晴天からの雷雨
今か今かとオレ専用のハゲ防止シャンプーを持ち、待ち構えていた訳だが・・・長い・・・。しかも時折キャピキャピしてるような声が聞こえる。
その20分後にやっとゆきさん、小見さん、側女のみきさんはご機嫌で出てきた。
「剣城様!この温泉はすっごく気持ちいいですよ!」
「ほんに・・・本当に気持ち良かったですよ?先に入らせていただきありがとうね?」
「ははは。喜んでもらえてなによりです!オレも入って来ますね!」
それからダッシュで温泉に向かったが、オレは初めて温泉に涙した。夢にまで見たデカい湯船。シャワーなんかは無いから、洗面器で髪なんかは洗わないといけないが、素晴らしい!オレは髪と体を洗い、早速入る。
「がははは!これは気持ちいいですな?我が君!」
「そうですね!野田さん達に感謝です・・・っておい!?」
何で小川さんが居るんだよ!?オレは許可してないぞ!?
「何でワシが居るか?って顔をしてますな!?それはワシが小川三左衛門だからですぞ!!」
いや意味が分からないんだけど!?まあいいか。今は護衛してくれているし、長生きしてほしいしな。なんだかんだ頼りになるし。
「本当に気持ちいいですな・・・。我が君には感謝するばかりですぞ」
「いえいえ。こんな事くらいで感謝されてもですよ」
「あっ、本日から清洲の村のワシの家は新城に与えたので、この家に寝泊まりしてもよろしいですかな?」
いやいや何で分け与えているんだよ!?これで断れば、オレが冷たい人間になるじゃねーか!?
「部屋はかなりあるので構いませんよ」
「これだけ広ければ、護衛の一人も居なければなりますまい」
「そうですね。金剛君もそろそろ帰ってくる頃かと思うけど、彼はこれから更に忙しいですしね」
そこから小川さんが思い出を語り出した。昔、甲賀に居た頃の生活、オレが現れる少し前に起きた飢饉、咳と喀血が止まらなく亡くなった奥さんの事。特に奥さんにこの温泉に入らせてやりたかったと。
「俺がもう少し早くここにタイムスリップすれば、治せたかもしれないのに申し訳ない」
「いや、あの時はワシも何回も寺に足を運び祈りました。だが病気が祈りで治る筈ないと今なら分かります。多分あれは結核という病だったのでしょう」
結核か・・・。俺がその時居たら絶対に薬を飲ませていただろう。
「これからはすずちゃんや鞠ちゃんに見てもらえるから大丈夫ですよ!さあ出ましょう!さすがにのぼせてしまいます」
風呂の温度は丁度いい42度くらいかな?人によっては温いかもしれないが、オレはこれでいい。流石、農業神様が愛した湯だわ。本当に濁り湯で水も入れず適温なんだからな。この湯を宿屋まで伸ばして、宿にも温泉繋げれば最高だな!明日提案してみよう!
温泉から出て家に戻ると、リビングぽい部屋に・・・リビングと言っても何も無いっちゃ無いけど。そこに3人が揃っていた。オレは思わず頭を下げる。
「如何でしたか?気持ち良かったでしょう?」
いや何で側仕えさんが勝ち誇ったように、オレに聞いてくるんだよ!?一応ここオレの家だよな!?
「みき?ここの家主は剣城殿ですよ?気を付けなさい!ごめんなさいね?この子は遠い親戚の子なのですよ。帰蝶とは性格が似ていなく私と似ているの」
親戚か。ってか帰蝶と似てない?いやいや。バリバリ帰蝶さんにそっくりだから!上から目線が!
《コーヒー牛乳×5》
効能・・・・カルシウムたっぷりコーヒー牛乳。
いやいや。最早、効能じゃなくただの商品説明だけだから!!
「コーヒー牛乳です。風呂上がりはこれ!と昔から決まっているのです!」
「昔から!?いつからですか?鎌倉の頃くらいですか?」
いやゆきさんも真面目に聞いてくるなよ!?比喩だよ!
「甘くて美味しい・・・」
「みき?こんなのが飲めるのは剣城殿の家だけですよ?これから掃除洗濯を頑張るのですよ?」
「はい!」
この人が掃除とかしてくれるんだ。ってかできるのか!?オレはこの後、小川さんもこの家に住み護衛をしてくれる事を伝えた。
小見さんは今は城の人間ではないし、ここはオレの家だから好きにしていいし、『そんなに気を遣われれば城に居るのと変わらない』と言われたから、今後は自然に接する事とした。
次の日。オレは城詰めの河尻さんに服を渡すべく登城する。ついでに温泉の事も信長さんに言おうと思う。
「入れ」
いつもの大広間。河尻さんも一緒だ。
「おはようございます。まずは河尻様に。例の服です」
「おぉ!良いではないか!ワシ直属の部隊とすぐ分かるな!?」
「はい!黒に金色の文字。かなりカッコいいかと」
この背中に刺繍されている金色の文字・・・。何て書いてあるかはオレも分からない。ってか見た事もない文字だけど物凄くカッコいい。
「河尻!これから黒母衣衆はこれを着るように!」
「はっ!剣城。恩に着る」
「信長様にお話があります」
オレは両替所、宿屋は後、7日後くらいでできる事を言った。並行して、剛力君はここ岐阜城を改造しているが、家の地下室の拡張の時に聞いた進捗をそのまま伝える。
「山城ですし、大手門はそのままですが北口、西口に三重の枡形虎口を配置し、虎口の塀は高さ8mにすると。且つ、虎口を仮に突破されたとしても、全ての城に続く門は鉄にして固く閉ざせば侵入されない、との事です」
「素晴らしい!城の防備はそこそこで良いのだがな。城に攻め込まれておるという事は、追い詰められておる事だからな」
やっぱ、この人も分かってるんだ。籠城戦は先が無い事を。
「剛力に伝えろ!戦略的に重要な城に簡易的な防備も考えておけとな!」
「了解致しました。それと我が家の裏に温泉が湧き出ました」
「は?何じゃ?」
機嫌が良くなる事を見越して、本来オレは城の事は伝えなくてもいいのに、わざわざ伝えて温泉の事を言ったが・・・晴天から急に雷雨になったような信長さんに気付いた。
オレは急いで家に戻り、信長さんが裏の温泉に来る事を伝えた。
「大殿が来られるですと!?」
「婿殿が?」
「剣城様!?どうしましょうか・・・」
「とりあえず普通でいいと思う。温泉自体初めてらしいから」
「案内致せ!裏手の家か!?」
いや来るの早過ぎだろ!?遠藤さんなんか息切らしてるぞ!?
「邪魔するぞえ」
「の、濃姫様!!!お身体は大丈夫でしょうか!?」
まだお腹は出ていないが、悪阻とかこの人は無いのだろうか?
オレは軽く扇子でおでこを叩かれ手を引かれた。不謹慎ながら、初めて濃姫さんの手に触れたけどかなり細い・・・。
「母上?元気にしておりまするか?」
「帰蝶の方こそ問題ないのかえ?」
やっぱまだ妊娠の事は秘密なのか。これは史実にない事だし、奇妙君の事もあるし・・・男なら大変だな。
ってかやっぱ結局みんな来るじゃん!!全然休めないじゃん!!
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