景品の行方
「蜘蛛が無くなった今、狙うは酒だな!」
「い〜や、酒こそ松平家がいただこう!」
「何を!?おい!剣城!次を回してくれ!!」
まあ普通に考えて、この世界の人なら次に欲しいのは酒になるよな。オレなら迷わず金が欲しいけどな。
「22!」
「おっ!私か!」
意外にも4000万をゲットしたのは竹中さんだ。
「ほう?竹中が銭を当てたか!受け取れ!」
「ほほほ。ありがとうございまする」
「えぇ〜、次は72!」
「きた!!!ワシですじゃ!!」
「「「「「チッ」」」」」
いや、あんな勢揃いでハモった舌打ちとか初めて聞いたぞ!?木下さん・・・この敵意の中で酒を選べば大した勇気だと思うぞ!?
「このけーきを貰おう!これは家の女子が喜ぶのだ!!」
「なんだぁ〜!?木下殿は甘い物が好きであったか。いやそうだな。確かに甘い菓子は女子が喜びそうだな?ははは!」
それから次々にビンゴになっていく。安養寺さんは服セットに。家康さんは・・・ランニングマシンだった。
「殿!?これはさながら室内で外を走っているようですぞ!?」
「そうそう!健康に良さそうですぞ!良かったではないですか!!」
「・・・・・・・・剣城殿?ありがとうな」
あの声・・・めっちゃ、不機嫌ぽいのだが!?
丹羽さんが槍が当たり、池田さんは刀だ。森さんは釣り道具セットだ。久しぶりに会った滝川さんは片手で持てる土管?みたいな物だった。
まだ森さんの釣竿は分かる。
「これは何なのだ!?これは糸か!?」
「森殿!良かったではないか!何に使うかは分からないがその物は一つしか無かったのですぞ!」
疑問には思うだろうが、使い方を知れば休みの日に釣りができるからな。ただ滝川さんの土管だ。説明書も入ってるけど何に使うのだ!?
「剣城?久しぶりだ!これは何に使う物なのだ?」
「えっと・・・土管です」
「ほう。土管か。それで?」
うん。土管の使い道なんか知る訳ないだろ!?
「説明書、見せていただいてもよろしいですか?」
説明書に書かれていた事は【伊勢の海に沈めるべし。さすれば伊勢の海を生業としている生き物の棲家となるだろう。海産物の宝庫となり得る】
え!?めっちゃいいじゃん!滝川さんも『伊勢特産が欲しい』って言ってたから喜ぶじゃん!
「滝川様!これを海に沈めると海の生き物が棲家にするらしいです!海産物の宝庫になりますよ!!!」
「そうか。うむ。相分かった」
いやいや興奮してるのはオレだけか!?滝川さんも、もっと喜んでもいいんだぞ!?
そして文官の人達・・・村井貞勝さんって人はインクの切れない万年筆、岐阜城倉庫番の平手久秀さん。この人はあの有名な切腹した平手政秀さんの息子だ。
平手さんはオレの嫌いな香水や手鏡、毛抜きなどのセットだ。さぞ二枚目の女にモテそうな顔だ。明確にオレの敵だ。以前、城に居る時見た事があるのだ。この平手さんが城中の女に言い寄られているところを。
クッ・・・・古傷が・・・。
ビンゴはそれなりに成功したように思う。全員に景品がある訳ではないが皆、いや・・・家康さん以外は喜んでいるみたいだ。
「これじゃ!これ!これで暫くは酒に困らずに済む!!」
酒が当たったのは佐久間さんだった。オレはこの人が少し苦手だ。偉そうにする訳ではないが、どことなく人を見下す傾向のある人だ。本人は自覚が無いとは思う。それがまた厄介なのだ。
「剣城!びんごとやらは楽しかった!来年も楽しみにしているぞ!しかし、もう少し景品を増やすのが良いと思うぞ?やはりどうしても不平不満があるからな?まっ、ワシは喜んでもおるぞ!?ははは!」
と、こんな事をさらりと悪びれもなく、平気で言う人だ。景品増やせってならお前も少しは金を出せよ!?と言いたい。
パンッ パンッ
「皆の者!余興は良かったであろう?ワシも久しぶりに楽しんだ!今後、びんごげーむとやらは毎年の恒例としようか」
「「「「うぉぉぉぉ────!!!」」」」
マジかよ・・・。
「それと皆に伝える事がある。奇妙!入って参れ!」
「はっ。失礼致しまする」
「うむ。奇妙については皆も知っているだろうが、剣城の元で勉強させておる!此奴が考えた新しい銭の円、温泉施設、商業区域などだ!」
「ほうほう。何でも温泉施設や行商人に宿などが盛況のようですな?」
「さすが竹中だ。よく見ているな?それでだ!戦の事は何も分からぬ愚息だが、経済の事はそこらの行商人に負けんくらいには励んでいる」
何だ!?何だ!?何か決め事か!?何もオレは聞いてないぞ!?
「父上・・・いえ、お館様。この先は某が・・・」
「うむ。自信をもって言え!」
「まず・・・某は未だ齢(よわい)5歳の若輩者故、至らぬ所も多々あるでしょう。今回、某に与えられた任は織田家の財政の事でございます。今後、戦に掛かる戦費や新たな経済網を構築する銭などは、お館様様ではなく某に言っていただきますよう」
マジか!?5歳で織田家の財政を担うの!?
「流石、奇妙様でございます!!」
「流石、お館様の御嫡男!!見事な口上なり!!」
「先日、公家が来たであろう?その前後数日の間で新しい銭でだが、計算すれば7000万円の利が出た。浅井家や、たぬきの家はあまり分からないだろうが、分かりやすく言うてやろう。2万人規模の城が作れる計算だ」
「な、何と!?数日で城を作れるくらいの利が!?」
「まさか数軒の商いでそれ程の利があるのか!?」
まあ、近江や堺の行商人達がこぞって、岐阜に来ているからな。両替に関しては織田家が損してるとは思うけど、結局は長く見れば織田なしでは、経済が回らないような政策だからな。
「まずはワシが考えた銭の円。これを周知の事実とする為、帝に謁見せねばならぬ。そして認めてもらわねばならぬ。その為に先日飛鳥井、山科に餌を撒いた。まず拒否はされぬであろう」
「そこまで勝算が!?」
「うむ。今や京にまで近江商人が入り込んでおる。そうであろう?安養寺?」
「はっ。我が領にて岐阜から輸入した布団にて、多大なる利が出ております。後はやはり米です。岐阜米でしたか?あれはいくら輸入しようがすぐに売り切れになると、小谷城下の認定農家の者達が言うております」
「酒はどうだ?」
「酒は言わずもがな。ただ、やはり一升、5万円は高いですから中々・・・ここだけの話、我らは5万5千円で商いさせていただいております。ですがそれでも酒は・・・」
「うむ。値段の方は今後、奇妙と相談致せ。剣城が技にて出した酒は安売りするつもりはない。これだけは断言しておく」
「はっ。心得ておりまする」
初めて近江の事聞いたけど、あまりボッタクリをしている訳じゃないのね。って事は新しいお金ってかなり出回り始めてるのかな?かなり量産できてはいると思うけど。まだまだ足りない感じかな?
「それともう一つ・・・お濃が身籠もった」
「「「「「おぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」
「静まれッッ!!!今、びょういんなる所にて安静にさせておる。産まれてくる子が男であろうが世継ぎは奇妙丸だ!これは変わらぬ!」
「奇妙丸様!おめでとうございます!」
「いや、その言葉は素直に喜べません。某が一端の将となり、1人で織田家を切り盛りできましたら、今の御言葉をもう一度よろしくお願い申し上げます」
かつて、これ程の5歳児が居たであろうか。いつ死ぬか分からないけどオレは奇妙丸君・・・将来の織田信忠さんに仕える事になるかは分からないけど、この子は信長さんとは違うものを持っていると断言できる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます