剣城からゆきへの想い

※守り刀の話は創作ですのでご容赦ください。






 「皆さん、本当に助かりました!礼を言います!ありがとうございます!」


 「なんの!なんの!剣城様に死なれたりすれば、我らもどうする事も出来ませんからな!?ただ、やはりもう少し人員を増やさねば、中々解決出来ませんな」


 「誰か小泉さんの知り合いとか居ます?甲賀の人じゃなくても、信用できる人なら面倒見ますよ?」


 「いや〜それが・・・・」


 まぁ中々信用できる人なんか居ないよな。


 「隼人君?臼砲は難しい?」


 「はっ。小泉殿ならいざ知らず。俺は狙撃班なので少し難しいです。それにこれは城などを気にせず、破壊するなら使い勝手が良さそうですが、兵に当てるとなると小泉殿でも・・・」


 やっぱそうだよな・・・。曲射だから上から落として、焙烙玉みたいなのを炸裂させるもんな。それにあの突撃の時、撃った一発は全然上空で炸裂しただけだから、被害が皆無だったしな。


 「隼人?少し見せてみなさい」


 「小泉さんは分かりますか?」


 「う〜む。これは兵に当てる武器で?」


 「いや、元は簡単に軽量化して、少人数で運用できるような物をお願いしたのですが、まだ難しいらしく国友さん曰く試作だそうです」


 小泉さんは唸りながら見ていたが、さすがの小泉さんでもこれを兵に当てるには、観測する人が要るし、国友さんも『精度が悪いので青銅砲の方が直射で当てやすい』と言った。


 「ただ、この炸裂弾はいいですな。どういう原理か分かりませんが」


 「すいません。私もこの原理は分かりません」


 後、四発残ってるけど・・・。ってか、攻撃してきたのは酒井さんの叔父の方だから、あの上野城にぶっ放すか!?やられて黙っておくのはムカつくよな!?半ばコイツらのせいで、ゆきさんに怪我させてしまったものだよな!?


 「琴ちゃん?ゆきさんは大丈夫?」


 「剣城様!!申し訳ございません!私なんかのせいで大切な剣城様の武器を・・・・」


 「あれ?ゆきさん、もう良くなったの?」


 「はい。剣城様の技の薬を飲みました!すぐに治りました」


 うん。やっぱチートだな。即死じゃなければとりあえずは治るんだからな。この恩恵は身近な人だけにしよう。


 「良かった!良かった!ゆきさん、本当にごめんね」


 「いえ、私ももっと精進致します。これはお返し致します」


 あぁ〜・・・。後悔する訳じゃないがトマホークmk-2の所有者は、ゆきさんとオレになったんだな。てっきりオレはお菊さんかな?とは思ってたのにな。


 「ゆきッ!その剣城様の武器は剣城様が信用足る者、一人にしか撃てない武器だそうだ!その意味が分かるかッッ!?」


 「え!?菊、それは本当!?」


 「本当だ。剣城様に聞けばいい」


 「うん。ゆきさん本当だよ。けど後悔はしていない。正直当初はお菊さんなんかに渡すかな?と思ってたけどオレはゆきさんで良かったと思う」


 「そそ、そんな・・・」


 「とりあえず清洲に帰るまではそれ使ってくれていいから。オレもこう見えても杉谷さんに、普通の銃も習ってるからね!?」


 「「「「「・・・・・・・・」」」」」


 え!?なに!?この空気は!?何でみんな無言なの!?何か変な事言ったか!?


 「がははは!我が君もゆきの期待にやっと応えてやりますかな!?」


 「まあ、剣城ならあまり分かってないような気が、しないでもないがな?」


 皆が口を揃えて言った事、男の大事な武器、まあこの時代なら普通なら刀だな。


 それを女に渡す事は、巷ではプロポーズに近い事なのだそうだ。守り刀で、死出の旅路にも持って行くまで大事にします、とかだそうだ。


 男は戦に駆り出され女性より死ぬ確率が高いから、信用足る女性、お嫁さんや側室に渡すそうな。その死ぬ時に渡した守り刀を返してもらうみたいな。身分の高い者はそういった限りではないらしいが。


 オレの場合はこのチート銃が刀代わりだ。オレの隊は皆知ってるからな。


 「え!?て事は告白って事すか!?」


 「告白とは何だ?そもそも剣城は知らなかったのか?あぁ〜あ!ゆき残念だな。剣城はそんな意味なかったらしいぞ?」


 いやヤバイヤバイヤバイ!ゆきさんが涙目になってきてるのだが!?いやそりゃ、オレはお市さん推しからお菊さんになってるけど・・・。なんなら少しノア嬢にも・・ゲフンゲフン。さすがにノア嬢は無理だ。ゆきさんはまだ15歳くらいだろ!?


 「剣城様ッッ!どうするのですか!?」


 いやどうするも何も・・・てかこの雰囲気、詰問に近いんだけど!?


 「ははは!剣城は女は駄目だな。ゆきも落ち着け!ここは戦場だぞ?知らなかったとはいえ、何もない奴に大切な武器は渡さないさ。帰ってからでも遅くはあるまい?」


 「そっそうだよ!ゆきさん!!別に嫌いじゃない!む、む、むしろす、すす、好きだから!!これから徐々に仲良くお、おね、お願いします!!!!」


 「がははは!!!我が君は女にはとことん弱いですな!!?落ち着けばこの小川!小川三左衛門が我が君に、女に対しての妙技48手を教えましょうぞ!!」


 ドンッ


 「おい!三左衛門!変な事、剣城様に教えるな!!」


 「「「「はははははは」」」」


 クソが!現代に居る時にプロで鍛えた筈だがオレには早過ぎたようだ・・・。一揆より城の人よりダメージが強過ぎるぜ・・・。


 「まあ遊びはここまでだ!気を引き締めろ!なにやら城に新手が入って来てるぞ。ゆきも私情を挟むなよ!」


 「はっ、はい!慶次様、菊、剣城様。申し訳ございませんでした」


 ふぅ〜。とりあえずここからは城の方だ。


 「小泉さん!持ってきた青銅砲は!?」


 「はっ。2門です!弾は後3発ずつです」


 弾が少ないな。国友さんがフル稼働してもこれか・・・。

隼人君のエアライフルも、24時間経ってないから弾がもう無いし・・・。今更、ゆきさんにトマホークmk-2返してとは言いにくいし・・・。


 「小泉さん!臼砲で上野城狙えますか?」


 「はっ!初弾からは難しいですが二発目には当ててみせます!」


 「がははは!さすが我が君!城攻めですな!?」


 「いや城には攻めませんよ。あの城の屋根を壊して敵が驚いた所に青銅砲を同時にぶち込みます。慌てて出てきた雑兵は残弾気にせず国友銃で狙いまくって下さい。杉谷さん、大丈夫ですか?」


 「はっ。些か弾が心許ないですがどうにか致します」


 「隼人君も国友銃で。オレはタイミング見て斬り込むよ」


 「なっ、なりませぬ!」


 「ははは!いい眼(まなこ)になったな?菊、安心しろ!オレが見ていてやるさ!」


 「慶次様ぁぁ・・・・」


 クッ・・・・!やはりお菊さんは慶次さん推しか!?いやオレにはゆきさんが!!


 オレは球体の神様から貰った例のファンタジーな剣を取り出す。腰に挿してるお市さんと濃姫さんに貰ったのでも良かったが一応保険だ。


 「おぅおぅ!その刀はどうしたのだ!?見た事ない形だな!?」


 「これはオレのもう一つの武器ですよ。プロミネンス剣と言いまして、西洋の刀みたいなもんです」


 いきなりは振れないので軽く素振りをしようか。


 ブォンッ!ブォンッ!ブォンッ!


 「「「おぉぉ───!!」」」


 「我が君!!その西洋の刀は!!!」


 「いやオレも驚いてますよ!なんか物凄く軽いというか・・・」


 剣はそこそこ重さはあるが、なんか本当にヤバイ剣のような気がする。なんなら剣身の所が陽炎のようにモワモワしてるんだが!?炎の精霊の剣というのは、強ち間違いじゃなさそうだな。まあオレは達人じゃないし、烈火のような剣筋にはならないだろう。


 "キャハッ♪久しぶりに見たよ♪剣城っち♪が持ってるのプロミネンス剣でしょ!?"


 "そうだけどノアは知ってるの?"


 "違う世界の戦いで戦神の供物だったんだよ♪よく戦神から貰ったね?さすが剣城っち♪"


 いや戦神とは誰ぞ!?初めて聞いたぞ!?鍛治神ならたまに聞くけどっていうことは・・・。あの球体様が戦神様なのか!?ヤバイ!これは帰ってすぐに球体と祠を作り祀ってあげないと!!!


 「ゆきさんっ!!この戦が終われば球体を作るように!それと祠も立派なのを建てて農業神様の横に祀るように!」


 「はっ、はい!それと私も突撃の時は剣城様の横に・・・」


 「いや危ないよ!ゆきさんは後方の一番安全な所で──」


 「それじゃ意味が無いんですッ!!!」


 「え!?」


 「私の大切な人は剣城様なのです!剣城様にもしもの事があれば・・・」


 なんかゆきさんの言ってくれるのは嬉しい。嬉しいけどゆきさんが居たらオレが・・・。


 「まぁいいじゃねーか?互いが互いに守りあえばいいんだ。ゆきは剣城の鉄砲があるだろう?近付いた敵を倒せよ?」


 「はっ!」


 「まぁ分かったよ。ゆきさん?よろしくね〜!よし!じゃあ始めようか!大野さんは悪いけど農民達を岡崎城に!芝田隊と言えば大丈夫だから!持ってきた米は遠慮せずに渡すように!イチゴも腐らすくらいだから食べ方も教えて渡してあげて!それと酒井忠次様って方や石川家成様って方の、戦局を教えてほしい!」


 「御意」


 「小泉さん!準備は!?」


 「いつでもいけます!」


 「ふぅ〜・・・・。始めようか!小泉隊ッ!3!2!1!撃てッ!!!!」 


 ヒュ────ン……ドォォォォォ──────ン!

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