新種の毒虫 加藤虫

 「がっはっはっはっ!ここが俺が仕えている殿の家だ!おっと!?もう全員揃ったのか?まあ良い。若い甲賀の連中が殿に仕えたいって事で、馳せ参じる予定だったのだ」


 「慶次殿?部外者の某が入っても良いのか?しかも殿の了解を得ずに?」


 「俺が仕えてる殿は優しい方なんだ。今は大殿の倅を教育するかなんかで城勤めだが、何も言いやしないさ」


 「それなら良いのだが・・・・」


 「おう!甲賀の者共!帰ったぞ!それとこっちは町の飲み屋でたまたま出会ったんだが、中々に気が合うんで連れて来た・・・・。殿!帰られてたんですか!?」


 「だから慶次さんにその話し方は合わないから、いつも通りでいいよ。その横の人は友達さん?」


 「え!?慶次殿!?この方が例の慶次殿が仕える方ですか!?・・・・・お初にお目に掛かりまする。某、元美濃国、斎藤家に仕えておった加藤清忠と申しまする。現在は在野で鍛冶屋を営んでおりまする」


 いや例の殿って!?その例って何なんだよ!?また変な事言ったのか!?ただ、鍛治師を連れてくるのは天才だな!


 「おっ!鍛冶ですか!?慶次さん!流石!今一番欲しい人材だよ!!!でも何か顔色悪いね?」


 「そうさ。この清忠殿はそれなりにやる鍛冶屋なんだが、斎藤家に仕えて居る時の戦での矢傷が良くなくて、先が長くないらしくてな?だがそれでも中々に悲観的になるでもなく、面白くてな?それで俺と意気投合したって訳だ!がははは!」


 いやいやそんなに悪いの!?多少顔色が悪いように見えただけなんだけど!?しかも当の本人も笑ってるんだが!?


 「そんなに悪いとか思わずすいません」


 「だから折角誘っていただいたところ、申し訳な──」


 「傷ってどこです?お菊さん?例のスーパー塗り薬と、この前教えた応急処置の練習させてもらいなさい!皆お菊さんに注目!加藤さんもいいですよね?矢傷ですよね?多分意味不明な馬糞やら尿やら塗りたくって、ばい菌でも入ってるんでしょう。見せて貰えますか?」


 「え!?治せるですと!?最早左腕どころか腹辺りまで腐ってきておるのに・・・」


 「がはははは!な?うちの殿は面白いだろ!?清忠殿!ここは素直に甘えておきな。いやなに、殿と出会わなかったら確実に死んでたさ。もし薬が効かなくても死ぬだけだ!」


 傷を見せてもらったが・・・言葉にならない。真っ黒でもう素人でも皮膚が壊死してるのが分かるレベルだった。この状態で普通にしてるのがおかしいんだが!?そこからお菊さんが金剛君達に、まずは消毒と患部を綺麗にする事を、以前の戦で俺がお菊さんに教えた事をお菊さんが伝え、馬糞や尿を塗る事は絶対してはいけないと教え、例のスーパーゴッド軟膏を塗った。


 「加藤殿、これで一応は治療終わりです。下賎の者の治療で申し訳ありませんが、薬の効果は間違いありませんので安心して下さい。ご協力ありがとうございました」


 「いや某はそんな事は思うてはおらぬが・・。それに全く痛みも無いのだが・・・」


 「あぁ、多分明日には治ってると思いますので安心して下さい。なんなら今日は泊まっていきます?この子達、実は今日着任して歓迎会しようと思っていたので、飯も食います?不味くはないと思いますよ!」


 「がははは!清忠殿!良かったな!?嫁さんに土産も一緒に貰うといいさ!」


 その後は皆またまたの大宴会に突入して、ピザが美味いやら、大膳君達はコーラが美味いとか、誰がコーラ一気飲み出来るかとか、変な事を始めた。加藤さんはかなり恐怖の顔をしながら、皆が食べた物を少しずつ食べていたが、どれを食べても『美味い!美味い!美味い!美味い!』しか言わず、俺としては面白味が無かった。

この時代の人に未来の食べ物を出したら、大体は美味いと言われるが、この時代の人の食レポを聞くのが楽しみになりつつある。


 「この様なもてなし、それに治療費など如何程必要か?さっき確認したらもう黒い部分が無くなってきており、矢が刺さった箇所の傷も消えてきておる。こんな薬は見た事も聞いた事も無く・・・」


 「あぁ、別に治療費はいいですよ。その代わり、貴方の話とこれから専属じゃなくていいので、たまに私の仕事を請けてくれませんか?」


 この加藤清忠さん。実は犬山城代を務めるかなりの大物だった。ただやはり身体が芳しくなく、清忠さんの弟がほとんど仕事をしていて、清忠さんは『奥さんの実家の鍛冶屋を一緒にしている』と言っていた。しかも奥さんの従妹がなんと、ねねさんと言ったところで俺は一つの記憶が蘇る。


 この人、加藤清正のお父さんじゃね!?清正君はもう産まれてるのか?


 「ちょっと込み入った事を・・・加藤様は子供は居ますか?」


 「いえ、某がこんな状態だったのでその様な事は・・・」


 ならこれからデキるのか?是非とも賤ヶ岳七本槍を、芝田家七本槍にしないといけないな!秀吉君!残念だったな!!俺が加藤さん貰うぞ!あんたは福島さんくらいで我慢しとけ!!


 「いえ気になっただけです!身体も明日には治ると思いますので'奥さん'を大事にして下さい!明日、良いお土産お渡ししますので'奥さん'と食べ'奥さん'を労い、たまには'奥さん'がする仕事を手伝ってあげたりすれば喜ばれますよ!」


 「やけに芝田殿は某の妻を推しまするな?確か木下殿の妻、ねね殿ともお知り合いだとか?」


 「まあ木下様とはよく仕事してるし、何なら今も信長様の息子さんの勉強を教えたりしてますよ。ねねさんにも良くしてもらってます」


 「色々、忠告ありがとうございまする。こんな某にも離縁せず、着いて来てもらいましたからな。某の妻は……………その時に某が……………その後妻の親父さんと………………でもその夜に…………………戦の後…………………放って行かないでと…………………という感じで一緒に居てもらえてるのです」


 いや長かった・・・。てっきり俺は内部に潜み込む新種の毒虫、加藤虫かと思ったよ。惚気か!?女っ気0のオレに対する挑戦状か!?糞が!!!治してやったんだから今度、女紹介してくれよ!?そう言えば堀君から合コンの誘いがまだだな!?もう三が日終わるだろ!?早う帰ってこいよ!!

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