ビンゴ大会
「これはまさか鯛の刺身ですかな!?」
「本当だ!しかも透き通った氷が乗ってあるぞ!?」
「う〜ん!これよ!これ!この天麩羅が美味いのだ!!」
行儀も何もあったもんじゃないが、皆笑顔で食べてくれているな。
メニューは正月料理とは程遠い、皆が食べて喜ぶ物ばかりだ。鯛の刺身、寿司、天麩羅、カレイの煮付け、ボタンエビの塩茹で、三切れ程だがチキン南蛮、カマボコ、沢庵、ひじき、冷しゃぶサラダだ。
誰が考案したのか・・・多分、大野さんの発案だろうと思うが、今年は3段のお重になっている。おせち料理とはいかないが見た目はおせちだ。
酒は、日本酒から始まり、ビール、ワイン、焼酎、梅酒、ウイスキー、バーボン、ウォッカなど様々な酒を用意している。勿論、信長さん用に甘くて然程アルコールが強くない、チューハイなんかも出している。
「これじゃ!この酒をどれ程待ち侘びたか・・・この金色に輝くういすきーなる物・・・会いたかったぞ!!」
いや酒井さん大丈夫か!?そんなに飲みたければ言えば送ってあげたのに・・・。
「ウイスキーにサイダーを混ぜると飲みやすく、更に美味しいですよ」
「そうか。ならお主が言う物を飲んでみよう」
「その日本酒は、グラスに塩を付けて飲んでも美味しいですよ!」
「そうか!そうか!分かった!」
オレは少し変わった飲み方なんかを教え、皆は喜んでくれた。
「剣城殿?おめでとう」
「あっ、家康様。あけましておめでとうございます」
「今年もまた様々な料理に酒だ!挨拶に来るのが楽しみだったのだ!」
「それはよかったです!後で城の料理人に伝えておきますね!」
「うん?これは剣城殿が作ったのではないのか?」
「今年は城の料理人にお任せしたのですよ。一年で大したものでしょう?」
「いやぁ〜!これは凄い!我が三河にもそのような料理人が居れば、日々が楽しいのだがな」
「殿!そうやってまた食べる事ばかり言うと、太ってしまいますぞ!?」
確かに余裕ができたからか家康さんは少しぽっちゃりしてる気がする。
「忠勝!お主は黙っておれ!この後、余興があるのだろう?楽しみにしているぞ!」
「三田村様?あけましておめでとうございます」
「おう!剣城殿か!!おめでとう!!」
うん。完璧に酔っているな。こんな喋り方の人じゃなかった筈だ。
「先日は素晴らしいアメノウオでしたっけ?ありがとうございました!大変美味しかったです!」
「だろう!?あれは某が獲ったのだ!冷たい淡海の深い場所に・・・」
ゴツンッ!!
「馬鹿者が!織田様の御前であろうが!酔うのは構わんがその偉そうな態度は何だ!!」
安養寺さんがキレてるんだが!?別にオレは気にしてないからいいよ!?酔うとそんなもんだろ!?
「安養寺さん・・・あ、あけましておめでとうございます。あの・・・そこまで気にしてませんし、酔うと皆変わりますから大丈夫ですよ!?」
「そうは言ってもだな・・・」
「とにかく、あのアメノウオは最高に美味でした。少し後にまた新たな仕事を言いますので、その時は長政様にお伝え願えますか?」
「分かりました。実は殿も相当岐阜に来たかったようで、小谷でもかなり困り果ててまして・・・」
聞けば本当に長政さんもここに来たかったらしく、信長さんみたいに変装して来ようとしたらしいが、まあ普通に考えて無理だよな。
「近江は国人衆らが強く、奴らには上下関係を見せておかねば、いつ牙を向くか分かりませんからな。だからその国人衆には正月は、小谷に足を運ばさせないといけないのです」
「大変ですね。また帰りに私の配下にでも伝えてください。アメノウオの返礼をお渡し致します」
「うむ。ありがとうございます」
よし。とりあえずは皆に挨拶したし大丈夫だな。
「ねぇ?蜘蛛さん?あまり大きな声では言えないけどお腹減ってない?何食べるか分からないけど欲しい物あるなら渡すよ?」
「そ、そ、そんな恐れ多い・・・わっちが人間様と同じ物を食すなんて・・・わっちはそこらへんの草しか食べた事なく・・・」
なんて可哀想なんだ!地球の蜘蛛が何を食べるか分からないが・・・いや待てよ!?たしか軍曹と呼ばれるアシダカクモはゴキブリを食べるのだったよな!?なら虫を食べるのか!?いや、あの児玉さんですらオレ達と同じ物食べるからな・・・チキン南蛮でも渡してみるか?
「これよかったら食べる?チキン南蛮って言ってオレの好物の一つなんだ」
「え!?え!?よろしいのですか!?」
「うん。いいよ。お食べ」
「はぁ〜・・・なんて美味しい・・・こんな食べ物があったなんて・・・」
「どう?食べれるか?」
「はい!大変美味しいです!ありがとうございます!ありがとうございま…ありがとうござ…」
一体どんな境遇で育ったんだ!?こんないい子を虐めるとか、マジで惑星ユーノスの人間は腐ってるな!?
パンッ パンッ
「皆の者!腹はそろそろ満たされたであろう!余興じゃ!!剣城!始めろ!!」
唐突に言われる信長さんの声。さて!楽しい楽しいビンゴゲームだ!
「失礼します・・・えぇ、皆様方。あけましておめでとうございます。芝田剣城です。今年の余興はビンゴゲームをしようと思います」
「ビンゴゲームとは何だッ!?言え!何だと言うのだ!?」
いや三田村さんは次はキレてんの!?
「こら!三田村ッ!!謝れ!すぐに謝らんか!!!」
「クハハハハハ!酔うとあんな風に三田村は変わるのだな?安養寺!今のは聞かなかった事にしてやる!二回目は無いぞ?」
「とにかく、今から私がこのガラガラを回します。そして皆様にお配りしている紙に数字が書かれてあると思いますが、私が出した数字がある方はそこを捲り、一列か斜めに全て開いた方が勝利です!」
「難しいな」 「もっと簡単なものが良かったのだが・・・」
いや、これ程簡単なゲームないぞ!?どうしろと言うんだよ!?
「おい!剣城が考えた余興じゃ!ワシもイマイチ分かってはおらんが、やりながら分からぬ事を聞けばよい!おい!剣城?始めよ」
「分かりました。とりあえず始めます。その前に・・・遠藤さん?景品を前に・・・」
「おぉ〜!?あれはびーるか!?しかもかなりの量だぞ!?」
「菓子らしき物もあるぞ!?」
「なに!?剣城には珍しく刀や槍まであるぞ!?」
ふん。驚け!景品は豪華な筈だ!槍とか刀の良さは分からないが、農業神様が見繕ってくれたからハズレではない筈だ!そして最後はあの例の蜘蛛さんだ。
「ふん。よくもまあこんなに揃えたものだ。このまま余興が始まれば、ワシが恥をかいてしまう。遠藤!蔵を一つ空けい!新しい銭、4000万円持ってこい!それを2番の賞にして後は一つずつずらせ!」
「お館様!?1番の賞にしなくてもよいのですか!?」
「ふん。これで強権を発動してワシが出した物を1番にしてしまえば剣城の努力を蔑ろにするのと同じじゃ!ワシが出すのは銭だ。2番で良い」
「「「「「おぉぉぉぉ!!!!!!」」」」」
「は、はい!分かりました!!」
太っ腹だな!?やっぱお金は喜ぶよな。しかも4000万円とか大概じゃないか!?流石、信長さんだ。
「信長様?ありがとうございます。そして、最後の景品・・・1番最初に揃った人にはこの蜘蛛が渡されます!なんとこの蜘蛛・・・喋れるのです!!」
「ほう?喋る蜘蛛か。珍しいな」
いや信長さんも驚かないのかよ!?しかも珍しいなで終わりかよ!?
「わ、わ、惑星ユーノスで産まれた、たたただの蜘蛛です!!!よ、よろしくお願いします!!」
「「「「おぉぉぉ!!!喋っているぞ!!!」」」」
「欲しい!ワシが欲しい!」
「見た目は蜘蛛だが、良く見ると可愛らしいではないか!!」
「是非、殿にお見せしたい!!!」
いや皆、疑問に思わないの!?蜘蛛が喋ってるのだぞ!?
「皆の者!待たれいッ!!!その蜘蛛はこの池田が貰う!この蜘蛛は迫害されてきた蜘蛛なのだ!!!」
あぁ〜あ・・・池田さん・・・。
そこからさっき聞いた境遇を、池田さんが身振り手振りで言った。実際に受けた虐待?も酷いが10倍酷く言っていた。
「我らと違う世界で産まれたらしいが、この蜘蛛は海に沈められたりしても死ねない体で、ひたすら殺されていたそうだ!まさに、仏教の八大地獄のような世界から来たそうだ!」
いや嘘ばかりだろ!?そりゃやられてた事は可哀想だけど・・・・。
「お、おぉ・・・・なんと酷い・・・」
「おい!蜘蛛!待ってろよ!?ワシがお主を出してやるからな!?」
丹羽さんまでどうしたんだよ!?
パンッ パンッ
「ワシもこの蜘蛛の事は酷いと思う。誰の手に渡っても文句なしだ!いいな!?始めろ!」
「分かりました。蜘蛛さん?良かったな?誰の手に渡っても優しくしてくれるぞ!」
「はぁ、はわわわわわ・・・」
見た目は怖いけど中々愛い奴だな!?初めて蜘蛛が可愛いと思ってしまったじゃねーか!?
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