14話
神様と喧嘩できる6人のメンバーを連れて、あなたはソーラスへと帰った。
そして、修行するメンバーたちに6人を紹介した。
つまり、これから皆さんを
「どういう紹介の仕方やねん」
モモに呆れられてしまったが、実際に嬲り殺してもらうつもりだったので……。
「レウナさん。お久しぶりです。お元気ではなさそうですね。お悔やみ申し上げます」
「当人に向けてお悔やみ申し上げますと言うのはなにか違わないか? いや、まぁいい……おまえはそう言うやつだ……」
そう言ってデカデカとため息を吐くレウナ。
そうだとは思っていたが、ジルとレウナは知り合いだったようだ。
「しかし、随分とすごいメンバーを連れて来たではないか。この6人で都市を落とせるぞ」
レウナが言う通り、この5人が居ればその程度は容易いだろう。
やるやらないは別として、それを実現できる能力はある。
それはとりもなおさず、成長をするための壁として最適な相手と言うことだ。
「……いや、俺をそのメンバーに含めないでもらえるか!? 6人じゃなくて5人と言え、5人と!」
ケイが力強く宣言するが、言うほどケイも弱いわけではない。
まぁ、もちろん強いわけではないが。ふつうに一流冒険者クラスの戦闘力はある。
魔力量も結構なものがあるので、おそらく魔法も使えるのだろう。
たぶん、今のEBTGメンバーくらいの戦闘力で、サシャと同格くらいか。
他の4人に比べて随分と見劣りする戦闘力と言うのはたしかではあるが。
「アルトスレアの腕利き冒険者を連れて来るとは、また豪快な……あなたは覚えがあるわ。ジル・ボレンハイムだったわね」
「はい。『
「でもそれは世を忍ぶの仮の姿なんだよね、ジルくん!」
「はい。私は世を忍ぶ仮の姿がざっと200くらいあるので」
「いくらなんでもありすぎだよ!」
などとノーラが驚いている。
たしかに世を忍ぶ仮の姿が200もあるのは多い。
「ええっと……私はノーラ。ノーラ・アルマンタインだよ。オベルビクーンの地の冒険者学園の学園長さんをやってます、よろしくね」
そう言ってピースをするノーラ。
以前に会った時も思ったが、どことなく仕草が幼いというか、稚気があるというか。
見た目は長身で涼し気な美貌の美女なのだが、物腰に幼女めいたところがある。
それが奇妙な愛嬌となって、妙に親しみを感じさせる得な人柄である。
なおこの態度、演じているとかではなく、たぶん素だと思われる。
「他の皆はもしかして、既に知り合い……なのかな?」
「まぁ、はい」
「前にいっしょにバカンスしたぜ」
「えー! ずるい! ずるいよケイくん! なんで私も連れて行ってくれなかったの!」
「卒業式前で仕事が忙しいようってびぃびぃ泣いてた時だけど?」
「うえええ……ずるいよう……」
そう言えば、アルトスレアの卒業式は3月か4月ではなく9月が大半だ。
翻って、入学式なども9月近辺に行われるので、ちょうどここらとは時期が反対と言うことになる。
「さて、ノーラの自己紹介さえしちまえば、後はいいだろ? さっそく修行、はじめようぜ。まずは……ジル」
「はい。私は洞察します。サシャさん。ファイター7、ウィザード5。これ以上ないってくらい順当に魔法戦士やってますね。非効率ではありますが、やはり習得呪文リストの豊富さで総合術師に勝るものはありませんので、それはそれでありでしょう。意思セーブを補強するという意味でもウィザードとのマルチクラスは正当ではあります。まぁ、呪文失敗率は妥協して重装備をし、ワンド経由で呪文を発動する形式にした方が戦闘力は高まるとは思いますが……あなたのファンビルドみたいなものと考えると、たしかにこれしかないかなと言う感はありますね。まぁ、私がとやかく言うようなことではないのでしょう」
ジルがサシャを見てそのようにさらりと総評をしてくれた。
なるほど、まずはジルの見識で全員の戦闘力を順当に見抜こうとそう言うことなわけだ。
「レインさん。ウィザード13。人間のウィザード。安心感しかありませんね。特技が1つ多くもらえるのはやはり強いです。イメージ的にエルフのウィザードはロマンがありますが、やつら貧弱なのでHPが少ないというクソデカ十字架を背負っていらっしゃるので。さておき、順当かつ純然にマジックユーザーとしての能力を高めるという意味ではウィザード1本伸ばしは分かりやすいですね。博打うちになるとか、幾何学を勉強するとか……道は色々ありますが、誰もが自由にクラスを選べるわけではないので、妙なクラスを取らない純ウィザードは安心感があるのはたしかですね」
「フィリアさん。クレリック11、パイアス・テンプラー・ナイト4……これ、テンプラーとかパイアス・テンプラーと若干違うみたいですね。察するに、クレリック用上級クラスで、呪文発動能力がそのまま上がるタイプのクラスですか。クレリックの元々高めのベースアタックボーナスをさらに伸ばしつつ、『一撃』がもらえるのはずるいと思います。信仰はザイン神……ザイン神は中立にして善の戦いと名誉の神でしたね。好む武器はバスタードソード。選択した領域は……戦と幸運。なかなか……いや、メチャクチャ強いですね。追加領域が2個あったり、治癒能力爆上げのモヒカンなんかに比べるとやや見劣りする感はありますが、文句なしに強いです」
「レウナさん。プリースト15、モータル・サーヴァント・オブ・ラズル8……最後のは言わないでおきます。順当にプリースト1本伸ばしに加え、神格専用クラス……しかも神格が超高位神格と来た。まぁ、対アンデッド能力以外は順当に呪文発動能力がそのまま上がる、なって損はない感じかなってクラスなんですけどね。対アンデッドになると突然狂ったような強さの能力をデリカテッセンでも買ってんのかってくらい気軽に突っ込んできますが。しかもアンデッド退散の2回消費で使える『アンデッドを討つ一撃』がヤバ過ぎる。なんですか、アンデッド専用とは言えクラスレベルごとに5ポイントの追加ダメージって。しかし、そんなアンデッド絶対殺すマンの信徒なのにリズンするのはアリなんですかね……?」
総評が終わり、ジルが大きく溜息を吐いた。
「なんと言うか皆さん順当に強くなるしかないような感じですね。訓練あるのみと言うべきでしょうか。やるしかないでしょう」
総評は終わりのようだ。そして、ジルとあなたの意見は一致していた。
とにかく鍛えて鍛えまくるしかない。それ以外に楽な道などない。何事も努力あるのみだ。
「まぁ、手立てがないわけではないんですが、幾何学術師とか運命を紡ぐとか、どうやったらなれるんだという話なので。私ならキャラシに書くだけなのですが……レインさんに博打うたせまくっていいですか?」
大酒飲みに加えて博打うちにまでなったら人間レベルが下がり過ぎるので却下だ。
「ですよね。では、順当に鍛えて強くなるしかありません。一通り訓練したら、実戦と行きましょう」
実戦とは。
「そりゃもう強い相手と戦うだけです。幸い、この大陸には迷宮とか言う代物があるので強敵には事欠かないのでしょう?」
あなたは頷いた。6層と7層はともかく、5層と8層はそれなりに強い敵が見込める。
以前に戦ったラセツの首魁であろう存在はかなりの強さの持ち主だろう。
それを討伐したり、そこに辿り着くまでの冒険で得られる経験は多大なものになる。
ここで基礎訓練をした後、5層までのアタックを目的にするというのはアリだろう。
「では、はじめましょうか。まず、皆さんの各種技能の度合いを確認するためにも、手合わせからで」
それがいいだろう。
あなたは運動場にしている整地済みの地面に皆を案内する。
そうした後、あなたは出かけて来る旨をみんなに告げて家を離れた。
思った以上に大人数を雇うことになったので、家が狭いのだ。
あなたは自宅を建ててくれた木工細工師であるティーに再度依頼をしに出向くのだった。
「お、お久し振り。その後、家はどう? 不具合とかは?」
ティーの家を訪ねると、すぐにティーが出て来た。
そして、あなたに家の具合を尋ねてきた。
あなたはなにも不具合はないと答えた。
実際に不具合は何もなく、住み心地は快適だ。
魔法による突貫工事にも関わらず、十分上等な家になった。
「それはよかった。さて、それじゃ今日は何の用事かな? 木工細工から、使用人たちの散髪、パーティーの助っ人料理人までなんでもござれだよ」
そう言って、一見して小さいが、体格比で言えばかなり大き目な胸を張るティー。
人間の半分くらいの体躯なので子供のような印象があるが……。
人間と同等の体格があった場合、ティーはおそらく身長170センチ超、バストも90センチ超えの美女だ。
さておき、あなたはティーに増築の依頼を頼んだ。
急遽人数が増えてしまったので、その寝泊まりができるちゃんとした部屋を。
それにあたって、食堂部分も増築したいとの旨を告げる。
「ははぁ、なるほど。今回は特急ってわけじゃないんだね?」
あんまり悠長にやられても困るが、今日明日に完了して欲しいとまではいわない。
招いた相手に失礼ではあるが、全員冒険者でもあるので多少の不便も許容してくれるだろうし。
「オッケー。じゃあ、今から現地で詳しい構造を詰めよう。特急ではなくても急ぎなら、早い方がいいでしょ」
それは助かるとあなたは礼を言う。
最悪の場合、『セイフティテント』で寝泊まりしてもらうことも考えていた。
そんなのは短ければ短いほどにいいのだから、早めにやってくれるに越したことはない。
あなたはティーを連れて自宅へと戻った。
自宅に戻ると、そこでは各々が色んなやり口で戦っていた。
サシャはモモロウに純然たる剣技と膂力でボコられているし。
レインはコリントの圧倒的過ぎる呪文投射能力でコテンパンにされているし。
フィリアはノーラの魔法と剣技を交えた闘技でメタメタにやられている。
レウナはジルに珍妙な戦技でなんだかよく分からない調子で地面を舐めさせられていた。
総合して言うとEBTGメンバーがボロ負けしている。
「おー……なんかすげぇことやってんねぇ。あの人らが逗留する人で、あの人らの意見を聞いて増築すりゃいいのね」
その通りだ。まぁ、物には限度があるので、無理なら無理でいい。
ただ、ティーが実現可能なのであれば、金に糸目はつけないので実現して欲しい。
「まぁ、今はとりあえず箱を広げないとね。食堂部分に関しては順当に広げるだけだし。居住スペース部分を増やすには家自体を広げる必要があるし……全体的な増築案を練るよ。少し待ってもらえるかな」
あなたは作業しやすい環境が家の中にあるのでそちらでと提案した。
スクロールやワンド作りの作業をしたり、写本をするなどの作業をする専用の部屋だ。
「ああ、あそこか。私が作った部屋だからもちろん覚えてるさ。じゃあ、そこを借りるよ。2時間くらいもらうよ」
あなたは頷いた。
ティーを送り出し、あなたはキッチンに入る。
なんだか家の中にいい匂いが漂っていたので気になったのだ。
すると、そこではエプロン姿のケイが料理に勤しんでいた。
射干玉色の長い髪を垂らし、ひと房ふた房が額に生えた立派な角にかかっている。
幾枚もの飾り布を垂らした独特の衣装と相まって、異国情緒漂う美少女である。
「ん? ああ、おかえり。今日はカレーだぞ。あ、カレーってわかるか?」
あなたは頷いた。エルグランドにもカレーはあるし、あなたも造れる。
「そう言えばそうだったな。モモとメアリがよく食べるからな。やっぱり量を作りやすい料理に傾きがちでな……」
言いつつ、スプーンを取り出してそれを鍋に突っ込むケイ。
そして、そのスプーンをあなたへとそっと差し出して来る。
「お味見よろしく~。あ~ん」
女の子からのあーんがされては食べないわけにはいかない。
あなたは喜んでそれを食べた。
すると、口の中に広がるスパイシーな香り。
それでいてマイルドな旨味に溢れた味が舌で踊る。
これはうまい! あなたは素直に驚いた。
まだ煮込み始めたばかりだろうに、ただ事ではない旨味がある。
あなたはケイのスパイスの扱いの巧みさに脱帽した。
これが煮込まれて、より美味しくなるのが楽しみである。
「ははは。大袈裟だな。主食はチャパティとライスをたっくさん用意しておくからな。いっぱい食べてくれよ」
そう言って朗らかに笑うケイ。
いろんな意味で夕飯が楽しみだ。
モモロウとの浮気えっちも楽しみだが、ケイも美味しく頂きたいものだ。
そして、かつてのアルトスレアではいただけなかったノーラも。
女たらしとして、招いた女はいただかなくては無作法と言うもの……。
あなたはこの訓練期間を終えるまでに最大限楽しむことを決意した。
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