スーパー蜘蛛さん

 今年の謹賀の儀の飯は城の料理頭、伊右衛門さんに万事抜かりなくお願いしている為、オレはする事が無い。饗応役を任されてはいるがほとんどの人は、いや9割9分の人がオレの出した酒を望んでいるだろう。


 1月2日にそれは始まる。岐阜城で見られる大名行列だ。一応名目上は家康さんも浅井さんも同盟となっているが、家康さんに関してはやはり少し下になるのか、参列している。浅井さんは代表の人達だけの来訪だ。


 オレは顔パスだから城の大広間にて待機している。


 「おぉう!今年もよろしくな!」


 「佐久間様、あけましておめでとうございます」


 「うむ。今宵もお前の酒を楽しみにしているぞ!?」


 「剣城!今年もよろしく!」


 「丹羽様、よろしくお願い致します」


 出会った当初は『何この浮浪者みたいな褌は!?』と思われていただろうが、今や後世に名を残す猛者達と肩を並べられている事に、我ながら驚く。


 ちなみにだが催し物で、今年から行うビンゴゲームを予定している。これは農業神様の提案だ。先日の夢の中の出来事・・・・。



 

 「やぁ我が兄弟!」


 「あっ、農業神様。お久しぶりです」


 「今年も一年お世話になったのだなぁ」


 「こちらこそお世話になりました!」


 「最近買い物が少なくなり、商品開発の意欲が薄くなってきているのだなぁ」


 え!?あっ、でも確かに買い物より、自分達で作る方になってきてしまっているからな・・・。


 「その件はすいません。私もこの世界でそれなりの地位に付き、お金もそこそこ持ちました。来年は大きい買い物をしようと──」


 「それは光速の船とかだなぁ!?!?」


 「え!?いやいや光速とか運転できないすよ!?普通の船を今使っています。神界のモニター?か何かで知ってるとは思いますが、船を造り操船に慣れれば私の主人の信長様用に、そこそこな装備の船をプレゼントしようかと」


 「ふむふむ。分かったんだなぁ。では"そこそこ"の装備の船を造るんだなぁ」


 なんか農業神様のそこそこは、かなりチートのような気がする・・・。


 「今年最後の年末セールをしているんだなぁ。だから買い物してほしいんだなぁ」


 「分かりました。実は年始の饗応役なので、皆を楽しませる事考えているのです」


 「ならビンゴゲームとか面白いんだなぁ」


 迂闊だった。安上がりで皆楽しめるゲームじゃないか!ビンゴゲーム!いいな!!


 「ではビンゴゲームにします!100万位内くらいで見繕ってくれませんか?」


 「分かったんだなぁ!クレジットから引いてボックスに入れておくんだなぁ」


 「ありがとうございます!後、これは個人的にお願いがあります。恥ずかしくない程度の指輪とかあります?」


 「あらぁ〜?人間君?呼んだわね?」


 いや、芸術神様ですか!?別に呼んだつもりはないけど・・・。


 「後光フラッシュ!!!!もう一度言うわよ?呼んだわね?」


 「は、はい。すいません呼びました」


 「あの人間の女に渡す物ね?今回特別に何種類か作ってあげるから、少し待ちなさい?」


 「ありがとうございます。ただ値段が1億とか2億とかはさすがになので、人間の常識範囲でよろしくお願いします」


 「馬鹿にしないで?私は商業神のような悪徳じゃないのよ?何でも利ばかり追求するようじゃ好かれないのよ」


 うん。おっしゃる通りだ。まだ商業神様は見た事ないけど。


 「楽しみにしててね?じゃあね?」




 とこのような簡単なやり取りで決まった事だ。


 ちなみに景品なんだが、意外にも現実的な物ばかりだった。ただ一つを省いて。


 未来の世界の酒各種が飛び賞にあり、日持ちはしないだろうが、お持ち帰り用にカットされているケーキなんかもある。栄養ドリンクやカタカナで【エリクサー】と書かれている、オレでも初めて見た飲み物まである。他には上質な生地だろうと思う服、禍々しいデザインの刀、槍だ。


 そしてファンタジー景品の一つ、いや一匹か・・・。


 「わっちの主人はどなた様になられるのでしょうか・・・」


 「ごめん、それはゲームが終わらないと分からないんだ」


 虫籠に入り、見た目はかなりグロイ・・・失礼。見た目は怖いが何故か普通に人間の言葉を話し、しかも礼儀正しい蜘蛛だ。


 「わっちなんかが人間様の奴隷になるのなんて・・・。こんな見た目のわっちなんか、踏み潰して捨てられるのがお似合いというのに・・・」


 「いや・・・何で君が一等の景品になるのか・・・。そもそも君は蜘蛛だよね!?」


 「はい。惑星ユーノスの人間に足や体を千切られたりしましたが、再生の能力にて無限地獄に囚われていたわっちを、農業神様に助けていただき、申し訳なさで幾度となく自分で死のうと思いましたが、死にきれず・・・」


 いやどんな惑星だよ!?その惑星の人間は酷すぎないか!?


 「えっと・・・多分この世界の人も驚くとは思うけど、多分大丈夫だよ!君は喋る事以外できるのかな?」


 「実はわっちは裁縫が得意です。自分で糸を出し、人間様が着るような御洋服なんかをお作りできます。怪我した人間様などもわっちの血を垂らすと、再生の能力が働き治せます!ただ寿命は伸ばせません。それと薬なども作れます!」


 いやスーパー蜘蛛さんじゃねーか!?しかも服を自分で作れるとか凄すぎじゃね!?薬作れるとかヤバくね!?


 「君凄いね!?なんならオレが欲しいくらいだよ!!」


 「あぁ〜!なんて御言葉を・・・わっちなんかが人間様に・・・」


 どんなトラウマがあるんだよ!?惑星ユーノスの人間は馬鹿なのか!?スーパー蜘蛛さんが可哀想と思わないのか!?


 「おーい!剣城?この数字が書いてある紙は何だ?」


 「あっ、それは飯の後の余興に使いますので、大事に持っていて下さいね?」


 「ほう?余興か!その横で倒れている蜘蛛は何だ?新しい配下か?」


 いや配下か?じゃねーよ!疑問に思えよ!?そりゃ馬や牛なんかがいるけど、蜘蛛を配下にする奴なんか居る訳ねーだろ!?


 「これはまた後で言います。実はスーパー蜘蛛さんなのです!しかも喋れるのです!」


 「凄いな!喋る蜘蛛か!おう!蜘蛛!ワシは池田恒興だ!よろしくな!」


 いや池田さんは何も疑問に思わないのか!?喋る蜘蛛だぞ!?おかしいだろうが!?


 「わ、わ、わっちは惑星ゆ、ユーノスの産まれの名前も何も無く、蜘蛛でございます。どうか虐めないでく、下さい!何でも言う事聞きますから・・・」


 「おい、お前・・・」


 いやなに涙ぐんでんの!?池田さん壊れたか!?


 「貴様にどんな境遇が起こっているかは聞くまい!だが安心致せ!蜘蛛だからと殺したりする奴は織田には居ない!」


 いや居るだろ!?御当主自ら殺してしまいそうだぞ!?


 カンッ カンッ


 「お館様のおな〜り〜!!」


 

 「皆の者!よく来た!おめでとう!」


 「「「「「おめでとうございます!!」」」」」


 「例年の如く皆の顔が見れて嬉しく思う。まずはゆるりと過ごしてもらいたい。料理をこれへ!まずは飲んで食べて腹を満たしてくれ!その後、饗応役の剣城から催しがあるとの事だ!ワシも聞いてはおらぬ!」


 始まったな。まぁとにかく食べようか!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る