4話

「えへ、えへへ……最高でした……リピ確実……! もう今から予約したい……!」


 カリーナをそれはそれはたくさん楽しませた。

 今日はたくさんしたい! と言う客は少なくない。

 なんかイケそう感がその時はあるのだ。


 やはりこう、10日くらい禁欲した後とか。

 そう言うタイミングでは、今日は10回はイケるな! とか思うわけだ。

 実際のところ、そんなにたくさん出来る客は少ない。


 だいたい1回か2回くらい昇り詰めると満足する。

 しかし、その気にさせていくのが娼婦の腕の見せ所だ。

 3回目、4回目、5回目と行くのがデキる娼婦だ。


 男だと物理的に枯れ果てるが、あなたは女専門。

 気持ちさえついてくれば、体力の限界までヤれる。

 そして、あなたは超腕利きの娼婦だ。

 足腰立たなくなるまでおねだりさせるなど朝飯前であった。

 たとえそれが、処女であっても、だ。


「さ、最高の初体験でした……!」


 そう、カリーナは初めてだったらしい。

 なんか娼館にすごい通い慣れてそうな雰囲気だったのに。


「ふ、ふふふ……! サイキッカーは未来を感じ取ったり、他の人の経験を読んだりするので、みんな耳年増……!」


 なるほど、いま思考を読まれた。

 こんな調子だったらたしかに耳年増にもなるのかも。


「まぁ、みんな、似たようなものですよ。みんな童貞か処女だけど、知識だけ豊富……悲しい連中ですね……」


 つまり、カリーナくらい積極的にあなたを買いに来る……!?

 なるほど、どうやら冒険者としてではなく。

 娼婦として忙しくなる時が来たようだ……!


「くぅ、毎日お買い上げしたい……! でも、さすがに財布に穴が開く……!」


 そう嘆くカリーナにあなたは囁く。

 お金のやり取り無しで、本番させてあげるよ? と。


「お、お店の女の子とプライベートで……! で、でも、みんなに悪いので……! まだの子が来たら、そっち優先にしてあげてください!」


 そこで譲れるとは、なんて道徳心の強い……。

 あなたはカリーナの優しさに驚き戸惑った。

 しかし、カリーナがそう望むならそうするべきだ。

 全員とヤれるならヤりたいという事情もある。


 まったく、これから忙しくなりそうだ……!




昨夜ゆうべはお愉しみでしたね」


 起き出していくと、広間でくつろいでいたカル=ロスにそのようにからかわれた。

 カリーナが顔を赤くして俯いてしまう。かわいい。


「まぁ、そのあたりはさておきまして。お母様、ごはんください。おなかがすきました」


 あなたは言われるがままに朝食を用意する。

 まぁ、調理設備がないので『四次元ポケット』から出すだけだが……。


「お母様……? えっと……?」


 カリーナに不思議そうな顔をされたので、あなたはカル=ロスとの関係を答える。

 義理だが親子であると。もちろんあなたの方が親である。


「……ええ?」


「ご安心ください! お母様はパネマジ無しとなっております! パネマジ無しでこのお肌の張りです!」


「いえまぁ、対面しておいてパネルマジックもなにもありませんけども……」


「そうですね。つまり、素でメチャメチャ若見えするんです」


「……あ、養子とのことですし、あなたがそれなりのお年の頃に養子縁組を?」


「いえ、赤ん坊の頃から育ててもらいました」


「……大人びて見えるけど、実はローティーン?」


「22歳、フリーターです」


「……???」


 カリーナが混乱しているが、あるがままを受け入れてもらうしかない。

 あなたはテーブルの上に朝食を並べ終え、さあ食べなさいと促した。


「慣れ親しんだふかふかパン……カル=ロスと同じパンですね」


「食費浮くんですよね。若かった頃は世話になったものです」


「でもゴミからふかふかパン作るのは勘弁してほしい……」


「なに言ってるんですか、体にいいんですよ。抵抗力がつきますからね」


 『アルバトロス』の言う通り、朝食は錬金術によるふかふかパン。

 そしてトマトベースの野菜スープだ。朝からしっかり食べようではないか。

 この大陸は暖かいが、今の時期は冬。朝方はなかなか冷え込む。

 そう言う時は、こういう暖かなスープが実に美味しい。


「あ、私もいただいていいんですか?」


 もちろんだ。カリーナもお腹いっぱい食べて欲しい。

 雑務主体らしいが、戦闘班なのだから体が資本だ。たくさん食べなくては。


「うう、優しい……ママみがありますね……次はおぎゃって行きたいですね……!」


 なにやら次のプレイ内容が決まったらしい。

 もちろんあなたは受けて立つ。

 よほどの特殊性癖でない限りは対応可能だ。


「あー、ところで話は変わりますが。カリーナさん」


「あ、ああ、はい。えーと……」


「晶と申します」


「はい、晶さん……なんでしょう?」


「このあたり、強力なサイコフィールドを感じますが、他にもサイキックが?」


「ああ、そうですね。『トラッパーズ』の多くがサイキッカーです……だれかの超能力の影響だと思います」


「なるほど……このレベルのサイキック、早々お目にかかれませんが……世界は広いですね。アポート系……でしょうか」


「そうですね。『トラッパーズ』は転送系が多いです……私みたいな感知系は少ないです」


「ふむ……」


 アキラがなにかを考え込み出した。

 まぁ、食事の手は止まっていないからとやかくは言わない。

 あなたは『アルバトロス』の皿にお代わりを注いでやりつつ、朝食を進めて行った……。





「おはよう。迷宮探しだな」


 朝食後、あなたたちはタイトの下へと出向いた。

 そこでは朝早いにも関わらず、さっそく仕事に励んでいるタイトの姿があった。


 この広い前哨基地の多くを差配しているらしい。

 次々と訪れる人に対応しては指示を出している。

 あなたたちへの応対まで数分待つ必要があったほどだ。


「魔法が使えるやつは」


 あなたは自分は使えると答えた。

 カル=ロスも使えるし、クロモリも信仰形の魔法を少しだけ使える。

 なんでか知らないが、ちょっとだけ使えるらしい。


「そうか。信仰系では占術系は不得手だろうな」


「私も探知系の魔法はほとんど使えませんよ。エルグランドの魔法しか覚えていないので」


「なに、おまえエルグランドの人間か」


「はい」


「……まともそうではあるな。この大陸の法を遵守しろよ」


「はい。ですが、私よりもこちらのお母様に言った方がいいですよ」


「親子か……順法精神を有していると見込んで言う。この大陸の法に従ってくれ」


 あなたは言うまでもなく頷いた。

 べつに法を破ってなんか得があるわけでもなし。

 いやまぁ、同性愛が違法だと言われたら余裕で法を破るが……。

 少なくとも、マフルージャ王国では違法ではない。


「同性愛がどうだは、知らん。俺の関知するところではない。人を愛すること。そこに正誤を見出そうとも思わん」


 正誤?


「男が男を好きになろうが。女が女を好きになろうが。異性同士で好きあうことと何が違う。人と人だ。異性愛者だろうが。同性愛者だろうが。人であることに違いはあるまい」


 なるほど、タイトはそう言うスタンスらしい。

 俺に関わりのないところでやれと、そう言うことだ。

 そう言う静かな肯定の方がありがたい。


「愚かな迷妄に惑うな。公理に基づく遵法の意思を持て。俺が求めるのはそれだけだ」


 まぁ、ここで問題を起こすつもりはない。

 なので安心して欲しい。向こうから喧嘩売ってきたら別だが。


「話を戻す。魔法が使えるのならば、占術で虱潰しにしていく」


 そう言ってタイトが机の上にスクロールの束を放った。

 開いてみろ、と手振りで示されたので開いてみる。

 すると、そこには恐ろしく簡素な呪文回路が描かれていた。


 周辺を探知する魔法だが、具体的になにを探知するか記述されていない。

 魔法は放射型で、円錐形の探知範囲を展開するようだが……。

 これでは範囲内に存在するすべてを探知してしまうような……。


「そのゴミのような占術魔法は、周辺を探知する。迷宮の入り口には占術が通らん」


 なるほど、そう言う。

 つまりだ、すべてを探知できる魔法で、なにも探知できない空間を探す。

 発想の逆転的な探知魔法だ。


「理解したな。護衛役を1人つける。スクロールを使い切るまで、指定エリアを探索してくれ。誰かヒマな戦闘班いるか!」


 あなたが探知するにせよ、クロモリと『アルバトロス』がいる。

 なので戦闘班の護衛は必要ないと思われるが……。


「戦闘班はマッピング係でもある。既にマッピングしたマップも保有している。不要か?」


 なるほど、たしかにそれなら必要だ。

 あなたは余計なことを言ったと謝罪した。


「いや。正しい意見具申だ。委縮する必要はない。謝罪もだ」


 そう言っている間に、集団で武具の点検などをしていた面々のうち1人。

 灰色の髪をした少女がこちらへとやって来た。


「ん……タイト、私、ヒマ」


「シュベーレか。チェンジ!」


「ん……」


 素直に引き下がっていった。

 チェンジするほどの理由があるのだろうか?


「あいつは……不思議な力を使うからダメだ。廃棄されたタンパク質の有効利用は……エルグランドの民と、最悪のシナジーがあるのでダメだ」


「不思議な力ですか?」


「気にするな。廃棄タンパク質を自主制作されてはたまらんからな」


「はぁ」


 なんだかよく分からない。

 不思議な力とはなんだろうか。

 気になるので後々教えてもらおう。


「そうだな……クリーブ! クリーブはいるか!」


 そうタイトが呼びかけると、集団の中から小柄な人が出て来た。

 あなたは思わずおおっと身を乗り出す。

 その小柄な少女は、この熱気林に不似合いなほどに美しかった。


 輝くような黄金の髪に蒼い瞳が鮮やかだ。

 小柄ながらも出るところは出ていて、締まるところは締まっている。

 顔の小ささも相まって、その豊満な胸は彼女の顔くらいありそうだった。

 背にはどでかい杖を背負っており、あからさまな魔力の気配がする。


「あーい、なに?」


「協力者の護衛役に就いてくれ」


「はいよ、おまかせ」


「傷ひとつ付けるなとは言わんが、無事に返せ」


「なーに、心配いらないって」


「任せる」


 そこでクリーブと呼ばれた少女があなたに向き直る。


「クリーブランデラ・アークス。よろしくね」


 あなたも名乗り返して握手を求める。

 すぐに手が握り返され、握手を交わす。


「後ろの人たちは?」


 あなたは『アルバトロス』チームとクロモリを紹介する。

 その上で、あなたはクロモリは探索に同行すると答えた。

 『アルバトロス』チームは……どうするのだろう?


「要ります?」


「邪魔にしかならないかもしれませんが……」


「大人しくここで待っているほうがいいかもしれません」


 まぁ、それはそうかも……。

 そう危険なことはないだろうし。

 それで護衛の仕事を放棄していいのかは疑問ではあるが。


「うん、護衛する私も、人数多いと大変だから……できる限り絞って欲しいかな?」


 クリーブからもそのように要望された。

 では『アルバトロス』チームは待機と言うことで。


「了解しました。こちらで待機の上、なにか仕事を探しておきます」


「刺身の上にタンポポ乗せる仕事とかないですかね」


「道路に軍手の片方落としておく仕事したい」


「町中の金網に空き缶差し込む仕事しなきゃ」


 それは仕事と言うのだろうか。

 まぁ、ただのジョークだろうが……。


「うん、じゃあ、出発しようか。マッピングは任せといて。ああ、昼は出先で摂ることになるから、お弁当の用意しておいてね」


 その心配は不要だ。任せておいて欲しい。


「さっすが、冒険者だね。じゃあ、行こう」


 あなたはクリーブにそのように促され、出発した。




 熱気林に分け入っていく。

 夜や明け方はまだしも寒いが、日中になれば普通に汗ばむほどの気温がある。

 額に流れる汗を拭きつつ、あなたはクロモリと共にクリーブの後をついて歩く。


「しっかし、このクッッッソ地味な作業をわざわざやる人がいるとはね~」


「新迷宮の発見は名誉なことではありますが……それほど少ないのですか?」


「名誉にでもしないといけないくらい、探す人が少ないからね~」


「なるほど……」


「まぁでも、新しい迷宮探して回るのは楽しいよ。このクソ暑い森ン中をうろうろしなきゃいけないのは大変だけどね」


「アークスさんは、この稼業は長いのですか」


「あーしのことはクリーブでいいよ。アークスって名乗ってるのは他にも何人かいるからね」


「それでは、私のこともクロモリとお呼びください」


「ありがとね~、クロモリちゃん。美しいあーしのこともフレンドリーに呼んでいいんだよ~?」


「ふふふ……ありがとうございます、クリーブさん」


 物腰柔らかで、非常に気さくで友好的。

 なかなか親しみやすい性格だが、ティーから教えられたまともなやつには挙がらなかった名だ。

 まぁ、100人を超える所帯ですべてを列挙できるわけもないし。

 単にクリーブが真っ先に候補に挙がらなかっただけなのだろう。


「君もなかなか可愛いし美しいよね。でもまぁ、残念ながらこの大陸じゃ2番目かな」


 クリーブがあなたを見て、そう評して来た。

 なるほど、では1番目はいったい? 非常に気になる。


「もちろん……あーしだよ。あたしの顔、超イイでしょ。存分に見ていいよ。寿命が延びるからね」


 そう言って胸を張るクリーブ。でかい。

 しかし、なかなかエキセントリックだ。

 まさか、テトラヒメナの別バージョンのような性格とは……。


「いつでも見れるように、ブロマイドをプレゼントしようね。はい、どうぞ」


「は、はぁ、どうもありがとうございます……?」


 あなたは差し出された写真を喜んで受け取る。

 なるほど、これは美しいし綺麗だ。最高である。

 欲を言えば、ヌードだったらもっと最高だったのだが。


「しょうがないな~、もう! はい、ヌード写真だよ」


 そう言ってクリーブが渡して来た写真は、たしかにヌードだった。

 残念ながらバストアップでの写真なので、肝心のところは見えない。

 だが、クリーブの豊満過ぎるふくらみが露わとなっている! これはこれで!


「見ての通り、あーしは最高に美しいでしょ? 世界で一番美しいからね。君もあーしの美しさ、分かってもらえたかな?」


 かなり分かって来た。最高。これは実に捗る。


「ああ、そうそう、その写真だけど。もちろんあーしのことを想って、ひとりえっちしていいからね。いや、しろ」


 では後ほどやらせていただこう。


「うんうん……分かってる、分かってるね! あたし君のこと好きになって来た! わかってるじゃん!」


 そう言って肩を組んで来るクリーブ。

 クリーブの甘い香りと、豊満な胸の重み!

 あなたは身悶えするほどの興奮に包まれた。


「最初はちょい面倒かな~、って思ったけど、わかってる人と仕事できるのはいいね! ねぇ、あーし美しいでしょ!」


 最高! 超美しい! 世界で一番美しいよ!

 あなたは全力でそう叫んだ。

 実際、そんな自意識過剰なことを言っても許される程度にクリーブは美しかった。


 さすがに世界一位は過言かもしれないが。

 それでも世界屈指と言っていいレベルに美しいだろう。

 体形の豊満さも相当なものだ。まぁ、そのあたりは人の好き好きもあるが……基本、巨乳は全人類好きなはずだ。


「んふふ~! 君、いいね! 今晩いっしょにご飯食べようよ! あ、クロちゃんもいっしょに!」


「は、はぁ。では、お招きに与ります……」


「あーしがうまいもん食べさせるから楽しみにしてて! んふふ~!」


 上機嫌なクリーブ。

 美少女が上機嫌だと美少女ぶりが上がる。

 あなたは大いなる満足感を抱きながら熱気林を進む。


 晩御飯を食べた後、その流れでベッドにしけこみたいところだ。

 うまく行くことを祈りたい。


 さすがにリンほどはなさそうだが……。

 あの物凄いおっぱい、ぜひとも堪能したい。

 夜が今から楽しみだ……。

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