信長の敦盛
「(ハスッハスッハスッ!!)ゴッゴホッ!!(ハスッハスッハスッ!)」
「いやいや小川さん!?ガッツキ過ぎじゃないすか!?」
「いやいや我が君!?自分で作ったものですがこの魚は美味い!美味いを通り越して美味ですぞ!」
いや美味いを通り越したら美味なの!?初めて知ったよ!?
「これ!小川殿!?はしたのうございますわ!」
「小見様・・・も、申し訳ございませぬ」
「ははは!流石の小川さんも小見様には小さくなるようですね!」
「下城したと言うのに剣城殿?ごめんなさいね?」
「いえいえ。ただ私も美味しい物はガッツいて食べてしまう癖があるので、気を付けますね!さぁ皆、食べよう!」
とりあえずは皆マグロの漬け丼だ。醤油に漬け込み米の上に乗せただけではあるが、これが美味いのだ!
カツオに関してはオレと金剛君が裏の庭で藁焼きした物だ!ニンニク、玉ねぎ、ポン酢と聞いただけで、間違いない約束されたカツオのタタキだ!
「これはカツオと申しましたか?美味しい・・・それに、シビは縁起が悪いと思いましたがこれ程美味しいとは・・・」
「ははは!マグロは栄養も豊富なのでこれからも食べましょう!船ができればもっと色々な魚が食べられますよ!」
「ほんに、男の子は良いですね?妾・・・私達女子は中々、外に行けませんからね・・・」
「いやそんな事ないと思いますよ?なんなら船ができれば、織田家御一行でプチ旅行でも行きます?」
「プチ旅行とは?」
まあ話の流れでオレが勝手に言っただけだが、普通に考えて旅行とか無理だよな。そもそも他国に入る事が困難だし、例えば千葉辺りに行こうとしても、今のこの時代では、北条家や里美家が治めてたよな?まあ到着した瞬間に攻撃されそうだ。
じゃあ西国に行こうとしても、大阪くらいなら行けそうだが明の船や、なんなら海賊とかも出そうな気がする・・・。
「情勢が落ち着けば、船に乗り色々な国に行ける日が来ますよ!」
「では私はそれまで長生きしなくてはいけませんね?道三様には今暫く待っていただかなくてはいけませんね」
小見さんは本当に道三さんの事好きだったのだな。よく、話に出てくるよ。
「剣城様!?その魚の身は何て名前の魚ですか?」
「うん?これ?これは特別な魚だよ!ビワマスって言って、淡海の北部にのみ生息する魚なんだ。鮭に似て高級なんだよ?」
「まあ!?何故そのような魚が!?」
ヤバイ!小ぶりなビワマスだし、とりあえずオレ用しか丼作ってないけど・・・皆恨めしそうな顔になってるじゃないか・・・。
「これは・・・浅井様がオレに・・・」
「剣城殿?お一人が食べるの?」
「美味しそうですね?」
クッ・・・・小見さんの側仕えさんまで・・・
「まあ我が君?残念ですな?ワシはマグロで満足なのですがな?観念しましょう!」
結局ビワマスは皆に振る舞う事になった。ケチと思われるかもだが、このビワマスはタイムスリップする前でも食べた事が無かったから、オレが食べたかったんだよ!!!
年末でも岐阜の芝田邸は賑やかに過ぎていった。
迎える事、正月・・・まあ1月1日。信長さんが強権を発動して決めた時間・・・日付が変わる夜中に信長さん、利家さん、遠藤さん、堀さん、太田さん、佐々さん、池田さん、森さん、木下さん、丹羽さん、佐久間さんがオレの家に来た。
本当に織田家の中枢を担う人達だ。一応先触れで夜中に遠乗りに出るとは聞いていたが、本当に夜中とは思わなかった。
オレからは本当に信頼のある者の同行だけ許され、金剛君、剛力君、すずちゃん、大膳君を連れて行く事にした。
まあ皆、差を付けたくないくらい信頼できる人達だが、お菊さんに関しては今や小見様仕えぽくなってるし、ゆきさんは配下ではなくなってるし、琴ちゃんは濃姫さんに付きっきりだからな。
後は望月さんや小川さんなんかは、正月用に出した未来の山口県岩国市で造られている、高級日本酒、獺○を飲んでもう寝てたし。
それぞれ各々の馬に乗り出発した訳だが、オレはゴッドファーザーに改造?してもらった身体だから、然程は寒さを感じないが皆は小川さんの息子、喜左衛門さんが作った綿100%のダウンジャケットを着ている。
"ノア?夜中にごめんな?"
"いいよぉ♪真っ暗な中を走るの気持ちいいよ?それに、あーしこう見えても真っ暗でも道が見えるよ?真っ暗でもあーしには6000ケルビンの純白色に見えてるから安心していいよぉ♪しかもキセノン光にも負けないよ?"
うん。やっぱスーパー神馬ノア嬢だ。神界の馬は未来の車みたいな装備が使えるらしい。確かABSも標準搭載とか言ってたよな!?
「信長様?何処に行くのですか?」
「ふん。黙って着いて来い!貴様に見せたいのだ!」
真っ暗な中で獣道を通り、連れて行かれた場所は岐阜城がある金華山からも見える、隣の養老山という山だった。去年はオレは連れて行かれなかったがここは毎年、側近中の側近だけが信長さんに連れて来られる場所らしい。
山に入るまでは獣道のような道だったが、いざ山中に入れば道がかなり整備されていた。
30分程で頂上に到着し、そこには簡易的ではあるが小屋が建てられており、中に入る事となる。誰も来た感じはしないが、綺麗に掃除されているようにも思う。
「遠藤ッッ!!甘い温かいかふぇおれを作れ!」
「は、はい!」
いや、わざわざ山に来て正月からカフェオレかよ!?
「お前達も飲みながらで良い。聞け!ここへは毎年、1年の始まりの日に来ておる。今年は剣城も呼んだ。そしてこれは今後如何なる事があろうと変わらぬ」
なんか急に話出したけど笑う雰囲気じゃないぞ!?なんだ!?なんだ!?
「お館様!?それでは今後は・・・」
「うむ。サルの言う通り!敢えて言おう。剣城!貴様は比類無き考え、技術にて岐阜を発展させておる!最早、織田家に無くてはならぬ存在だ。そしてここに居る者達もそうだ」
「ありがとうございます」
「うむ。剣城!貴様は今年、勝家と連携し公家や公卿を取り込み、経済を更に発展させよ!森!お主は前年と同じ、更に兵を強くせよ!いつでも動ける軍を3000人単位、10個大隊を他の者達と共に作れ!」
「はっ!」
「太田!!貴様は記録係だ!名簿録を作りどの隊で誰が隊長か、何人居るかを事細かく記録しておけ!」
「はい!」
言った事は簡単に出来そうな事ではあるが、全員に3000人の部下を与えるって事だよな?しかもすぐに動けるようにって、これが本当の専業兵士ってやつかな?
「ふん。まあ1年の始まりに難しい事ばかり言うてもいかんな。暫しお天道様が出るまで待てい!」
それから少しの間・・・ではなく4時間程クソ寒い中、織田家主要な人物だけで話し合った。特に何か話した訳ではないが、戦で戦った時より何故か連携感を感じる事が出来た。
そしてそれはいきなり始まった。朝日が顔を覗かせた時、いつもの鉄扇を左右の手に持ち初日の出をバックに・・・。
「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり。一度、生を得て滅せぬ者のあるべきか」
「よぉぉぉぉぉ〜〜〜ッッ!!!!!」
これがあの未来でも有名な敦盛か!?朝日をバックに神々しさまで感じる・・・。少し芸術神様の後光フラッシュに似てる気もするが。
濃尾平野を見渡し地平線から太陽が顔を出し、信長さんが敦盛を舞う・・・。ここでもしオレが同じ演目を行なっても、同じようには見られないだろう。信長さんにだけ許された事のようだ。
「今年は動くぞ!今年一年で一乗谷を抜く!剣城!!励めッ!!!」
「は、はい!」
「可成ッ!!伊勢を完全に手に入れるぞ!」
「はっ!」
本格的に動くって事かな?オレもさっさと船を造り、海からの輸送も考えないと。それにもっともっと岐阜を発展させて義昭・・・今は義秋だったか?を奉じて上洛させないとな。
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