志布志城奪還戦

 戦になると号令が掛かり、オレ達はドンペリで3日過ごした。それは何故か?薩摩の兵士の人こえーんだもん!


 やたら皆が好戦的な雰囲気になり、往来の人まで肝付を殺せ!と音頭を取るくらいだ。岐阜とは大違いだ。そして、そのドンペリの中に居るのは義弘さん達だ。


 作戦は去年に落とされた志布志城に攻め入ると。何か他にもあるのか?と思ったが、ただ攻める!と言われただけだ。一体どんなゾンビ兵だよ!?と問いたい。


 だからオレは、せめてもの援護射撃ではないが鹿児島半島をぐるっと回り、海から攻めようと思う。なんならマジで、レールガンで一撃で終わらせてもいいかな?とすら思う。


 来た時はだいぶ沖から来たから分からなかったが、恐らく半島を東に越えた辺りからは、肝付の海賊か海兵が居るだろうから、海戦も考えなくてはならない。


 「義弘さん?オレはオレのやりたいようにやりますが、いいですか?」


 「うむ。よもや一世一代の切腹から救われるとは思わなんだ。父御からは『必ず一番手柄を持って帰れ』と言われておる」


 この言葉の意味・・・手柄が無いと斬首!とか言ってそうな感じがする。それが薩摩人のやり方だ!とかも言ってそうだ。だからオレは手柄は義弘さんに譲るつもりだ。


 「まあ多分、思ってる以上にこっちは短期決戦になると思いますよ。超兵器を今回は使いますので」


 「おぉ!!剣城様!珍しくやる気になられましたか!?」


 「変に長引かせるより、短期で終わらせた方がいいでしょう?なんなら本拠地の高山城でしたっけ?志布志城に向かう道中に見えるのですよね?一気に本拠に奇襲してもいい気もするけど」


 「確かにドンペリなら出来そうではありますが、しかしさすがに些か兵が少ない気がしますぞ!?」


 「まあここは織田じゃないから、オレ達は義弘さんの与力みたいなもんだよ。まずは志布志城を落とそう。元々島津家の城だったんでしょ?状況を見て被害皆無なら本拠も攻撃する。それでいいですか?」


 気付けばオレも薩摩人に当てられたのか。岐阜に居る時より好戦的になってる気がする。それに日向の伊藤だっけ?あれも出張って来ないか心配でもある。


 そしてもう一つオレからの贈り物として、急遽トランシーバーを渡している。義久さんに渡したのだが、大変に驚き大変に喜んでくれている。なんなら『にしを貰ってくれ!』とまで言われたが遠慮した。


 オレは構わないがゆきさんに申し訳ないし、流石にそこまで、まだ島津家の事を知らなさ過ぎる。そして怖い。


 「フッ。テスッ。テスッ。義久様、聞こえます?」


 『おっ、おぉぉ!き、聞こえる!どうされたか!?』


 「こちら準備完了でございます。時間差で出陣致します。何回も言いますが、もし志布志城をぶっ壊してしまっても、怒らないで下さいね!?」


 『あぁ!大丈夫だ!肝付に大打撃を与えられるならば安いもんだ!』


 言質は貰った。レールガンで壊しても怒られないだろう。


 義弘さんの馬廻り達。先日、手が吹き飛んだ人達も乗り込み総勢40名程にて、オレ達は出陣する。桜島を左手に見ながらだ。自動運転にて60分後に志布志湾に到着予定だ。


 「皆!60分後に到着予定!志布志湾に到着前には、肝付の海の兵と戦うようになるから、今の内に着替えるように!」


 「敵を見ればすぐに発砲しても?」


 「もうこの際、いいんじゃないすか?義弘さん?いいですかね?」


 「あ、あぁ。構わない。何やら物凄い速さで動いているが、これは慣れないな。えんじんと言ったよな?」


 「まあ確かにいきなりは慣れませんよね。とりあえず、あの筒状の物から前には行かないように!そして左右にある筒の物も、触らないように願います」


 「赤塚!先の失敗をこの剣城君は、寛大なる心にて許してくれたのだ!挽回をするように!」


 「ははは。普通にしてくれていいですからね?腕の方は問題ないですか?」


 「いえ。まさか腕が生えてくるとは夢にも思わなく。それにおいどんはかなり、剣城様に失礼な態度を取ってしもうたと・・・」


 「気にしてないですから構いませんよ。とりあえず、もしこの戦で怪我しても治しますから。後、これは私達の隊の家訓?的な物ですが【死ぬのは畳の上で往生で!】なので、勝手に突撃とかしないで下さいね?捨て奸でしたっけ?必要な時は文句言いませんが、この船に居る間は言う事聞いて下さいね」


 「捨て奸を知っておるのか?」


 まあ。後世でかなり有名だからな。かなりの忠誠心が無いと出来ない作戦だからな。


 「なんとなくは聞いた事あります。とにかく勝手に始めないように!」


 戦の前だと言うのに、薩摩の人達は嬉々としている。まあそれに関しては、オレの配下の人達も負けてはいないが。


 「今こそ、国友大筒銃の力を発揮する時だな!三左衛門!遅れを取るなよ!」


 「なにを!!伝七郎めにワシの方天戟の恐ろしさを見せてやろうか!」


 いや小川さん?船からどうやって方天戟で攻撃するんだ!?


 "刃が疼くわね"


 "いやプロミさんもかよ!?"


 "はんっ!あたいは人の生き血が好きさね!今宵で更に力が上がる気がする。主人はまさか、あたいを使わない気じゃないだろうね?"


 "分かりました!分かりました!少しだけ乱戦してあげるから怖い事言わない!"


 "さすが主人!てつはうでも鉄砲でもあたいが斬ってやるからさ!"


 もう皆、臨戦態勢だ。ここはオレも覚悟を決める時か。


 「あの左手に見える山に高山城があり、北に降った場所に夕張城がある」


 「あそこが肝付の本拠地ですよね?案外近いな。島津家としては肝付家は邪魔な存在ですか?確か御南さんが嫁いでいましたよね?」


 「あぁ。叔母だ。あの高山の城に居るだろう」


 う〜ん。なんなら攻めようかと思ったけど、流れ弾とか処刑とかされれば後味悪いからな。とりあえず志布志城に向かおう。


 それからすぐさま志布志湾に入り、ドンペリに装備されている、500倍望遠鏡にて城を見る。まあ肉眼でも見えるけど。言っちゃ悪いがこれも、姫路城や松山城みたいに石垣がある城ではない。土塁の城だ。ガッカリだ。


 「案外すんなり湾に入れましたね。肝付の船が見当たりませんね」


 「いやこの船を見て怖気づいているかもしれん。おい達も無策にこの船を攻撃しようとは思わん。というか撃破できる気がせん」


 確かにかなり大きいけど、そんなに威圧感は無いと思うけどな。おっ!?それでも小舟が6隻程やって来たぞ!?


 「剣城!敵の船だ!撃破するか!?」


 「え!?あれが敵の船!?小さくない!?」


 「がははは!今回は剣城も大丈夫そうだな!そうだ!あれが敵の船だ!」


 ガンッ ガンッ ガンッ カツッ カツッ カツッ


 「我が君!攻撃されてますぞ!反撃を!」


 「なんか聞こえるかと思ったけど攻撃だったんだ?小泉さん?右舷から水鉄砲の用意を。自分の間合いでどうぞ!」


 「御意!」


 「剣城!俺もやるぞ!三角造直槍最初の獲物だ!」


 あぁ・・・慶次さんに確かロンギヌス槍渡したよな。名前が変わったから忘れてたが、あれも確かレールガンのような・・・。


 「貫けッッ!!!地走りッッ!!!!」


 ズドォォォォ──────ンッッッ!!!!


 「「「おぉぉぉ!!!!!」」」


 「前田殿!やるではないか!今の槍技は何だ!?畿内ではそのような槍術を使うのか!?」


 「義弘殿!これは俺が修練した技の一つだ!突きの力を穂先に集中させた力ある一撃だ!」


 いやいや、おかしいだろ!?マジで海割れたぞ!?地走りとかめっちゃカッコいいんだが!?


 「慶次坊に負けてはおれん!剣城様!発射します!」


 ドォンッ! ドォンッ! ドォンッ!


 正直慶次さんの技を見た後では見劣りがあるが、それでも敵の小舟に命中させ転覆させている。小泉さんの命中精度も大概やばい。


 「うん!全軍撃破だな!温い温い!ははは!」


 「たったこれだけって事はないですよね?義弘さん?」


 「あぁ。これから浜に押し寄せてくるだろうが、父御達が陸からも攻め入る。はたしてこちらに兵を割く余裕が、志布志城にあるかどうか」


 たしかに小さい城だから、そんなに兵は詰めてはいないだろう。向こうで戦闘が始まれば、俺達も小舟に乗り上陸するか?それともここでレールガン放ってやろうか!?


 

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