女の園

 俺は城に戻り、木下さんと夜飯を食べながら話をした。夜飯は俺が出したグラタンにした。


 「おっほぉ!これは美味いのう!舌がとろけそうだ!」


 「これはグラタンと言って、マカロニとチーズがーってそんな事はどうでも良いのですよ!実はお願いしたい事がありまして」


 俺はそれから綿花の事を大まかに教えた。無煙火薬という物から、先日渡した布団に服に色々利用方法があり、なんならもっと早くに出すべきだったとも言った。


 「その綿花とやらは木の枝の白い蜘蛛の糸みたいなやつか?」


 「多分それです!てか、この本見て下さい!これが綿花です!」


 「ほうほう。これは松平殿の領地にてよく見るのう」


 聞けば三河に良く綿花は出来ているらしい。けど松平さんの所もまだ安定してないから、こんな事教えられる筈ないな。いずれ分担して加工とかしてもらうか。それでいくらかマージン渡せば嫌とは言わんだろう!


 「とにかく今はあの村で作りましょう。まだ三河方面は安定してないし信長様も戦中です。信長様が帰って来た時に驚かせてやりましょう!」


 「それはいいが、何故それをワシに言うんだ?」


 「普通に手伝って欲しかっただけなのと、人手が全く足りません。甲賀の人達は農業、軍事演習、勉強もしたり、綿花にまで手が回らないと思います」


 「ワシに言わずともお館様に言えば、人くらい用意してくれるであろう?」


 「この時代に迷い色々な人に出会いました。柴田勝家様、丹羽長秀さんとか皆です。柴田さんに世話になったりしましたが、私が1番接しやすいのは木下さんです。なのでお願いしました」


 「ほう。嬉しい事言ってくれるのう?そうじゃな。お主の為にワシも協力してやるとするかのう」


 糞!オレは何言わされてるんだ!?男にこんな事言って恥ずかしいじゃねーか!?木下さんのあのドヤ顔は何なんだよ!?



 俺は本を見せながら実を取り、ロクロという綿繰り機を使い種と繊維に分ける作業、その後、乾燥させたりほぐしたり、綿打ち作業、糸車を使い紡いでいく作業、糸の重量の30倍の水で、糸の重量の2%の中性洗剤を加えて、約1時間煮沸する作業などを、本を見せながら伝えた。


 「こんなに作業があるのか?」


 「そうです。とても今の人手じゃ足りない事が分かりますよね?正直私の技で完成品を出す事は出来ます。出来ますがそれをしたところで意味はありますか?無いですよね?できれば尾張の人達で作って欲しいです。多少の手助けはします。所々作業に使う物は国友さん達が作ってくれるそうです」


 「そうじゃな・・・。分かった。とりあえず100名用意しよう。それで一度様子見じゃ」


 「ありがとうございます!よろしくお願いします!」


 少し談笑しデザートのプリンを食べ始めると、久しぶりに濃姫さんの側女さんがやって来て、部屋に来るように言われた。


 「まあそのなんだ・・・剣城?例の事は任せておけ。お主は・・・頑張れよ?ねねの分までプリンすまんな」


 俺は他人事の目をする木下さんと別れ、濃姫さんの部屋にやってきた。予想はしていたが我が儘姫も一緒に居た。


 「久しいのう?妾に挨拶にも来やんとはどういう了見じゃ?」


 いや開幕からなんでキレてんの!?信長さんみたいなんだが!?


 「いえ、最近忙しくて申し訳ありません。先にこれをお納め下さい」


 イライラしてる時は甘味作戦だ!


 《ラングドシャ10枚入り》¥500


効能・・・・程良い甘さのチョコをしっとりクッキーで挟んだ、神界お菓子職人の巨匠が作った菓子。


 《アップルパイ×2》¥1000


効能・・・・厳選したリンゴをふんだんに使った逸品。



 「ほっ!久しぶりに剣城の甘味じゃ!」


 ふん、チョロいな。甘い物出しておけば何とかなるな。


 「だが!妾はこんな物で喜ぶ童ではないッ!!」


 甘い物出しとけば何とかなると思ってた時期がありました。何か別の事か?


 濃姫さんとお市さんは前に出した雑誌を読み、未来の服とか化粧品とかに興味が出たらしく、欲しいとの事だった。どうも側女さん達にもオレの噂が出てるらしく、当初は変態でも見る目だったのが、今は何か懇願される目に変わっている。


 いや、オレは別に前のままの目でも、それはそれで良かったんだけどね!?なんかこうゾクゾクっとするような・・・。ゲフンゲフン。


 《女性ファッション雑誌各種20冊》¥20000


効能・・・・年齢時代問わず女性とは神秘な生き物なり。付録に化粧ポーチサービス。


 《初めての化粧7点セット×20》¥80000


効能・・・・初めての化粧デビューに適している、便利な女性の7つ道具の一つセット。肌荒れ、湿疹が出ない。



 「こんな物、どうでしょうか?側女さん達が何人居るか分かりませんが、これで勘弁して下さい」


 「これは!!あの書物に書かれておる化粧用具ではないか!?」


 「濃姫様!間違いありません!」


 「剣城!大義である!婆や?あれを」


 「はい、殿方。これを」


 「また何かあれば頼む!下がって良いぞ」


 オレはまた何か言われる前に足早に部屋に戻ったが、一つ後悔した事がある。あの女の園の匂いをもっと嗅いでおくべきだったぁぁぁぁぁ・・・・。



 

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