綿花栽培の開始
それから約二週間は、岡崎城を起点に働きまくった。一週間で帰る予定だったが、帰る余裕が無かったからだ。
まず、捕縛した朝岡五郎左衛門、浅原孫七郎、伊奈貞次。この三名はオレが沙汰を聞いた時には、処刑された後だった。
次に破戒僧達だ。この僧達は家康さんも悩んだ。さすがに仏の道に進む者を処刑するのは・・・と。
「家康さんが無理なら私がしますよ。仏の道?そんな道に仕える者が私利私欲の為に、布施を強要し、人身売買して、女を漁り、男と色欲を楽しむ。許せないですね」
「いや、だがさすがの剣城殿もそれは・・・」
「いや私は気にしないです。仮にこの人達に何も咎なく解放しても、同じ事しますよ」
「剣城殿がそこまで言うと・・・。では他の宗派に改宗させ、ワシの配下や民の銭の貸し借りは無かった事にし、認めたくない者は処刑という事で如何ですかな?」
「お任せ致します」
次は一揆に与した家康さんの家臣達だ。家臣の中には、主君への忠誠心と信仰心の板挟みに遭って、苦しんでいる人達も多いようだ。
だがその様な家臣達は、一揆を離脱して帰参することを望む者が多くいた為、一揆が中規模で済んだ事に起因したみたいだ。
「芝田殿?ワシの血縁者が済まなかった」
「えぇ。構いませんよ?叔父でしたよね?中々突撃が凄かったですよ」
「申し訳ない。身内贔屓する訳ではないが上野城は接収し、叔父はワシが蟄居させます。どうかこの件はこれにて・・・」
「いいですよ。お任せします」
「済まぬ。感謝致します」
次は両手が無くなった吉良何某さんだ。鞠ちゃん達は敢えてオレの薬は飲まさずに、止血だけに止めた。化膿止めの消毒などはしたみたいだが。
「貴様は自分の家再興の為、軍を出したようじゃな?東条吉良は終いじゃ。剣城殿が治したって事と処刑されないだけ、ありがたいと思え!」
いや、別にオレはこの人の事は何も思ってないけど・・・。西条吉良とか東条吉良とかよく分からないし。
「殿、西条吉良。吉良義昭様がお目通りをと」
「通せ。剣城殿?この際、ここでこの二名の決着をつけてもよろしいか?」
「はい。構いませんよ」
「この度は!この度は義安が変な事を企て──」
「能書きは良い。お主は一揆にも加担しなかったであろう?咎は無い」
「いえ、そう言いましても一族の咎は……」
また太田さんに似た人だ・・・。切腹おじさんか!?
「謝るならこの芝田剣城殿に」
家康さん?面倒臭いからオレに任せたな!?クソが!天麩羅食わせてやらねーぞ!?
「この度はどうも………この義安とは……昔兄弟で……西条と東条にて……本来はワシなんかが……ワシは辞めろと言うておるのに………過去の栄光に……」
長い・・・長過ぎる・・・。核心はどこだ!?要は謝りたいだけだろ!?
「遮って申し訳ない。私も気にしていませんので結構です。それと切腹なんか絶対要らないので!!もし、貴方が義安さんを面倒見ると言うなら、斬られた手を治す事も出来ますが?」
「そ、そ、それは誠ですか!?咎人とは言えこの者は……あれは子供の頃……してあの時は…」
この人は勘助さん、太田さん、中伊勢の関何某さんを足して足して足して割らない人みたいだ・・・。
「えぇい!義昭殿!そのくらいで。ともかく!沙汰を申し付ける!西条、東条と分けるからいけないのだ!吉良家は吉良義昭殿一つに纏める!お主も文句はあるまい?」
「ありがとうございまする。二度とこのような事は起こしませぬ」
オレは家康さんに耳打ちする。
「本当に手を治せますが治して良かったです?」
「え?あれは誠の事でしたか?無くなった手をどうにか出来ると!?」
「えぇ。出来ますよ。現に二人程でしたが信長様の直臣を治しましたよ。二人とも震えて喜んでいましたが、信長様が口止めしましてね。あっ、もう一人。先日、私が斬った人も治しましたよ」
「分かった。この事はワシも口止めさせておこう。だが誠に無くなった手が生えてくると・・・」
皆ビックリだろうな。オレも無くなった手が生えれば、嬉しいけどビックリするわ。両生類みたいな感じだな。
その後、この吉良さん二人は城の一番端の部屋で、鈴ちゃんに例の薬をお願いして任せた。明日になれば生えてくる筈だ。
最後は愛州なんとかって人達だ。まあ、あの人は個人的に雇いたいと思っただけだけど。小七郎さんだっけ?
「美味いッ!!これは美味いな!この食べ物は何と言うのだ!?」
「そうだな。ワシもこのつなまよ握りは至高だと思う」
「がははは!気が合うな!俺もその鮭とばとつなまよ握りは美味いと思う!それにこの酒よ!俺の働きに殿が特別に出してくれた、すこっちうぃすきーだ!」
いや、この3人は何やってんの!?昼間から酒盛りか!?慶次さんは例の薬で治したけど、仲良くなり過ぎだろ!?
「いや二人とも楽しんでますね」
「この度はこの様な施しをしてもらい、感謝感激しております!就きましては、我ら愛州家。影之流、愛州小七郎・愛州大七郎は、貴方様に仕官させていただきたく・・・」
名前は知らないけどきっと有名な人だ。自分の家か?ってくらい寛いでいるけど。しかも小七郎と大七郎って・・・。義理兄弟らしいが何で弟の方が大七郎なんだよ!?
「ははは。やっぱ自害しなくて良かったでしょう?こちらからもお願いしますね?詳しくはそこの馬鹿酒豪に聞いて下さいね?折角お見舞いに来たのにもう大丈夫そうなので、これは私が食べますね」
「いや、それはそうと無くなった腕が生えてくるのは、どういった事ですかな!?某、諸国放浪し時勢を学び剣を学びましたが、あの薬は初めてでございまする」
「織田が本気を出した結果の薬ですよ。ははは」
オレの境遇を言うのが面倒ではある。だから笑ってごまかした。
「後、約束事になりますがこの事は他言無用で。私の殿、織田信長様に知られれば、怒られるだけじゃ済まないですよ。貴方を治療した薬は誰でも使って良い、とは言われてませんので」
「はっ。心得ておりまする」
「あっ!!!それは酒の肴ではないか!?」
「まあ、怪我は治ってるって聞いてましたからね」
「ビールにサキイカ、干し梅、ポテチ、カップラーメンです。二人はまずこの酒豪。前田慶次さんの隊に入ってもらい、うちの事を知ってもらいます」
「はっ。何でも致します!」
「小七郎さんの刀は私が折ってしまったので、清洲に帰れば何かお渡ししますよ」
「はっ。ありがたき幸せ」
「じゃあそういうことだから慶次さんお願いね?あと、一週間くらいここに居るから。怪我が治ってるなら、たまに松平領を見廻りしてほしい」
「分かったが、勝手に動き回っていいのか?」
「一応、一揆は収束したように思うし、空誓上人って人と取り決め?をしてるから、大丈夫だと思うけど、従わない坊主も居るみたいだから、その鎮圧を」
《ドン・ペリニヨン》¥35000
効能・・・・シャンパンを発明したとされるベネディクト会の修道士、ドン・ペリニヨンにちなんで名付けられたシャンパン。その味は究極の味とも言われている。
「お礼の先渡しです。この酒は今までで価値が一番に近いくらい高いから、味わって下さいね」
「おっ!?雅な容器だな!?すまん!」
「慶次さん?この度は本当にありがとうございました」
「いいさ!いいさ!剣城も最初より指揮は格段に上がっている。剣城はもっと俺達を使え!」
「ありがとうございます。精進しますね。じゃあ、後はお願いします」
もっとオレも頑張ろう。あの二人にもいつか部隊を任せようかな?次は綿花や農業の方だ。八兵衛村長、頑張ってくれてるかな?
「八兵衛村長!」
「おう!剣城か!どうした?」
「いや進捗を聞こうかと思いましてね?まさか八兵衛村長が来てくれるとは思っていなくて」
村の人を呼び出した時、オレはてっきり伝兵衛さん辺りが来てくれるかと思ったが、八兵衛村長と伝兵衛さん、千吉さんの奥さん達10人が来てくれた。
まず村の、オレが出した金色のニワトリの鶏糞で育てた米からの作分けだ。効能の部分が気にはなったが、あの肥料で育てた後の子孫には、特別な効能は無かったみたいだ。
早急に畑の講習と綿花の栽培をお願いしている。綿花は見よう見まねではあるが、まず実を採取して手作業で仕分けしてもらう。その綿の中には種が入っているから、手作業でその種と綿を選抜してもらう。
「この作業が大変なんだ」
「だから人手が必要なんです。本当は蚕とか居ればいいんですけどね」
「いもむしの事か?」
「え!?蚕知ってるんですか!?」
「あの白い巣で孵化するやつだろう?」
「そうです!!どこに居るんですか!?」
「剣城がたいむすりっぷだったか?それをした森にも居るぞ?桑の葉を食べるからその付近には居るぞ?」
オレは小学生の自由研究で、蚕の一生を調べた事があったけど、自然界では生きられない生き物じゃなかったか!?この時代では違う種なのか!?これも帰れば要確認だ!
「とりあえず、米の他にも色々種植えお願いしますね!肥料は遠慮せずにあのカプセルのやつ使って下さい!今度こそ、あと7日くらいでオレは一度戻るので!」
「おう!ワシ達もこの近辺の奴らを教えたら、帰っていいんだろう?」
「はい!警護は松平様がしてくれますので!」
オレは家康さんの家臣の人達にも色々教えた。生まれや身分で能力は変わらない、これから食は広がっていく事。民が元気になれば国が潤ってくる事を、簡単にだが言った。
作業を監督してる本田さんや大久保さんにも、綿花の仕分け作業を伝え、ある程度出来上がればまた来ると伝え、一週間が過ぎた。25日くらいここに居たから、一度帰らないと輿入れに間に合わなくなるな。
「家康様?すいません、他にも用事があるので一度帰ります。その用事が終わればまた来ますので、布団作りなどはその時にまた人を出しますので、お願いします!」
「早過ぎるな。ついこの間、来たかのように感じる」
「はは!家康様の日々が充実してるって事ですよ。では、僧の件とか任せて申し訳ないですがお願いします!困った事があればトランシーバーにて。使い方は酒井様に伝えてありますので」
オレは約束のトランシーバーを誰に任すか考えたが、酒井忠次さんで良かったと思う。この人はずっと裏切らないし、保守的な考えで堅そうな人かと思えばボキャブラリーもあり、案外新しい事も取り入れる人に思えたからだ。
「ちょ、ちょっと待たれい!芝田殿!?このぼたんなる物を押してどうぞと言えば喋れるのだったよな!?」
酒井さんが狼狽えるのはオレが面白半分で『このトランシーバーは未来で城が5つ作れる値段がします』と嘘を言ったからだ。
本田さんが遊びに使いそうだから言った事だが、それからこのトランシーバーは専用の木箱を作り、酒井さんの重臣二人が24時間警護するようになったのだ。
酒井さん!!すまん!!実は8千円程のおもちゃなんだ!!しかも別にどうぞと言わなくてもいいんだ!!
「そうですよ!何かあれば言って下さい!横に回す方は弄らないで下さいね?喋れなくなりますからね!」
「剣城殿?本当に警護は要らないのか?落ち着いたとはいえ──」
「大丈夫ですって!ではまた今度に!!あっ、またサウナお願いしますね!あれは最高に良かったですよ!」
「分かった!剣城殿の村の者達には、厳重な警備をしてるから安心してくれ!では達者でな!」
「さっ!帰ろう!亮右衛門さん!居残り役頑張ってくれたから、大黒剣乗っていいですよ!」
「本当ですか!?ありがとうございます!ありがとうございます!」
"キャハッ♪剣城っちはあーしに乗りたかったんだぁ♪"
"まぁそういう事かな?ノア?ありがとね"
"キャハッ♪帰ったら甘えさせてあげるね♪"
うん。ノア嬢のよく甘えさせてあげる発言は、例のガジガジだ。あれはノア流のよしよしなんだそうだ。勘弁してもらいたい!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます