また切腹おじさんならぬお兄さんですか!?

 吉良何某の方へ向くとオレに鉄砲を向けていた。思わず反射的にしゃがみ込もうとした瞬間、聞きたくない銃声が聞こえた。


 その刹那の出来事。さっきの小七郎って人はオレが倒したが、もう一人居た猛者。筋力up俊敏力upしてるお菊さん、小川さん、竹中さん相手に涼しい顔して相手してる人が、声を出した。


 「刀は楽しいな!!!ハッ!!!!」


 パキンッ!!


 オレは目を疑った。小川さん達3人を弾いてオレに撃たれた鉄砲の弾をこの人は斬った。


 「刀の仕合いに飛び道具とは何事かッッ!!我は斬り合いには負けてないが戦に負けた!だが貴様の私利私欲のために振るう刃ではないぞッッ!!!」


 ズシャッ!ズシャッ!


 「あぁぁ!!ワシの腕がっっ!!!!」


 この小川さん達3人相手に無双してた人は、綺麗な剣筋で吉良何某という人の左右の腕を、軽く切断した。


 「我は総大将でも何でもない人物ではあるが、この戦、一揆の咎人は吉良義安である!刮目せよッッ!!!」


 「我が義兄、小七郎の傷を治しどうかこの場を収めていただきたく!」


 瞬間的にこの人が小太刀に持ち替え、自分の首に小太刀を刺そうとする様な動きだったので、オレがプロミネンス剣で小太刀を弾いたが、またもや弾く瞬間、頭に何か聞こえた。


 "いただきます♪"


 うん。空耳だと思いたい。ってか、この人自分で自分の首刺そうとしてたの!?どんな人だよ!?


 「今切腹ならぬ自害しようとしましたね?許しませんよ。貴方も怪我してるなら治しますよ」


 「なっ、我の一世一代の舞台を汚すつもりか!?」


 太田さんと通ずるものがある・・・。なんとなくこの人も死なせたくなかったのと、負けず嫌いっぽい感じがしたので、挑戦的な口調で言ってみよう。


 「そんな自害したいなら勝手にどうぞ。私の見えない所で。ちなみに小七郎さんは私が倒しましたが、貴方は私に勝てると?」


 「なっ、何を!?あぁ!!勝てるさ!余裕でな!!」


 「我が君!ちと危のうございます!」「そうです!剣城様が出なくとも──」


 卑怯だと思ったがオレはプロミネンス剣で、さっきまで皆とやり合っていた刀の鞘を軽く叩いた。

 

 "いただきます♪"


 バキンッ!!


 またもや聞こえたこの声。オレはおかしくなったのか!?


 「なっ、なに!?鞘のまま刀を斬っただと!?」


 オレは斬るつもりはないけど一度やりたかった事。相手の首に剣を置き問いかける事をした。うん。黒歴史だな。


 「さて、多少の疲れはあったかもしれませんが、それは私も同じ。貴方は動けていないように見えましたが?まだやると言うなら遠慮はしませんが?」


 「がははは!さすが我が君!毎日早朝に'一人だけで'素振りして'一人鍛錬'してるのをワシは知っておりましたぞ!!」


 いやわざわざ一人を強調すんなよ!?あれは痩せるために一人でしてたんだよ!!オレがボッチみたいじゃないか!!!


 「チッ。負けだ!殺れ!」


 いや、だからさっきから生きてもらいたいと言ってるじゃん!!何で皆、死にたがりなの!?


 「貴方も生きてもらいます。ただ、貴方は好戦的なようなので小太刀は預かります。それと少し切り傷があるようですね。健康診断と同じであの女の子達に実験・・・じゃなく・・・治してもらって下さい」


 「負けた身だ。俎板の上の鯉となろうではないか」


 「まあ、気を付けて下さいね?くれぐれも女の子達の言う事を聞いた方が、いいと思いますよ?」


 さて・・・この腕を斬られた吉良何某さんはどうしようかな・・・。


 「たっ、頼む!礼は何でも致す!た、助けてくれ!」


 「剣城様!城の奥の間にて城主、酒井忠尚を捕縛致しました」


 「やっぱ金剛君よ!やればできる男だ!この酒井さんは岡崎に連れて行ってくれる?この場はもう大丈夫だから。大野さん達と一揆に施しもお願い!」



 《どら焼き詰め合わせ10個入り》¥1300


効能・・・・餡子が嫌いな方にもオススメできるどら焼き。クリーム、チョコ、バターが入ったどら焼きの詰め合わせ。贈り物に喜ばれる。



 「これで頼まれてくれる?」


 「こっ、これは!!!どら焼き詰め合わせですか!?!?お任せ下さい!丁寧に迅速に確実に任務を達成致します!では!御免!」


 金剛君はどら焼き好き過ぎだろ!?


 「鞠ちゃん?早急に止血してあげてくれる?オレの技の薬使っていいから」


 「はっ」


 「今から貴方を治療します。この一揆?の背景をお願いします」


 聞けばあの昨日の3人が、空誓上人?て人に焚きつけたと言う事だった。


 まあ元より兆候はあったみたいだが、守護不入を家康さんが無くそうとする動き。この上野城の独立を認めない事も全てが重なり、事が起こったそうな。


 「オレ達は終わったけど他所はまだでしょう。応援に向かいます!この城に最低限の人を残して、本證寺方面に向かいます!」


 「剣城様!農民が捕まえた糞坊主はどうしましょう?」


 「あぁ〜、面倒だから岡崎に全員連れてってくれる?」


 「御意」


 「おい!離せ!縄を解け!!」


 「仏に仕える我らにこの様な事をして、必ず天罰が降るぞ!」


 「へぇ〜。天罰ですか?子供を売り、高利な金貸しをし、女を漁り、私が何も知らないとでも?糞坊主、破戒僧、生臭坊主。全てに当て嵌まる事をしてますね?」


 「ち、違う!拙僧はそんな事は──」


 「違うんですか?さっき一揆に加担した人にとある薬を飲ませ、落ち着いたところで配下が聞いた事と違いますね?」


 「薬だと!?お前は農民と拙僧とどちらが信用足る者か、比べる事もなかろう!?」


 「いや、貴方は雁字搦めにした農民を使い、素手で猪なんかを捕まえ肉食しているでしょう?いやそこは別にいいですけど、女に限らず男と事も致してるとか?」


 「拙僧はそんな事しておらんっ!拙僧は弱い民の為、銭を貸し施しをして──」


 「もう御託はいいですよ。悪いけどあんたらみたいな人は反吐が出る。私の一番嫌いな事。人身売買。あんたらはそれらを平気でする。許さないですよ」


 「剣城様。落ち着いて下さい」


 「ゆきさん、ごめん。ありがとう」


 それから糞坊主達は岡崎に連れて行って、オレ達は大膳君の補給を貰いつつ、方々を回り食い物、時には脅し・・・。


 というか最初はほぼ脅しだったが家康さん、石川さん、酒井さん、大久保さんの活躍もあり、本来なら半年程掛かって鎮圧したと記憶があるが、一週間程で落ち着いたように思う。




 「皆様!また米が足りない時は城の方に遠慮無く言って下さい!松平様は貴方達を見捨てません!」


 「ありがたや!ありがたや!」


 「貴方達もずっと何もしない訳にはいかないでしょう。男手が必要な仕事もあります。落ち着けば岡崎の城に来て下さい。仕事を斡旋しましょう」


 「おら達が城の仕事をしてもいいのか!?」


 「勿論です!松平の殿様も貴方達が必要と言っております!」


 「松平万歳!」「「ばんざーい!!」」


 「「「バンザーーーイッ!!」」」


 

 「よし!この辺で一回岡崎に帰ろう!さすがに疲れたよ。帰ればサウナに嫌と言う程入らせてもらおう!皆も入れるように言ってあげるよ!」


 「剣城様?村に同じ設備を設置しました。お帰りの時にお楽しみ下さい」


 「なんですと!?!?剛力君、やったのか!?え!?やったのか!?ある程度仕事の順序を言って早く帰ろう!後、一週間だ!!一週間でどうにかしよう!!」


 「「「オ────ッッ!!!」」」


 城に戻ると、農民やら坊主やらでいっぱいになっていた。常に台所は稼働し、牢屋には入れない坊主達は外に縛られたままだった。


 「おい!拙僧達を此奴らと一緒にするな!!」


 「そうだ!そうだ!農民の方が待遇が良いとはどういう了見だ!?」


 一週間程経っていたがまだこんな元気あるんだな。しかも農民達と一緒にするな・・・か。結局は下に見ているって事だな。


 「芝田様!!!お帰りのところ申し訳ありません。殿がお呼びです!こちらへ!!」


 「いや、ちょっとお待ちを!風呂も入ってなく服こそ汚れていませんが──」


 「剣城殿ッッ!!!!ありがとう!ありがとう!」


 オレがさすがに臭い体で城に入るのは失礼かと思い、渋っていたら家康さんが来てくれた。しかも演技かどうかは分からないが、涙を流しながらこれでもか!?ってくらい握手をされた。


 「いえいえ、松平様の功績ですよ!」


 「いや!そんな事はない!剣城殿が居てくれたお陰だ!それとどうかワシの事は家康と呼んで下され!!!」


 勘繰ってしまう事もあるが、家康さんは喋りが上手いわ。人垂らしで有名な秀吉さんより凄いわ。


 「では、家康さん!まずは体を洗わせていただきたい。一週間、風呂に入らなくて限界です・・・」


 「いっしゅうかん?」


 「いや、すいません。7日の事です。できればサウナに・・・」


 「おい!誰ぞある!すぐに蒸し風呂を用意致せ!!すぐにだぞ!!それと例の香木も急げ!!!」


 香木?あの良い匂いの木と葉っぱかな?別にそこまではしなくてよかったんだけど・・・。


 「準備できるまで状況を言うから上がってくれ!!」


 「金剛君達も休憩して、八兵衛村長に言って何人か連れて来てくれる?」


 「了解致しました」


 

 「此度は本当にすまない。見立てでは一年は掛かると思ったが、剣城殿の言う通り食い物を渡せば、こんなに落ち着くとは・・・」


 「それだけではありませんが、戦った事もあるでしょう?見慣れぬ武器を見れば恐れを成す者です。死ぬが極楽と言いつつ、やはり死ぬのは怖いですからね。半分錯乱してる状況ですからね」


 「それを容易く御するのは中々の事だ」


 「私は徹底的に名前を出していません。いや部下が私の名前を出した事もありますが基本、家康様の名の下、事を運びました。後は家康様の仕事です」


 「あぁ。分かっている。何回も言うが本当に感謝している」


 「今後ですが、しばらくは施しを続け、壊れた家を建て直しましょう。持ち出しは・・・正直かなり使ってますがとことん私もやりましょう」


 「何から何まですまぬ。落ち着けばこの礼は必ず。それ空誓上人の処遇なのだが・・・」


 「上人か天人かは分かりませんが、皆と同じにする様にして下さい。何ならこの一揆の首謀者でしょう?私なら問答無用で処罰しますけどね」


 「時に剣城殿は苛烈であるな」


 「信長様に教えられました。以前までなら皆許していましたが、笑顔だけではこの時代は過ごせないのだ、とも分かりました。調子に乗り、節度を守らない人ばかりですからね」


 「節度を守らない?」


 「ある物は奪う。それも殺してでも奪う。私が居た時代では有り得ませんよ。だからですかね・・・。私が居た時代では平和なので平和故に、犯罪者には法の裁きが降ります」


 「法の裁きとな!?」


 「はい。まあこの事は尾張を最初に始めていくつもりなので、また今度にでも。後、上手く武家と宗教を切り離さないと、また飢饉とか起これば一揆が起こりますよ」


 「分かっておる・・・」


 まあ難しいだろうな。信用していた宗教をやめろと言われても、普通なら無理だろうな。まあ、家康さんの手腕で頑張ってほしい。オレもそこまでは介入できん。


 信長さんが政教分離して、時代は変わっていくのだったよな。それとこの岡崎の復興の仕事は一揆の人達自ら動かし、3食の食事付きなら文句は言わないだろう。家康さんに提案しよう。どうせ村の米が余りまくってるし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る