人員再配置

 「お帰りなさいませ」


 「あぁ、ゆきさん。ただいま。寒い〜!ちょっと風呂に入って来るよ!それと、正月早々に申し訳ないんだけど、話す事あるんだけどいい?」


 「はい!よければお背中流しましょうか?」


 「ありがとう。なら、2人で入ろうか!その方が話しやすいしね」


 「畏まりました」


 信長さんの敦盛を見た後は普通に戻ってきた。とりあえずは年明け。落ち着いた後に、木下さんと詳しく話し合う事となった。


 それでその今後の事を、ゆきさんと話し合わせなければならない。お金の事も然り、明確な人員の振り分けの件だ。


 昨夜の忘年会で飲みまくっていた、甲賀親族衆の方々・・・。ゲルテントの中は静かだ。まぁ、流石に酔い潰れて寝てる人ばかりだ。だが、全員に神様印の栄養ドリンクを渡し、飲んでもらったから頗る体調は良い筈。


 

 ザパー


 寒い中、ノア嬢に跨り駆けてた訳だ。愚息は通常時でも短小だが、寒さで更に短小だったが、ゆきさんの丁寧な洗い方で、新年のこんにちわとなった訳だが。


 「(クスッ)普段から忙しい剣城様ですが、こちらの方はお元気なようですね!」


 チュポッ


 「お、おぉ〜・・・うっ・・・」


 ゆきさんの手解き15秒で果ててしまったんだが!?いや、そんな事より・・・


 「ふぅ〜・・・。所謂・・・賢者モードとなった訳だけど、ゆきさん・・・」


 チュッ


 オレは軽くキスをした後、湯船に入り、ゆきさんを横に話し始めた。


 「信長様に『配下になった人員をもっと使え』って言われたんだ」


 「そうでしたか。確かに剣城様の元には各方面で優秀な方が居られますが、私達、甲賀出身の者を厚遇していただいてますよね」


 「そうだね。オレは自分で信用した人を使いたいんだけど、それもダメらしい。もっと色々な人に色々な仕事をさせて、家臣を増やせって事を言われたよ。那古屋の林様とか、北伊勢の人達の事を言っているのだと思う」


 「もしよろしければ、私が独自に人員の再配置をお考え致しましょうか?」


 「お願いできる?ただ・・・お金を触れる人は、絶対的信頼がある人にしてほしい。最終的な判断はオレになるかもしれないけど、ある程度の事はその人達に任せるようにしたい。例えば俸給に関しては、全面的にゆきさんに任せるし、今後もそうしたいからお願いしたいけど、新しく始める事に関しての銭勘定やなんかは、提案した人に任せてもいいかと思う」


 「畏まりました。ただ、私が言っても従ってくれるでしょうか・・・」


 「従わないようなら、オレが信長様に直談判するから大丈夫だよ。あと・・・話が変わるんだけど・・・正月に恐らく何かは起こると思うんだけど、その事が終わったら・・・祝言をあげたいと思うんだ」


 「え!?」


 「うん。戸惑うのも分かる。けど、そろそろ仕事の方は色々あるけど、オレが居なくても回るようにはなって来ている訳だし・・・だから、少ししたら正式に渡す物も渡して、ゆきさんに結婚を申し込むから・・・」


 「ありがとうございます・・・」


 オレはどさくさに紛れて、結婚式をしたいという事を伝えた。するすると言って祝言はあげていないからな。まぁ、これは本圀寺の変らしき事が起こった後になるだろう。




 「こんな感じでどうでしょうか?」


 「うん?どれどれ・・・」


 ・起請文などを交わす契約などの纏め役に林秀貞


 ・諸外国への取次及び、各部署への取次役に布施公雄


 ・膨れ上がった甲賀隊の管理役に竹中半兵衛


 「う〜ん。楷書を覚えた人じゃないとオレとも連携取れないから、まずはこんなものかな。那古屋城はもう廃城になってるんだよね?」


 「はい。林様はここ岐阜城の本丸に居ると思います」


 「そっか。なら明日の謹賀の儀の時に一度、家に来てもらうようにするよ。布施さんって確か今は、清洲の城下に詰めてもらってたよね?」


 「えぇ。六角年寄衆の方でしたが、それなりに配下の方が居ましたので、剣城様に近付けるのは危険かと思い、金剛、剛力が『清洲の村で飼い殺し』と言っていたので、そうしていますよ」


 「飼い殺しとか・・・。まぁ、あの人はオレは嫌いではないんだけどな。ゆきさんや甲賀の人は、六角にはいい思い出が無いよね」


 「そうですね・・・」


 「まぁ布施さんに関してはオレに任せといてよ」



 

 

 1月1日の夕方前に、オレは清洲の村へとやって来た。以前とは違う、24時間全方位への監視が行き渡っている、例の始まりの村だ。まぁ、要塞にも見えるけど。

 この村は丸い外堀を施し、外側は甲賀衆の皆の家を建築し、オレの配下に入った新参の方々は殆ど例外なく、ここの村に住んでもらう事になっている。


 「あっ、剣城様!あけましておめでとう御座います!」


 「青木さん!久しぶりですね!調子は如何ですか!?」


 甲賀衆、この始まりの村の総括を行なってくれている青木さん・・・元は小川さんや小泉さん、野田さん達と最初からオレに仕えてくれた、甲賀53家の一家の一つの人だ。

 元はオレと同じように、遠征から何までずっと一緒に居たが、今はこの要塞化した始まりの村の、警備の総責任者になってもらっている。ちなみに、警備班に居る愛洲兄弟の上司がこの青木さんだ。


 「怪しい奴は1人と見てません!」


 その外堀の内側は、甲賀衆や新参の人達の家が並んでいるけど、そこから更に内堀が掘ってある。その内側に、国友製作所や加藤製作所、芳兵衛君のラボなど、他国に知られたくない事はこの内側に全てがある。

 この内側に入るには入り口は一つ。この青木さんの許可なく入れないし、無理矢理突入したところとて出口もここだけだから、生きて出られないだろう。今の所、そんな賊らしき人も居ないらしいが。


 「そうですか。野田さんや小泉さんが九州の高山城に詰めたりしてるし、大野さんも今や飯屋さん経営になってくれたから、青木さんが良ければ、またオレと一緒に行動してくれますか?」


 「誠ですか!?」


 「本当だよ。小川さんや野田さん達とは、青木さんは一回り歳が違うから、この大切な村の警備に就いてもらった訳だけど、やはり最初からオレに仕えてくれたからね。それに恐らく2、3日くらいで活躍の場が来ると思うよ」


 「活躍の場・・・ですか?確か『準備だけしておけ』と慶次が言っておられましたが・・・」


 「うん。その準備の件だよ。青木さんも着いてきてもらうからそのつもりでね。それで、今後の警備については愛洲兄弟にお願いしよう、と思っているんだ。あの2人の武を警備に使うのは勿体ないかと思うけど、案外あの兄弟は警備の仕事に誇りを持ってる感じだし、なんなら新たな組織を作って警察のような事を、してもらおうかとも思ってるんだ」


 「左様でしたか。確かにあの2人相手では、私も中々に骨が折れますからね」


 は!?2人相手に骨が折れるって・・・青木さんは2対1でも勝てるのかよ!?あの2人も農業神様からの食べ物食べて、スーパー剣豪兄弟だろ!?それ相手に勝てるのか!?


 「そ、そうですか・・・。まぁ青木さんも頑張って下さい。それより・・・布施さん、居ますかね?」


 「多分、家に居るかと思います。今頃、餅でも食べているのでは?なんなら喉に詰めて窒息死してくれても、私は一向に構わんのですがね」


 「本当に六角家の人達には甲賀の人は容赦ないね。けど、今後は気を付けてね」


 「えぇ。分かってはいます」


 「ならばよし!仲良くしろとは言わないけど、喧嘩はしないように!」


 「了解です」


 

 「こんにちわ〜。明けましておめでとう御座います〜!先触れも出さずに訪問してすいませんね」


 「剣城様!明けましておめでとう御座います。年末の折に数々の食べ物を、外様の私のような者なんかに・・・」


 「いや、いいですよ。オレの配下には毎年恒例の事となっていますし。それより・・・そろそろ貴方にも働いてもらおうか、と思っているのですよ。年明けからでいいので、そのつもりでいてくれますか?」


 「え!?私はこのままここで雑用するだけでは!?」


 「まぁ、剛力君か金剛君に言われたかは分からないけど、貴方をここで腐らせたりはしませんよ。まぁ、オレの配下は甲賀出身の者ばかりなので、暫くはやりづらいかもしれませんが、慣れて下さい。そこら辺のペーペーなんかじゃなく、それなりの役職に着いてもらう予定ですので」


 「いや・・・まぁ・・・私が皆に、どれだけ憎まれているのかは分かりますが・・・」


 「元は六角家 年寄衆だったのでしょう?それに、報告書で見て、聞いた感じでは沢彦さんからの授業も、皆勤で受けていると聞いていますよ。なので、布施さんにピッタリな仕事があるのですよ!これから分け隔てなく、使える人材は使っていきますので、その纏め役と各関係部署の取次役をお願いしたいな、と」


 「え!?それは・・・・」


 「うん。まぁ大出世だろうね。更に甲賀衆から憎まれるかもしれない。けど、いつまでもこのままじゃ駄目でしょう?オレは布施さんに期待してますよ」


 「身に余る光栄でございます!元は六角家ですが、必ずや剣城様の御期待に応えられるよう、粉骨砕身!働きまする!」


 「まぁ、そこまで意気込まなくても大丈夫だけどね。一応、配下の人達には喧嘩しないようには通達してあるけど、本当に最初は辛い立場になると思うけど、それは自分でどうか克服してほしい。貴方がオレの為に働いてくれてる姿が見えると、自ずと甲賀の人達も認めてくれると思うから」


 「はっ!」


 「それはそうと・・・布施さんは地元には帰らないの?」


 「えぇ。新参の私が南近江へ帰る訳にはと・・・」


 「別に言ってくれりゃいいのに。もし、南近江に家族が居るなら、この場所でいいなら連れて来てもいいですよ」


 「あっ、いえ・・・こう見えて一応、近江に城を構えてまして・・・今は倅の公保に詰めさせておりまする」


 は!?まさか布施さんは城持ちだったのか!?いやそりゃ〜、六角家で年寄衆というくらいだから、そうなのかもしれないけど・・・クッ・・・負けた気分だ。本来ならオレも那古屋城が・・・。


 いや・・・たらればの話をしても意味がない。


 「そうですか。今度、遊びに連れてって下さいね。ね?ね?城持ちの布施さん!」


 「・・・・申し訳ございませぬ」


 「まぁ冗談はさておき・・・布施さんは聞いてないかもしれないけど、この一年は織田家の方針としては、内政に励むから本当に頑張って下さい。ではまた。手紙出しますので手紙が届いたら、オレの家に集まるように」


 「はっ。畏まりました」


 本当に自分でも偉くなったものだと思う。褌からの成り上がり・・・今や配下も500は超えてるかな。あとは明日の謹賀の儀を終えてから動こうか。それより・・・明日の景品は何なんだろう?後でインベントリーでも見てみようか。

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