14話

「私は、ちょっと年嵩に見られがちなので、より若い方がまだ相応かと……」


「いえ、まだです。まだ。もっと、もっと欲しいです……」


「ああ、そうです。これです、これくらいが欲しかったのです」


 あなたとギールの激しく乱暴で、それでいて押し潰すように気持ちいい交合。

 あなたはそれを堪能し、ギールは打ち込まれる激しい快感に打ち震え。

 そうして1発1本の要領で与えた若返り薬をギールは欲張りまくった。


 若返りの薬は以前に話したように、およそ2~3歳ほど若返る。

 その時の体調とか、薬の微妙な量の差とか、飲み方とか。

 いろんな要因が影響して、若返る度合は一定ではない。


 そもそも年齢なんて見た目で正確に測れるわけではない。

 15歳0日と15歳364日ならばそれなりに差もあるだろうが。

 20歳0日と20歳364日では、ほぼ誤差程度の差だろうし。

 もっと言ったら、25歳と27歳で顕著な差があるかと言えば否だ。


 そんなわけで、欲張ってもあんまり意味のない薬なのだが……。

 ギールは欲張りも欲張ったり、なんと5本も若返りの薬を追加で飲んだ。

 ブレウよりもさらに若く、サシャと同じか……下手すると年下なのではないだろうか。


「これくらいの外見なら、妻と釣り合うでしょう。ああ、よかったよかった」


 そんなことを鏡を見つめながら独り言ちるギール。

 鏡を見つめる視線には熱が籠っており、映し出される自分の姿に喜びを感じていることが分かる。

 あなたはそんなギールの背中に覆い被さって、綺麗な女の子だね、と囁いた。


「ははは、複雑な気分ですね。やはりこう、父として、夫として一家を養ってきたわけですから」


 などと口では言うものの、声音には喜びの色がひしひしと感じられる。

 なるほど、ギールは割とそう言う趣味とか、願望があったらしい。

 まぁ、珍しくもない話ではある。趣味はそれぞれだ。


 内に秘めたる欲望が、今ここで開花した。

 そして、ギールはいままで抑圧されていた願望に狂い出している。

 若返りの薬を欲した理由も、なんとなく分かった。

 ギールは取り戻したいのだ。女の子としての人生を。

 女に生まれていたら過ごせたはずの、青春を。


 本来ならありえない奇跡があなたの手によって齎された。

 そして、あなたの手による奇跡はまだ続々と垂らされている。

 今のギールはそれを拒めない……いや、拒むという発想すらあるまい。

 ひたすら奇跡を呑み込み続け、肥え太り続けることだろう。


 あなたはこれはいいぞと内心で嗤い、何の気なしを装って提案した。

 女の体をしているのだからスカートにも慣れないとね、と。


「え、ええ? いや、そんな、私は男ですよ? そんな、スカート、なんて……スカートなんて、ね」


 憧れているところを隠せないような調子だ。

 スカートはやはり、女性性の象徴のような部分がある。

 まぁ、ところ違えばスカート状の衣服が男性性の象徴だったりもするが……。


 少なくとも、この大陸においてスカートは女性用の衣服だ。

 それを着用することは女性以外にはありえない。

 仮にあるにしても、それはジョークとして用いられる仮装だ。


「まあ、しかし、スカートを履かなくてはいけない場面も、あるのかもしれません。そうですね、1度くらいは履いて、慣れておくべきなのでしょう」


 そんな自己弁護による理論武装をし出した。

 具体的にその場面がなんなのかの言及はない。

 もっともらしい理由をつけた、ただの詭弁だ。


 だが、詭弁だろうがなんだろうが理由があればそれでいい。

 あなたはまさにその通りだと頷き、少なくとも今日1日はスカートを着用することと命令した。


「ええっ、今日1日スカートですか!? そ、そんな、困ってしまいますよ」


 全然困ってない顔で言うギール。むしろニヨニヨと笑っている。

 そんなギールに、あなたはいかにも困ったなと言う顔をしてみせる。

 そして、考えてみるとお針子として雇っているブレウが今はいないぞ? と口にしたのだ。


「ああ、そう言えば……え? ブレウ以外の針子はいなかったのですか?」


 あなたは頷く。これは本当で、ブレウ以外に針子はいない。

 たった1人の針子であっても、この屋敷の規模なら十分回る。

 そもそも針子はあなたや上級使用人のために繕い物をするのだ。

 メイドたちの場合、繕い物はメイドたち自身でやるのだ。


 それに、ブレウにはかなり自由裁量権を与えていた。

 臨時でお針子を雇ったり、アシスタントを雇う資金も与えていた。

 そのため、必要に応じて臨時雇いを入れたり、メイドに手伝わせたりで仕事を回していたのだ。


「それは……困りましたね。あ、なにか予備のメイド服とかあったりは……」


 メイド服、着たいのだろうか?

 気になったが、ツッコんでやっぱりスカートはやめておこうなんて冷静になられても困る。

 あなたは本来の目論見である、服屋に買いに行こうと提案を口にした。


「服屋に……服屋ですか……」


 そう、服屋にならばスカートなんていくらでもある。

 好きなものを選んで、好きなスカートを履くといい。

 好きなだけ服を買ってあげるよと、あなたは優しく囁いた。




 王都の服屋の品ぞろえはじつにすばらしい。

 あなたでも目移りしてしまうほど可愛らしい服がたくさんある。


 あなたの服はあなた自身が手掛けた逸品だ。

 デザイン自体もあなたに似合うように仕立てたし。

 込めた魔法のエッセンス、エナジーも入念に吟味したもの。


 衣服として可愛らしく、防具としてすばらしく。

 そんな機能を両立させた、神器と言えるほど高性能の存在だ。

 これを脱ぐという選択肢はまずないが、そうしようかと迷ってしまうほどに魅力的な服がある。


「たくさん服がありますね……うわぁ……すごい……男向けの服なんて大した種類がないのに……うっ! ぎ、銀貨、8枚!?」


 色とりどりの布地が使われた服たちにギールは目移りしている。

 そして、張られた値札に驚愕し怯んでいた。可愛らしい反応である。

 もう今のサシャなんか基本が金貨の本でもドカドカ買うのに。


 まぁ、銀貨8枚となると、大工の日給よりも高いだろう額だ。

 近代紡績技術で衣服類の低価格化は進んでいるが、それでもやはり衣服は高価なものだ。

 さらに安価になるには、衣類原料の低価格化が必要だろう。


 動物性原料か、植物性原料かでも違うが、いずれにせよ植物の栽培技術が必須だ。

 栽培技術の更なる発展か、あるいは肥料の作成技術の発展か。

 まぁ、一朝一夕に起こり得るようなものではないだろう。


「お、オーナー、この店は高いです……古着屋に行きましょう」


 そんなことを言うギールに、あなたは金貨を10枚ほど見せつける。

 幸運なことに、ギールのオーナーであるあなたは超絶の金持ちなのであった。

 この店の服を全部ギールのために買い上げてもいいくらいだが……。

 たぶん、制限した方が面白い結果になる……のではないだろうか?


「金貨10枚も……よろしいのですか?」


 もちろん構わない。あなたは内心の目論見は見せずに頷いた。


 ギールは表面的には落ち着いて見せつつもウキウキで服を選び始めた。

 色とりどりの布に目を奪われ、可愛らしい服を探して。

 そして、ギールが足を止め、手に取ったのは、鮮やかな赤い布の使われたスカートだった。

 実にいいデザインだ。特に色が赤いのがいい。あなたも赤は好きだ。


「あの、これがいいのですが……」


 もちろん構わないのだが、ギールにはちょっと小さいのでは?

 ギールが手にしているのは、成人女性向けのものではなかった。

 もう少し若い……10代半ばくらいの少女に向けた商品と思われる。

 マフルージャ王国の流行りとか、年齢別の服装の傾向からして、間違いないだろう。

 まぁ、サイズ的には着れないこともないだろう……腹回りがキツいとは思うが。


「……ダメでしょうか?」


 残念そうな顔をするギールには、あなたは笑う。

 ダメなことなどない。欲しければ買えばいいし、履けばいいのだ。

 そんな風にギールの選択を肯定しつつ、あなたは内心で嗤った。


 なんとなくそうなるのではないかと思ったが、そうだった。

 ギールは若くなりたいのではなく、年若い少女の自分になりたいのだ。

 そうである以上、成人向けのそれではなく、年若い少女の服を選ぶと思った。


 あなたはスカートを手にしたままのギールに、新しく若返りの薬を見せる。

 そう、奇跡はまだある。あなたの手にいくらでもあるのだ。

 これを追加でもう2本ばかり飲めば……そのスカートの似合う年頃になる。

 あなたはギールに、帰ったらスカートを履いてイイコトしようよ、と提案した。


「は、はい……」


 じつにすばらしい。

 あなたはギールの返事に満足した。




 衣服を何着か買って帰り。

 家で姿見を前にしてそれを着せる。

 スカートの履き方とか、下着の着用法とか。

 その辺りの女の嗜みもちゃんと教えてやる。


「う、少しキツイです……うう……た、たしかに、ちょっと……」


 10代後半ほどの外見のギールには、些か若すぎる格好だ。

 そんなギールに、あなたは若返りの薬を渡す。

 先払いで渡しておくので、後で愉しませて欲しい。


「ありがとうございます!」


 喜んでさっそく若返りの薬を飲むギール。

 するとたちまちのうちに若返り、外見がさらに若くなる。

 ケモ耳持ちの、15歳ほどの外見の少女。

 これは最高だ、たまらない、美味し過ぎる!


 20代のブレウ、18歳のサシャ、15歳のギール。

 一家族でこれほど素晴らしいグラデーションが描かれる。

 こんなに素晴らしいことはそうこの世にありはすまい。

 あなたは狂おしいほどの興奮に包まれた。


「うわ、わあ……これが、私なのですか……スカートを履いて……手首が細い……太ももが、こんな、前の私なら、手で一回りできそうな……」


 小さく細くなった体に、ふわふわと喜ぶギール。

 なんてことだ、可愛すぎる。年頃の少女にケモ耳のコラボレーション。

 可愛い服に喜ぶ少女らしさは脳が灼けそうなほどだ。


 男が女装をしたり、劇で女役をすると、下手な女より女らしくなることがある。

 それは当然と言えばそうだ。男は女ではないのだから、女らしく見せる必要がある。

 そのために男たちはより一層女らしくなろうと、精一杯の努力をするのだ。

 そんな努力が、女と言う性別にあぐらを掻いた連中に勝るのは当然と言える。


 ギールは叶う限り女らしく振舞おうとする男であり。

 それでいながら性別は『ミラクルウィッシュ』の力で女になっている。

 そう、これほどまでに女らしい存在は、そうそうありえないのだ。


「オーナー、どうでしょう? 似合いますか?」


 くるんとその場で回り、スカートを翻すギール。

 はにかんで、うっすらと頬を染めると、そう尋ねて来た。

 その姿はあまりにも可愛らしく、あなたはそのまま襲いそうになった。

 が、あなたはかろうじて理性を総動員して、最高に可愛いよと褒め称えた。


 まだ、まだだ。理性を手放すには早い……。

 ここで問答無用で襲ってしまうと、恐怖を抱く可能性がある。

 ちゃんと淑女的に、ちゃんと優しく襲わなくては……。


「それで、オーナー、そのですね」


 なんだろうか?

 あなたは頑張って理性を維持しつつ返事を返す。


「その、若返りの薬を2本いただいたわけですから……ど、どうぞ?」


 つまりなにか。これからイイコトをしてもいいと。

 ギールの側から許可が出たので、襲っても和姦だ。

 つまり、もはや理性を手放してもいいのだ。

 あなたはギールの許しに喜び、理性を手放した。


 ギールを素早く抱きかかえ、ベッドへ。

 外見的には共に15歳前後のあなたとギールだが、あなたの方が体格はよい。

 栄養状態の悪い庶民と、栄養状態のよい市民では体格が違うのは普通だ。


 そんな細く小さなギールをベッドへと押し倒す。

 そして、奪うように深く強いキスをする。

 口内をまさぐるあなたの舌が、鋭く尖った犬歯を感じる。

 獣人の犬歯は鋭く、舌先で感じるだけでも興奮する。


「ぷはっ……お、オーナー、その……」


 分かっている。乱暴に激しく抱いて欲しいのだろう。

 優しくされると好きになってしまうからと、ギールはそう言う。


「その、違くて……あの、ごめんなさい」


 ごめんなさい? なにに対しての謝罪だろうか?

 なにかの仕込みであなたの暗殺でも狙っているのだろうか?

 まぁ、その場合は普通に返り討ちにして、死ぬほど抱いてオシマイだが。


「私、年頃の女の子になりました。でも、本当は、年頃の女の子じゃ、ないですから……」


 そう言って手で顔を覆うギール。泣いているのだろうか。

 しかし、ギールはそんなことを気にしていたのだろうか?

 そんなこと言ったら、あなただって本来は老婆なのだ。

 あなたに重要なのは実際の数値ではなく、見た目の印象だ。

 今のギールは15歳ほどの可愛らしい少女。それでいい。


「いいえ、いいえ……オーナーに、私のはじめてを、さしあげられなかった……」


 そのあまりにも可愛らしい発言にあなたの気が狂った。

 ギールの処女は、どこのだれとも知らない男が奪った。

 娼館に売られていたのだ、それは当然のことと言える。


 それを申し訳ないと思って、泣きながら謝る。

 こんなかわいい姿が早々あるか?


「ごめんなさい……ごめんなさい……」


 あなたはギールのそんな謝罪を紡ぐ口をキスで塞いだ。

 申し訳ないという気持ちが消え去るほど抱いてやろう。

 優しく、激しく、そして蕩けるほどに甘く、溺れるほど深く。


 夜まで抱いて、それでも足らなければ朝まで抱いて。

 まだ足りなければ、満たされるまで可愛がろう。

 どうやら、今日は眠るわけにはいかないようだ。

 まったく、今夜は眠れないな!

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