ですが……あの、大丈夫でしょうか?」


 白目を剥いて気絶している男。手足も変な方向に曲がっている。

 あなたは魔法でさっさと傷を癒すと、男の顔を引っ叩いて起こしにかかった。


 無事に目が覚めたのでサシャと戦わせる。


 サシャは善戦した。身体能力は十分なものがあるが、技量が未だ未熟なので仕方ない。

 粗削りな荒々しい剣技で戦うサシャの姿は微笑ましくもあり、受付嬢も微笑みながら見ていた。

 問題があるとすれば、サシャは既に熊と戦って勝てるレベルの身体能力を得ていることだ。

 その膂力たるや、たとえ木剣であろうと掠った部位を抉り飛ばすほどの威力である。

 1発でもまともに当たったら死ぬと気付いた男性は必死だったが、あなたはそれを含めて笑いながら見ていた。

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