出来レース

 ガラガラガラ コロン


 「まずは分かりやすく、説明しながら言いますね?今出た数字を見て下さい。5です!だからこれと同じ数字を──」


 「ちょっと待たれい!その模様は何だ!?」


 「そうだ!俺も初めて見たぞ!?」


 あぁ〜・・・この数字は浅井さん達は分からないよな・・・家康さん達なら分かるだろうけど・・・。


 「まぁまぁ、浅井家の者達はワシらが教えましょうぞ。あれは織田家で制定した数字でしてな?分かりやすいのですよ」


 「そうか。いや、松平殿、すまぬ。では教えていただきます」


 ふぅ〜。また三田村さんが変な事言わないか心配だったが、家康さんの機転で助かったよ。


 「家康様?ありがとうございます。よろしくお願いします。それでこの5がある紙を持っている人は──」


 「あるぞ!ワシだ!よし!さぁ、あの蜘蛛はワシのだな!皆の者!文句なしだぞ!?」


 いや違うから!一列か斜めに開いてからって言ったじゃないか!?


 その後また説明をして納得してもらう。


 「一つ開けるのに時間がかかりましたが、流れとしてはこんな感じです!では続けていきますね!?ちなみに私も楽しみたいので自分の紙を持っていますが、本当に不正はしてませんのでご容赦願います」


 「うむ。此奴はこんな事で不正をする奴ではない!これはワシが保証致す!続けよ!」


 よし。オレもあの蜘蛛さんが欲しいのだ!待ってろよ!?






 なんて人間様達なんでしょう・・・。わっちなんか、こんな気持ち悪い体で厄災の元凶と言われ・・・アトナラクア様達の偽物とまで言われ・・・。


 あぁアトナラクア様・・・。お元気にしていますでしょうか?わっちの為に群れに入れていただいた事、忘れていません。貴方様に森で出会い、貴方様の御主人に拾っていただき幸せでした。


 けどやはりわっちは偽物・・・。高値で取り引きできると売られ、貴方様は御主人様に反発して、糸巻きの刑にされましたね!?わっちなんかの為に御主人様に反発までさせてしまい、申し訳ありませんでした。


 それから人間様の街の端で、目立たないように生きていましたが、どうやらわっちは人間様が持っていた、魔道具とやらに引っかかるようで、どこに居ても見つかり、そして・・・。


 けど今はこんなにも、人間様にわっちの事を思っていただけるなんて・・・。


「剣城!35を出せ!頼むぞ!蜘蛛よ!待ってろよ!?もう少しだぞ!」


 「違う!61だ!蜘蛛はワシのだ!ワシの家にて喋り相手になってもらうのだ!」


 あぁ〜・・・こんなわっちを必要とされる日が来るなんて・・・。農業神様、ありがとうございます!御恩を今お返しします!




 〜神界モニタールーム〜


 「本来はここまで介入はしないんだなぁ」


 「は、はい!ですがなぜ今回は、こんなに肩入れされるのでしょうか!?」


 「我が友(マブダチ)の為だからなのだなぁ」


 「マブダチ?あのパパが改造した人間がですか?」


 「その言い方は侮蔑した心が入ってるんだなぁ?」


 ポワンッ


 「すいません!すいません!そんな事ございません!!!以後、気を付けます!!」


 「分かればいいんだなぁ」


 「では、引き続き確認し、できるだけ盛り上がるようにしながらも、惑星ユーノスで拾った蜘蛛はマブダチ様に渡るようにすれば、良いのですね?」


 「うむ。そうなんだなぁ。極力不平不満が出ないように、酒が好きな者には酒が当たるように、武器が好きな者は武器が当たるようにするのだなぁ」


 「畏まりました!!!けどあの蜘蛛も良かったですね?アトラナクアの変異種ですよね?」


 「パパが星を作った時、進化を促進する為、稀に特異能力を持つ種が生まれるようにしたんだなぁ。彼女がそれに当たるのだなぁ」


 「彼女?あの蜘蛛は雌ですか?蜘蛛の性別判断は難しいですね」


 「部長!!!今の言葉はハラスメントに当たります!直ちに訂正を!!芸術神様に怒られます!皆の者!サングラスを着用!!!」



 『遠隔後光フラッシュ!!!!!』



 「うわぁぁぁぁ!!!すいません!芸術神様!!」


 「言葉には気を付けるのだなぁ」


 「す、すいません。うむ。後は頼んだのだなぁ。おいは今からバトルシップの製作と、広告の撮影に行ってくるのだなぁ。バトルシップには戦神も、オブザーバーとして来てくれるのだなぁ」


 「戦神様がですか!?大丈夫ですか!?」


 「がははは!何が大丈夫ですか!?じゃ!ワシが来る事がそんなに珍しいか!?のう!?そこの眷族よ!」


 「戦神様!?お、お久しぶりでございます!!」


 「うむ!またあの甘い供物を貰いに来るぞ!?がははは!前金だ!ワシの眷族共に持って来させた!ワシを祀るドワーフが作った斧やノコギリ、鉋だ!実用的だろう?」


 「は、はい!間違いありません!」


 「うむ!貴様は先日神格が上がったと思うが、本当に良いマナを持っておる!では頼んだぞ!?さぁ行こうぞ!我が友(戦友)よ!」


 「分かったんだなぁ」


 


 これは・・・まさか農業神様が手を加えているのだろうか・・・?最短でリーチが掛かっているのだが!?そして信長さん・・・貴方は何故一つも開いてないのですか!?


 「チッ。またか。次だ!早う次を出せ!!」


 「は、はい!次は・・・・10です!」


 ふぅ〜。危なかった。これでオレが当たれば本当に不正と思われていただろう。運だけでここまでリーチになるのか!?


 「おっ!?後一つで一列開くぞ!!」


 「なに!?木下!!お主まさか不正をしておるのか!?」


 「なっ!丹羽殿!?そんな事あり得ませんぞ!?心外ですじゃ!」


 流石、運の良い木下さんだ。オレが知ってる歴史の天下人は、運も持ち合わせているんだな。


 それからオレと木下は中々開かない。


 「クッ!またか!おい!剣城!72じゃ!72でワシはびんごとやらになるのじゃ!!!」


 「木下様!?それは私も同じで中々後一つが開かないのです!」


 「御託はよい!!早う次に行け!!!」


 いやいや信長さん!?キレてるの!?あっ・・・一つしか開いてない・・・。ヤバイヤバイヤバイ・・・。


 「2です!」 「次は32!」 「58!」………………


 いや、かなり数字出てるけど、誰もビンゴ居ないのかよ!?まさか間違えてるとか!?


 「次は1です!!あっ・・・ビンゴ・・・・」


 「かぁ〜!やはり不正じゃないのか!?」


 「やり直そう!!」


 何でオレが1番なんだよ・・・。やはり疑われる宿命なのか!?


 「ほう?織田家料理 ご意見番の芝田剣城を不正呼ばわりか?ちなみにじゃが・・・ワシもビンゴじゃ!」


 え!?嘘!?!?全く開いてなかったと思うけどビンゴなのか!?いやマジで開いてるわ。しかも間違いもないし。


 「剣城!貴様とワシは同着だ!ならばワシが先に選ぶ権利があるよのう?」


 いやここで権力発動かよ!?ダメです!って言える訳ないだろ!?蜘蛛さんは信長さんか・・・。


 「はっ。当たり前です!信長様、どうぞ!」


 「は?貴様はワシに蜘蛛の世話をせよと申すのか?」


 「え!?要らないのですか!?」


 「いやワシの物だ。だが世話をするのは貴様だ。ワシはこれを貰おう」


 信長さんが選択したのは、何故それを選んだのか分からない。しかも景品として、農業神様が何故に入れておいたのか分からない、未来の沖縄県のシーサーの置き物だ。しかも大きい。


 「これじゃ!これを城の入り口に置くと良いとは思わぬか!?」


 「さ、流石お館様です!」


 「そ、某も実はそれが欲しかったのです!いやぁ〜、してやられましたな!?」


 よいしょよいしょか!?オレはこんな置き物要らないぞ!?


 「ほう?裏に何か書いているぞ?遠藤!読め!」


 「はっ。えーと・・・この置き物はただの置き物にあらず・・・この置き物を置くと地揺れ、火事から身を守る・・・これはこのままの意味である?と書かれています!」


 「ふん。要は縁起物であろう。これが何を題材としておるか分からぬが飾っておけ!剣城!貴様は蜘蛛を選べ!そしてそれをワシに献上しろ!」


 はぁ〜!?流石、信長さん・・・。権力を使いまくりかよ!?しかも皆、唖然としてるぞ!?


 「では皆さん、すいません。私がこの蜘蛛を選びます!」


 「ははは!蜘蛛と思うが中々に面白いではないか!ちゃんと此奴に世話してもらえよ?たまにワシもお前を見に行くからな?」


 「え!?」


 「え!?とは何じゃ?貴様が世話をするのだぞ?ワシはたまに見るくらいで良い。元は貴様の物であろう?それにその蜘蛛は無限地獄と同じ境遇に居たのであろう?ならば貴様は天国を見せてやれ!そんな小さな籠ではなく、大きな家を建ててやれ!」


 いやなんとまあ無茶振り!?まあ確かにノビノビ生活はさせてあげたいけど・・・。


 「わっちなんかの為にすいません。わっちはこの中でも十分幸せでございます」


 「「「「「・・・・・・・・」」」」」


 「剣城!銭はワシが出してやるから、良い家を建ててやれ!」


 「ワシもだ!幸せにしてやれよ!」


 「ワシも出そう。たまに喋らせてくれ!」


 この空気は何だ・・・まさか!!!?これが誘惑(チャーム)という魔法なのだろうか!?この蜘蛛が!?


 「やったぁ〜!やったぁ〜!人間様の役に立ってみせます!」


 んな訳ないよな・・・。純粋無垢な蜘蛛な筈だ・・・。

 

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