今年の抱負

 そして朝日を拝み、暫く各々が思い思いに耽って太陽に合掌。


 「寒い!おい!皆の者!帰るぞ!」


 寒い!帰るぞ!ってあんたが連れて来たんでしょうが!?


 帰っている途中で金剛君達に話しかけられた。


 「剣城様?縁起の良い初日の出に向かい、今年は剣城様の飛躍の年になるように願っておきました!」


 「あっ!それなら私もですよ!剣城様がもっともっと大きくなるようにって!」


 「いや大きくなるって・・・頑張って痩せるようにしてるんだけど!?」


 「違いますって!お家が大きく──」


 「知ってるよ!冗談冗談!頑張って皆を食べさせないといけないからね?ありがとう。頑張るよ!」


 「俺は嫁ができるようにお願いしました!」


 「大膳!お前は岐阜に帰れば今年最初の外周だ!人が感傷に浸ってる時に、自分の願い事を言いやがって!」


 「えぇ〜!?剣城様!?それは無しっすよ!?」


 ふん。大膳めが!それだからお前は大膳なんだよ!!


 「俺は剣城様の無敵艦隊が創設できるように願いました」


 「剛力君?ありがとうね!」


  無敵艦隊って・・・。戦艦でも作るのか!?


 岐阜の家には城下の時計台の時間、9時には帰ってきた。去年もそうだったが1月1日に信長さんは、本当の意味の親族だけで過ごすのが慣例なので、オレも登城しなくていいのだ。だからまったり家で過ごしている。


 そして今年からの試みをしようと、ゆきさんと俺2人で家の蔵を開ける。


 「ふふふ。貯めたもんだ。国友さんが全力を駆使して作り、オレの取り分を貯めに貯めたお金を全開放だ!」


 「これを子供達に配るのですか?御歳魂とは本来、歳神を迎える為に丸い鏡餅を──」


 「いいから!いいから!今こそ芝田家の力を見せつける時だよ!」


 「まあ、剣城様は毎回言われてる『死銭は経済に良くない』と仰いますからね?子供達を喜ばせるならいいでしょう!」


 ネットスーパーの残金に全部交換してもいいが、それだと面白くない。未来の子供達はオレに感謝するだろう。いつからお年玉にお金を包むようになったかは知らないが、今、この時から始まるのだ!


 「兎にも角にもまずは部隊の皆からだ!皆!大広間に集合!!!」


 ドタドタドタドタドタドタドタドタ


 「皆、集まったかな?なら順番にオレのところに並んで来てくれます?」


 オレは瓶や木箱に入っている100円玉500円玉擬(もどき)小判、大判を持って来ている。ポチ袋もわざわざ買っているのだ!


 「我が君!?銭をそんなにどうするので?」


 「小川さん!貴方はよく頑張ってくれている!先の戦の折には痛みに耐え良く頑張った!感動した!!」


 うん。ハルモニアのスーツだっけ?あれを装備してたから大丈夫だったけど、一度言ってみたかった昔の総理の言葉だ。


 「え?くれるのですか!?」


 チッ。何も反応なしかよ!?


 「これはお年玉!日頃の感謝を込めてね?本当は子供にあげる物だけど皆に渡すから!値段は一律10000円!かなり贅沢できると思うよ!」


 「「「「1万円!?!?!?」」」」


 「みんな各々が好きな物買ったり、好きなように使っていいから!それとここに来れない人達に渡してもらいたいんだけど3人!頼まれてくれないかな?追加でもう1万円出すよ!」


 「俺が!」「某が!」「いーや!ワシだ!」


 「杉谷さん、小泉さん、大膳!!!この3人に決定!」


 よし。ここからが本番だ。


 「金剛君・・・・拡声器を」


 「はっ」


 外に出たオレとゆきさん。まあ、小川さんや金剛君も居るけど。勿論、ご近所の子供達へのお年玉プレゼントだ!金額は500円!


 特に大きな物なんか買えないし、まだまだ子供が喜ぶようなお店は少ないが、オレが手掛けた駄菓子屋さんがある。小さいお金がまだ無い為、現代感覚なら割高には感じるだろうが、

この時代の人達は安く感じるみたいだ。


 ちなみに駄菓子屋さんには、宮島さんという甲賀から来てくれた人にお願いしている。元々甲賀ではこの宮島さんは、幼忍を教える教師?的な事をしていたようで、子供の扱いが上手いのだ。揃えている菓子はオレが出した飴玉やチョコ、ジュースなどを木箱にそれらしく置いているだけではあるが。

 

 「フッ。フッ。テスッ テスッ・・・・さぁさぁ!城下の子供達よ!!新年の挨拶をしようか!!!今すぐ芝田家に集合!集まれば良い事あるかもしれないよ!!!」



 オレが拡声器にて呼びかけをしたがチラホラしか来てくれない・・・。


 「これはお年玉だ!そんなに大きな物は買えないかもしれないけど、好きな物を買いなさい!」


 「え!?これ貰っていいの!?芝田のおっちゃん!ありがとう!」


 チッ。この子にもおっちゃんと呼ばれるか・・・。


 「ゆき姉ちゃん!ありがとう!」


 「いいえ!皆に言ってくれる?子供は集合って!」


 「おぉ〜〜い!!!芝田のおっちゃんと、ゆき姉ちゃんがお年玉ってのくれるぞぉ〜!!!」


 何でオレがおっちゃんでゆきさんだけ姉ちゃんなんだよ!?オレも兄ちゃんで良くないか!?


 「お年玉って物くれるの本当?」


 「あぁ。これは父ちゃんや母ちゃんに渡さなくていいからね?あそこに駄菓子屋さんがあるだろう?特別にお正月でも営業するように言ったから、お菓子でも買いなさい」


 「はぁ〜い!おいちゃん!ありがとう!」


 チッ。こんな小さい女の子にまでおいちゃん扱いか!?


 暫くすると大人達まで並んで来た。


 「すいません、これは子供達だけの楽しみなんです」


 「そうかいそうかい。わしゃてっきり大人にもくれるもんだと思うたわい!」


 「申し訳ない。今後は大人も楽しめる何かを考えますのでご勘弁を!」


 「はは!今でも楽しいぞい?道三様の時よりも随分と賑やかになったもんだ!なにより甘い物が食べれるときた!」


 「あんたッ!!!お武家様になんていう口聞いてるんだい!!!すいません!すいません!酒に酔ってまして──」


 「いえいえ。構いませんよ!」


 そんなこんながありながら、城下の子供達は本当の意味で全員来てくれたと思う。乳飲み子が居る家は金剛君に調べてもらい、家に渡しに行ったりもした。


 「これで少しでも子供達が笑顔になればいいな」


 「そうですね!早く私も自分の子供を抱きたいです」


 ドクンッ


 ゆきさんの、自分の子供が欲しいとの言葉に、周囲にオレの心臓音が聞こえるくらい鳴ったような気がした。


 そりゃ早い方が母体に負担もないけど・・・。先日魔法使いを卒業したばかりというのに・・・


 「剣城様?すいません。我が儘を言ってしまいました。剣城様がもし、子供がお好きでないならば──」


 「子供は好きだよ?ただまだ少し早いかなって思う。まだ結婚式すら終わってないしね?もう少しだけ待ってほしいかも」


 「も、勿論です!私はいつでも大丈夫ですので!!!」


 変に気を遣わせてしまったな。申し訳ない。



 そしてこの日の夜はゆきさんに雑煮を作ってもらい、小川さん、オレ、金剛君、剛力君、ゆきさん、お菊さんとでゆっくり過ごした。


 ちなみに小見さんは城に戻っている。だからか、お菊さんも正月はオレの元に戻って来ている。


 「なんだか一年で唯一、ゆっくりできる日のように感じるね」


 「ははは!そうですな!我が君はじっとしていない方ですからな!?(ジュルジュル)うむ!美味い!この新潟県と呼ばれる場所の未来の酒は、美味いですな!」


 「正月にしか出しませんよ?それ一つで5万円もしたのですよ!?」


 「では味わって飲みましょうかのう?ははは!」


 「剛力!それは俺が後で食べようと思っていたメキシコのタコスだ!何故お前が食べるのだ!?」


 「え?早い者勝ちだろ!?」


 こんな日がいつまでも続けばいいのになと思った。

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