蜂矢の陣

 「おぉ!!当たった!!小泉さん、流石です!!」


 「いやいやなんのなんの!」


 双眼鏡で確認を・・・。よし!城の人達は慌てているな?


 「剣城様!後方から5騎程近寄って来ます!織田木瓜紋です!」


 「うん?誰だろう?」


 反対を向き確認すると、家臣に状況を伝えると帰った竹中さん達だった。


 「剣城殿!遅れまして申し訳ない!」


 「おい!色白ッ!!遅いぞ!!」


 いや小川さんはなんちゅう呼び名だよ!!?


 「いえ、大丈夫です。今、上野城に攻勢を仕掛けようとしていた所です」


 「私も参加してよろしかったでしょうか?」


 「ありがとうございます!是非に!連れて来た人達は?」


 一緒に来た竹中さん以外の4人は弟の竹中重矩、善右衛門、善左衛門、善中左衛門と言う人達だった。


 いやだから何で右・中左・左衛門なんだよ!?覚えにくいだろ!?もっと簡単な名前にしてくれよ!?


 「自己紹介ありがとうございます。とりあえず落ち着けば歓迎会でもしますので、お願い致します」


 「そのような事は結構でござ──」


 「重矩!剣城殿?是非楽しみにしております」


 クッ・・・。竹中さんは飯が食いたい為に弟の社交辞令を退けたな?いいさ!近い内、驚く飯を食わせてやるよ!


 「冗談はここまで。まず後方に少ないですが私の私兵を待機させております。ご自由にお使い下さい」


 竹中さんが言ってくれたのは100人程だが美濃の実家から私兵を連れて来てくれた事だった。いや頼もしいぞ!


 「いや、下知は私が出しますが、まずは竹中さんはどのように?」


 「いや、あの武器が何かは存じませぬが、小城とはいえ一撃で屋根に穴を開けるとは、勝負ありでございますな?剣城殿は殲滅をお好みで?」


 「いや、城主は松平様の重臣。酒井忠次様って人の叔父だから、できれば殺したくはないかな。残りは雅な甲冑の人は吉良って人らしいけど、その人達は正直どうでもいいかな」


 敢えて殺すとは言わなかった。どうせ家の再興とか言ってるんだから、後々家康さんの障害になると思うから、排除してあげてもいい気はするけど・・・。


 けどオレはこんな簡単に殺すとか言う人間だったか?本格的に時代に馴染んできたって事だろうな。


 「剣城様?次弾発射できます」


 「小泉さんお願いします。遠慮はいりません。もし酒井さんの叔父に当たっても気にしなくていいです。必ずしも生きてって事ではないので」


 「御意」


 ヒュ────ン……ドォォォォォ──────ン!


 「次弾も命中!!」


 「兄上・・・。これは・・・」


 「重矩?これがこれからの戦だ。俺はずっと剣城殿の側に居るぞ。この武器を持ってして俺の知略が合わされば楽しい盤面になるであろう」


 いや、横で小川さん並みのバトルジャンキーが居るんだけど!?


 「剣城!出るぞ!おい!竹中!お前の兵を貸せ!狩り時だ!」


 言い得て妙だな。狩り時か。


 「竹中隊!集合!お前達はあの前田殿の隊に加わり敵を殲滅!くれぐれも竹中の名に恥じぬ働きを!」


 「「「はっ!!!!」」」


 「よぉ〜し!城攻めには随分と少ないが役者は揃ったな!竹中隊は後方に前の者と同じように並べ!前田斬り込み隊!蜂矢の陣!突撃ッッッ!!!」


 いやいや!蜂矢の陣とかマジであったんだな!?カッコイイぞ!?・・・・ってかオレも突撃するとか言ったのに、出遅れたじゃないか!!!


 「ほほほ!腕が鳴りますな!?その抜刀は剣城様も行かれるのでしょう!?重矩!お前達はこの場所にて待機!私は剣城様と向かいましょう!」


 忘れてたわ。この人もマジの、武闘派バトルジャンキーだったんだよな・・・。


 「オレ達も行こう!突撃ッ!!!!」




 



 「こんな筈では!こんな筈では!!」


 「酒井殿!!!大丈夫なのか!?ワシの家の吉良の再興の約束は!?」


 「少し黙れ!」


 「き、貴様!誰に口を聞いておる!!」


 「黙れッッ!あの城を壊した銃は脅威だが、敵と接近すれば弾は飛んでこん!人数はまだ勝っておる!正攻法で敵を叩く!!」


 「おい?大丈夫なのか?」「あんな武器見た事なかったぞ」「だから俺は松平様に──」


 「私語を慎めッ!!」


 慶次さんが作り上げた蜂矢の陣は理想的だった。いや本物はどうか知らないが、横で竹中さんが感動していたからだ。


 矢印のような形の隊形になり先頭は慶次さんだが、左右の隊は杉谷さんと隼人君だ。

 

 城の屋根を破壊して敵が慌てているのもあるが、銃を走りながら一発撃ち相手を怯ませた後、背中に背負った刀と取り替え敵と接近する直前に、残りの焙烙玉と爆竹を同時に投げ込んだ。

 

 爆発が終われば後は乱戦だが、相手は可哀想なくらい何も出来ていなかった。むしろ焙烙玉で怪我・・・というか、手が千切れかかっている人も居る。

 

 「あの突撃陣形は素晴らしいですが、焙烙玉がこの様な威力だとは・・・。私も慢心しておれませんね」


 「まあ日に日に色々開発していますからね。これから竹中さんも頼みますよ?」


 「ほほほ。剣城殿に褒められるように精進致しましょう」


 「お前がこの部隊の大将だな!?」


 「かははは!俺が大将な訳ないだろう?俺は名無しの権兵衛さ!我らの大将はあっちさ!だが・・・行かせねーよ!」


 グサッ。


 「おい!剣城?大丈夫か?」


 「大丈夫も何もオレはする事無いんだけど?」


 「まあ剣城が安全なようにしてるからな?がははは!」


 パンッ。


 「「「「!?!?!?!?!?」」」」


 「慶次さんッッッッ!!!!」「慶次様ぁぁ!!!」


 「狼狽えるな!肩に当たっただけだ!」


 「我こそは東条吉良家当主!吉良義安ぞ!堺から取り寄せた一丁だが、用意しておいて良かったわ!貴様らなんぞに殺られてなるものかッッ!!」


 「お前が吉良かッッッ!!!」


 オレは瞬間的に吉良義安に斬りかかった。側近らしき人達10人がオレの前に立ちはだかったが、オレは池田さんや堀くんと練習し、勝手にオレが命名した一之太刀を振るう。


 タイムスリップ前に、アニメで見たなんとかって人の技だったと思うが、名前がカッコよくそこだけ覚えていたからだ。


 「一之太刀ッ!!」


 ブシャァァァァァ───!


 別に技の名前は言わなくてよかったが、練習していた時、発声した方が力が入る事に気付き、恥ずかしいけど発声するようにオレはしていた。刀で人を斬ったのは初めてだったが変な感覚だ・・・。


 「そ、そ、その剣筋はな、な、何だ!?人の成せる技ではないな!?」


 余韻に浸っていた訳ではないが、オレは一瞬周りの音が静かになったように感じた。


 「い、一刀で4人を!?剣城殿は剣の腕も中々であるな!」


 竹中さんの声で我に返る。あぁ〜・・・。本当に人を斬ってしまった・・・。だがもう後悔はしないぞ。てか、物凄く剣の感覚が軽いんだけど!?


 「琴ちゃん!急いで慶次さんの手当て!ここはオレに任せて!」


 「み、皆の者!急いで其奴を討て!おい!お前は弾込め急げ!!」


 オレやお菊さん竹中さんは、側近の人や周りに居た雑兵の人達と乱戦になった。


 吉良何某の側近らしき人が後二人というところだが、この二人が物凄く強い。このファンタジーな剣を持ってしてもいなされる。だが少しずつ相手の刀が悲鳴をあげてるのが分かる・・・。


 "いただきます♪"


 なんとなくだがノアと話すような声が頭に聞こえたような気がする・・・。


 ガキンッ。


 「なに!?某の刀が!?」


 「一之太刀ッ!!」


 ズシャッ。


 「なっ!?おい!小七郎!!どうした!?お主は影之流の使い手と言われたではないか!?」


 「殿・・・申し訳ない・・・。彼の剣の声を聞こうと思っておりましたが、今一歩及ばず・・・」


 勝った・・・・。


 影之流?名前は知らないがこんなに強い人が、無名な筈ないと思う。


 「利き手を一刀で取られたか。もはや剣の道は潰えた。殺れ。この首持って手柄とせよ!」


 「ハァー・・・ハァー・・・。いや首なんか要らないすよ」

 

 オレは不謹慎だが、この人を死なすのは惜しいと思った。直感に従おうか。


 「琴ちゃん?慶次さんの治療が終わればこの小七郎って方も治療を」


 「なっ、何を言うか!!ワシに生き恥を晒せと申すのか!?」


 「理由はあるんですよ。貴方と殺り合って殺すのは勿体ない。オレは自分の直感を信じます」


 「何が愛洲家だ。使えん浪人と同じではないか!折角、剣術指南で仕える事を許してやったと言うのに!」


 ゴンッ!!


 「ふん。片腕の男なんか二度と刀を振れるか!」


 「鈴ちゃん!急いでこの人を見てあげて!!大丈夫です!必ず治します!」


 「ワシを無視するでないッ!かくなる上はワシ自ら貴様を成敗してくれる!」


 「剣城様ぁ!!!」「剣城!!」「我が君ッッ!!」


 パンッ。

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