芳兵衛君の内なる自分
「剣城様、よろしいでしょうか」
「お菊さん?どうしたの」
「隼人から報告です。松平の間者らしき人を見つけたそうです。今日来ていた村人に混じっていたみたいです。まだ手を出していませんがどうしましょうか?」
「別に何か妨害したんじゃないんでしょ?それに今、三河は大変なんでしょ?逆に支援してあげなさい。あの村に備蓄してる、食糧とか剛力君の試作の何かとかいいんじゃない?」
「はぁ〜・・・・・。分かりました。何人か選抜して伝えておきます」
「よろしくね〜」
そんな松平何某なんかどうでもいい!濃姫さんからのプレゼントだよ!何だろうな?
女性からのプレゼントにニヤニヤしてしまう。
雅な家紋が入った箱を開けると中には短刀と綺麗に折り畳まれた服が入っていた。
「人妻からのプレゼントだけど嬉しいな!!地味に服はありがたい!早速着てみよう!」
貰った服はかなり高そうな作りの正月の時に皆が着ていたような服だった。肩当て?みたいなのも入っておりオレの厨二心が蘇ってしまうような作り・・・。織田木瓜紋の刺繍がされていた。
「お菊さん、居る?」
「はっ、ここに・・・。剣城様!大変お似合いです!」
「ありがとう。濃姫様から貰ったんだ!多分正装の時に着ると思うんだけど、折角だから今日はこの服にするよ!」
「勿体ないですよ!」
「折角貰ったんだから着ないと逆に勿体ないよ!短刀も差して完璧だな!」
お菊さんは冷めた目でオレを見ていたが気が付くと消えていた。
ついでに堀くんの甲冑も売ってしまおう!
《鎌倉時代 堀氏一族代々の甲冑一式》
買い取り金額¥5000000
高っ!甲冑の癖に高過ぎだろ!?これは本当に売ってしまっていいのだろうか!?まあ貰った物だからいいよな!?それに徐々にだがこの時代でも色々作れ出したから、贈り物や戦闘用具以外ではあまり使わなくなったしな。
次の日に国友さんがロクロが出来たという事で、金剛君や千吉さんの奥さんに本を見ながら『失敗してもいいからお願いします』と伝えて、俺は国友さんの元に向かう。
「国友さん、忙しいのに色々すいません。無煙火薬の方ですがこの綿を加工するみたいです」
「ここからは某が承ります」
芳兵衛君が俺が渡した軍手に、口にはマスクをして現代科学者みたいな出立ちで現れた。
「芳兵衛さんは分かりますか?私は全然──」
「剣城殿!これは革新的なのですよ!この炭素原子に繋がっている3つある赤白は、水素原子(H)と酸素原子(O)が結合したもので、ヒドロキシ基(水酸基)と呼び…………………グリセリンのヒドロキシ基(OH)が硝酸(HNO3)と反応してエステル化したものがニトログリセリン(化学式C3H5N3O9)………」
この説明はいつまで続くんだ・・・・。
「とまあ、この私が書物を見て書いて勉強をしたのですが・・・って剣城殿?」
やはり親子だ・・・。国友さん達はDNA検査しなくても紛う事なき親子です。
「おめーは理論ばかりだから腕が上がらねーんだ!剣城にそんな事言う前に早く作れ!」
「何を!?親父もこの危険な物は分かるだろ!?仕組みが分からないと作る物も作れねーだろ!?」
オレが聞いた事ない単語が出てくる、壮大な親子喧嘩が始まった・・・。他の弟子の人達は呆れた顔になり、各々作業に戻ったところを見ると、今回だけじゃなく今までもよくある事なんだなと思う。
「国友さん?技術も大事ですが何故この様にこうすればこうなる、って事が分かる事も大事ですよ?偉そうに言う訳ではないですが、芳兵衛さんに一部屋設けて、色々研究する班も創設してみますか?」
「剣城殿!!!!!!構わないのですか!?!?!?」
おっ、食い付きが半端ないな!?芳兵衛君はやっぱ科学者志望か!?
「ふん。俺もまだ死ぬつもりはない。お前の腕で俺を超える国友銃を作ってみせよ」
「親父!!!必ず!!」
その後。オレが出したジオラマ家の一番端っこの家を芳兵衛君に渡して、オレは科学はまったくだから言われた物を購入して渡した。
「我が儘を言ってもいいですか?」
「出来る範囲でなら・・・」
なんか芳兵衛君の目が怖いぞ!?
「クロムモリブデン鋼を少々用意して欲しいのとホーニング機、旋盤に金属旋盤もお願いします。それに雷管も作ってみたいので…………」
この人は何なんだ!?笑いながら色々言ってくるんだが!?これはあれか!?オレと同じもう一人の内なる自分か!?そもそもホーニング機ってなんぞ!?
農業神様!?助けて!?かなりやばいっす!オレは全く分からねーっす・・・・。
〜時間が止まる〜
「やぁ、我が兄弟!呼ばれた気がしたんだなぁ」
いやいや早っ!!オレは心の中で思ってただけなんだけど、それだけで登場かよ!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます