口は災いのもと
「よーし!構え〜!!!坂井様!今暫くお待ちを!オレの隊の人達が、ブッパしたくて仕方ないみたいなので、城の虎口や曲輪に集まっている旗目掛けて、撃ち込みますので!」
甲賀隊の皆々は一様に、撃ちたくて撃ちたくて仕方がないみたいだ。特に小泉さん・・・。
「剣城様!発射角度は45度が1番飛距離が伸びると思いますが、どうされますか?」
「山に向かって撃つから放物線のように撃つのかな?炸裂弾ですよね?」
「えぇ。国友殿が最初はこれを撃ち込み、敵の陣地を破壊した方が良いと言っておりました」
「まぁ、小泉さんに任せますよ!大膳君!大膳君は!?」
「はっ!ここに!」
「大膳君は撮影したらそのまま岐阜に戻ってよし!」
「はっ!」
「越水城、滝山城の方まで轟音轟かせッ!!甲賀隊 大砲部隊!!」
「発射角度、先ずは45度に合わせッ!!」
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ
この小泉さんに任せている大砲部隊・・・今回に関しては5門しか持ってこれていない。まぁそれでも十分だとは思う。その大砲部隊の練度や如何に・・・。
「小泉さんの1門だけ・・・まずは挨拶代わりに撃てッ!!」
ドスンッ ヒュ─────ン ドガンッッッ
「「「おぉ〜〜!!!」」」
「これが国友印の織田の大筒・・・」
浅井軍の人達は驚愕の顔になってはいるけど・・・これは旧式の大筒だ。新式のMK-2は更に砲身が長く、弾の形も少し尖った形にしてある。
国友さん一派は今や目下、雷管の制作中、開発中と聞いている。弾の種類なんかの構想も色々聞き、どうにかオレが居た未来の弾を教えてほしいと懇願されたが、これはオレにも分からない為、一先ず保留にしている。
先日ネットサーフィンならぬ、ガーデンオブエデンサーフィンで見つけた品物がある。ミシンのような機械で火薬、雷管など色々手作りできそうな機械だ。これを国友さんに購入してあげようと思っている。
「えぇ〜・・・浅井軍の方々様!これは旧式ですので然程大した大砲ではございませんよ」
「なんと!?これが旧式・・・」
できる男、芝田剣城は更に営業をかける。
「あのように威力は一目瞭然でしょう。これから防衛装備の一つにこの国友大筒1門はいかがですか?値段は信長様に直接お聞き下さい!徳川様方もいかがですか?」
そう。できる男、芝田剣城このオレは営業をかける!援軍で駆けつけた浅井軍、徳川軍はこの大砲を欲しがるだろう。更には一応上杉軍も毛利軍も居る筈だから、この両軍の忍者も見ている筈だからこの大砲を欲しがるだろう。
毛利も上杉も直接のやり取りはオレは無いけど、売るつもりがある!と言えば買いに来るだろう。特に毛利とは敵対したくない。この三好を上手く抑え込んでほしいと思う。
上杉も上杉でこの大砲を使い、武田を滅ぼしてしまえばそれはそれで怖くなる。そうなれば北条と手を取り、備えなくてはいけなくなる。
「それにしても、この城を築城した人は几帳面な人なのかな?金剛君?こういう城の事を連郭式山城っていうんだよね?」
「はっ!その通りでございます。ですが、郭に関しては相当素晴らしいですよ。塁土石垣も中々・・・出丸曲輪も通常なら中々の物かと」
「へぇ〜。金剛君にしてはかなり褒めるね?あ、小泉さん!発射角度を下げてもう1発撃って下さい」
オレもそろそろマジで城が欲しい為、金剛君に言って各地の大小様々な城をお勉強している。この芥川山城は大きくはないが、防衛設備が素晴らしい。まぁオレ達相手には意味の無い防衛設備だけど。
ヒュ─────ン ドガンッ!!!
「お!小泉さん!ビンゴ!!さっきのはあの大手門辺りに直撃じゃないですか!?今の角度で全門発射ッ!!!」
「はっ!ありがとうございまする!」
先陣でスタンバイしている、美濃衆の隊と坂井さんは唖然としている。そりゃそうだろう。ここまで大砲を撃ったのは初めてだ。一応もう1門MK-2が予備でありはするけど、これは温存だ。いや・・・国友さんが確かデータが欲しいとか言ってたっけ?1発だけ撃とうか。
「我が君!小泉ばかりに良い格好はさせられませぬぞ!?ここはワシが新式国友大筒MK-2を撃つ時では!?」
「いやいや小川さんは大筒隊じゃないでしょ!?小泉さん?新式も1発だけどうぞ!確か火薬量を多くしてるから貫徹力が強いんだっけ?あぁー、坂井様?次の一撃の後に突撃、お願いしますね!」
またあれだ・・・。噂では聞いていた国友印の大筒・・・巷ではどんな大門だろうが、一撃にて粉砕してしまうという大砲・・・。それを5門も揃え、且つ、それよりも更に新しい大筒まで剣城殿は持って来ている、と・・・。その大筒で敵兵を木っ端微塵にした後、俺に突撃を譲ってくれると・・・。
こんなおんぶに抱っこのような事をしてもらい、まさか敵の首すら取れないとなると、美濃一の笑い者になってしまう。
ズドォォォォ──────ンッッッ!!!
「「「「「!?!?!?!?!?!?!?」」」」」
まさかあれが新式の・・・えむけいつうと銘打った大砲か!?轟音が凄い・・・は!?まさかあれが合図とな!?これはいかん!美濃3人のおっさんも惚けておる!
「氏家殿!安藤殿!稲葉殿!今です!突撃ッッ!!!」
「ぬぁ!?坂井!?ぐぬぬ!ワシとしたことが、あの音に少々驚いてしもうた!皆の者!我に続け!!」
「チッ。安藤の隊に負けるな!氏家隊!声を上げよ!突撃!!!」
「おぉー!凄い凄い!坂井さんってマジで凄い有能な人じゃん!あの癖の強そうな3人の軍を纏められているじゃん!」
「おいおい!剣城・・・さすがに出番が無さ過ぎて俺はつまらんぞ」
「慶次さん!そんなに戦に出たいの?」
「そりゃあな。これでも1番隊を任せられているからな」
「う〜ん。じゃあ横に居る、自称1番隊の総長と慶次さんの軍は第二陣に混じって突撃してきていいですよ」
「本当か!?足軽頭以上の首一つにつき、例の酒と女に喜ばれる物一つでどうだ?」
「はぁ!?何で!?」
「その方がやる気が出るってもんだ!な!?剣城!頼むよ!実は岐阜に居る、これがな・・・」
慶次さんはそう言うと小指を立てた。この人に関しては家に居ないと思えば大概、飲み屋か花街に居る。たまにすれ違う事があるが、見る度に連れてる女が違うプレイボーイだ。しかも選ばれた者のみしか装着する事が許されない、極薄のゴムさんの減りが早い。
オレの隊は女性もそこそこ居るが、男がやはり多い。戦の時は・・・だが平時では特に決まりは出していない。女と遊ぶのにも何も言っていない。奥さんが居る人でも、オレは夫婦間のことは言うつもりはない。
だが、遊んだ女に望まぬ妊娠をさせるのはダメだと思い、清洲と岐阜のオレの家に極薄をそれなりに置いてあるのだが、この減りがここ最近早い。特に慶次さんが大量に持って行っている、というのは報告で聞いている。
「はぁー。まぁいいですよ。けど多分、もう敵も少ないんじゃないかな?明らかに逃げてるよ」
「ぬぁ!?おい!剣城!早く号令を出してくれ!」
「分かりましたよ。慶次さん!絶対に約束以上の物は出しませんよ!」
「分かってるって!おい!小川の爺!行くぞ!」
「慶次坊は黙っとれぃ!我が君!すぐに敵を追い払ってみせますぞ!それと・・・ワシも足軽頭の首一つにつき何か褒美を願いたいですな!」
「小川さんも!?う〜ん。分かりました!何か考えておきましょう」
「誠ですな!?約束ですぞ!!」
「金剛君、第二陣の柴田様に連絡を。まぁいいや。森様にもトランシーバーで連絡を。全軍突撃!」
「はっ!」
オレが小川さんにも約束した褒美・・・この話が回り回ってどんどん大きくなり、甲賀隊だけではなく何故か柴田さんや森さん、蜂屋さんの隊の人達にまで広がり、オレ達上洛軍先駆けの隊の士気は最高潮となる。
その褒美の話が広がった原因は言わずもがな、小川さんのせいだ。
これは後に坂井さんに聞いて分かった事だが、突撃を果たした時、三好軍と戦いながら小川さんは・・・。
「我が君、剣城様が首一つにつき褒美を約束されたのだ!お前等!首置いていけ!!」
と、方々で言っていたらしい。オレは安易に褒美という言葉を言わないよう、気を付けておこうと思った。
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