私は帰ってきた!

 「戻った!!私は戻ってきた!!」


 「なーに言ってるんですか?早く行きますよ!」


 お菊さんから辛辣な言葉いただきました!ありがとうございました。


 「ほぅほぅ。留守を守ったワシに一言あるんじゃないのか?」


 「木下様!!この度はありがとうございました!」


 「まっ、ワシでなくてはこの様な気遣い、出来なかったであろうな?柴田殿も丹羽殿も誰も声を掛けてくれなんだろう?」


 恩着せがましいな!?


 「分かってますよ!木下様のお陰です!それと聞いていた武器の横流しは無理です!」


 「知っておる!言うてみただけじゃ!それで首を縦に振るようなら、ワシが説教してやろうとしただけじゃ!」


 いや、何だよ!?オレはなんなら他の事お願いしようとしてたんだが!?


 「酒と城の普請でしたよね?木下様の配下の人、何人用意できます?私の配下の剛力です。この者が城の普請の責任者です」


 「剛力と申します。以後お見知り置きを」


 「ほうほう!お主があの剛力と申す者か!!様々な家や陣を作ると有名だぞ!?」


 「いえ、私なんぞは大した事ないです」


 「そう謙遜するな!柴田殿も美濃の戦では褒めておったぞ?」


 「とりあえず、木下様の配下をできるだけ組み込んで作業しましょう!遅れた時を取り戻します!」


 オレはその後、皆と別れ岐阜城に向かう。その途中どこかで見た事ある人と擦れ違ったが、急いでいる為ノアを走らせる。


 「遠藤さん、こんにちわ!」


 「おぉ!剣城殿か!お館様は今、物の配置をお考えですよ!」


 物の配置?何だ?


 「とりあえず伝えてもらえませんか?」


 その後10分程待機してたらすぐに呼ばれ、客間でなく信長さんの私室に呼ばれた。


 「おう!来たか。どうじゃ!!!貴様の配下の剛力が監督し岡部に言って作らせたのじゃ!」


 オレが見た物は独創的過ぎる城に似合わない洋風な部屋だった。


 ベッドに椅子とテーブル。窓は国友さんが作った、まだ少し濁りのあるガラスだが嵌められており、片手で横に移動できる本棚?みたいなのもあり、隠し通路になっていた。


 「おっ!?信長様、これは!?」


 「ふん!良かろう!着いて参れ!」


 クッ・・・。カッコイイ部屋だ・・・。オレも早く城が欲しいぞ!!


 案内され階段を少し降りると10人くらい寝泊まり出来る様な部屋だった。畳に囲炉裏まである。和風な部屋だ。


 「城の強度的にも問題ないそうだ。市の輿入れの後に京に向かう予定だが、京では茶が嗜まれてるそうだな?尾張の田舎者と笑われたくないからな」


 「だからこの部屋ですか。素晴らしいと思います」


 「まぁ一杯飲んでみろ。作法なんかは良い。ワシの茶は貴様を唸らせるかどうかだ」


 信長さんは『作法は良い』と言いつつ、誰かに習ったんだろう手つきで、オレに茶を出してくれた。茶道は見た事ないけど、既に洗練された動きのように思う。


 「ふん。飲め」


 「いただきます」


 正直抹茶は苦手だったが、信長さんが出してくれた抹茶は砂糖類は使ってないように思うが、ほのかに甘く飲みやすかった。


 「甘っ!かなり美味いですよ!」


 「世辞は良い。正直に申せ!」


 「いや本当に甘くて美味しいですよ!これにバニラアイスなんかあれば最高に・・・」


 信長さんの片眉が動いたのが分かり、オレは言葉が詰まる。


 「ほう。ばにらあいすとな?それはなんだ?」


 《バニラアイス》¥150


効能・・・・普通のバニラアイス。外気では溶けにくいが口に入れると優しく溶ける。


 「これです。どうぞ」


 「ほう。小さな木匙だな?掬うのか?うん!?冷たい!?冷たいではないかっ!!」


 やっぱ冷たい物はビックリするのかな?


 「こうやって一塊。茶に入れて飲むのですが・・・」


 「・・・・・・・」


 ヤバイ!!これは噴火の手前だ・・・。


 「きっ、貴様!何故これをもっと早くに教えん!!夏にも冬にも春にも夏にも最高ではないか!!!それによく見ると貴様の服は何だ!!そんな服どこで買った!?言え!どこで仕立てた!?」


 「いやこれだけでは足りん!甘い!美味い!冷たい!このばにらあいすこそ至高ではないか!!!!もう一つ後で出せ!この前から市が機嫌斜めなんじゃ!」


 いや、なぜ春夏秋冬じゃなくバラバラ!?しかも夏が2回入ってないすか!?秋は!?


 ってか足りんって・・・。市さんとギクシャクしてるのかな?


 「落ち着いて下さい!!この服はとある伝手で・・・」


 「ワシにも用意しろ!3着で良い!用意しろ!それと貴様の刀を見せてみろ!」


 あぁ〜・・・。この刀を渡せとか言われるのか・・・。振りやすかったんだけどな・・・。


 【私はあんたには仕えないよ】


 うん!?何か聞こえなかったか!?


 「剣城!!今何か言ったか!?」


 「いえ、言ってませんが私も聞こえました!」


 【せっかく貯めた力を使いたくないの!私はあんたには仕えないよ!似た剣が欲しいなら風の剣にしな!】


 「なっ、何奴かッッ!!!刀が喋っておるぞ!!」


 オレもビックリしたが馬が喋ったりするんだから刀も喋りたい時もあるよな。・・・・んな訳あるか!!!


 "天の声使うと力を消費するんだ!あんたから伝えておくれ!あの人間には仕えたくない!"


 あぁ・・・やっぱ空耳じゃなかったのね・・・。とうとうオレも変な領域に達したのか・・・。


 「実は・・・・・」


 オレは信長さんに事の理由を言った。最初興奮して聞いていたが、途中からはどんな斬れ味だとか感触まで聞いてきて、最後は・・・。


 「風の剣とやらがあるようだな?どこにある?」


 うん!?意外にも驚かないのか!?剣が喋ってるんだぞ!?


 「いえ、本当に存じ上げません」


 「ふん。まあ良い。手に入れば渡せ。誠に使い込まれた刀には霊力が宿ると言われておる。貴様の刀は分からぬがその刀は終生大事に致せ。風の剣とやらの対価は那古屋城だ!」


 剣に霊力ね・・・。スピリチュアルな感じだな。よし!那古屋城の言質は貰ったぞ!


 「本当ですね!?手に入り次第すぐにお渡しします!」


 「男に二言はない!貴様には期待しておる」


 「はい。ありがとうございます」



 《芸術神見習いの眷族が作った男性用着物上》¥350000


効能・・・・見た目がカッコイイ。下地は黒に金色の髑髏の刺繍がされてある。着る人を選ぶ逸品。これを常用で着れる人の事をカリスマと呼ぶ。



 《芸術神見習いの眷族が作った男性用着物(黒金色)》¥250000


効能・・・・生地は天界にのみ生息する伝説の蜘蛛神、アトラクナクアの一族の糸を使用した着物。汗の匂い、汚れなど一切付かない、着心地は良。オート温度調節機能付き。この着物にのみ別売りにて羽織りがある。



 《男性用着物(黒金色)専用羽織り》¥100000


効能・・・・男は黙って背中で語る。その双肩(そうけん)には大きく見えるように、天界の神獣ベヒーモスの骨が縫い合わされ、通常の1.5倍の大きさに見える。



 オレのよりワンランク上の着物なら、文句言われないだろう。髑髏の刺繍なんかオレは着れないが、信長さんなら大丈夫かな!?いや、焦って急いで買ったから確認してなかったんだよ!


 「貴様。これは・・・・」


 ヤバイ!まずったか!?


 「良い!良いではないか!ワシに相応しいと思わんか!?うん!?着心地も良いではないかッ!!!これは唯一無二だな!?」


 「はっ、はい!この世に二つとない物だと思います!」


 「ふん!見事だ!受け取れっ!貴様からすれば大した物ではないかもしれんが茶入れだ。明の物だそうだ」


 「あ、ありがとうございます!使わせていただきます!」


 「して、貴様は疑問に思ってはおらんようだが、ワシが狸の出来事を聞いたか?」


 「いえ、聞かれておりません」


 「何故か分かるか?」


 信長さんはそこから嬉しい事をいっぱい言ってくれた。家臣に順番を決めるつもりはないが、敢えて近い事を言うなら『貴様が一番新参だが可成のような信頼があり、サルのような機転がある』と言ってくれた。


 「敢えて聞かん。貴様が帰ってきたという事はそういう事であろう」


 信長さんも忍者を使いある程度は知ってるだろうけど、何も言わないんだな。


 「貴様にはあれこれ言うより自由に動かせた方が利があると見た。ある程度の差配も何も言わん。ただ、兵が少ないようだな」


 「ありがとうございます。人の件は存じております」


 「狸にとらんしーばー渡したらしいな?これも何も言うまい。意味も無く貴様はそんな事しないであろうからな。だが、貴様をダシに使い一揆を陽動した3人は処刑したようだな」


 「私が出払い岡崎に帰ると処刑されてました」


 「ふん。狸にしてはいい判断だな。のうのうと解放しておったらワシは軍を出すところであったぞ」


 この一言がオレは無性に嬉しく、秀吉さん、家康さん、森さんと色々な人の言葉を聞いてきたが、絶対オレは信長さんに着いて行くと心に誓った。


 「古い銭を作り直すは時間が掛かるであろう。それに狸もまだ銭が無いであろう。受け取れ。ちまちま渡すより貴様に渡す方が良い」


 渡されたお金は5貫、10貫どころではなかった。


 「こんなにですか!?幾らですか!?」


 「1000貫だ。この意味が分からん訳ではないだろう?」


 1000貫!?いやどんだけ金持ってんの!?いや、信長さんがこの意味とは・・・。船に輿入れの支度金に・・・人を増やせと言う事か!?


 「纏まったようじゃな。下がってよいぞ」

 

 信長さんはオレが渡した服をニヤニヤ見ながら、お市さんに渡すといった追加のアイスを頬張るのを見てから、部屋を後にした。


 いやいや!?あのアイスお市さんに渡すんじゃなかったの!?出過ぎた事するつもりはないけど少し話を聞こうかな。確かこの城に来てる筈だよな。小見さんにも挨拶に行こう。

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