勘助さん頑張っているみたい

 次の日の朝。オレは村に向かい、八兵衛村長達と綿花を植えた所に向かう。


 「いや、ワシは食い物じゃなかったから確認せなんだが、これまた大事(おおごと)だな」


 「いや、これは・・・・」


 見渡す限り綿花、綿花、綿花、綿花、綿花。むしろ、集合恐怖体の人なら卒倒するんじゃないか?ってくらい実がなっていた。


 「とりあえず国友さん呼びに行きましょう。鉄砲もですが先にロクロを作ってもらいましょう」


 「ワシは良く分からんが、この白い部分を取ればいいのだな?」


 「そうですが今日、木下さんが新たな人を連れて来てくれるそうなので、その人達にも取ってもらいましょう。それで取った実はとりあえず、私が出した家の空き家に入れておきましょう」



 その1時間後。朝の9時頃に木下さんの弟、秀長さんが大勢連れて来てくれた。


 「剣城殿!お久しぶりです!昨日兄者からぷりんなる物を頂きました!大変美味しゅうございました!ありがとうございました」


 「いえいえ!あれくらいならどうってことないです!それより急なお願いなのに、こんなに沢山の人を用意してもらい、ありがとうございます!」


 挨拶もそこそこに、連れて来てくれた人に簡単に挨拶だけした。連れて来た人達は、周辺に点在する村の人や木下隊の半農兵士の人達で、オレは覚えてなかったが先の竹中と戦った時の人達らしい。


 「剣城殿、本日はよろしくおねげーしますだ」


 「最近、この村からオラの村にも使いが来てくれて、見た事ねー野菜の種や苗を貰い飢える事が無くなりました」


 「俺の村もだ!勘助って男が率先して教えてくれるんだ!」


 勘助さんもちゃんと仕事してくれてるんだな。


 「まだまだこんなもんじゃないすよ!色々育てたい物があるんです!これからもお願いしますね!」


 「「「おぉぉぉーーーーッ!!!」」」


 「して、剣城殿?本日はどのような予定で?」


 秀長さんに例の本を隠れて見せ、まずは実の部分を取ってもらうように言い、その後の作業はこの村の女性、千吉さんの奥さんにある程度任せたい事を言った。源蔵さんはオレと同じ独身だったからな。


 「千吉とは・・あの剣城殿を庇った?」


 「そうです。男手が無くなりしんどい筈なので、特に加工作業は私の偏見かもですが出来る限り、未亡人や農作業が難しい人達に任せたいです」


 「素晴らしい!いや実に素晴らしいです!義姉上がここに居ればさぞかし喜んでいたでしょう!この不肖木下秀長!最後までこの仕事を全うしますぞ!」


 何だ!?何でこんなにやる気になってるんだ!?この弟さんも甘味依存症だからな。オレは知っている。和紙に包んだ砂糖をたまに舐めている事を。


 「それで仕事前に剣城殿に頼みたい事が・・・。何か甘い物なんかあれば・・・」


 ほら出たよ!オレも人を見る目があるのか!?


 「秀長さんだけにはダメです。ある程度作業を終えたら皆で食べましょう!」


 「いや!そうですね!某だけは駄目ですね!では本日の作業、頑張りましょう!」


 金剛君や剛力君が陣立てで使う木材の為に、オレが産まれた森を切り拓いてくれてるのに、オレがまたアオイ科ワタ属の多年草。通称、綿花をスーパー肥料で育て森を作る。朝に合流して綿花の木や枝を剛力君が見て驚いていた。


 「剛力君、おはよう!進捗はどんな感じ?」


 「おはようございます。頂いた本ですけど素晴らしいっす!色々、鍛治の人達にお願いして有刺鉄線や塹壕作り、麻で土嚢袋を作った陣など色々試しているっす!」


 「おっ、おう。そうか。頑張ってくれ!」


 なんか一気に現代に近付いた気がした。


 「金剛君はどうだ?」


 「はっ。某は木を切り『ほぞつぎ』『相欠きつぎ』など色々他にも試し、強度を測ったりしています。これも戦の折に、剛力が作った塹壕で土嚢袋を後ろに無数の櫓を立て、コンクリート補強すれば難攻不落の陣になります」


 いや自信満々に言ってるけど、それは最早、陣じゃなく城に近いよね?しかも攻める立場だよね!?


 「コンクリートは作れそう?何かオレが出そうか?」


 「いえ、国友殿と話しをして石灰石、粘土、けい石などで作れるので大丈夫です」


 「そっ、そうか。分かった。頑張ってくれ」


 おいおい!金剛君もどうしたんだ!?一気に近代革命か!?現代技術で城造ったらマジで最強なんじゃね!?信長さんに城造っても良いと言われたら、オレが考えた最強の城を造ってやろう!



 新たな人と実を取る作業は昼過ぎに終わった。取れるだけ取ったけど、気付けば家に入りきらないくらいになった。


 「皆さんお疲れ様です!本日はありがとうございました!皆さんにこの綿花の苗を渡しておきますので、帰ったら各々の村で育てて下さい!」


 「剣城様、この綿花を育てると何かなるのですか!?」


 「良い質問です!これを見て下さい!」


 オレは布団を出してその良さを分かってもらう為に、汚れた体だが横になって欲しいと言い、皆に試してもらった。


 「気持ちいい・・・」 「極楽だべ」


 「眠たくなるな」 「ぐごぉぉぉー」


 一人すぐ眠ってしまった人が居るんだが!?


 「これだけじゃなく服なんかが作れます!後日行う作業が慣れると染色作業なども教えます!」


 「おぉー、それを無償で我らに!?」


 「出来上がった物はちゃんと対価を決め、売りに出したりします。まずは各々で作れるように覚えていきましょう!まだまだやる事はあります!これからもお願いします!帰る前にお土産です!」


 《ショコラサブレ10個入り×200》¥200000


 

 いやこれは説明すら無いんかい!!!


 お菓子を渡すと皆喜んで『また呼んで下さい!』と言われ、帰っていった。


 「秀長さん、ありがとうございます!秀長さんも菓子をどうぞ」


 「ほっほっほっ!これです!剣城殿?また人手が必要な時は言って下さい!」


 「もし良いなら男手が無く、日々の生活が苦しい女性なんかを、この村に呼んでくれませんか?」


 「確か朝に言ってましたね?分かりました!お任せ下さい!」


 いや、やけに秀長さん協力してくれるな?何か企んでるのかな?まあいいや。てか、昨日濃姫さんから貰った物確認してなかったな。後で見てみよう。


 「剣城様、よろしいですか?」


 「うん?どうしたのお菊さん」


 「はっ、綿花の書物の部分にこのような事が書かれています」


 「うん?何々?」

 "コットンを使って1枚のTシャツが出来上がるまでには2,720リットルもの水が使われています"


 「え!?めっちゃ水使うじゃん!?」


 「だから今、私が剣城様に言ってます」


 いやそこまで怒らなくても良くない!?


 「この村は肥料のお陰で大丈夫だったけど・・・。他の村も全部肥料を渡すのはダメだから・・・。これは水の事も考えないといけないな」


 《水路、ダム、水被害の道標》¥1000


 効能・・・・人と水は掛け替えのない物。幾度となく人類は水に悩まされてきた。その密接な関係の水の全てが分かる一冊。習熟度up。



 「この本を一人変な踊りに費やしていた奴に渡して欲しい」


 「大膳ですか?」


 「うん。輸送隊に関してはまだ仕事が無いし、演習のしようが無いからな。剛力君達に治水工事を任せてもいいんだけど、大膳君だけを遊ばすのは勿体ないから、あいつにも勉強してもらう!」


 「はっ。分かりました」










 「おい、あの木は我が三河にも沢山生えてるよな?」


 「あぁ。殿に村人に紛れ織田の近況を探れと言われたが、まさかあの様な物が化けるとはな・・・」


 「殿に急いで報告しよう。それにあの剣城殿だったか?が作った野菜や芋、米も秘密裏に運ぼう」


 「当たり前よ!」







 「さて、隼人?あいつらは松平の家の者だがどうするかね?」


 「本来なら闇討ち。もしくはお館様に報告しますが先日同盟に相成ったばかり。ここで揉め事は・・・」


 「まっ、こっちも間者が居ない訳でもないがどうすっかな・・・。うちの殿なら放っておきなさい!と言うだろうな」


 「剣城様は優しいですからね。一応剣城様に報告しますか?」


 「そうだな。あちらもあちらで大変みたいだからな。今回は目を瞑ってやろう。実害があった訳でもないしな。あんな綿花の一つや二つ知られても今の松平には対した事ないだろう」


 「慶次様も丸くなられたのでは?」


 「はははは!確かに剣城と一緒に居ると丸くもなるかもな?あいつが思い描く未来は戦も無いそうだ。そうなりゃ俺達は無用の長物だな?がははは!だがそれにはまだ遠い」


 「はっ。殿が動けない部分は我らが殿の分まで働きましょう」


 

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